表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/233

付与効果

「羽橋は出来る限り無茶をしないでくれ。俺が前に出て戦う」

「それはわかっている」


 今の俺達よりも随分と格上の魔物と戦うらしいし、下手に前に出て邪魔をするのもアレだしな。


「大丈夫だ。危険な魔物が出たらすぐに仕留める」

「わかっちゃいるんだが……」


 守られている様で落ち付かない気がする。

 そう思っていると海岸線に蟹の魔物が見えた。

 モンスターを狩るゲームにも似た様な大きさの魔物がいた気がするぞ。

 フロスティグレイクラブって妙に名前のかっこいい魔物だ。

 人くらいに大きな蟹だ……。


「お? この辺りの名産になっている魔物だ! 必要Lvは低めだから安心してくれ!」


 そう言って依藤が腰に差した剣を抜く。

 良く見たら依藤の奴、剣を何本も持っているみたいだ。

 今持っている剣は定期的に雷を纏う剣のようだ。

 腰を低くして依藤がフロスティグレイクラブに突進する。


 早い!

 ラムレスさん達もそれなりのLvらしいが、それよりもかなり早く依藤がフロスティグレイクラブを剣で素早く斬り伏せる。


「パワーバッシュ!」


 叫ぶと同時に剣から衝撃波みたいな物が飛び出した様に見えたぞ。

 戦闘向けの連中の攻撃は何度も見ていたと思ったけれど……短い期間でどれだけ強くなってんだ。

 経験値も、この人数の割に結構入った。


「良い調子だ」

「すごいです」


 実さんが余裕で勝利した依藤を褒める。

 うん、確かに凄い。

 これが戦闘系能力の実力か?


「こんなの序の口だ。さ、早くLvを上げに行こう」

「ああ」

「ガウー」


 クマ子が依藤の攻撃に目を丸くさせた後、動きを真似ようとしている。

 あれが出来る様になるのは相当な訓練が必要だと思うぞ。


「あの動きはライクス流剣術にもありますね」


 ラムレスさんが依藤の動きを分析している。

 そういえば前に異世界人の能力は多数の流派を内包していると言っていたな。

 依藤の能力は剣術だから、やはり使えるんだろう。


「ああ、パワーバッシュはその剣術の物らしい。初期に使えるようになる。同規格だと……ダッシュスラッシュってのもあるな」

「スーフリー剣術も完備ですか。やはり素晴らしいですね」

「技に名前があるんだ?」

「ああ、羽橋もグローブを付けている時に使ってたよな?」

「風の拳の事か?」

「いや、それは多分、武器の効果だろ。もちろん、拡張能力の枠にも新しい技とかあるにはあるけどさ」

「え? 拡張能力で出た攻撃とかじゃないの?」


 俺の問いに依藤もラムレスさんも首を横に振る。

 そうなのか?

 ちょっと戦闘から離れていたら、もう完全に蚊帳の外だ。


「やっぱ戦闘向けと拠点向けじゃ能力に違いが出るみたいだな」

「てっきりそうなんだと思っていたんだが……」


 講習でもLvが上がる事で新たな攻撃方法が出現するとか言っていた。

 それは拡張能力じゃなかったのか。


「うーん……たぶん、羽橋が言ってる拡張能力ってのとは違う項目だな。メインの能力は戦闘向けだと技が使えるようになるんだよ」

「そうなのか?」

「ああ、よく考えてみてくれ、剣術って項目を弄っていつも戦っていると思っているのか?」


 確かに、何か違う様な気がする。


「羽橋ならクマをユニーク武器に変化させて着用すればわかるんじゃないか?」

「え?」

「ガウ!」


 待ってましたとばかりにクマ子がグローブに変化する。

 クマ子、ノリが良いな。


「あー……羽橋の方針は十分にわかっているが、今回は着用してみてくれ」

「……わかった」


 俺はグローブになったクマ子を手に嵌める。


『ガウー』


 って声がした様な気がする。


「能力欄を確認してください」


 ラムレスさんも指示を出す。

 俺はステータスを出して能力を確認する。


「で、戦闘向けの能力をチェック」


 そこにはボクサーという能力箇所が確かに存在する。

 言われた通りにボクサーの部分を確認。


 すると初期技にジャブ、ワンツーパンチ、ストレートともう一つ項目が出現した。

 これは特に意識しないでも使える攻撃手段みたいだ。

 というか、無意識にでも出来るって事?


 で、Lv10にぐるぐるパンチって技がある。

 もしかしてこの技で、武器に掛っている属性で遠距離攻撃できるとかなのだろうか?

