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Half-Devil-Sisters〜半魔な妹〜
作:十叶 ひかる



第19話 〜西瓜〜


「げふぅ……」

 「お前……食い過ぎだよ……」

 隣にだらしなく寝っ転がる悠。
 それを見た陵は呆れた視線を投げ掛けた。

 「いや、食える時に食っとかないとさ……げふっ」

 「それにしたって……食い過ぎだよ」

 陵はテーブルの上に視線を向ける。
 そこにはまるで要塞の様に積まれた皿たちが。

 「これ……総重量いくつだよ……」

 「ふむ……悠、あまり食べると胃が広がって明日凄いことになるぞ? ……いや、今更遅かったか?」

 「うっ……小夜か……」

 「おう……これはまた……別人みたいな体格してるな……」

 小夜が感嘆するのも無理はない。
 いまや悠の体は相撲とり並に膨れ上がり、目もあてられない状態になっているのだ。
 そう……一昔前の漫画みたいな腹の膨れ方だ。

 「…そこに転がってるの…何?」

 「ル○ィみたいですねっ」

 「……俺、暫く動けねぇ……ここに寝てるから皆は遊んでこいよ……」

 「あっはい。わかりましたっ」

 「…陵、行こ?」

 「あ、うん」

 「では次は定番のスイカ割りでもしようか? 向こうにセットで売っていたぞ?」

 「……少しくらい考えてくれたっていいんじゃ……げふっ」

 果たしてそれはただのげっぷだったのか、はたまた悠が息絶えた音だったのか……知るものはいない。




○○○




 「なぁ小夜……」

 「ん? どうした陵」

 「悠の奴……あのまま置いてきてよかったのか?」

 「そこはそれ。実は陵だって気分がいいんじゃないか? ……どうだ? ハーレムだぞ? 男の夢だぞ?」

 「それは人によりけりじゃないのかな……? 悠、息絶えた様な気がしたんだけど……」

 「どの道あれじゃあ動けないだろう? だったら時間を有意義に使うべきだよ」

 「ま、それもそうか……それで、なんとかセットは買ったの?」

 「おうさ。いま鈴とシフォンが買いに行ってるよ。そろそろ来るんじゃないか?」

 「そういえば小夜、いつの間にか鈴たちと仲良くなってるけど……」

 「ん? それはまぁ、あの娘たちのおかげでもあるかな。あの娘たちから歩み寄ってきてくれたんだ」

 「ふーん……よかったね? 実を言うと僕たちも心配してたんだよ? 小夜って僕たちの他に友達作ろうとしないからさ」

 「う……それは……仕方なかろう」

 「まぁ、人見知りって言うのはなかなか直せるもんじゃ無いからね。だからこそ小夜に友達が出来たことが嬉しいんだよ」

 「そうだな……財閥の一人娘で、周囲から一線を引かれ、引いていた私にその一線を掻き消して歩み寄ってきたのは陵だった。そこに悠が混じってこうなって……」

 「で、鈴とシフォンがまた歩み寄った訳だ」

 「あぁ……まったく、彼女たちは陵によく似ている。……彼女たちはちょっと元気過ぎるがな」

 「僕の妹だしね。出会って間もないけど……いい娘たちだよ」

 「それは……もう分かったよ……お? 来たようだ」

 小夜が指さした方に目を向けると、確に鈴とシフォンが歩いて来るのが見えた。

 「買ってきましたよっ!」

 「…ついでに飲み物とかも」

 シフォンは抱えた缶をそれぞれに差し出していく。

 「あ、ありがと」

 「すまないね」

 「…ありがとう、の方がいいよ?」

 「む。……そうだな。ありがとうシフォン」

 「…どういたしまして」

 もしかしたら鈴やシフォンには人を惹き付ける力があるのかも知れないな……。
 陵は無意識の内に顔を綻ばせる。

 「お兄ちゃん? どうかしましたか?」

 「あ、え、いや、何でもないよ」

 「ほら陵、スイカ割りしよう」

 「まてまて、スイカ割りするときは下に新聞紙を引け!」

 「まぁまぁ。ほら陵、ここに来て」

 何だろう……と思いつつ小夜が手招きする方へ向かう。

 「なん……どぅえっ!?」

 いきなり浮遊感に教われ気付いたときには時遅し。

 「よしかかった! 鈴、シフォン! 埋めろ埋めろ!」

