番外話・短編集
番外・400万アクセス記念 膝枕で耳掃除は男の夢だと思う。マジで。
海鳴市 八神家 リビング
事の始まりは単純な事だった。
いつもの様に食事に呼ばれ、いつもの様に皆でリビングで寛いでいた時の事。
「ん~~~…」
先程までテレビを見ていたヴィータが、何やら唸っている。
頭を振ってみたり、指を耳に突っ込んでは悶えていた。
「…耳の中に何か入ったか?」
「御剣か。ん~…耳の中でゴソゴソ言っててさ。変な感じでイライラする」
恐らくは耳垢が剥がれ落ちたのだろう。
私は耳掻きを取り出すと、自らの膝を叩いた。
「取ってやるからこっちに来い」
「ん~…うん。頼む」
ヴィータは少し考え込んだが、大人しく頭を乗せて来た。
頭の向きを調節し、光が耳の中に当たる様にする。
少しでも中が見える様にして、耳掻きをヴィータの耳の中に入れる。
「おうわっ!?」
「おっと」
と同時にヴィータが叫び声をあげる。
驚いたが手元は何とか固定した。
「いきなりどうした。危ないだろう」
「ご、ごめん。ゴソって音がしたからビックリしてさ」
「それは仕様が無い事だからな。我慢しろ」
そう言って私は手を進める。
小さな細穴に耳掻きを押し入れ、奥を探って行く。
中をさらう様に動かすと、僅かな手ごたえと共に、小さなポテトチップスの欠片の様な物が取れた。
「…これだな」
手元に用意したティッシュの上にそれを置く。
「ん? 済んだのか?」
「音の元はな。だがヴィータ、暫く耳掃除をしていなかっただろう。事のついでだ。そのままでいろ」
そう言って私は再度ヴィータの耳に耳掻きを入れる。
今度はある程度まで入れた後、内壁を擦り上げる様に、だが優しく少し物足りないくらいに柔らかく。
耳の中を傷つけない様に細心の注意を払いつつ、耳の中を掃除する。
「ヴィータ、反対の方を向け」
「ん…うん」
緩慢な動作で逆向きになるヴィータ。反対側も同様に掃除していく。
「…よし。済んだぞ、ヴィータ…ヴィータ?」
「…すぅ~~…すぅ~」
どうやら寝てしまった様だ。
規則的な寝息をたてて熟睡している。
「あら? ヴィータちゃん、寝ちゃったんですか?」
「あぁ。このままでは風邪を引くな。寝室まで連れていくか」
膝の上のヴィータをそのまま抱き上げ、寝室に連れていく。
ベッドにヴィータを寝かせ、リビングに戻ると、私が座っていた場所の横にはやてが座っていた。
特に場所を移す理由も無いので、その横に腰かける。
「…ヴィータ、気持ち良さそうでしたね」
「そうか?」
「えぇ。すっかり寝てまうくらいには気持ちよかったと思いますよ?」
そう言いつつはやては耳に手を当てたり、その場に置いておいた耳掻きをチラチラ見ている。
「…はやてもしてやろうか?」
「お願いします」
…即答だった。腿の所にはやてが頭を乗せて来る。
そっと耳に掛かった髪を避け、耳の穴を覗き込む。
「な、なんや恥ずかしいですね」
「そう言われてもな。見なければ危険だろう」
「な、なんでこんなに恥ずかしいんでしょうか…」
「普段他人に見られる場所では無いからだろう。自分でも見えない場所でもあるからな」
「成程」
ヴィータの時と同じように頭の位置を調節し、耳の中に耳掻きを入れていく。
今度は最初から、内壁を擦る様にしていく。
ゆっくりと、優しく。
時折ある抵抗感には最小限の力で。
入口付近を終え、今度は奥へ。見えない部分はより丁寧に。
「…うん。はやて、次は反対側だ」
「…はい」
はやてもまた、緩慢な動作で反対側を向く。
逆の耳も同様に。少しだけしつこく剥がれないものが有ったので、ほんの少しだけ力を込めて数回掻く。
「…よし、と。済んだぞ、はやて」
「ん~…あ、ありがとうございました」
「お粗末さまでした」
「それにしても…耳掃除上手いですね、御剣さん。ヴィータが寝てまうのも分かります」
「そうか? まぁ自分では分からんがな」
「そりゃそうですよね…そうだ。お返しに私が御剣さんの耳掃除、してあげます」
「ふむ…では頼む」
「はい! 任せて下さい!」
はやての腿に頭を乗せると、柔らかい感触が頬に当たる。
ふと、視界の端で何かが動いた。はやてがこちらを覗き込んでいる。
「おぉ…ヴィータの耳掃除を何回かした事ありますけど、やっぱり男の人の耳の穴って大きいんですね…」
耳元で話されている所為か、どこかくすぐったい。
そして…成程。これは気恥ずかしい。
先程はやてが言った様に、思ったよりも恥ずかしいものだ。
「じゃ、行きますよ」
「あぁ」
はやての声と共に、耳の中に異物が入って来る感触。
カサリとゴソリの中間の様な音がした。
耳の中と言う急所にも近い場所を他人に任せている所為か、どうしても少し体が強張る。
「ん~入口あたりはそんなに有りませんね…詰まらないです」
「そこで不満を言われても困るのだが…」
「じゃあ、奥行きますね」
ゴソゴソと耳の中で音がする。
耳の内壁を擦られる感触。先程自分がした事を、そのまま返されている様だ。
成程。確かにこれは…気持ち良い。そうしてやや忘我の境地にいると、突然の感触が耳の中を襲った。
「ふぅ」
「ぬぉっ!?」
思わず声が出た。
見上げれば驚いた顔のはやて。私も似たような顔だろう。
「ど、どうしたんですか?」
「どうしたと言われてもな。いきなり耳に息を吹きかけられたら、誰だって驚くと思うが…」
「え? 耳掃除の後ってこれやるのがお約束じゃないんですか?」
この娘は何を言っているんだろう。
「どこ情報だそれは。第一、私はやってないだろう」
「あ、そう言えばそうでした」
気を取り直して逆を向く。
「かゆいとことか有りませんか~」
「床屋か」
そんな事を言い合いながら、穏やかに過ぎる時間。
心地い空気が私とはやてを包んでいるのを知覚する。
それ故か、背後から感じる異様な雰囲気も目立っていたが。
「…あそこだけ別空間だね。さしずめ、A.B.フィールド(Absolute Bacouple FIELD)?」
「おのれ御剣。いちゃラブしやがって」
「いいんじゃない?別に」
あとがき(と言う名の言い訳):400万アクセス御礼!と言う事で番外…別名最近出番の無いはやて救済回です。
膝枕って…いいよね。
次は本編です。では!
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。