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大妖精じゃありません
????編
チルノの知り合い
東方生活三日目。チルノに面倒を見て貰う約束をした次の日。今は能力の解釈について話し合っている。



「能力についてだが『あらゆるものをふっ飛ばす程度の能力』だ。チルノの氷もおそらくその所為だろ」

「へぇ~、となると気になるのは本当に『程度』ね。検証しなくちゃ」



 相変わらずチルノはチルノじゃあ無いが慣れなのか、大分抵抗が無くなってきた自分に驚きだ。概念ってのは厚いように見えるが思った以上に薄いみたいで。
 まあそんなことよりだ。チルノの言う通りどの『程度』の能力なのか検証することに越した事は無い。これから先、生身で生きていける程甘くは無いと思うし、何かとアドバンテージは有効利用しなくては。



「という訳で手始めにお空に浮いてる雲さんに試してみよう」

「あははは! やっぱりあんた面白いわ!」

「「あはははは!」」



































 出来心だったんです。あんな事になるとは全然思いませんでした。
 結論を言うとふっ飛ばせた。真上の雲に手をかざし「飛んでけ~」なんて馬鹿にした口調で言ったら雲が霧散していました。「ああ、いい天気だ」なんて呟きながら別の雲に手を翳し、同じ事をもう一度。またまた霧散してしまいました。
 俺とチルノは顔を合わせニヤニヤしたまま。しかし大量の冷や汗がダラダラ流れている。



「すごいね、人体」

「いや、あんたを人として見れない」



 そいつぁ、照れる。なんて思う訳無くただただ手にしてしまった能力の強大さに呆れるばかり。いや、雲った困った。……すまん、正直調子に乗りすぎたと思う。反省はしてるが後悔はしてない。



「何ぶつぶつ言ってんのさ。とりあえず検証するから、詳しく状況と状態を述べなさい」



 切り替え早いっす。チルノさんマジ逞しいっす。そんな手前、俺だけがうろたえる訳にもいかず、平静を装い(内心はマジやべぇ)チルノの応答に応えた。



「ただ念じただけ。そしたら雲が霧散しました。反省も後悔も「成る程。それだけで雲をふっ飛ばすなんて、それはかなり強力な能力ね」



 それからチルノは「ちょっと待ってて」と言い残しその場を去ってしまった。一人になった俺は食料確保のために例の果実を集め、その傍ら能力について考え中。
 例えばだ。この能力は制御が効くのだろうか? そこにあった木に手を翳し「内部から全方向に粉々にふっ飛べ」的なイメージだと……もうイメージ通りにふっ飛びました。
 今度は地面にある石ころを狙った木にふっ飛ばすイメージを浮かべると、木に石ころが命中。更に強弱、回転を石ころにイメージしてふっ飛ばすと、まさにその通りに。
……ぱねぇ。これは東方史上トップクラスの能力かもしれない。効能の素晴らしさもさることながら、何よりも凄いのはその凡庸性だ。思い通りにふっ飛ぶとか、重力を思い通りに操れるようなものだし。
 他にも能力の応用で空中浮遊も試してみた。これは出来るには出来るのだが、如何んせんまだまだ『頭』を使う。比較して見るとチルノだ。奴は羽根を用いて空を飛ぶ感覚を『身体』で掴んでいる(と思う)。俺の場合『頭』で思い、『体』を動かすというかなり面倒臭い工程が存在している。いずれは『頭』と『体』を統一させて、『身体』で空を飛んで見たいものだ。今の状態だと空を飛ぶのにまだ束縛的な物を感じるから。と、ようやくチルノ……と


「なあ、チルノ。こいつ本当に強いのか?」

「さあ? 試してみなきゃ分からないって言ったじゃん」



 時代を無視した白いワンピースを着た幼女。だが人間ではない。頭に生えた二本の角。先生、ここに鬼がいます。
 角さえなければただの幼女だが侮る事勿れ。鬼ってのはものっそい強い。数多くの妖怪の中で頂点に立つ種族と言っても過言では無い。
 そんな鬼幼女をチルノは連れて来たのだ。先程の不穏な発言からして嫌な予感しかしない。



