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遠くで見ていたい

「ハネバシ様のパンチングベアはメーラシア大森林のユニークウェポンモンスター……という事は内実は15でも20相当の魔物ですね」


 ああ、依藤とかもパンチングベアーって上位とか言ってたよな。


「ナイトウォーラスは?」

「25……実質30の魔物となります。この際、30辺りのユニークウェポンモンスターのボスに挑戦して更なるパワーアップを測るのも手ですし、転職用ユニークウェポンモンスターを狙うのも手ですね」

「何それ?」


 転職用ユニークウェポンモンスター?

 何だろう。今のボクシングとはちょっと違う路線にいけるのか? 


「わかりやすく例えるなら流派違い、種類が似て異なるスタイルでしょうか? 戦いやすいスタイルを揃えるのも手ですよ」

「例えば?」

「そうですね。今のハネバシ様とその相棒であるパンチングベアーのクマ子様はボクサーですよね」

「うん」

「似た種類にキックボクシングという近い流派に勝負を売る事が出来るんです。上手く勝利すればボクサーがキックボクシングに変化致します」

「おお……」


 足が使える分だけそっちの方が良さそう。


「ただ……ボクサーグローブで戦った際は相手が蹴りをするのを許容し勝利しないといけません」


 変則ルールをこっちは守らないと行けないって事か……。


「そして逆では相手のルールを守るという戦い方をしないと魔物が嫌がりますね」

「何か不条理を感じる」


 別流派へ変化するかそれとも、今のままで行くか……。


「クマ子ちゃんのキックボクシング姿も見てみたいなー」

「グローブ系競技になら変化出来そうだけど」

「ガウー……」


 あんまりクマ子は乗り気じゃないっぽい?

 出来なくはないし、蹴りが出来ない制限が無くなるなら一考の余地もあるかも。


「ただ、ボクサーとキックボクシングだとボクサーの方が武器の性能は少し高めになりますね」


 ラムレスさんの話をゲームで当てはめてみるか。

 ボクサーってのは戦士で、キックボクシングは魔法戦士とかそんな感じなのかもしれない。

 魔法に寄せた分、攻撃力が若干低めとか。


「可能性があるのは良い事だし……今度色々と調べておこうか」

「ガウ!」


 なんて感じに俺達は宿に戻ってその日を終えたのだった。



 ここ……は?

 俺はぼんやりと夢を見ているのだと自覚する。

 異世界に来て最初にいた森の広場だ。

 誰もいない……のか?


 そりゃあそうだろう。

 なんでこんな夢を見ているのか、俺だってわからない。

 まあ、夢なんてそんなものだ。

 広場にある石板に目を向ける。

 覚えている範囲での違いは……無い。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……遠くで地鳴りの様な何かが聞こえてくる。

 方角からして北東の方に……何か雨雲が見えるような……。

 目を凝らすと……はは、何だあれ?

 俺達の……日本にある学校みたいな建物があるぞ。

 ごっちゃになり過ぎだな。

 もう一度石板の方に目を向ける。


「あれ?」


 石板の裏からぼんやりと白い小さな人影がこちらの様子を見ている。

 なんだ? 幽霊とかか?

 ああ、茂信が前に言ってたウィル・オ・ウィスプとかかもしれない。

 魔物が夢にも現れたって事か。

 そう思っていると、白い小さな人影がゆっくりと俺の方に姿を見せる。


「こ――あ――の――」


 音が飛んで何を言っているのか全然わからない。

 ただ、人影は手を合わせて何か懸命に訴えている様だ。


「ど――も―一―のわ――を――して――全ての――」


 ……誰だろう? ぼんやりと輪郭や顔が見える様な気がするのだけど分からない。

 少なくともクラスメイトじゃない。

 まあ、夢の人物なんてこんな物なのかもしれないけど。

 という所で俺の体に地面から一本の糸みたいな物が生えて俺に巻き付いて来た。


「ぐ……」


 懸命に抵抗するがこの糸、全く切れる気配も無い。

 縛りつける訳でも無く、それでありながら逃がさないとばかりに巻き付いている。

 な、なんだろう。イラっとした感情がふつふつとして来る。

 そこに白い幽霊が糸に手を当てて、光を放つと、糸がぶちっと切れた。


「あ、ありがとう」

「これ――過――」


 相変わらず何を言っているのかよくわからない。

 だけど白い幽霊は俺に何か……糸を切った時の光を手渡す。


 すると夢の中なのに能力アイコンが出現した。

 そして……ポイント相転移の部分が淡く光っている。

 これで、何を?


