第11話 〜選択〜
「お兄ちゃんっ! 早く行きましょうっ」
「・・・ほら、はやくはやく」
「ちょっ、引っ張らないでって! それに、まだ早いでしょ」
あ、どうも。今日はデパートに行くという事で、リンとシフォンがはしゃいでます。
ふぅ。まだ八時なのに。今から行ってもまだデパートは開いて無いと思うんだけど。
「ほら、早く行きたいのは分かったけど、まだ早いよ。更に言うとその寝ぐせの直って無い頭で行く気?」
「うっ・・・」
「・・・むぅ」
リンとシフォンは少し考えて、互いに顔を見合わせると、お風呂の方に走っていった。
しばらくしてーーー
「みぎゃぁぁぁぁぁっ!」
「にゃぁぁぁぁぁぁっ!」
お風呂の方から何やら悲鳴が。一体何が!?
何があったのか、裸でリンとシフォンが走ってくる。
「お兄ちゃんっ!冷たいですっ」
「僕は冷たくないよ? ・・・っていうか、前を隠しなさい! 前を! シフォンもっ」
○○○
ようやく落ち着いてくれた。しかし、未だバスタオル一枚って言うのは、ちょっと・・・
「ふぅ。・・・何があったんだい?」
「寝ぐせを直そうとして、シャワーを浴びたんですっ!」
「・・・そしたら、シャワーの水が冷たかったの」
・・・あぁ。そういう事か・・・。
朝、いや、朝以外にも水の出始めは冷たいからなぁ・・・。
それを朝にいきなり浴びたらびっくりするよな。
「そういう時はしばらく出しっぱなしにしとかないと。シャワーに限らず、水道とかも同じだよ。お湯が出るまでに時間がかかるんだ」
「そうなんですか!」
「・・・分かった」
再びお風呂の方に向かっていった。
しばらくしても悲鳴は聞こえてこなかったから、問題はないな。
さ、今の内に買うもののチェックをしておかないと。
・・・あ、お金も少し余分に持って行こうかな?
○○○
「お兄ちゃんっ! 準備完了ですっ」
「・・・さー、いえす、さー」
リビングでゆっくりとお茶を飲んでいるとリンとシフォンが来た
どうやら準備が出来たようだ。
シフォンはいつもと同じようなゴスロリの服だが、それなりに夏っぽい服だ。いつもは黒だったゴスロリ服は、今や白いワンピースになっている。・・・まぁ、ヒラヒラは付いてるけど。つまり、ゴスロリっぽいワンピース。いつもと違ってなんか新鮮だなぁ・・・。
リンの服装は、なんと言うか、露出が多い服だ・・・。ちょっと青みがかったキャミソールに、ジーパンを短くしたズボンをはいている。
・・・これ、もしかすると、いや、もしかしなくても両手に花状態か!?
僕って結構幸せ者か? そうなのか?
「うん。じゃあ、行こうか。少し歩くよ」
「歩いて行くんですか?」
「・・・帰り、荷物があると大変じゃない?」
「んー、大きな荷物は配送してもらうから特には問題無いよ」
「そうですかっ、じゃっ、安心ですねっ」
「・・・さー、行こう」
「頑張って歩いてこう」
○○○
「着きましたー・・・」
「ははっ。もう疲れちゃった?」
「・・・さすがに疲れたかも・・・」
「足が棒の様です・・・。きっと案山子もこんな気持ちなんでしょうね・・・」
「それはないな。」
だいたい距離にして四キロ程歩いてきた。
だいたい四十分くらいかな?
この炎天下の中、延々と歩き続ければさすがに疲れる。
かくいう僕も額に汗をかいているのだ。
・・・しかし、案山子とは・・・。
いや、確に足が棒かもしれないけどさ。
あれは・・・案山子だから。誰がなんと言おうと案山子だから。
「じゃあ、とりあえず家具の方から回ろう。欲しいのがあったら言ってね」
「あっ、はいっ」
「・・・うん」
そうしてしばらく家具が並んでる所を回る。
ふぅむ。僕も欲しいのが沢山あるな・・・
あ、あのソファーいいなー。
「お兄ちゃんっ! これっ! これほしいですっ」
「んー? どれどれ?」
リンが指差している先には、・・・なんて言うか、・・・その、ハート型のベッドが。
・・・何故だ?何故ハート型なんだ。
だいたいベッドは部屋に置いてあるだろ?
なんでまたベッドだよ。さすがにいらないだろう。
「リン?・・・ベッドは部屋にあるでしょ?」
「うっ・・・まぁ、そうですけど・・・」
「・・・リョウ、あれ、ほしいんだけど」
「え? ・・・あれ?」
シフォンが欲しいといっているのは、・・・低反発まくら。
寝にくいのか? そうなのか?
「むぅ・・・まぁ、まくらならいいか。じゃ、持ってきてよ」
「・・・うん」
まくらを持ちに、とてとてっと走っていく。
しかしまくらとは・・・。
他になんか無いのか?
「お兄ちゃんっ! あれとかどうでしょうっ」
再びリンが僕を呼ぶ。
今度は一体なんだ?
「これですよ! これっ!」
そこには、・・・どこかの美術館にありそうな、・・・いや、間違いなくあるであろうキノコ型のランプ。
・・・なんでわざわざキノコ型だよ。
普通じゃいけないのか?
「これ、なかなかいいでしょうっ? そこのガラスのケースの中に入ってたんですよっ」
ガラスのケース・・・?
そのガラスのケースとやらに近付くと、何やらプレートが置いてある。そこには、
『美術館より取り寄せ、展示中です。手を触れないように。』
・・・とある。
「・・・あぁ、展示中なのかー。手を触れないようにしなきゃいけないのかー」
「お兄ちゃん?」
「返しなさい。いますぐ。迅速に。さぁ! さぁ! さぁ!」
「ひぃっ!? はっ、はいっ! ただいまっ」
わたわたと片付け始める。はやく! バレない内に!
「あっ・・・」
「え?」
振り向くと、リンが手を滑らせ、キノコ型のランプが自由落下を始めている所だった。
「にぇぇぇぇぇぇいっ!」
動け僕の体! あれが割れたらどれだけの弁償代が来ることか!
届けっ! 僕の想いっ!
ぱしっ
・・・はぁー。
よかった・・・。落とさないでよかったー。
立ち上がると、僕の肩を叩く人が。リンかな?
「どうしたのーーー」
「ちょっと警備員室まで来てくれるかな?」
僕の肩を叩いたのはリンじゃなかった。・・・このデパートの警備員さんでした。
「は、はいぃ・・・」
リンの責任は僕が取らなきゃいけないのか? そうなのか?
・・・よくよく考えたら、今の僕の生活って、なんか浮き世離れしてるよなぁ・・・。
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