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時系列的には六課開始前、3月頃のお話です。
番外話・短編集
番外・300万アクセス記念・その2 原口、模擬戦をするの巻


 吾輩は猫である。名前はまだ無い。
嘘だ。僕は猫でも無ければ名前も有る。
僕の名前は原口 宗一。
最近の影の薄さから言えば、名前なんて無いのも同然だけれど。
能力も地味だから印象に残り辛いのも分かる。
他の2人は星ぶっ壊すんじゃないの?みたいな破壊力を持ってるけれど、僕にはそんなものは無い。
そして何よりも。戦うのは、好きじゃない。
だと言うのに…

「なんで僕を模擬戦に引っ張り出すのさ、御剣?」
「向こうの要望だからな。部隊への派遣に伴った、能力の詳細情報が欲しいんだそうだ。
 お前は闇の書事件の時もその後も、それほど戦闘に参加していなかったからな。
 データが少ないから提出しろ、だとさ。ついでに模擬戦で戦闘技能も測る気だろう」

 ここは時空管理局本局内の訓練用シュミレータールーム。
用があるから付いて来い、と御剣に言われて付いて来れば、行き成り模擬戦をしろ、と来た。
僕は戦闘向きじゃないってのに。昔っから強引なんだよな…御剣は。まぁいいけど。

「で? 相手は?」
「本局航空武装隊きってのエースチームだそうだ。隊長の魔導師ランクは空戦S-。他はAAAが5人だ」
「うぇぇぇぇぇ…お腹痛くなったから帰って良い?」
「駄目だ。そら、相手のお出ましだ」

 御剣の台詞に釣られて、入口へ視線を向ければ、そこに居たのは筋肉ゴリラが5人。…5人?

「御剣、1人足りなくない?」
「良く見ろ。先頭の奴の肩の上に一人居るだろう」

 本当だ。女の子が1人居た。
他のインパクトが大きすぎて分からなかったけれど、あの子も隊員なのだろうか?
そう思っていると、女の子が肩から飛び降り、僕等の前へ立つ。

「初めまして。本局航空武装隊1245部隊所属、第1分隊隊長チルル・パッソ一等空尉であります」
「こちらこそ初めまして。時空管理局本局次元航行部隊所属、御剣 仁提督補佐だ。
 こっちが今日君達に相手をして貰う「御剣!」何だ原口。すまない。少し待っていてくれ」

 さっさと自己紹介してしまう御剣を引っ張り、声の届かない所まで連れていく。

「どう言う事!? 相手の隊長があんな女の子なんて聞いて無いよ!?」
「言って無いからな」
「さも当然の様に言わないでよ…」
「しかし女の子と言うがな…ハッキリ言って、彼女はその辺の男より強いぞ?
 ああ見えてベルカ式の達人だ。周りのゴリラ共は言わば彼女のシンパ。その強さに心酔して、だそうだ」
「だからって…まぁいいや。僕が何言っても、今更変更は無いんでしょ?」
「理解が早くて助かる。では行こうか」

 諦めたとは言え、自然と肩も落ちれば足取りも重くなる。
とりあえず気を取り直して挨拶としよう。

「初めまして。僕は時空管理局本局次元航行部隊所属、原口 宗一提督補佐。
 今日はよろしくお願いするよ」
「宜しくお願いします。それでは、私はあちらで準備をしますので」

 …なんか僕、邪見にされてない?


「では、これより模擬戦形式の技能測定を開始する。
 本局航空武装隊1245部隊第1分隊、または原口提督補佐の戦闘不能を以て終了とする。何か質問は?」
「はい!」
「ではパッソ一尉、どうぞ」
「御剣提督補佐は参加されないのですか?」
「あぁ。私は今日は審判役だよ。それに」
「それに?」
「君達の相手は、原口1人で十二分に過ぎる。
 私まで入っては、ただの苛めにしかならないだろう?」

 …またはっきりと言ったなぁ…ほら、後ろの筋肉ゴリラ達が青筋立ててる。
空気読める癖に、どうでもいい相手には辛辣なんだから…相変わらず。

「ん? もう質問は無しかな? では、始め!」

 御剣の開始の合図と同時に、筋肉ゴリラ共が手に武器(デバイス)を持って飛びかかって来る。
…こっちに八つ当たりは止めて欲しいんだけど。
そんな事をぼやいている内に、最初の一人が剣型のデバイスで切りつけて来た。
速い。でも、甘い。
振り下ろされた剣が僕の目の前ではじき返される。一瞬動きが止まった隙を突き、相手の首を掴む。

「飛んでけ」

 相手の首と体に結界を作る。
その首を思いっきり蹴り飛ばすと、思ったよりもよく飛んだ。
目の前にあるのは首なしの体。
一応結界でつなげてあるので、意識は有るだろうし、死ぬ事も無い筈だ。
本人は何が起こったのか、と慌てている。
もう放っておいても何も出来ないだろう。
戦うのは苦手だ。さっさと終わらせるとしよう。

