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 ネタが浮かばない今日この頃。いつもよりちょい短いですがお楽しみ頂けると幸いです。
早すぎるアポロ編
閑話・山菜と山の住人
 月から帰った後は予想に反してこれと言った事は無かった。萃香や勇儀が文句を言って来たが「つまみを無くしていいのか?」と強気に出たら直ぐにへたれてくれた。
 また、物凄く強い妖力を月から感じ取ったとか。その辺は俺も知らんぷり。それ知られたら更に面倒臭い事になると容易に予想出来る。
 あ、鬼神は紫と早い内に和解したんだと。今度はちゃんと真正面から紫が闘いに臨んだらしく、鬼二人日はく「久々に全力を出せたって母さんが言ってた」らしい。実力が拮抗して決着こそ着かなかったものの、近年の妖怪の山の中では、後世に伝えるべき名バウトであったとか。
 俺はと言うと月の一件以来は特に前と変わらず飄々と生活している。尤も今は人里とは交流しない時期に入ってるため、やる事がほとんどないのだが。まあニートだな。鍛錬はしてるけど。



「……山で山菜でも調達するかな」

































 背に籠を背負い、せっせと山を登る事数分。比較的近場で食べられそうな草やら葉っぱやらを探すことにしたわけだが、今一よく分からん。そもそも妖怪の山に食える山菜があるかどうかも不明だし。
 黄色いごぼう(っぽい何か)? 食べる勇気があるだろうか? ある訳がない。別に食ったって問題はないのだが、まずさだけは能力でもどうにもならんのだ。
 何か見分け方法は無い物か……と、突如俺の頭の中に雷の如く閃きが!



「あやややや! 山に人間が「グッタイミ〜ンッ!」



 黒いスカートに白いフォーマルなシャツ。この時代を無視した服装でコイツが妖怪だと言う事が分かる。加えて赤い高下駄を履き、八手の葉で出来た団扇を所持。そして背中の黒い羽根。
 天狗。何を言うまでもなく天狗。しかも俺でも割と知ってる未来の幻想郷最速候補。その名も“射命丸文”。
 そうか、時代はもうそこまで動いているんですね。俺も長く生きた甲斐がありました。……じゃなくてコイツに毒……でもなくて味見をさせればいいんだ!



「人間。ここを妖怪達の山と知っての「ほら、食え」

「いや、だから妖怪の山「さあ、食え」

「あの、妖怪「さっさと食え!」



 文の口が開いたタイミングを見計らって一口大の黄色いごぼう(みたいなやつ)を放り込む。だが入れただけでは駄目だ。
 何が起こったか分かっていない文の背後に回り、無理矢理口を閉ざしてやる。「ほがっ、ほがっ」と何やらパニックを起こしているが気にしない。妖怪は丈夫だから。
 そして最後の作業、含んだ物を噛ませる作業へ。今度は顎を無理矢理動かす。『さくっ、さくっ』と何か歯ごたえのある物を噛んだ時に出る特有の音を立てながらごぼう(だと思いたい)を噛ませる。
 ちなみにその間僅か数秒。未来の幻想郷最速もびっくりの速さである。ただ、誤算もあった。



「むきょ!ひらひま〇Х△ζ〜ξΣε■δ」

「……科学の進歩に失敗は付き物さ」



 正直済まんかったと思ふ。診断したところ特に命には別状無いのだが、そのあまりのまずさにショックを受け、気を失うにまで至っている。妖怪の気を失わせるごぼう(でいいだろもう)とか聞いた事ねーよ。
 流石にこのまま放置というのも酷な話なので、面倒だが起きるまでは居座ってやることにした。べ、別に気にしてる訳じゃないんだからね……ってこの歳で何考えてんだろ、俺。
 自分の頭の出来に酷く絶望しつつも、ふとある考えに思い至る。別に今度は相手を気絶させるような事ではない。
 落ちていた調度いい太さの枝を拾って、手持ちの小刀(チルノ作の氷製)でどんどん削っていく。お詫びのお品を与えて許して貰おうと思った訳。



「ふっ。またつまらぬ物を作ってしまった」



 秀逸の出来だ。果たして誰が文句言えようか? いや、誰もが文句を言いたくなるだろう。
 この洗練された曲線美。。ふてぶてしいまでの一〇〇万ドルスマイル。そして無駄という無駄の全てを省いた究極の作り。
 ゆっくり射命丸。もうあれだ。きもかわいいってやつ。正直あげるのが勿体ない位に。
 ちょうどよく当の本人も目を覚ましてくれたので、お詫びの意味も込めてもう一個加えて譲ってあげよう。



「はっ! 私は一体……って人間! よくもとんでもない物をこの口にぶち込んでくれたな!」

「卑猥、じゃなかった。まあ正直すまんかったと思う故、お詫びと言ってはなんだがあんたを元にして作った木彫りを受け取って欲しい」

「え! いいんですか?」



 先程の怒った顔はどこへやら。爛々とした笑顔を見せてくる君はとっても魅力的だ。まだまだ天狗って言ってもコイツは幼いんだな。
 じゃーん! なんて効果音を自分で言ってみたりして、ゆっくり射命丸お披露目タイム。「これが、私?」なんてビューティーなんたらの喜びを表現する前の状態なのだろう。酷く身体を震わせている。
 ふっ、やはり永年の経験は伊達じゃなかった。人に感動を容易に与えるまでの腕になってしまったようだ。“感動を与える作品を作る程度の能力”って付けてやってもいいんだぜ?



