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幕間
4章-1 仮面の男


   第36管理世界

 無数に聳える無数のビル群、その中でもひと際大きいビルの屋上に彼らは居た。
彼らはこの世界の最高権力者。人生の栄華を極めた老人たちである。

「管理局への通告は?」
「5時間前に完了しました」
「よろしい。これで我々は独立戦争に突入する事になる」
「だいたい、何故我々が兵器を廃棄せねばならないのだ」

 彼らは数年前、時空管理局と名乗る組織から接触を受けた。
時空管理局の要求は2つ、管理世界となる事、質量兵器、魔力に頼らない兵器の廃絶。

「先に次元世界へ至ったからと言って、大きな顔をされてはたまらん」
「それは私も同感だね」

 突如として聞き覚えの無い声がする。
ここは関係者しか立ち入れぬ会議室。数名の護衛を除けば彼らしかいない筈だ。

「だ、誰だ!?」

 開け放たれた窓縁に男が立っている。
身の丈は2mに満たぬ程。しかし、その手足は異様に細長く、針金でできた人形を思わせる。
何より異質なのはその白い仮面。
十字の目に耳まで裂けた口。右目の下には涙を思わせる石が嵌っている。

「こんにちは。はじめまして。さようなら。貴方達の死神です」
「ふざけた事を!誰か!こいつをひっ捕らえろ!」
「無駄無駄」

 男はそう言うと空中に身を投げ出す。

「ば、馬鹿め。ここが地上何階だと思っている」
「だが待て、今の男、どうやってここまで来たのだ?」
「奴は管理局の尖兵では?空戦魔導師であればこの程度の高さ…」

『残念。管理局なんて関係無いよ』

 外から大音声が響く。

「ど、どこから!?」
「あそこだ!上!」

 先程の男は船の様なものに乗っている。その船の外装は不気味な事に骨で出来ているようだった。
しかし、場違いにも程がある。その船は空を飛んでいるのだから。

『君達に言う事はたった一つ。死んでくれ。自分で。面倒くさいし』

「ふざけた事を!」
「何様のつもりだ!」

『神様さ。で?さっさと死んだ方が身の為だと思うよ?まぁ結果的には変わらないけど』

「断じて否!」
「そうだ!我々は管理局などに屈さぬ!これはこの世界の総意である!」

 しかし男はおどけるようにこう言い放った。

『あぁ、わかってはいたが、悲しいな。悲しい。悲しい。悲しすぎる。
 こんな悲劇は他に無い』

 ご丁寧に泣き真似までして見せる。

「何を言っている!?」

『あぁ、折角だから教えておこう。
私は管理局の尖兵などではない。言ったろう?君達この世界の住人の死神さ』

 そう言うと男は両手を高く掲げて詠唱する。

『其は混沌より出でし 闇と夜の落とし子 (タナトス) その名を持って 汝らに終末を。』

終焉の時(ジ・エンド・オブ・デス)

「ぐっ!?」
「がっ!?」
「これは!?」

 それは純粋な死と言う概念。生きとし生けるもの全てに約束された終末。
そんな物を受けて生きて居られる生物などいない。仮面の男が乗る船を中心に広がる死の波動。
それが星の裏にまで達した時、この世界に生きる物はいなくなった。
人間はもちろんの事、微生物の一匹に至るまで。
たった一人の例外を除いて。

「さてと、ここも終わり。まったく。なんて時代だよ。あの馬鹿共の子孫がこんなに広がるなんて」


  2009年4月11日 海鳴市 聖祥付属中学校 入学式会場

「進学おめでとう、はやて。ついでに、なのはとフェイトも」
「ありがとうな、御剣さん。と言ってもエスカレーター式やからそんなに感慨無いんやけどな」
「相変わらずな扱いだね。もう慣れたけど」
「うん。そうだね」

 なのはとフェイトは若干げんなりした様に呟く。
闇の書事件から3年。はやては完全に回復した。車椅子も不要になり、元気に駆け回っている。
一方、なのはは去年、空から落ちかけた。
依然正体不明の未確認(アンノウン)に襲撃を受け、入院を余儀なくされた。
まぁ、入院を強要したのは私とフェイトの約束だが。
その約束を忠実にこなしすぎたせいでフェイトは執務官試験に落ちた。
訓練に行こうとするなのはを引きとめる為に頑張りすぎたらしい。
まぁ、私が出て行って拘束したが。
2回目で受かりはしたものの、1回目で落ちたのは、なのはのせいでは無いとは言い切れない。
まぁ、愛ゆえにフェイトはなのはにどうこう言ってはいない。
しかし、入院期間を終えてからの訓練で魔導師ランクがSに上がるとは。やはり高町家は戦闘民族なのだろう。
なのはの怪我()の事で、はやては管理局に入る気が完全に失せたようだ。
まぁ、年頃の女の子が進んで怪我をしそうな所には行くまい。元々はやては後方支援だから怪我はしにくいが。

  数日後 海鳴市 市内 八神家 リビング

「しかし、もう4年か」
「そうですね。でも御剣さん達に出会ってまだ4年しか経ってないんですね」
「濃い日々だったしな。だがはやても大きくなったものだ」

 座っているイメージが多かったせいか、立てるようになってからは顕著に大きくなっていると感じた。

「御剣さんは見た目変わりませんね」
「20半ばで老け始めたら、それはそれでショックだよ」

 居間を見渡す。子犬フォームのザフィーラがヴィータに遊ばれている。
庭に視線を向ければ、シャマルが洗濯物を干していた。

「そういえばシグナムは?今日は稽古の日だったか?」
「いえ、何でもクロノ君に頼まれて管理局のお手伝いに行くとか」
「は?クロノが?」
「何でもベルカの古い遺跡が見つかって、碑文の解読の手伝いって言ってました。
 戦闘とかもないやろうし、夕方には帰ってくるって」
「…本人が良いなら何も言わんがな」


あとがき(と言う名の言い訳):皆さま明けましておめでとうございます。
新章オリ編です。
A`sで仮面の男が出なかったのは、このオリ編のためだったりします。
道化の仮面の男って一々書くのもなんですし。
なお、なのはとフェイト、はやての出番はこの章では今回で終わりです。
ではまた次話で。
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