第13話 〜試験〜
「ヤバイよリョウ! テストだよ!」
「朝からうるさいなユウ。別にお前はヤバくないだろ?」
「そのこころは?」
「いつも赤点」
「だからマジでヤバいんだよ! そろそろマジでやらないと留年しちゃうかもだよ!」
休み明けの朝。
いきなりこいつに話し掛けられると、どうも一日のテンションが下がる。
もう少し静かにならないかな?
……でも、こいつが静かだったら、それはそれで気持ち悪いな。
「お前が留年しそうなのはいつもの事だろ? だいたい僕は今忙しいんだ。」
ただいまリンに勉強を教えている最中だ。
今回のテストは休み前の期末テスト。
これの出来次第で夏休みと言う自由を塚みとるか、補習追試と言う牢獄に幽閉されるかが決まるのだ。
シフォンは大丈夫そうだ。恐らくシフォンなら赤点は無いだろう。
少々理数系が苦手な様だが、それでも赤点をとる程では無い。
問題は……リンだ。
元が体育会系なだけあって、勉強が苦手らしい。……いや、苦手なんて生易しいレベルじゃない。
先程、三角形の角度を求める数式を出してみたら頭から煙が立ち上っていた。
ホントに煙が見えたんだ。
だから今、リンの夏休みが潰れないように必死で勉強を教えているのだ。
とは言え、そこはリン。やはりテスト前にちょっとやっただけでは意味がないようだ。
だったら山を張ってそこだけを重点的にやるしかない。
……僕に出来るのはここまでだ。
と言うか、僕自信も勉強をしなければ、夏休みに学校に幽閉されてしまう。
夏休みのプランは既に、ユウやサヨと練っていると言うのに……。
「おい、ユウ。お前今回どこなら赤点を取らない自信がある?」
「あー、国語と英語、それから世界史だな」
「……案外いけるじゃないか。じゃあ科学と数学を教えてやる。……お前がいないと面白く無いからな」
「心の友よっ!」
「いーからやれ」
ユウに数学の公式を、出そうなものだけ覚えさせる。
なんとか覚えた様なので、二、三問、出してみる。
「こ……こんなもんか?」
「……なんだ。あってるじゃないか。これなら補習追試を受ける心配は無いな」
そう言えば、リンはどうだろうか。
出来る限り出そうな所は教えたから、なんとかなるはずだけど……。
「リン? 大丈夫?」
「大丈夫そうに見えますかぁ……?」
うっ……。
今にも魂が抜けそうな顔をしてる。
と言うか、既に抜けかけだ。
「リン……。赤点を取るとどうなるか分かるか?」
「え? 補習とか追試を受けるんじゃ無いんですか?」
「その通りだ。しかし、その補習追試が何を意味するか。それが質問だ」
「学校に来なくちゃいけないですね」
「そうだ。ちなみにユウはなんとかなりそうなんだ。つまり、リンだけが補習追試になるとだな……」
「なると……?」
「リンだけ僕らと一緒に遊びに行けないんだっ!」
「なんだってー!?」
「と言うわけで頑張ってくれ。そう……自由を勝ち取る為にっ」
「了解ですっ! 軍曹っ」
誰が軍曹だ。
○○○
始まるテスト。
うちの高校は、一日で全ての教科を終わらせる。
すなわち今日一日で、僕らの人生が決まると言っても過言ではないはずだ。
一限は数学。
リンやシフォン、ユウにとっては都合がいいだろう。さっき勉強したばかりだからね。
カリカリとシャーペンがテスト用紙を打つ音が教室に響く。
ーーー僕も、始めよう。
まずはどんな問題が出されているのか目を通してみる。
見たところ、テストの内容は、さほど難しいものではなかった。
これまでの授業でノートをしっかりとっていれば十分出来る。
裏表ともやり終えて、ざっと見直しただけでも80点はいくはずだ。
ちょっと怪しい所があるが、それを抜いてもまず赤点にはならないはず。
見直しを終えて、周りを見るとリンとシフォン、ユウはまだ頑張っていた。
三人とも、できているといいな。
と言うか、やってもらわなければ困るのだ。
今回の企画にはリンやシフォンも連れていくつもりだから。
シャーペンの音がまばらになり、もう書いている人はいない、と言う時、テストの終了を告げるチャイムがなり響く。
後ろからテスト用紙が回収され、教師がそれをもって教室を出ていった。
「みんな、出来た?」
「…なんとか出来たよ。たぶん赤点はないはず」
シフォンはもともと頭は悪くないから大丈夫だろうな。
しかし、リンとユウは……?
