第23話 〜夢中〜
あのあと部屋に戻ってみると、既に部屋の電気は消えていて、悠にいたってはイビキをかいていた。
小夜と鈴はよくあのイビキの中寝ていられるな……。
まぁ、今日はいろいろあったから疲れたんだろうな。
……いや、いろいろあったのは僕の方じゃないか? ほら、気絶とか、気絶とか、気絶とか……主に気絶しかしてないけど。
かくいう僕も正直まぶたが重い。んでもってフラフラだ。……フラフラの原因は別にあるんだけどさ。
「……シフォン、僕らも寝よう」
出来るだけ声を潜めてシフォンに話しかける。……っていうか、これだけですごい恥ずいっ! なんじゃこりゃーっ!
「…う、うん」
いや、そんな恥じらいの顔をされたら僕はどうしたらいいんですか?
僕の心の中の疑問を無視してシフォンは既に敷いてあった布団の中へ、もそもそと潜り込む。
……僕も寝よう。
だってここに立ってる訳にもいかないしね。
「……よいしょ」
夏用の軽い布団に入り込み、まぶたを閉じる。
次第に意識は溶けるように薄れていって、僕はすぐ眠ってしまった。
○○○
……。
…………。
………………。
……どこだ……?
ここは……どこなんだ?
まだうまく働かない頭の中で考える。
寝惚け眼で辺りを見回してみるが、僕自信が鮮明に確認できるだけで、周りは真っ暗。
僕自信の輪郭は光にさらされたみたいにはっきりしている。
真っ暗というより真っ黒、といったほうがしっくり来る。
「っ! 誰だ!?」
風が低く鳴る音のような、獣が獲物を前にして唸るような、そんな音を周りから感じて、陵は声を張り上げる。
『……出ていけ』
「……何だって?」
低く辺り一帯に響く声はいきなり命令するように喋り出す。
『……出ていかねば、貴様らに必ずや良くなき事が訪れるであろう』
「……あんた、誰だよ……?」
『よいな……必ず出ていけ……貴様の友人を危険にさらしたくないのであれば儂の言うことに従え……』
次第に唸るような声は遠ざかっていく。
「だから誰なんだよ! 説明しろよ! 出ていかないからな! 俺たちは! 出ていかないからな!」
遠ざかっていく大きな何かの気配に向かって叫ぶ。
陵は立ちくらみのような感覚に教われ、意識はそこで途切れた。
○○○
「う……か、金縛り……?」
自然に目を醒ます訳でもなく、日光の眩しさで目を醒ます訳でもなく、体が動かないのと、凄まじい重さがなにか上に乗っている感覚で目を醒ました。
「金縛り……じゃ、ないな……」
……どおりで重たい筈だ。
まぁ、シフォンや鈴ならまだわかるだろう。 いや、そういう意味じゃないぞ!?
……まぁ、それは置いといて、なんで小夜まで僕の上に乗ってるんだ……。
「ん……」
あ、起きた。
「やぁ小夜。おはよう」
「ぅ……おはよう……?」
小夜はこっちに顔を向ける。
その顔はまぶたを半開きにした眠そうな顔から驚愕に目を見開いた顔へと変わってーーー
「へっ!? あ!? ぅえっ!? なっ!? なななななっ」
ずざざざっ! と壁際にに一瞬で移動する小夜。
そ、そこまで嫌がることないじゃないか……。
「えーと……小夜? これには深い事情があって……いや、無いっていうか、僕自信も何がなんだか分からないんだけど……」
「すっ、すまないっ! 私はいつも寝相が悪くてだなっ! あっ、いや、いつもじゃないぞ!? たまたまだ! 偶然今日だけっ!」
「ちょっ、小夜!? 落ち着いて! とりあえず落ち着いて! はい深呼吸ー」
「え……あ、あぁ。……すぅー……はぁー……」
「……落ち着いた?」
「あぁ……取り乱して済まなかったな……」
「いや、気にしないで。それより……これ、どかしてくれない? さすがに僕の内臓とかが耐久力限界突破仕掛けてるんだ……」
「あ、あぁ、任せてくれ」
小夜は僕の上に乗っているシフォンと鈴を横にごろん、ごろんとどかしてくれた。
「ふぅ……よいしょっ」
危ない危ない。僕の内臓が危うく使えなくなるところだった。
まだ軽く痛いし。
「……朝食の時間だが……どうする?」
「んー、特にやることないし……行こうか?」
まださっきのが尾を引いてるのか、小夜の顔が赤い。
ここは触れないでおくべきか。
シフォンと鈴はさっき転がした時に起きたみたいで、一緒についてきた。
朝ごはん、和食だといいなぁ……。
食堂まで行って気付く。
「……悠を忘れてきた……」
…………ま、いっか……。
……それより……何か大切な夢を見たような……?
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