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フルメタルタートル

「これで仕留められたかな?」


 動かないブルーラベンダーアダマントタートルを眺めながら言う。


「待て、昔読んだ小説に、これで死なない亀がいる。十分に注意するんだ」

「それってどんな亀だ?」

「ああ、めちゃくちゃデカくてさ、主人公達が体内に入って頭と心臓を同時に撃破するんだけど――」

「いや……経験値が入ったんだが……」


 みんな結構な経験値が入ったぞ。

 Lvがそれぞれ3ほど上がるくらいには。

 どれだけ上位の魔物なんだろうか?

 まあアダマントタートルは一匹しかいないけどさ。


 薬で魔力を回復しつつ、俺は様子を見る。

 ……動く気配も無い。

 やがて10分経過した頃、様子を見る為に国の騎士がフルメタルタートルの攻撃を避けながらブルーラベンダーアダマントタートルの目の前まで移動し、確認を取った。


「ピクリとも動かないぞー! どうやら死んだようだ!」


 うおおおおお!

 っと、周りの冒険者と騎士、農民っぽい連中が声を上げる。


「待て待て、まだフルメタルタートルの掃除が終わってないだろ」

「あのアダマントタートルを撃破するとは!」

「さすがは異世界人様方!」

「すげぇ……こんな伝説みたいな出来事に遭遇するなんて!」


 それは大げさ過ぎないか?


