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StS編
9章-5 Mothers & children
  翌日 機動六課  陸戦シュミレーター

「はい。準備運動はそこまで。一旦集合して!」
「「「「はい!!!」」」」

 なのはの号令に合わせて集まるFW陣。
途中から現れた御剣が持っているアタッシュケースに、全員の視線は集中している。

「さて、全員の2ndフォームへの移行も済んだ。シャーリーから受け取って来たから、それぞれ取りに来るように。まずはスバルからだ」
「はい!」

 スバルから順に自身の愛機を受け取るFW陣。当然ながら待機状態では見た目は変わっていない。

「さて、と。全員黒峰と一緒にいたから実感が無いだろうが、昨日現れた敵はそれなりに強い。
お前等では1対1だと相手にすらならないだろう。此処らで…絶対的な強者との戦闘も経験しておくべきだ、と言う事で私となのはで意見が一致した」
「隊長戦、ですか?でも、もうそれなら」
「喜べ。相手は私だ」

 笑顔で言い放つ御剣。
対象的にFW陣の顔は一気に蒼ざめる。全員の視線がなのはに縋る様に注がれるが、当のなのはは苦笑している。

「私の魔力に耐えうるデバイスも出来た事だし、遠慮なく行かせて貰おう」
「デ、デバイス!?」
「あぁ、シャーリー経由でマリエルに頼んでいた物が完成した。起きろ、無銘(ナナシ)

 そう言いつつデバイスを呼び出す御剣。その手に握られているのは一丁の拳銃と、細身の長剣。
細身と言っても、剣自体の長さが御剣と同じ程ある為そう見えるだけで、実際は普通の剣より少し細い程度だ。
拳銃は自動拳銃(オートマチック)。銃身に施された装飾等、ティアナのクトゥグアに何処かしら似ている。

「カートリッジシステムも無く、ただのストレージだが…私が全力で魔力を注ぎ込んでも壊れない様に造られている。手加減しての試合には丁度良い。非殺傷にも出来るからな」
「じゃあお願いしますね。私は昨日保護された子に会いに、病院に行って来ますから」
「任された。さて、新人共。楽しい楽しい追いかけっこの時間だ」
「「「ひぃ~~~~!!!!」」」
「はぁ…」


「(で、だ。病院から連れ帰ったは良いが、懐いてしまい離れてくれない、と言う訳か)」
「(はい…)」

 聖王教会系列の病院に保護した少女を迎えに行ったなのはから、慌てた様子で御剣に通信が入った。
要領を得ない内容だったが、要約すれば困っているから部屋に来て欲しいとの事らしい。
執務室で暇そうにしていた黒峰と原口も連れて、御剣がなのは達の私室に向かうと、扉を開けた途端凄まじい泣き声が聞こえて来た。

「(…で、私にどうしろと言うのだ。子守りでもしろと?)」 
「(出来ればお願いします。本当は、FWの子たちに任せようと思っていたんですけど…)」

 扉側に目をやれば、申し訳なさそうに佇む4人組。

「(…やるだけやってみるが、期待はするなよ?)」

 御剣は嘆息すると、火の付いた様に泣いている少女に歩み寄る。
膝を折り、少女と目の高さを合わせると、御剣は優しく語りかけ始めた。

「お嬢ちゃん、お名前は?」
「ひっく!ひっ…ん…ヴィヴィオ」
「そうか。良い名だ」

 先程まで泣いていたのが嘘の様に、少女は舌っ足らずに答えた。
名を聞き、声だけでなく御剣の雰囲気全体が柔らかくなる。

「ヴィヴィオ。なのはと一緒に居たいか?」
「…うん」

 御剣の問いにしっかりと答えるヴィヴィオ。譲る気は無いらしい。

「だが、なのはにはこれから大事な用が有る。ヴィヴィオが我が儘を言えば、なのはを困らせる事になるぞ?」
「…ん…」
「ヴィヴィオ。ヴィヴィオはなのはを困らせたい訳では無いだろう?」
「……ぅん…」
「なら、良い子で待とう。私もここに居る」
「…うん」

 渋々、と言った風になのはから手を離すヴィヴィオ。
その目には涙が浮かんでいる。

「ありがとうね、ヴィヴィオ。ちょっとお出かけして来るだけだから」
「…うん…お名前」
「ん?私か?」

 不意にヴィヴィオが御剣の方を向き、問い掛ける。

「私の名前は御剣。御剣 仁だ」
「みつうび?」
「み・つ・る・ぎ・だ。言えるか?」
「みつるぎ」
「そうだ。偉いぞ」

 そう言って御剣はヴィヴィオの頭を撫でる。

「と、言う訳だ。聖王教会へ行くのだろう?さっさと行って戻って来い。」
「は、はい。流石ですね」
「何。有る人物を真似ただけだ」

 そう御剣が言った所で気持ち良さそうに目を閉じ、されるままにしていたヴィヴィオが口を開いた。

「みつるぎ」
「何だ?ヴィヴィオ」
「みつるぎおじちゃん」

 ――それを聞いた御剣は、穏やかな微笑みを浮かべ……両膝から崩れ落ちた。

「み、御剣さん!?ど、どうしたんですか!?」
「な、何。思いの外ダメージが大きくてな。大丈夫。大丈夫だとも。ふふふ…ふはは…くっくっく…」
「ぜ、全然大丈夫そうに見えないんですけど…」
「…?」