「どうか――」


 という所で白い光が俺の視界を埋め尽くし……俺は目が覚めてしまった。


 目を開けると、クマ子が毛が見える。

 また俺に抱きついて寝ていたようだ。


「変な夢を見たな」


 寝返りをして隣のベッドを見ると茂信がまだ熟睡している窓を見ると、日がまだ出ていない。

 早く起き過ぎたか。

 ……寝直すとしよう。

 そのまま俺は再度目を閉じて寝直した。


『どうか……この力で道を切り開いて』


 バッと目を開けて辺りを見渡す。

 空耳じゃないと言えるほどはっきりと聞こえた。

 けれど、周りには何もいない。


 ……寝ぼけていたのか?

 そんな夢とも現実とも取れる変な体験をその日してしまった。

 茂信に話したら寝ぼけていたんだろうと笑われたけどさ。



 翌日も魔物を倒してLv上げをする事になった。

 相変わらず依藤が俺の事を気に掛けていて、同行する。


「あ、幸成、今日は俺はパスな」


 茂信がそう答える。


「行かないのか?」

「ああ、せっかくだって事で、海に入る装備の作成をしてみる」


 そうそう、どうもこの海岸の先に冒険者が時々向かう狩り場があるらしい。

 船で行く者、特殊な装備で海を泳いで行く者等、時々見かける。


「大丈夫なのか?」

「これから作る装備が上手く行けば海底散策が出来るっぽい。よほど奥まで行かない限りは戦闘組の護衛があればどうにかなるんだと」

「それなら良いんだが……」

「そういう訳で、俺や拠点向けの能力持ちが作ってるから今日は留守番してる。幸成はがんばって行けば良いだろ」

「うーん……わかった」


 という事で俺は茂信を置いて狩りへ出かける事になった。

 ああ、茂信が抜けた穴を埋める様に萩沢が加わる。


「坂枝とはたまーに一緒に狩りが出来ない事があるな」

「ああ。ところで昨日、俺の試合をポップコーン片手に見てたよな」

「ん? 良い試合だったと思うぜ」


 いや、そういう意味じゃないぞ。

 なんなんだ、その普通に褒めました、みたいな反応は。

 俺は萩沢が腰に差している剣を見る。


「いつか絶対にお前の試合を見るからな」

「ふふ、機会があったらな。剣は割と人気モンスターだから試合が出来る事は稀だぜ」


 それは自慢になるのか?

 ……まあいい。


「で、依藤は黒本さんと組まなくて良いのか?」

「問題ない。むしろあっちはあっちで忙しいみたいだからな」


 うーむ……どうも依藤と黒本さんの関係は謎だ。


「むしろ美樹は俺と羽橋が仲良く出来る様に一歩引いてるよ」


 そういや黒本さんの下の名前は美樹だったっけ。

 付き合っているんだから名前で呼び合うのは当然か。

 で、少し離れた所で黒本さんが俺と依藤が一緒に居るのを見て手を振っている。

 応援してるというか信頼関係があるって事なのかな?


 黒本さんは本さえあれば魔法が使える。

 だからか、後方援護が得意だ。

 とは言っても普段は国の書庫で帰還の方法を調べている。

 今は一応、Lv上げをしているけれど、依藤とは別行動中……。


「本当に一緒じゃなくて良いのか?」

「ああ、俺も誘ったんだけど、遠くで見ていたい……って言っていたな。強引に誘うと嫌がる」


 ふーん……どんな仲にしても依藤と黒本さんって気が合う仲みたいだし、二人にしかわからない事があるんだろう。

 何を遠くで見るのかは知らないが。


「じゃ、今日も狩りと行くとしよう。今日はもう少し奥地へ行く予定だ。明日か明後日には坂枝達が水中装備を作ってくれるからさ」

「依藤は持ってないのか?」

「一応持ってるけど、人数分は無いし、俺達が先行してもな」

「へー……」

「割と海底は綺麗だったぞ」


 ……海底?

 なんか凄く自然と凄いセリフを聞いた気がする。


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