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Love Flavor -bitter love song- 作者:栗栖紗那
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010 : "歌が超絶下手なのよ"

 玲の言葉を聞き、蓮はそっと息を吐く。
「悪いが――」
「蓮」
 すぐさま断ろうとするセリフを刹那が遮った。先ほどからそうだが、妙に口数が多い。というよりも、蓮と玲、そして琴美の間を取り持とうとするかのように立ち振る舞う。
 はっきり言って、らしくない。女の友達よりも蓮や親友の恒樹とつるんでいるほうが多かった彼女ではあるし、もともと闊達な正確ではある。
 とは言え、だ。
「刹那……?」
 いぶかしげに名を呼ぶのに、彼女は視線を逸らしながら、
「少しくらい、考えてもいいんじゃない?」
 そう、呟くように告げた。
「あ、その、悪い」
 妙な雰囲気になりかけているのを気に病んだのか、玲は慌てたように手を振りながら、
「嫌ならいいんだ、全然。断られてもともとの提案だしさ」
 それに、と玲は付け加え、
「なにはどうあれ、オレはやる。そう決めてるからな」
 照れくさそうに笑う。
「あんた、キモイわ」
 だが、それを琴美はにべもなく切り捨てた。
「わかってるよ」
 彼は反発せず、拗ねてみせただけだった。それを意外に思っていたのが顔に出ていたのか、
「夢、っていうと大げさだけどさ。やりたいってずっと思ってたんだ。別に、路上ライブにすごい思い入れがある、とかそういうんじゃないけど」
 そう語った。
「でも――」
 琴美は玲をあきれた目で見やり、蓮たちの顔を見回してから、
「こいつ、歌が超絶下手なのよ。それでも一人でやろうって言ってる訳なんだけど」
「…………」
 蓮と刹那は二人して無言で顔を見合わせ、そして、異口同音に、
「あきらめたほうがいいと思う」
 そう告げた。
「そう言うと思ったよ!」
 しかし、彼にめげた様子はなく、逆に明るい表情で、
「ならギター一本で勝負すればいいさ。そういう形だってアリだろ?」
 まあ、確かに、と思わなくもない。何も、ボーカルだけが音楽じゃない。ギターだけやっていて、世界的に有名な人だっている。
「まあ、俺からは頑張れとしか言えないよ」
「いやいや、気にすんなよ。もともとオレのワガママだしな。話を聞いてくれただけでもうれしいよ」
 嬉しい、か。仮定の話をふと思う。あいつが生きていたら、どんな風に言うだろうか、と。
「蓮?」
 不自然に黙ったのを疑問に思ったのか、刹那が顔を覗き込んでくる。
「いや、なんでもない」
「そ」
 頷きはするものの、彼女の顔は晴れない。
 だが、こちらの感情に頓着せずに予鈴が鳴り、俺たちも自ずと会話の内容が授業に関するものへと移っていった。
 この時期、というよりも初日である以上、どの授業をとるかは決めないといけない。初めを自堕落に過ごし、後から単位を取るために授業を詰め込むことも可能だろうが、蓮としてはある程度計画的に、そして快適に過ごしたいのだった。
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