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状態異常転移

「こう、サンゴとか生えてるし、物凄く大きなウニの魔物とかいてな。エビやカニでみんな満足してたけど、もっといろんな美食が楽しめる。みんなで楽しく狩って行きたい」

「はぁ……そういや昨日、グローブに水中活動っていう効果があったな」

「グローブを使えば行けるかもしれないな」

「ガウ?」


 クマ子がグローブを俺が付けないか期待の目を向けている。


「いやいや、グローブはクマ子に使わせる物だし」

「ガウー……」


 残念がらないでほしい。

 というか俺からすればグローブ着用で水中をどう移動するのか気にはなる。

 何か間抜けな姿になりそうだなぁ。


「ま、狩りが終わったらまた海岸でゆっくりになるだろうから、その時に試せば良いさ」

「俺と極一部が先行しても良い事はあまりないんだろ?」

「そうだな……奥地に行けば未知の魔物が出てくるかもしれないけど、どっちにしても酸素とか色々とな」


 酸素?

 とは思ったが俺は依藤の案内の元、狩り場へと出かけた。

 ちなみに萩沢が剣で戦っていたが、俺がグローブを使った時の様にかなり様になった戦い方が出来ている様に見えた。

 ただ……武器が弱いっていうのは確かだと思う。


「早めにこの剣を強化しておきたいぜ」

「がんばれよ」

「ああ、俺の野望の為にやっていくしかない。ところで依藤、この辺りでネレイドの涙って素材が手に入ると聞いたんだが知らないか?」

「……萩沢、それは海の奥の方で出てくる魔物のレア素材だ。しかも用途がかなり限定されてる品だぞ。何に使う気だ?」


 依藤が眉を寄せて萩沢に尋ねる。

 レア素材ね。

 まあ萩沢は道具作成だからそういう貴重な素材も重要なんだろうな。

 というか、野望ってなんだ?


「それは秘密だ。俺の大いなる野望のな。これは絶対に邪魔させねえぞ!」

「好きにすれば良いが、責任は持てよ。羽橋みたいに」

「はい?」

「ガウ?」


 俺がなんだって? 責任?

 もしかして萩沢はユニークウェポンモンスターを欲しているのか?

 その中に萩沢の好きな魔物とかいるとかだろうか?

 まあ、実さんがクマ子を大好きな様に萩沢もどうしても欲しい好きな魔物とかいるのかもしれない。


 ……あの剣、植物系の魔物みたいだし、蔓とかありそうだから……触手とか?

 いやいや。

 そんな魔物を萩沢が好きって言ったら変な事を命令させそうで恐ろしいな。


「羽橋、無言で眉を寄せた揚句、目を細めて俺を変質者みたいな目で見るな」

「似た様なものだと思うがな」


 依藤の注意などどこ吹く風とばかりに萩沢が背を向けて歩きだした。


「どっちにしても俺の野望は始まったばかりだぜ! 行くぞ野郎どもー」

「はいはい」


 とはいえ、萩沢は何を企んでいるんだ?

 依藤に視線を向けると肩を空かして歩きだす。


「悪い事じゃないから、萩沢の好きな様にさせれば良い」

「まあ、それなら良いけど」


 根掘り葉掘り聞くのが友情じゃない。

 茂信だって踏み入れて欲しくない領域って物があるだろう。

 きっと萩沢も似た様に何かあるはずだ。

 で、依藤はそれを知っていて、好きにさせている。


 しかし……どんな野望何だろうか?

 アレか?

 ユニークウェポンモンスターに人型の魔物とかがいて、テイミングして彼女になってもらおうとか考えているのかもしれない。

 欲しがっている素材は婚約指輪とか?


 萩沢ならありそうだな。

 俺がクマ子と仲が良いから、そういう考えをしているのだろう。

 うん。温かい目で見守って上げるとしよう。


「なんか羽橋が俺を可哀想な奴を見る目に変わった気がする。その目をやめろ」

「良いんだ萩沢、お前の思う通りにするが良いさ」

「良いからやめろってのその目!」


 そんなこんなで狩りを続行し、俺のLvが40に達した。

 ここで俺は自身に発現した拡張能力を確認する。


「お? Lvが上がったか?」

「ああ、増えた能力は……あれ? コストダウンLv1」

「能力使用時に掛る消費を減らす能力ですね」


 ラムレスさんが説明してくれる。

 おお、地味に優秀かもしれない。

 ちなみにこれはポイント相転移で金とポイントの差額を儲けるとか出来るかと思ったけど出来なかった。

 あくまで消費する物を下げる効果しかない様だ。


「地味に転移って発動させる時に魔力が掛るから良いな」


 むしろなんで今まで覚えなかったんだろうか?