「ふ、ふふ、ふざけるなぁぁぁああああ!!」



 ですよねー。つー事でまあ悪ふざけはこの位にしておこう。流石にこれ以上弄ったって仕舞いには泣かれるだけだし。
 「冗談、冗談」と宥めつつもう一つ用意しておいた三品目をプレゼント。今度のはマジなやつ。残念ながら塗装は出来ないが、それを抜きにしても本当に秀逸の出来。唯一の心残りと言えばモデルよりカッコよく作ってしまった事かな?
 気に入ったおもちゃを買って貰った子供みたいに目を輝かせている所を見ると、そういった失敗など杞憂でしか無かったと思うけど。



「凄いです! 私カッコイイです!」

「喜んでくれてよかったよ。じゃ「いや、それとこれは別だから」



 き、きたねぇ! さっきまでのあの笑顔はなんだったのさ! 汚れ切った大人の世界を久しぶりに垣間見た俺は、文が言う自分の上司に俺の身柄を渡すんだと。
 多分大天狗辺りだろうか。まあコイツよりは話が通じるだろうと見越して、黙って着いてってやる事にした。
 道中文に似た天狗が「それ餌? それ餌?」なんて言ってくるもんだからヒヤヒヤしてたが、そこら辺はしっかりしてる文はきちんと「上司に引き渡すんです!」と、ぷりぷり怒りながら俺を引き連れて行った。



「大天狗様〜、人間が山に紛れ込んでいたのですが」

「人間が? ん、ああ。そなたか」

「よかった、知った顔で」



 実は天狗とは河童との交流を通してちゃっかり面識があったりするのだ。今回の文の上司は運よく俺の見知った顔だったので、早い内に疑いも晴れそうだ。
 ……というかいつの間にコイツらは建築術を学んだのか。山奥の中にそれなりに大きな小屋。中には木製ながら机と椅子がずらっと並んでおり、鴉天狗に哨戒天狗とが机に向かって必死になって書類を片している。
 そんな姿を一瞥出来る場所に机を陣取りどんと構えてる大天狗の様子は企業の上役さながら。もうこいつら人間でいいだろ。
 今一状況を掴めておらず一人混乱している文を持ち場に戻るように指示し、大天狗は俺を奥の接待室に案内してくれた。



「何、こちらの手違いだ。少しはゆっくりしていけ」

「いや、ソファーとか……まーた河童か」

「ふはは。あやつらの腕には驚くばかりだ。我等天狗はそれに綾かって山の地位を築いていったに過ぎん。尤も鬼には勝てんがな」

「それでいいさ。身の程を弁えれば鬼は手出ししないさ。ところで……」



 その後も大天狗と当たり障り無い事を話し、二、三アドバイスを残してこの場を後にした。ついで、見返りには山の山菜と、その見分け方を教わったから俺の登山は無駄に終わらなかったようだ。
 で、帰り道なのだが既に山は真っ暗。気を利かせてくれた大天狗は俺に護衛の天狗を寄越したのだが



「何で私が……」

「そう言うなって。また木彫り作ってやるからさ」



 またコイツ。正直護衛なんていらないのだが。まあここ最近は力を発揮する機会がほとんど無かったので、天狗からは『鬼と仲のいい河童のご意見番的なただの人間』という位置付けをされた故の護衛って訳。
 「さあ、ばりばり護りますよー!」と急に張り切り出した現金な天狗を尻目にずいずいと山道を行く。
 何を彫ろうか考えていたが不意にあいつを思い出す。そういえば文の能力はどこと無くあいつのそれに似ているな。
 早速手頃な枝を拾い歩きながらそいつを彫る。そうそう、あいつは今の大天狗程大きくなくって……
 ゆっくり歩いて作っていたため住まいに着くのは遅くなったが、彫っていた作品はきちんと完成させた。



「あれ? 今回は私じゃあ無いんですね。まあカッコイイからいいんですけどね。ちなみに誰を模したんですか?」

「ん? そうさな〜。俺が思う理想の天魔様、かな?」



 またもよく分からないと言った表情の傍ら、「きめぇ」と文にどストレートに呟かれたのに気付いたのはまた別の話。


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