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幕間
7章-2 異分子


  2013年 海鳴市 10月 御剣古美術店


「こんにちわ~ってあれ?珍しいですね。黒峰さん」
「この場合珍しいのはお前だろ。仕事は良いのか?なのは」

 黒峰が店番をしていると、ドアベルの音と共に扉が開く。
現れたのは、なのは。普段はミッドチルダに住んでいるが、極偶に顔を見せに来ていた。

「はい。ちょっと有給が溜まり過ぎちゃって。
 ついでに里帰りです。御剣さんいます?」
「タイミングが悪かったな。
 ちょっと前に出ていった。町内会の会合だとよ」

 なのはの目が大きく見開かれる。
相当驚いている様だ。

「…御剣さん、そんなのにも出てるんですか!?」
「何をそこまで驚いてんだ?」
「いえ、なんかイメージが合わないなぁ~と」
「ご近所付き合いこそが、社会性の生き物たる人間の務め何だとさ。
 御剣に用なら、また後の方がいいぞ」
「いえ、特に用ってわけでも無いですし。
 ご挨拶に伺っただけですから」
「そうか。何か言伝があれば伝えるぞ?」
「是非模擬戦を!」

 黒峰は呆れた様になのはを見る。

「…懲りないな。もうずっと負け続きだろうが。
 前1回引き分けたっきりだろう。それもその時は、フェイトが居たから拾えたようなもんだ。
 で、その次は大人げなく本気出した御剣に惨敗。
 というか、前から聞きたかったんだが、何でそんなに御剣に勝ちたいんだ?
 お前、管理局の中じゃかなり強い方だろう?」
「確かに、私は局の中じゃ『エース・オブ・エース』とか言われてます。
 でも、局の中で幾ら強くても、私の中で私はちっとも強くない。
 現に御剣さんに1対1じゃ、手も足も出ない」
「あいつと1対1で戦えるだけで十分だと思うが…」
「黒峰さんは、御剣さんと引き分けられるくらい強いから、分からないんですよ」
「いや、あの時の事(※外伝・御剣VS黒峰 参照)を言っているんだろうが、あれはお互い相手を殺さない様にしてたし、御剣がその気になったら俺の攻撃なんて当たらんぞ?」
「え?」
「あいつの取って置きには、自身を別世界に置いて、一切の干渉を拒絶するってのもある。
 それを使われたら俺にはお手上げ。それこそ手も足もでない」

 それを聞いて、なのはは黙りこんでしまう。

「ま、あいつに勝とうと思えば最低限、あいつの能力を無効化出来て、元の身体能力を上回ってる奴じゃないと無理だな」
「そんな人いる訳ないじゃないですか」
「そうでもないぞ?」

 ドアベルが鳴ると同時に、不意に後ろから声がする。
そこには、紙袋を抱えた御剣が立っていた。

「この広い次元世界、いつかは居たかも知れない。
 これから現れるかもしれない。今もうどこかに居るかもしれない。
 私達の様な異分子(イレギュラー)がいるんだ。どこかにそんな奴が居ても、私は驚かないね」
「立ち聞きか?趣味が悪いな。まぁ御帰り。早かったな」
「聞こえて来た物はしょうが無いだろう。
 今回は確認事項程度だったからな。店を理由に抜けて来た。
 他の人は酒盛り中だ。
 これ、冷蔵庫に入れて来てくれ。町内会の方から頂いた柿だ」
「自分で行けばいいだろう。
 あぁ、そうだ。原口が出かけてるぜ。何か用事だとさ」
「原口が?あぁ、私が頼んだ事があってな。それだろう」
「そうかい。てか、キッチン行くなら序でに茶を煎れて来てくれ」
「お前な、客が来ているのに茶も出さんとは…と言うか何故私が…」
「どうせなら旨い茶が飲みたい。頼む」
「…少し待て」

 そう言って奥へ入って行く御剣。
それを傍目で見送って、再度なのはの方へ向く。

「ま、無駄とは言わないけど、御剣に勝つのはかなりきついぜ?
 言ってみれば、今は遊んでるみたいなもんだし。
 その気になれば~何て言ったけど、あいつが殺しにかかれば大抵の奴はそこで御終い。
 身内には甘い奴だから、その辺の隙でもつけば勝てるかもしれないな」
「…ティアは勝ったんですよね?」
「あぁ、ただし、制限付きでな。
 ま、お前等とやるときにも、ある意味御剣は制限付けてるけどな。
 即死系や必中系、お前等のスキルでどうしようもない物は使ってないし」
「…それでも…」
「ん?」
「それでも、私は御剣さんに勝たないと、前に進めない気がするんです。
 私は8年前の、御剣さんに負けた時から動けない」

 そこまで言って俯くなのは。
そんななのはを見て、躊躇いがちに黒峰は、なのはの頭に手を置く。
一瞬ビクリとしたなのはだったが、その後はされるがままにして居た。
暫くして手を離す黒峰。頭を上げるなのは。
一瞬目を合わせた後、恥ずかしそうにお互い目を逸らす。

