第21話 〜湯煙〜
「おふぅ……」
「お前……またかよ……」
悠は昼と同じように腹を膨れさせ、陵の隣に転がっている。
こいつ、自分で太ってるって言ってたのにな……自覚あるのか? 陵はしばらく考えた後に、……あぁ、馬鹿だから自覚ないんだろうな……と思う。
「さて、夕飯も食べたし、私らは風呂に入ってくるよ。陵たちはどうする?」
「んー……そうだな……僕らも風呂に入るよ。……あ、こいつどうしよ」
陵はすぐ隣に転がっている悠に目を向けて言った。
「うー……俺はここで寝てるから……」
「よし。じゃ行こうか」
「うむ」
「……やっぱり即答なんだ……」
何を言う。少しでも気にしてやったんだ。
そこにまず有り難みを感じろ。
○○○
「あー……気持ちいいけど……日焼けが痛いー」
大きな浴槽に一人ぽつーんとつかる。
声が反響して寂しいことこの上ない。
小夜たちは少し部屋でゆっくりするって言って、結局僕は部屋からずっと一人なのだ。
「……体洗うか」
陵は立ち上がり洗い場に向かおうとする。
それと同時に、カラカラっと音を立てて脱衣所に繋がるドアが開いた。
悠か? 陵は先程腹を不自然なまでに膨れさせていた友人を思い浮かべ、声をかける。
「悠? もういいのか?」
湯気でまだ誰かは判別出来ないが、こちらの声は聞こえてるはずだ。しかも今この旅館に泊まっているのは僕らの五人だけで、他の客はいないからな。
「ふむ。残念ながら悠ではないぞ」
「うわーっ、湯気でなんにも見えませんねっ」
「…むせる」
「えっ……!?」
心臓がひときわ大きく跳ね上がり、周りの音が一瞬聞こえなくなる。
ーーーなんで小夜たちが男湯に!?
風呂でかいた汗ではない汗が陵の体を伝う。
「ほらほら陵。そんな所に棒立ちしていたら見えてしまうぞ」
何をーーーと問わずとも小夜が何を言いたいか理解し、即座に湯船のなかに沈む。
あれ!? おかしいな!? たしか来たときはちゃんとのれんに「男」って書いてあったはずだろ!?
もしかして間違えた!? 僕は気付かない内に女湯に入った!?僕は変態さんか!?
いや、僕の記憶が正しければ僕が入ったのはたしかに男湯だったはずだ。
「さ……小夜、なんでここに……?」
「いや、さっき風呂に入ると言ったろう?」
「ここ……男湯だぞ?」
「ふっ……なにを言っているんだ? ここは混浴だぞ?」
「なっ!? そんな馬鹿な! 僕はたしかに「男湯」って書いてあったのれんをくぐって来たんだぞ!?」
「あ、それはあれだ。脱衣所だけ別ってやつだよ」
「なにぃっ!?」
「ふふ……世の中には危険な罠がいっぱいだからな……気を付けろよ」
「もう遅いだろ……」
「それもそうだな。ま、それはともかく、ここで立っているのも何だから私らも湯船に入らせて頂こう」
小夜はそう言ってこちらに近付いてくる。
小夜たちは一応タオルで体を隠してはいるが、僕にとっては正視するに耐えられるものじゃない。
「あ、じゃあ僕は出るからごゆっくりー」
そそくさと小夜たちの脇を通り抜けて上がろうとする。
「まぁそう言うなよ。まだ入ったばかりだろう? ゆっくりしていくといい」
小夜は僕の肩をがっしりと掴み、引き留める。
この細腕のどこにこんな力が……!?
「ゆ、ゆっくりしてけるほど僕の神経は図太くないんだよ……」
「そう言わずにっ! せっかくですし一緒に入りましょうよっ」
「…家じゃ一緒に入ってくれないから……チャンス」
「ぉわぁっ!? お、おい! 鈴、シフォン! くっつくな!」
おぅ……なんか柔らかいものが両サイドに……。
鈴の胸、やっぱりでかいな……弾力があって柔らかい……。
シフォンも大きさは無いけどそれなりに膨らみがあって……。
いくらタオルの上からだといってもやはり柔らかい。
しかも鈴とシフォンは微妙に汗をかいてるのか、なんかぬるぬるしてる。
……やばいです。二人とも、すっげぇエロい。
なんていうか、妖艶? 体は小さいのに大人っぽい、みたいな。官能的と言い換えてもいいかも知れない。
「ほらほらっ、いい加減諦めたらどうですかっ!?」
「…あがくだけ無駄だよ?」
「くぅ……」
……って、あれ?
なんか目の前が歪んで……なにこの浮遊感。あれ? 今度は景色が真っ白になってーーー。
霞んでいく意識の中で僕が最後に見たのは、かがんだせいでタオルがはだけた鈴とシフォンの胸でした……。
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