  さらに翌日 機動六課 監査執務室

「…さて、一昨日の襲撃で判明した事を纏めるか」
「本当なら昨日やる事だよね」
「しかたないだろ。俺達はともかく、直接面と向かって言われた御剣のダメージがでか過ぎたんだから」
「…さて、(シャドウ)の出現する条件についてだ」
「流したな」
「五月蝿い。奴等は、私達が原作と違う動きをしようとすると現れる。最初のなのはが襲われた理由も、恐らくはこれだろう」
「あん?俺らは関わって無ぇじゃねえか」
「否、私の忠告でなのはは休息を頻繁に取る様にしていた。そうすれば、なのはが一度落ちる、と言う事実が無くなってしまう」
「待って。じゃあティアの事は?原作とはかけ離れてるけど、あいつらはまだ出て無いよ?」
「もう出ている。Bランク魔導師試験の際に姿を現したそうだ。ティアから聞いた。特に何もせずに消えたらしいが、その理由までは分からん。
はやてとリインフォース、守護騎士(ヴォルケンリッター)は原口が張った結界に守られているから、そこまでの心配はいらないだろう。今、奴等は原因である私達に掛かりきりの様だしな」
「御剣が1人倒したって言うか消滅させたからね。今後は少し楽になるかな?」
「どうかな。数の上では3VS2だが、奴等は神出鬼没だ。各個撃破には注意せねばな」
「そうだね」
「さてと、次はいよいよ公開意見陳述会だな」
「あぁ。その前にも幾つかイベントは有った筈だが、ここが正念場だ。私達のすべき事は1つ。ヴィヴィオの死守だ」
「地上本部は良いのか?」
「あぁ。ヴィヴィオがいなければ、ゆりかごは動かない。そして、影達にとってゆりかごは動かなければならない。ならば…」
「あいつらをここへ誘き寄せて」
「2人一気に倒す!」
「さて、反攻の時間だ」

 数日後 機動六課 食堂

「ママ~」
「…ママ?」
「はい。ママです」

 昼食を摂りに御剣が食堂に向かうと、聞こえて来たのは聞き覚えのある舌っ足らずな声。
そう呼ばれた対象に顔を向けて問えば、返って来たのはにこやかな笑顔。

「…成程。保護責任者か」
「はい。良い引き取り先が見つかるまでですけど」
「…そうか。頑張れよ。親と言うのは色々と大変だぞ?」
「あははは…そう言えばティアは今、本局ですか?」

 ふと思い出したように、なのはが言う。

「あぁ。部隊長とクロノには直接的な面識は無いからな。その折衝も兼ねて行って貰っている。
私が行くよりも良いだろう。クロノと顔を合わせると、ついからかってしまうからな」
「…あはははは…あれ?ギンガ?」

 先程の笑いとは異なる乾いた笑いを浮かべていたなのはが、食堂の入口の方を向いて言う。
御剣がそちらに目をやれば、そこに立っていたのはギンガだった。

「御剣さん、こちらでしたか。ご依頼の」
「あぁ、執務室で話すとしよう。ではな、なのは、ヴィヴィオ」
「あ、はい」
「バイバイ」
 

「…割れたか」
「はい。オークションに例の品を出品した人物。手古摺りましたが、なんとか。こちらがそのデータです」

 そう言ってギンガが差し出したUSBメモリを受け取る御剣。

「ありがとう」
「…ですが…これは」
「何。気にするな。と言うか忘れろ」
「誰だか気付いていたんですね」
「…確証は無かったがな。だからこそ調査を頼んだ訳だが」
「…分かりました。この事は黙っておきます」
「助かる。あぁ、明日からは訓練に合流すると良い」
「はい。では、失礼します」

 ギンガが退室してから、御剣はデスクに備え付けのパソコンを起動してUSBメモリ内のファイルを開いた。
そこに納められていたのは、幾つかの書類の写しと映像データ。
それ単体では何の意味も無いであろうその情報は、集まる事である人物の名を浮かび上がらせる。
その名は――

「レジアス・ゲイズ…か」

 
 あとがき(と言う名の良い訳):9章5話です。…どんどん更新速度が遅くなる…あぁ、初期は文字数が少なかったとはいえ、毎日更新だったのに…

 今回出て来た御剣のデバイス、その名も無銘(ナナシ)です。
…銘が無いのにその名も…と言うのも変ですが。世間一般では最強系主人公にデバイスを持たせる場合、持ち主に負けず劣らずのチートスペックを持っている物ですが、こいつは何の特殊能力も持っていません。
登録されている魔法も、魔力砲と魔力刃の2つだけです。簡易的なAIすら積んでません。
唯一の取り柄はその頑強なフレーム。御剣が全力で魔力を注ぎ込もうと耐え切る事が出来ます。
そしてこれを使う何よりの利点。それは、御剣が全力を出しても相手が死なない事
。まぁ、これを使う事自体が手加減している様な物ですが。
…因みに、AIこそ入っていませんが、C.V:植田佳奈です。殆ど喋りませんが。

 日々は過ぎて行く。穏やかに。
次回『Fathers&Daughters』お楽しみに。

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