第8話 〜貶〜
「と、言うわけで、またこのクラスに転校生が来たわよ! 喜びなさい! 歓喜せよ! 私を崇めなさいっ」
と、言うわけでって、一体どういう訳なんだよ。
説明が大雑把過ぎるのと、何故かナルシストっぽいのがさっちーの難点だな。うん。
あれが無ければ、まぁ、モテないことは無いと思うんだけど。
体型的に言うと、まぁ、前にも言ったけど補導されそうな感じがするんだけどね。
モテるとしてもその筋の方々だけにしかモテないかな・・・
いや、あれも一種のステータスなのか? と、そんな事を考えていたら、前の席に座るユウが話しかけてきた。
「おいっ! 聞いたか!? また転校生が来たんだってよ!」
あ、うん。今しがたさっちーから聞いたところだよ。むしろ今の説明を聞いてない方がどうかと思うんだけど?
さっちーの声は大きいからね。
「でさ、俺の情報だと、その娘は結構可愛いらしいぞ! 髪型はセミロングの茶髪らしい! 自毛のな! しかも目の色はシフォンちゃんと同じ紅い色だってよ!」
・・・馬鹿なのか。
いや、馬鹿なんだろうな。って言うか、馬鹿以外有り得ないような気さえしてきた。
んな事知ってどうする気なんだ?
だいたいどうして情報が素早くこいつに集まってくるのかさっぱりわからない。
教師から情報を仕入れてるって言われても、その情報伝達の速度は一体・・・?
うぅむ。教師は一体どんな弱味を握られてるのだろう。
「へへへ・・・楽しみだなぁ・・・」
「いや、お前今、限りなくキモいよ! ちょっと鏡で自分の顔を見てこい。お前の今の見た奴、全員が全員、自殺を推奨するから」
「あー、うん。そうだなー。俺の顔案外酷いからなー・・・って、待て! 言い過ぎだろっ! それは遠回しに死ねって言ってんじゃねぇかよっ」
「うん。だって、そう言ってるんだもん。・・・あ、じゃあ、死ぬまでは行かなくていいから、責めて地球上から消え去ってくれ。その方が僕や地球の皆のためになるからさ」
にっこりと、顔だけで笑う。勿論目は笑わないよ?
「駄目じゃん! それ既に生きてけないじゃん!」
「大丈夫さ。最近は衛星とか、結構住みやすそうじゃないか。思いきって宇宙移民の第一人者になってみたら?」
「出来るかっ! だいたいリョウはーーー」
「・・・ユウさん、うるさいですよ?」
「ひっ! す、すみませんっ」
シフォンがユウを一睨み。
睨んだ時の効果音を出すとしたら、「きろり」って感じ。
軽めの殺意がこもった目だったなー。
・・・うん。実は僕も結構怖かったりして。
だって、シフォンが睨んだ瞬間、僕らの周りの体感温度が数度下がったもん。
初夏だと言うのに背筋に寒気を感じたよ。
・・・とまぁ、僕らがそんな事をしている間にも時間は過ぎていく。
教壇の方を見たら既にリンが入ってきていた。
教室内は例のごとく、ほぼ無音。皆がみんな、リンが声を発するのを待っているのだ。
・・・このクラスの団結力はこんな所にだけ発揮されるんだなぁ・・・。
暫くして、リンが黒板に自分の名前を書いていく。
無音の教室には、チョークを黒板に打ち付ける音でさえ大きく聞こえてくる。
カツッと音がして、名前を書き終わったのが分かった。
そして、リンが自己紹介をしようと口を開く。
「日下部・鈴・暁雨ですっ! よろしくお願いしますねっ」
「こちらこそよろしくぅーーーっ!ようこそっ!我がクラスにっ!仲良くしようっ!」
静寂が教室内を包んでいたのは束の間。
リンが自己紹介をした数瞬後に、この教室内は歓声に包まれた。
・・・よかった。歓迎されてるみたいだな。
・・・まぁ、このクラスのノリから行って、歓迎しない訳がないんだけどね。
「よっしゃ。じゃ、リンちゃんの席は・・・、あ、シフォンちゃんの前でっ」
「はっ、はいっ」
・・・僕の周りに二人とも来たな・・・
まぁ、いきなり知らない人と隣になるより知ってる人がいた方が心強いっていう、さっちーの気遣いだろうけど・・・
「おいっ! リョウ! またしてもどういう事なんだ!?」
「・・・まぁ、だいたい想像はついてると思うけど、僕の、妹だ。・・・昨日から」
「んだとコラァァァァっ! テメェ、ギャルゲーか!? エロゲーか!? なんの主人公気取りだコラァァァァっ!」
「なんの主人公も気取ってないって言ってんだろうがっ! ってか、お前昨日もそれ言ってただろっ!」
「うるせぇっ! 羨ましいんだよコンチクショウがっ! どっちか紹介しやがれっ」
