第1話 〜逢〜
夕暮れ時。
僕はいつものように、自分の家に帰ってきた。
両親はいない。
いないって言っても、別に死んだとかそういうんじゃなくて、海外に単身赴任中。
母親もそれについてくし。
生活費などを置いてってるとは言え、息子一人置いて両親とも海外に飛んでくってどうよ?
思い切りがよすぎだよあんたら。
まぁ、そんなこんなで実質一人暮らし状態。
んで、いつものように、鍵を差し、回そうとしたらーーー
・・・回んない。
あれ?おかしいな?
行くときはちゃんと鍵をかけたはずなのに。
・・・泥棒とか?
ま、僕ん家入ってもとるもん無いけど。
そんな事を思いながら扉を開ける。
・・・ナニコレ?
玄関には見知らぬ靴が。
そして、明らか・・・女もの。
・・・んー、何でかな?
ここ僕ん家だよね?
表札を確認。
うん。間違い無い。
・・・一体誰なんだろう。
靴を脱ぎ、リビングへと向かう。
そこにいたのはーーー
ソファーの上で正座をしているゴスロリ服の女の子。
・・・何故?
いや、なんで僕ん家に女の子がいるのかとか、なんでソファーの上で正座なのかとか、色々ツッコミ所があるんだけど・・・
あ、こっち見た。
紅い目?
綺麗だなぁ・・・
「・・・。」
「・・・。」
お互い沈黙。
・・・ここは僕から話しかけるべきだろうか。
うん。それがいい。
「えーと・・・こんにちは。」
「・・・こんばんは」
・・・こんばんはで返された。
こんばんはなのか?
この時間帯は・・・
ん?いや、主旨ずれてるから!
この娘が何者なのか聞かなきゃ。
「・・・あの、君は、どうしてここに?」
そうだよ。鍵が無きゃ入れないんだし。
「・・・キョウジが、ここに行けって。」
・・・キョウジ?
どっかで聞いたような・・・
あ・・・
「あ、あのさ、その人、日下部恭二〈クサカベキョウジ〉って人?」
「・・・そう。」
・・・あんの、クソ親父ィィィィィィィィッ!!
なに考えてんだ!
つーか親父今、イギリスにいるはずだろ!?
なんでこんな事に!?
「・・・親父に、言われて・・・?」
「・・・そう。ここにくれば、「やさおとこ」がいるから住ませてくれるって。」
・・・親父。
どういう事だ。
って言うか「やさおとこ」って何だ。
「あー、ちょっと待っててな。」
携帯から親父に電話をかける。
耳元で鳴る電子音。
しばらく鳴った後に、切り替わる。
《うぃ。キョウジだ。》
「おいクソ親父。これは一体どういう事だ。」
チクショウ間の抜けた声出しやがって。
《ん?あぁ、そいつ?カワイーだろ。》
「貴様ロリコンか。」
《ひっ、人聞きの悪いこと言うなよ!》
「じゃ、真面目に説明してくれ。彼女はなんなんだ?」
《ん?あぁ、お前の妹。》
「・・・。」
《・・・。》
「・・・マジか。」
《・・・マジだ。》
「一体どういう経緯でどうやって、何をしたら僕の妹になるのか簡潔に30文字以内で説明してくれ。」
《イギリスの某所で孤児院に居たのを引き取って養子にした。》
「コンチクショウマジで30文字以内に収めやがった。」
《ま、そゆことだから。しっかり面倒見てやれよ。色々厄介かもしれんが。》
「おいっ!どういう事だ!?なんだ厄介って!?」
《プツッ・・・ツー・・・ツー・・・》
・・・切りやがった。
要は、あれだな。
この娘が僕の妹になる訳なんだな。
よろしく、と言おうと思ったら、一番大事な事を忘れてた。
・・・名前、聞いてねぇ・・・
うん。まずは自己紹介から入るべきだよな。
「あー、えーと、僕は日下部綾〈クサカベリョウ〉。君の兄になるらしい。・・・よろしく。君は?」
「・・・私は、日下部・シフォン・ニーベルング。・・・よろしく。」
あ、やっぱり外国人なんだね。
「・・・くぅ」
・・・ん?
彼女の方を見る。
顔が赤い?
・・・あぁ、さっきのはお腹が鳴った音か。
うん。
そう言えばまだ、夜ごはんにしてなかったな。
「じゃ、夜ごはんにする?」
「・・・うん。」
そうだな・・・
今日は適当に野菜炒めで済ますつもりだったけど・・・
ちなみに僕は自炊してる。
いくら生活費が沢山あっても、無駄使いしたくないからね。
自炊の方が安上がりだし、なによりうまい。
・・・冷蔵庫には何があったかな?
「シフォンちゃん・・・でいいかな?」
「・・・うん」
「何か食べたいものある?」
「・・・リョウが作ってくれたのなら・・・なんでも。」
僕はリョウと呼ばれる事になったようだ。
・・・まぁ、いいか。
さて。冷蔵庫の中には、挽き肉。この時点でメニューは決まった。
・・・このご都合主義め。
ま、その他の材料もあることだし、今日はハンバーグだな。
「じゃ、ちょっと待っててね。」
「・・・ん。」
こねこね。
こねこね。
こねこね。
そんでフライパンの上にポイ。
じゅうじゅう。
じゅうじゅう。
・・・そう言えば何で玉ねぎって炒めるとき「狐色になるまで」って言うんだろ。
「飴色」ってのもあったような。
まぁ、狐色はなんとか分かるよ?
似てなくもないしね。
若干、て言うか、結構色違うけど。
でも、「飴色」ってなによ?
飴だっていろんな色があるじゃんか。
・・・いや、分かってるよ?
昔の飴はそんな色だったんだろうね。
うん。分かってるよ。
・・・っとと。
脳内討論を繰り広げている間にちょうどよく。
よし。後は皿に盛り付けて・・・
よし。
付け合わせは、ポテトでいいか。
ポテトと言えばフライドポテトはマ○クが一番うまいんだよね。
え?どうでもいい?
ま、その通りなんだけどね。
「はい。お待たせ。・・・ご飯いる?」
一応イギリス人なはずだしね。
パンは食パンしかないけど。
「・・・いる。」
あ、いるんだ。
「そう言えば、シフォンちゃん、日本語上手いよね。どこで覚えたの?」
「・・・日本」
・・・まぁ、そうだろうけど。
日本にきたことあるのかな?
「日本にきたことあるの?」
「・・・今日初めて」
「・・・マジで?」
「・・・マジで。」
一日で覚えられる様な言葉だったのか。
日本語はきっとそのうち万国共通になるな。
日本が世界を引っ張る日も遠くはないな。
・・・って、オイ。
一日で日本語覚えられるとかどこの天才児ですか。
「・・・すごいね?」
「・・・うん。」
あれ?
誉めたつもりなのに、なんだか辛そうな顔してるな?
「どうかしたの?何かあるなら言ってみなよ。」
「・・・いったら、リョウは私をきらう。」
嫌う?
どういう事だ?
「大丈夫。そうそうそんな事は無いから。・・・言ってみて?」
「・・・ほんと?」
「もちろん!親父達には話したの?」
「・・・うん」
「じゃあ大丈夫だ。僕も一応、あの人達の子だしね。」
「・・・うん。・・・私、人間だけど、人間じゃないの」
「・・・ん?どゆこと?」
人間だけど人間じゃないって、どういう事?
「・・・私は半魔なの。」
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