 効果的にも序盤に覚えそうな能力なのにな。


「あれ? 他にも覚えてる……」

「本来の能力に付属する能力ですので……ライクス流槍術にも似た様な拡張がありますよ」


 ボーナス的な物なのかも?


「じゃあ次は何を覚えたんだ?」

「えっと……状態異常転移だってさ」

「直訳すると毒とか麻痺とかを転移させられる能力っぽいな」

「だな。これって死とかも……転移できるかな?」

「羽橋……」


 死んだ人間は戻って来ない。

 だけど、もしも出来るのならと淡い期待をしてしまう。

 俺は倒した魔物の死骸に向かって状態異常転移をかけてみる。


 が、結果は失敗。

 調べた結果分かったのは、やはり予想通り毒とか酔いとか状態異常を他者に移す能力だった。

 当然、両者の合意が無いと出来るものじゃなかったけどさ。

 どうも微妙な能力ばかり目覚める。


「幸成くん……」


 実さんがクマ子と一緒に俺を見つめている。


「大丈夫、そうだよね。そんな簡単に出来たら苦労しない」


 国の人にもそう言った能力が無いかと尋ねたが、ネクロマンサーとか忌避すべき能力の類に該当すると言われた。

 しかもそれでも死体を動かすとかそう言った物で、死者を蘇らすわけではないそうだ。


 で、状態異常転移、非常時には役に立ちそうだけど……実さんや萩沢が居る状態じゃあんまり役に立ちそうにない。

 二人とも能力で状態異常は回復させる方法がある。俺の様に手間取る事は無い。


 精々応用するとしたら例えば視覚転移で実さんの居る教会とかに言って、重傷、もしくは重病人、生命力の無い緊急手段で元気な人に損傷転移や状態異常転移を許可して貰って実さんに治療して貰うとかだろうか。

 俺の能力の長所は射程という制限が無い。

 俺が認識さえしていれば、遠くかけ離れた場所でも相手の承認さえあれば治療可能だ。


 ……割と便利に思えてくる。

 死なない事を前提にだけどさ。

 しかも実さんの方には元気な人で、怪我や毒、麻痺などの状態異常を受け持つ貧乏くじを引く人がいないといけない訳だし。


 ……ないな。

 本当の非常時くらいしか使い道は無さそうだ。

 そんな暇があったら出来る限り手当てでもして帰還の水晶玉を使った方が良い。

 よし、終了。


「じゃあ狩りを続行しよう」


 なんて感じにその日も狩りは順調に、且つ早めに終わった。



「じゃあ今日はクマ子ちゃんと幸成くんの装備の実験をしましょう」

「ガウー」

「おおー」


 海岸で実さん(水着着用)が元気に言い放つ。

 俺はクマ子からグローブを受け取り、クマ子はグローブにならない形で同行する。

 依藤は水中装備の鎧を持っているそうで、装備している。

 萩沢はビーチでゆっくりする予定とかで泳ぎには不参加だ。


「じゃあ試しに……っと」


 グローブを着用して海の中へと入って行く。


「ヴォフー」


 クマ子はセイウチに変身して付いてくる。

 で、足が付かない所まで泳いでから海中に顔を鎮める。


 お? 思ったよりも苦しくないし、かなりクリアに海中を見る事が出来る。

 不思議な光景。

 泳ぐと思ったよりも早く進めるし、足を掻くだけで思った通りに進める。

 水中で呼吸は……ゴボ……出来ないっぽい。


 けど、呼吸しなくてもかなりの時間行動出来るのかな?

 余り息苦しくない。

 苦しくなったら海面に出て呼吸しろって事なんだろう。

 うん。グローブを付けている所為かセイウチに成った様な気分だ。


「クマ子ちゃんすごーい!」

「ヴォフー」


 実さんを背に乗せたセイウチ姿に変化しているクマ子が泳いで行く。

 うん。行けなくは無い。

 昨日とはまた違った海水浴って感じだ。


「おーい」


 依藤の声、水中だったと思うけど、声が聞こえる。

 声の方を見ると、依藤の奴……海底を泡のバリアみたいなのに包まれて立っていた。


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