「誰が貴様なんぞに紹介するかっ!」
「俺を信じろっ! ほらっ! 見てくれこの目を! 純粋そのものだろ!?」
「濁ってる。まるで東京のドブ川の様にしか見えないよ」
「・・・濁ってるね」
「うん。濁ってる」
「・・・ぐすっ」
おや。いつの間にやらリンまで参加してるじゃないか。
僕の前で何かがすすり泣いてるけど、それはまぁ、完全スルーの方向でお願いします。
「お兄ちゃんっ! これからよろしくお願いしますねっ」
「あ、うん。こちらこそ。・・・授業終わったら、気を付けてね」
「へ? 何でですか?」
「・・・それは、すぐ分かると思うよ」
シフォンがげんなりした顔で答える。
やっぱりあれの精神ダメージは計り知れないな・・・
「そうですか・・・。がっ、頑張りますっ! シフォンも、よろしくねっ」
「・・・うん。よろしく」
・・・さ、今日も頑張りますかー
○○○
「も・・・もうダメですー・・・」
昼休みになってから、昨日のシフォンの様に質問責めにあっていたリン。
・・・シフォンに対して質問は程々にしろって言ったけど、リンは言う暇が無かったな・・・
「・・・リン、大丈夫? こっちでご飯食べよ?」
「うんっ。すぐ行くよっ」
おぉ・・・。「ご飯」というワードを出しただけで復活した。
さて。僕も食べようか。
ちなみに今日のお弁当の中身は、野菜炒めに玉子焼き、それから肉じゃがとかベーコンなど。後はレタスとかの付け合わせ。
「お兄ちゃんっ、この野菜炒め、美味しいですっ」
「・・・リョウの作る玉子焼きは好きだな」
・・・げふぁっ
二人による誉め言葉に僕の精神は崩壊間近。
あぁ、動悸がっ
なんという事だろう。誉め言葉が僕を殺すっ!
むしろ僕は今死んでもいいっ
「うぉらっ」
「いてっ」
だ、誰だ!? 僕の後頭部を叩いたのは!?
「てめぇかユウ!」
僕の後頭部を叩いたのはユウだった。
予想どうりと言うか、なんと言うか・・・
「リョウ! 貴様一人だけハーレム形成してんじゃねぇよ! モテない男の怒りを知れっ」
「いてっ! 何度も叩くんじゃねえよっ!」
「うっさいわ! 正直に言おう! 可愛い妹と仲良く弁当食ってるお前が羨ましいんだっ!」
「・・・よく正直は美徳だとか言うけどさ、お前の場合、煩悩丸出しで美徳は愚か、呆れてしまうよ・・・」
ちなみにお前がモテないのは性格のせいだから。顔は一応いい線いってるから。
「なっ、なんだよその目は! やっ、やめてくれっ! リストラされて公園のベンチに座っていた所を親子に目撃され、「ママー、あれなにー」「しっ! 見ちゃいけません」って言っている母親の様な目で見るのは止めてくれぇっ」
「長いよ! なんだそのリアルな描写は!? 自意識過剰だろっ! 結局お前は何が言いたいんだよ!?」
「俺も一緒に食べさせてもらってもいいですか?」
なぜに敬語!?
まぁ、別に一緒に食べるくらいならいいかな?
「・・・嫌」
「嫌ですねっ」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
・・・完全否定されたな、ユウ。これも全て貴様の普段の素行が悪いせいなんだ。諦めてくれ。きっと希望はあるはずだから。
・・・もっとも、二人ともお前の素行は知らないが。きっと本能で感じ取ったんだろうね。
ま、まぁそれはそれとして、さすがにユウの心が折れかけてるからね・・・
僕から説得してみようか。不本意だけど。
「あ、あのさ、ご飯を一緒に食べるくらい、いいんじゃないかな・・・?」
「・・・リョウがそう言うなら、私はいいよ?」
「うぅっ、お兄ちゃんのお願いなら、仕方ないですねっ」
「あ、ありがとう。・・・二人とも素直で可愛いね」
よかったなユウ。
二人からお許しがでたぞ。二人からは嫌われてる様だけど。
・・・ん?二人とも、顔が赤いぞ?熱でもあるのかな?
ふと、時計を見たらあと二十分くらいで昼休みが終わってしまうじゃないか。これは急いで食べた方がいいな。
○○○
結局ユウは僕たちと一緒に食べていた。
・・・が、ユウと話していたのは僕だけで、二人はユウが話しかけても棒読みで相槌を打っていただけだった。
・・・哀れユウ。
これを機にその性格を治すといい。
・・・無理か。
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