「…御剣(あいつ)の真似で悪いな」
「い、いえ。ありがとうございました。
 話聞いて頂いて嬉しかったです。改めて、今日はありがとうございました」

 そう言って店を出るなのは。
それを見送った後、黒峰はじっと自分の手を見る。

「…馴れ馴れし過ぎたか?」
「いや?そんな事は無いと思うぞ」
「おうはぁ!?」
「何だ?素っ頓狂な声を上げて?」
「い、いきなり声を掛けんな!ビックリしただろうが!」
「問われたから答えただけだが?茶を頼んだのはお前だろう。
 ほれ。なのはは帰ったのか」
「あ、あぁ。ありがと」
「しかし、お前となのはか…意外だな…」
「ゴッゴフゥゥゥ!ゲフッ!ゲヘゴフッ!」

 黒峰が啜っていた茶を噴き出す。
気管に入ったらしくだいぶ噎せている。

「汚いな。ほれ、雑巾」
「あ、ありがと…じゃなくて!
 どっからそんなセリフが出るんだよ!」
「先程まで良い感じの雰囲気を出していたくせに、白々しい事だ」
「うっせぇよ!自分でも似合わない事して恥ずいんだよ!放っとけよ!
 大体、あれくらいの雰囲気だったらお前、はやてとしょっちゅう出してるじゃねぇか!
 それはどうなんだよ!」
「ん?あれはあれだ。兄貴分と妹分の他愛無いスキンシップだ」
「じゃぁ俺のもそう解釈しろよ!」
「それは無理だな。お前となのはの間には、それほどの物は無いだろう」
「いや、そりゃそうだが…もう良い。
 ったく…ん?御剣、聞きたい事があるが、いいか?」
「構わんが…何だ?改まって」
「お前、はやての事どう思ってる?」
「先程も言ったろう。妹分だ」
「…嫁に来いだのの、はやてからの求婚については?」
「私をからかおうと言う、はやての冗談だろう?」
「…」

 今の黒峰の心境を表すならばこうだった。
『駄目だこいつ!早く何とかしないと!』

「…どうした?」
「…本来ならこう言う事は、はやて本人が言うべきなんだろうが…」
「何だ?」
「お前、はやてに好かれてるぞ?」
「知っている」
「…は?」
「でなければ食事に招かれないだろうし、家を訪ねてきたりもすまい」
「いや、LikeじゃなくてLoveの意味で好かれている、って言ったんだが?」
「だから知っているさ。理由までは知らんが」
「…待て、じゃぁ何か?お前はそれを知ってて、はやての行動を冗談だと思ってるのか?」

 黒峰が御剣に食って掛かる。

「冗談だ、と本当に思っている訳じゃない。
 私だって木石じゃないんだ。はやてからの好意なんてとっくの昔に気付いてるよ。
 光栄だとも思っている。
 だがな、黒峰。私達は異分子だ。本来ここにいない、居てはいけない筈のモノだ。
 それがこの世界と交わった所為で、世界は大きく撓んでいる。
 後数年もしないうちに、撓んだ世界は元に戻ろうとするだろう。
 その際にどんな事が起こるかは、私にも分からない。
 私達がこの世界からはじき出されるか、消滅するならまだ良い方だろう。
 この世界にも抑止力が有るのなら、私達を排除しに来るかもしれない。
 その時に、はやてを巻き込む様な事にはしたくない。なぁ黒峰、私達のした事は本当に良かったのかな」
「俺が知るかよ。お前が決めて、お前がした事だろ? そりゃそれに乗っかった俺等も俺等だがよ。
 今更そんな事言ってんじゃねえよ。だったら何ではやてに関わった?
 図書館の件はともかくとしても、その後の闇の書事件への介入は?
 あのまま放っておいた所で、はやては助かっていただろうさ。
 そしてそのまま原作通りに事は進んだだろう。
 ティアの事にしてもそうだ。 いきなり連れて来て、娘にするだのぬかしやがって。
 結局、原作以上の力を付けて管理局に入っちまった。
 ざっと原作関係挙げてもこんなもんだ。細かいとこまで言ってたら切りがねぇ。
 もう俺達はこの世界に生きてるんだよ。それは事実だ。変えられない。
 だからだ、自分の行動には責任取れ。いっつもお前が偉そうに言ってる事だろう」
「…ふん。黒峰の癖に生意気な。
 良いだろう。だが、私からは、はやてには何も言わんぞ?
 私は今のままでいいのだから。」
「今流行りの草食系男子気取りか。この草食系肉食男子が」
「…どっちだ」


あとがき(と言う名の言い訳):7章2話です。

この後半が故に遅くなりました。
自分でもまだ推敲の余地が有りそうな気がするのですが…
その内書き直すかもしれません。

ではまた次話で。
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