 「アイ・サー!」

 「…ほいほい」

 「おぅっ! ちょっ、砂がっ! あぁ口の中がじゃりじゃりする! うっ、目にも入ってきた!?」

 小夜、鈴、シフォンが陵が落ちた穴目がけて砂を落とす。

 「おぉ……う、動けねぇ……」

 「ふふふ……そうだろう。砂というのは案外重いからな。隙間なく埋めてやれば身動き出来まい」

 「…と、いうことでー」

 「ただのスイカ割りじゃおもしろくないですよね?」

 「だから私らが面白くする! dead・or・スイカ割り! 鮮血が飛び散るのはドッチのスイカだ!?」

 「なんじゃそら!? いったい何がしたい! こんな馬鹿なことは止めるんだ!」

 「ふん……君が何を言いたいのかさっぱらパーだよ?」

 「なんださっぱらパーて! どんな造語だよ!」

 「流行るぞ?」

 「流行るか!」

 「ま、それはいいとして、ほら鈴、シフォン、これ持ってホラ」

 「…よしきた」

 「おう!」

 「……なんで木刀だよ……」

 「セオリーじゃないか」

 「普通の角材とか木の棒じゃないのかよ……?」

 「こっちのほうが割りやすいですからねっ」

 「……頭をか?」

 「いいえ?」

 「あ、スイカなの?」

 よかった、鈴は僕の見方だーーーと陵はほっとし、胸を撫で下ろす。
 ……体、動かないんだけど。

 「えぇ。ボクは頭のカタチをしたスイカを叩き斬るだけですよ」

 「……割るんじゃないんだ。斬るんだ」

 「はいはい、雑談はそこまで! 鈴、シフォン、始めようぞ!」

 「イエスマスター!」

 「イエス・マム」

 鈴とシフォンはそれぞれ木刀を持ち目隠しをする。
 そして小夜は陵の隣にスイカを置き、不適に笑って去って行く。

 「お、おい! 待てよ! 出してくれよ!」

 「ふふふ……陵、声を出していると場所がバレるぞ?」

 「うっ……」

 あぁ、短い人生だったな……と陵は自分の過去を思い返す。
 だが思い返してすぐに、特に思い返すことがない事に気付いた。

 「んんっ!?」

 ぼぐ、とすぐ横で木刀が音を立て、砂が飛び散る。
 ーーーまずい、非常にまずいぞ。
 陵は砂にまみれた顔で考える。
 あれに当たったら本当にただじゃ済まないだろう。
 現に今当たった砂浜は、通常じゃ有り得ないほどのクレーターが出来ているのだ。

 「あれ? 外しちゃいました?」

 外せ! そのまま外し続けてくれ!
 陵、必死の懇願。
 だが場所がバレると確実に殺られるので声は出せず。

 「…ほいっ」

 今度は目の前三センチに木刀が、ずしゃあっとめり込んできて、再び目に砂が入った。
 凄まじい痛みが眼球を襲っても、陵にはただただ耐える事しか出来ず、心の中で、

 ぁいってぇぇぇぇぇっ!

 ……と叫ぶ事しか出来なかった。

 「ほほぉ……よく耐えるじゃないか……だがそろそろ閉幕だ」

 陵は小夜の問掛けにも心の中で、

 い、いったい何を!?

 ……と思う事しか出来ないのだった。

 「ほら鈴、もーちょい右。シフォンは、あー、もちっと前な」

 「うーん……ここですか?」

 「…前……前」

 べしっ! ずしゃっ! と二つの斬撃が陵の髪やらをかすめる。
 首を右に左に後ろにーーー!
 まだまだ続く容赦・手加減無しの斬撃。

 「鈴! 左斜め12度! シフォン! 右斜め34度!」

 「細かっ! なんだその無駄なスキル! 明らか必要ないーーーぉギャーーーーーーっ!!」

 ついにボケに耐えられず突っ込みをいれてしまった。
 そのせいで居場所がバレて鈴とシフォンの持つ木刀が左右側頭部にクリーンヒットする。

 次第にフェードアウトしていく意識の中で陵が最後に見たのは、心配そうな顔でこちらをみている三人の女の子の姿だった。


どもです。ペンネームを変えました。十叶ひかるです。
夏休み……きっと僕はバイト三昧なのでしょう。
だって彼女とかいないし。
男は見た目じゃない、と親父はいいました。
人は見た目で決まる、と教師はいいました。

……僕はいったいどうしたらいいのだろう。






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