「ふっ……。一限が数学で助かったぜ。なんとか赤点は免れたはずだ。」
「た、たぶんボクもなんとかなったかと……」
リンがなんか痩せたように見える。
一限でそんなに体力を消耗してこれから持つのか……?
「じゃ、次は英語だから頑張ってこー」
「…全然大丈夫」
「ま、英語ならなんとかなるか」
「い……いける、かも?」
「そこ疑問符にするところじゃないから」
話が終わると同時に、テストをもった教師が入ってきた。
このテストは僕にとっても辛いものだろう。
なんせ僕は英語が苦手。
アルファベットが古代語にしか見えない。英語が理解できる奴らは、さながら考古学者か。
要は僕が英語が出来ないってだけなんだけどね。
前からテスト用紙が回ってくる。
見た限りでは、簡単な単語を抜き出す問題か、選択問題しか出来そうにない。
しかし、まぁ、なんとかなるだろう。
今までもこうしてやってきたのだから。
とりあえず始めなければ。分からない以上、考える時間は一分でも惜しい。
さっそく問題を解き始める。が、全く分からない。
……どうしようか。
……仕方がない。選択問題だけでもやろう。やらないよりはましな筈だ。
あー……。もう無理……。
だが、この全ての選択問題があっていれば40点近く取れる。
あってなかったら……まぁ、死亡確定だ。
普段は無神論者だが、今だけは神に祈る。
奇跡よ、起きろ……!
みたいな。
もうこれ以上やりようがない。後は寝て過ごそうか……。
そう思い、机にうつ伏せになって目を閉じる。
……カリカリいってて、寝れない……。
仕方がない。しっかり起きていよう。
どうせあと10程度だし。
○○○
再びチャイムが鳴り響き、テスト用紙が集められていく。
「…リョウ、どうしたの?」
「いや、ちょっと英語が不味いかもってだけ」
「…なるようになるよ」
「ダメだったら教えてよ」
「…ん」
さて。まだテストは残っている。
後は僕にとって問題ない。
そしてまたテストを持って、教師が入ってきた。
○○○
「終わったぁぁぁあっ!」
「ユウ、うるさいぞ」
「ユウさん、うるさいです」
「…うるさい」
「えーと、あの、…すいません」
僕にリンとシフォンがつづく。
ユウに至っては、もはや反論すら出来なくなってる。
「でも、やっと終わりましたねっ」
「あぁ。後は結果を待つだけだね」
長かった争いに終止符を打ち、今は放課後。
「ユウ、とりあえず例のプランは凍結しておいてくれ。進めるのはテストが帰ってきてからだ。サヨにも言っておいてくれ」
「おけ。じゃ、俺は一足先に帰らしてもらうぜ。じゃな」
「ちゃんとサヨに伝えておいてくれよ」
ドアの向こうからユウの返事が聞こえてきた。
そろそろ僕らも帰ろう。
そう思い、窓の外を見ると、既に日が傾き、空が藍色に染まりつつあった。
「リン、シフォン。僕らも帰ろう」
「あ、はい」
「…わかった」
カバンをとり、歩き出す。
テストが帰ってくるのはすぐだ。
教師にもよるが、早い教師もいる。
もしかしたら明日にも帰ってくるだろう。
誰も赤点にならない事を祈っておこう。
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