「えーっとMs.チルノ。彼女は?」

「鬼の『おーちゃん』よ。あんたの相手。さあ、ご両人。思う存分暴れなさい!」



 もういや、この子。やっぱりアホの子だわ。調子合わせに鬼とか……マジねーよ。
 対して鬼の方は何だかとても怠そう。だろうね。妖怪より弱っちい人間が相手だもの。加減間違えたら俺の姿がR18指定になってしまう(グロ物的に考えて)
 ……速攻しかないよな。何の躊躇いもなく鬼を地面にふっ飛ばした。



「! お前ぇぇえええ!!!」



 あんなに怠そうだった鬼幼女の見る目が一発で大変な事に。ビビりにビビった俺は尚も地面にふっ飛ばし続ける。「ちょ…!」「待て!」「殺…!」などなんか言おうとしているのは分かるがガン無視。
 俯せに鬼幼女はふっ飛ばされ続けたためか、地面に大分めり込んでるのが分かる。



「飛んでけ!飛んでけ!痛いの痛いの「人……間がぁああ!」飛んでけ!」



 危ない、隙を付かれる所だった。とここでチルノが鬼の安否を確かめに行く。勿論俺は攻撃の手を緩めるつもりはない。「ギブ? ギブ?」とチルノが鬼に問い掛けてる点に関してはスルーで。
 鬼も限界だったのだろう。チルノの応答に最後の力を振り絞り縦に顔を揺らすとピクリともしなくなる。それを確認するとチルノは大きく腕を交差させた。



「ウィナー!」

「……能力無かったら死んでた」



 能力のおかげです。本当にありがとうございました。とここで再認識。俺の能力はパネェと。
 チルノはチルノで鬼幼女の介護をしてる傍ら、自分の考えをまとめ始めてるし。そんなチルノに俺は闘いの前の検証結果について話をする。「あんた、本当は妖怪でしょ」何て言われたりもしたが、何時も俺は人間だ。即座に否定。暫くの間視線が痛かったが納得してくれたのか、漸く目を逸らしてくれた。



「まあ言いわ。あたいはおーちゃんの面倒見てるからあんたはその辺でもぶらぶらしてて」

「却下。一人怖い」



 てーわけで暫くはボケーっと一人物思いに耽る。いや、目、口を半開きにしながらただただ無心でいるように心掛けていたと言った方がいいだろう。そうやって俺は時間を潰した。
























 さてと、どれくらい時が経っただろうか。辺りはすでに暗くなっており、月明かりだけが唯一の照明となっている。
 相変わらずチルノはそこで鬼幼女の面倒を見ているらしく、小さな膝を枕にしてじーっと鬼幼女を寝かせている。原因作ったのは俺だがなんか和む。



「あんたの能力ってさ、おーちゃんの痛みもふっ飛ばせる?」

「ん? 分からないけど試してみるか」



 鬼幼女ことおーちゃんは俺の所為で何処かしらを痛めたらしく、先程からずーっと唸りっぱなしらしい。何だかかんだで原因は俺にあるので特に抵抗無く、チルノの応答に答える事に。
 ただ漠然とした『痛み』というものをふっ飛ばせるかどうかは知らない。そのことをチルノに説明してから俺はおーちゃんに手を翳す。とりあえず『今ある痛み』で試してみようか。



「飛んでけ~」



 別に掛け声は無くたって構わない。ただあった方が何となく引き締まるのでわざと出している。若干おふざけ要素が入っているが、全力でふざけているわけではない。それを証明するかのように、おーちゃんの唸り声が止まった。
 それでチルノも安心したのか、おーちゃんの頭をそっと下ろし、鬱憤を晴らすかのように大の字に寝っ転がる。何て言うか、食べちゃいたい。……いや、捕食的な意味合いでがぶっと。



「 ! あんた、なんか妙な事考えてない?」

「正直すまんかったと思う」



 『雑念』をふっ飛ばし、俺は適当に目を閉じた。あー、蒲団恋しい。


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