 しかし名前がどうにかならないか。


「このグローブにはアースクラッシュって付与効果があるみたいだけど……」

「単純に地面技なのかもな」


 Lv15にビックロックパンチって技が……もしかして岩を纏うのは技扱いだったのか?

 じゃあ単純にアースクラッシュってなんだ?


「アースクラッシュは地面を叩きつける事で発生する地響き攻撃ですね。大技なのであまり使用しない方が良いかと思います」


 あー……そういやパンチングベアーのボスが最初に打っていたな。

 あんまり強くない、死に技なイメージ。


「足場破壊等にも使用される物だと聞きますね」


 そういえばクマ子がハチの巣を破壊する時に使っていた。

 あれがアースクラッシュだったのか?


「じゃあ単純にこのグローブは風の拳以外は属性能力は無いって事?」

「ベアークローってのは?」

「えっと……」


 意識するとグローブが光ってクマのツメみたいな物を纏う。

 多分、これの事か?


「おそらくそれでしょう。状況次第で使い分けて行けば良いと思いますよ」

「うーむ……」


 で、ボクサーの部分を確認していると20でスクリューパンチって技があるのがわかった。


「これって技名を叫べば言い訳?」

「いや、叫ぶと強引に放てたりするだけだ。キャンセルって奴だな」


 依藤が詳しく教えてくれる。

 意識でも体の型でも、声でも任意で発動させられるのが技なんだとか。

 随分と俺の転移と仕様が違うんだな。

 とはいえ、俺はめぐるさんの剣で行くと決めているから、グローブを外してクマ子に戻る様に指示をする。


「ガウー」


 グローブを着用したからかクマ子がご機嫌になっている。

 正直、俺がクマ子を装備して戦うより、分かれて一人と一匹で戦った方が効率が良いと思う。


「マメ知識ですが、テイミングした魔物のステータスが武器に補正を掛けるそうですよ」

「そうなのか……とはいえ、俺はな……」


 刀身を見つめていると依藤が居心地が悪そうに手を振る。


「その剣にインスタント拡張能力で剣術系を付与出来れば良いんだけど」

「さすがにそのような話を聞いた事はありませんね」

「前例なしか……そういや付与転移でも出来なかったもんな」


 あくまで追加で付与した物しか転移させる事は出来ない。

 痒い所に手が届かないもんな。


「もう片方に二刀流系の流派のユニーク装備を使えば良いかもしれないな」


 たぶん、それが一番良い様な気はする。

 これから先を考えると、その方向性が良い……か?

 クマ子の事を考えると悪い気もする。

 どうしたもんか。


 というか結局、それってユニーク武器の剣がメインにならないか?

 それはそれで違う気もする。


「……あのな羽橋、めぐるさんの剣を大切に使いたい気持ちはわかるが適材適所で戦う事も必要なんだぞ?」


 依藤が、先ほど使った剣を見せる様に答える。


「坂枝から聞いていると思うけど、フルメタルタートルの剣はあくまで汎用剣だ。魔法や能力攻撃を良く使って来る相手には効果が高いと思う。だが、それ以外の敵には合った武器を使ったほうが戦闘を有利に進められる。そこの所はゲームと一緒だな」


 ゲームの経験位はある。

 特化装備となると、汎用装備よりも効率が叩きだせるのが常だ。


「もちろん、めぐるさんの剣を使って行きたい気持ちは俺もわかる。剣を使う者だしな。だけど拘って死んだら意味が無いだろ?」

「だが……」


 これは俺自身の拘りみたいなものだ。

 極力めぐるさんの剣でこれから戦って行くと決めたんだ。


「グローブはクマ子がいるから問題ないだろ」

「いや、確かにクマ子が使えば優秀であるのは確かだが……さっき、国の騎士が話した通り、お前が使ったらもっと性能が上がる」

「ガウー」

「クマ子ちゃんフカフカですね」

「ガウー」


 クマ子にいつの間にか実さんが乗っかっている。

 実さん、貴方は本当にクマが好きなんですね。


「状況次第じゃ、羽橋……お前が使った方が生き残れる可能性がある。それを心の片隅に入れておいてくれ」


 そう言うと依藤は辺りを警戒しながら茂信達に進む方向を指示する。

 もう話は終わったという事か。

 ……俺がグローブを使った方が良い状況か……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いい加減主人公うじうじしてるの鬱陶しいな 立直りイベントなりさっさとして欲しい同じ話何回繰り返してんの?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