「『箱庭(はこにわ)八獄(はちごく)其の参、衆合(しゅごう)地獄』」

 たった一言。それで十分。
それだけで世界は変わる。いや、僕が変える。
シュミレータールームは一気に塗り替わり、一面の闇が広がる。
それはすぐ晴れた。晴れたと言っても明るくなった訳ではない。
暗闇が薄闇になっただけだ。と同時に

『ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!』

 あちこちから聞こえてくる絶叫。
八熱地獄の第参階層、衆合地獄。別名堆圧地獄。
大仰な名前を付けているけれど、別に大した技じゃない。
純粋に、結界に取り込んだ相手へ重圧を掛けているだけだ。
今までに行った後ろめたい事、罪の意識がそのまま重さとなってその身に圧し掛かる。
欠点は罪の意識なんて無い聖人や、生粋の極悪人には効かない事。
後は人間以外には効かない事ともう1つ位かな。
でも、人間である以上、この地獄からは逃れられない。
罪の意識で重みが増し、それによって罪を自覚する事で更に罪の意識は重くなる、その堂々巡りからはね。
僕?僕は展開と同時にこの世界から逃げているからね。
今は中に居るけれど、その世界の裏側に居る様な物。
世界を作ってから設定するのではなく、あらかじめ設定した世界を作る。
これが僕の結界の欠点だった、内部に居ると僕も影響を受ける、と言うデメリットを克服する方法。

「…もう良いかな」

 辺りに響いていた絶叫が止んだ頃を見計らって、結界を解除する。
この衆合地獄の欠点のもう1つ。気絶して意識が無くなればそれまで、と言う事。
弱点と言う程の事は無いけど、止めはさせない。
その御蔭でこういう模擬戦には向いてるんだけど。

「ぐ…あ…」
「ん?」

 驚いた。まだ動けるんだ。
解除が早すぎたかな? そう思っていると

「はぁああああああああああああ!!!!!!」

 隊長の女の子が籠手型のデバイスで殴りかかって来る。
完全に油断した。効きが甘かったらしい。やっぱり個人差があるのも欠点の1つかな?
そんな事を考えている内に、魔力で強化された拳は僕に一直線に向かい…
甲高い音を立てて寸前で止まった。
そこに見えない壁でも有る様に、隊長さんの拳は止まっている。
まぁ、そこには本当に壁があるんだけれど。『世界』と言う名のね。
僕の周囲にはオートで発動する防壁がある。
箱庭(はこにわ)八獄(はちごく)其の壱、等活(とうかつ)地獄』。
傷の自動修復機能も持つ、完全防御結界。
これを破ろうと思えば、世界に干渉する能力か、世界丸ごと破壊する程のエネルギーが必要になる。
間違っても今の攻撃程度じゃ破れない。

「…」

 隊長さんは立ったままピクリとも動かない。
目の前で手を振っても反応は無い。どうやら気絶した様だ。

「それまで。原口の勝ち。まぁ、分かりきってた事だがね。しかし、相変わらず地味にえげつないな」
「御剣や黒峰に比べれば優しい方だよ。それと、別に地味でいいよ。目立つのは好きじゃないし。
 で? もう帰って良いの?」
「良いのではないか? 救護班は先程呼んだ。もう私達にする事は無いだろう」
「じゃ、帰ろうか。今日の夕飯、何?」
「舌平目の煮付けだ」

 後日、あの隊長さんから謝罪文と再戦の申し込みが来た。
全く相手が出来なかった事への謝罪と、模擬戦開始まで侮っていた事、もう一度戦って欲しいとの事だったけど…
再戦は丁重に断った。僕は戦闘向きじゃないし。戦うのは、好きじゃない。


あとがき(と言う名の言い訳):はい、番外その2、原口メイン話です。

原口「っていうかいいの?僕が主役で」

Hagalaz「うん、まぁ。こっちとしても君を全然出してやれない負い目ってのがね」

原口「番外で主役張るよりも、本編で出番が欲しいんだけど」

Hagalaz「大丈夫。一応君キーパーソンだから。最終局面では大活躍(予定)だから」

原口「予定って…まぁいいや。僕の話が読みたい、と言って下さった方々、有難うございました!」

Hagalaz「出番が無い事からの同情票じゃない?」

原口「誰のせいだよ!『箱庭(はこにわ)八獄(はちごく)其の捌、無限(むげん)地獄』!」

Hagalaz「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!(落下)」



 と言う訳で(落下中)次回は番外その3、主人公`s VS 管理局です。
アンチ管理局を含むと思われますので、ご注意ください。では!































…いつまで落ちるんだこれ…

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