「アダマントタートルってそんなに厄介な魔物だったのか?」

「正確には山奥にしか生息しない危険な魔物という認識です。そのあまりにも硬い甲羅から撃破する事は不可能と呼ばれる程です」


 ラムレスさんが説明してくれた。

 少なくとも本来の俺達が倒せるLvの敵じゃないって事か。

 今回も裏技みたいなものだし。


「じゃあ人里に下りてきたら?」

「基本的には臆病で、やがて山の方へと帰って行くのですが……何分、長い間その周辺は危険なので封鎖される事になります」

「で、今回はスピード解決と……」

「はい! 誠にありがとうございます。つきましては継続してフルメタルタートルの討伐をお願いします」

「……実さんを連れてくれば良かったな」


 道理で妙に魔力を回復させる薬を支給された訳だ。

 魔力転移で周りの、魔力に余裕のある連中から片っ端から奪う(了承必須)で、どうにか片付けた。

 そんなこんなで、村を占拠したメタルタートル系の魔物を全て仕留めた頃には、日が暮れていたのだった。



「ふう……」


 無数のメタルタートル系の魔物を仕留めた俺達は仮設で作られた大型テントで休ませてもらっている。

 幸いな事に、近くの温泉は無料で使わせてもらえる事になっているので、ゆっくりとする事自体は出来そうだ。


「良い感じの収入になったんじゃね?」

「破格の報酬なのは確かだな」


 ライクス金貨がどれくらいの価値があるのかよくわかっていないが、かなり高額なのはわかる。

 しかもここが復興したら滞在費がタダで、近隣の鉱石を提供してくれるって話だ。

 茂信からしたら随分と良い条件だろう。

 アダマントタートルの素材やフルメタルタートルの素材もあって、かなり良い装備品を作る事が出来るはずだ。

 今は騎士や冒険者が挙って死骸の撤去をしようとしている。


 ただ……アダマントタートルに関しては俺でさえも転移させるのは無理だったので現地で解体する事になった。

 まず重すぎる。能力耐性もあるのか、素材を転移させるのも負荷が掛るっぽい。

 よく考えてみればメタルタートルも能力で飛ばすのに魔力がそれなりに掛ったんだ。

 だから、休憩が終わったら俺が転移で細分化させる予定となっている。


「みんなの装備をこれで揃えられそうか?」

「その事なんだが……アダマントタートルで武器を作る場合、必要素材が随分と足りない。挙句な……ポイントが天井知らずなんだ」


 茂信が困った様に答える。


「売り払えば良いって訳じゃねえもんな」


 先ほど、商人っぽい奴等がやって来てアダマントタートルの取り分や買い取り等の話を国の連中と話し合っていた。

 半分は俺達の物って扱いなんだけど、異世界人を巧みな話術で騙すなんて事をさせる訳にはいかないと、国が雇った商人が関わるそうだ。

 まあ、商売関連は萩沢の担当なので、交渉事は任せるって話だ。


「さっき、拡張能力でポイントに変換するかって話をしたら凄い形相で却下されたぜ」

「前にメタルタートルの甲羅を変換したって話をして勿体ないと驚かれていたもんな」

「そういう事だ。この世界の連中にとっては加工出来なくても、そのまま盾や鎧……プロテクターにするだけでも意味があるらしいぜ」


 俺達もやっていたポイントを介さない加工方法だ。

 この理論だと、俺が妙な物を転移させて甲羅を細かくさせる事になるんだろうなぁ。


「売れば、とんでもない金額になる、宝の山らしい」

「加工出来なきゃメタルタートルの甲羅と変わらない様にしか思えないが……」

「付与効果もバージョンアップするみたいだぜ。メタルタートルに効果のある魔法系も弾くそうだ」


 へー……そういやメタルタートルの剣だと小野の呪術を弾けなかった。

 アレもカバーするって事なんだろう。

 そんな万能素材があればみんな飛び付くか。


「難点は、欠片でさえも物凄く重たいって事だけど」


 って感じに、俺が試しに切り取った……手の平程のアダマントタートルの甲羅の欠片を指差す。

 ちなみに地面にへこむ形で落ちている。

 大きさで言えば薄い金属片くらいなんだが、これだけで20キロ以上の重さがあるという驚異的な重量。

 砲丸投げでもするのだろうかって程の品だ。

 薄く切っただけなのにな。

 斬る為に飛ばした鉄の板がそれだけで陥没して使い物にならなくなった。


「出来る限り薄くして、プロテクターにするって話だ。当面の間、幸成の仕事になりそうだぞ」

「うえ……」

「とはいえ、薄過ぎると魔法無効もその分、性能が落ちるぞ」

「性能は良いけど、滅茶苦茶使い辛い素材だよな」


 萩沢の言葉に俺も茂信も頷く。


「ガウー」


 クマ子が重量挙げとばかりにアダマントタートルの甲羅の欠片を持って筋トレを始めたのが印象的だったな。

 ちなみにクマ子も能力拡張を果たした。

 分厚い毛皮という、防御力が上昇する拡張能力だった。

 そんなこんなで魔力回復を持つ能力者が招集され、俺はしばらくアダマントタートルの死骸を解体する仕事に追われた。



「あーやっと終わった」


 一週間程、連日アダマントタートルとフルメタルタートルの解体を終えた俺はやっと茂信の工房に戻ってきた。

 茂信達は討伐二日後辺りには城下町に戻って修業に戻ってしまったからな。

 ま、夜になると転移で帰って来れるから会わなかった訳じゃない。

 だけど忙しくてあんまり話をする暇が無かったって感じだ。


「おかえり、幸成」

「おー」


 茂信が工房で武具の強化をしている最中だ。

 何でも冒険者達に色々と素材と一緒にポイント、金銭をもらって武具の強化をしているそうだ。


「かなり割高なんだが、一応客が来て助かってるよ」

「俺の所もだな。まだ素材とか集める事が出来てないから相手の持ち込みだけど」


 賑わってるな。

 俺も手伝うか、と茂信が書いた依頼書を読む。


「強化と付与の依頼が多いな」

「店が少ないらしいから割高でも渋々って感じに来てる」

「へー……」


 とは言っても受け取った客が驚きの表情で品を見ている。

 良い意味で笑顔を向けてくれている。

 高いだけあって良い仕事をしていると思ってくれたのだろうか?


「で、羽橋の方はどうなんだ?」

「ああ、アダマントタートルやフルメタルタートルの素材は城の倉庫に輸送する事になった」

「ガウー」


 クマ子はフルメタルタートルの甲羅で作った鉄アレイを愛用してる。

 後でサンドバックでも萩沢に作ってもらうか考えておくか?


「必要になったら取り寄せ出来るってさ」

「おおー……」

「後は茂信がいらないと判断したなら国が高く買い取ってくれるってさ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 頭と心臓破壊されても死なない亀って盾の勇者の成り上がりにでてくる霊亀のことなのかそれとも別の作品なのか… この小説の前に読んでた小説が盾の勇者の成り上がりだから運命感じるレベルの偶然でなんか…
[一言] これ最初に言ってるの盾の勇者なんだよね〜
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