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ライクス金貨

「物にもよるし、荷物の権利とか面倒な事が多いけどさ」

「……ちょっと話をしてきます」


 ラムレスさんがそのまま商人の方に聞きに行く。

 すると、困っていた商人の顔が明るくなって俺の方を向いた。


「物を能力で送ってくれるってのは本当か?」

「ああ、金次第で送ってやるけど……まずは何処に送るかだ」

「城下町の商会が管理する倉庫に頼めないか?」

「じゃあパーティーに入ってくれ。帰還の水晶玉で一度城下町に行こう」


 俺は視覚転移でこの村を登録し、商人をパーティーに入れてみんなで帰還する。

 一応、それでLv上げのパーティーは解散となり、クラスメイトは家に帰る。

 だけどラムレスさんは俺の監督として同行する事になった。


 で、一緒に城下町に来た商人が、自身が持ちこみたかった商会に案内し、荷車を停める場所へと案内してくれた。

 確かに倉庫って感じの場所だ。


「じゃあ転移で取り寄せるから待っててくれ」


 俺の魔力で荷車を取り寄せられるか?

 足りなかったら、実さんを呼んでから再度使用するかな?

 そう思いながら視覚転移で映っている荷車を指示する。

 事前に俺の持ち物であると共有を施しているから……大丈夫だろう。

 詠唱が始まる。


「場所は指定したから気を付けてくれよ。その場所にいたら押し潰されるから」

「は、はい」


 俺が異世界人だと知って商人は物怖じしているようだった。

 やがて五分経過し、転移が作動して目の前に荷車が三台出現する。

 ぐ……やっぱりごっそり魔力が減った……こりゃあ一度休まないと厳しいな。


「おお!」


 商人が自身の荷車に乗って、荷物をチェックする。


「こりゃあすげえ! あの距離をこんな短時間で移動させちまうとは」

「毎回ってのは難しいけどさ、どうだった?」

「凄く助かりました! 遠方からやっと持ってきた物品だったんで」

「どう致しまして」

「じゃあ今回の報酬を渡すぜ。もしかしたら金を出せば遠方の品とかも届けてくれるのか?」


 俺が返事をする前にラムレスさんが間に入る。


「御禁制の物か入念にチェックする事になりますが、よろしいでしょうか?」

「あっちで十分にチェックしてくれるなら良いに決まってんだろ。腐りやすい珍品とかを一瞬で持って来れるなら良い商売になるんだからよ」


 ああ、なるほど。

 過去の日本で言う所のバナナとかその辺りの品に該当する問題かな?

 氷の魔法とか使えばどうにかなるけど、どっちにしても輸送に時間が掛る。

 鮮度が命の品……生物を生のままで持って来れたら良いに越した事は無い。


「……ハネバシ様次第ですが、どうでしょうか?」

「物にもよるかな。後、何だかんだで持って来れる量はある」

「もちろん、それも承知の上だ。とにかく、助かった」


 と、商人は俺に通貨をくれる。

 えっと、この国の通貨はライクス硬貨ってまんま国の名前だなぁ。

 ライクス銅貨、銀貨、金貨だそうだ。


 物が物で、土砂崩れで時間が掛る事もあって、ライクス金貨を1枚くれた。

 要するに金貨1枚の仕事を一発で手に入れたって事か。

 かなり良い仕事かもしれない。

 しかも俺はポイント相転移で通貨を変換できる。


 うん、結構良いかも?

 問題はこの通貨の相場とポイントが同じかどうかって話だけどさ。

 土砂の除去もやろうかとラムレスさんに相談したが、除去要員が既に出発しており、彼らの仕事を奪ってしまうので今回はやらなくて良いとの話だ。


 なんでもやれば良いって事じゃないらしい。

 異世界人が仕事を奪えば、奪われた人は不満に思うだろう。

 こちらは他所者だからな。

 余計な波風を立てて、クラスのみんなに迷惑を掛けたら意味が無い。

 この辺りは、これからの事を考えて慎重にいかないとダメかもしれないな。

 出来る限り、この世界の人達とは上手く付き合っていかなきゃいけない訳だし。


「じゃあ何か用事があったら出かけるついでに聞いて見て欲しい」

「贔屓にさせてもらいますよ」

「ガウガウ」


 ってな感じでその日は仕事を終えて、茂信の工房に戻った。

 工房に入る時、ラムレスさんが一礼する。


「それでは、また近日お会いしましょう」

「ありがとうございました」

「ガウー」


 俺が手を振るとラムレスさんが笑顔で振り返し、立ち去って行く。

 城に戻るようだ。

 色々と報告をする事があるんだろう。

 丁寧な対応だったなぁ。

 なんて思いつつ、茂信の工房に入る。


「幸成、おかえり」

「お、羽橋、帰って来たか」

「ただいま」


 工房に入ると、暇そうにしている萩沢と工房の鍛冶場で火を焚いている茂信が出迎えてくれた。

 萩沢はともかく、茂信は仕事の準備中って所だろう。


「幸成、Lv上げはどうだった?」

「んー……三日出かけて現在のLvは21って所だな」

「思ったよりも上がってねえな」

「安全にLvを上げる感じだったよ」

「順調って所なのか今一つわからねえ感じか」

「まあな」


 ぶっちゃけて言えば少し退屈な戦いだった様な気がしなくもない。

 クマ子との連携の練習って感じだったな。


「後は帰りがけに――」


 先ほどの出来事を俺は報告する。

 すると茂信も萩沢も感心した様に声を漏らした。


「なるほどなぁ。確かに物の転移で幸成は金を稼げそうだ」

「適職ってのは確かじゃないか? 安全に装備を稼げるだろ」

「そうなんだけどさ」


 と、ライクス金貨をテーブルに置く。


「これって変換するとどれくらいになるんだ?」

「相場が良くわからないのが現状かなぁ」


 とりあえずポイント相転移でポイント化をさせて見る。

 すると、合計五万ポイントに変換できた。

 多いのか少ないのか、微妙なラインだ。


「五万ポイントになったぞ」

「つまり日本の通貨で五万円分の仕事って訳だな」


 ……ライクス金貨一枚五万円相当って事か。

 この短期間で五万は美味しい。

 考えてみれば帰還の水晶玉が100万の価値があるんだから、転移で物資を運ぶ、というのは俺が考える以上に稼げるのかもしれない。


「短時間でこれだけ稼げるなら一発大きく稼ぐ事も出来そうだな。まあLvは上がらなそうだけさ」

「装備品の強化もまだ先って所だろうしな」

「ガウー」


 今は何にしても経験値が欲しい。

 確かに金がないと装備を揃えられない。

 だけど、今の所困っていないしな。

 依藤の方のパーティーで戦うなら必要になるんだろうけど、現状俺が戦う相手だと装備に困ってはいない。

 その依藤はパーティー編成の時、別の狩場に行ったしな。

 今頃何をしているんだろうか。


「俺の方はそんな感じだな。茂信達の方は?」

「あー……まあ、鍛冶師の工房に体験入学って感じでここ三日通った」

「どうだった?」

「やっぱり凄いな」


 茂信の話だと、鍛冶場ってのは男の世界で、色々と力仕事をさせられたそうだ。

 鍛冶師になるには最低限、鍛冶系の能力を発現させなければならず、発現した物であっても剣作成等のカテゴリーが決まっているそうだ。

 下っ端辺りに嫉妬の目を向けられはしたが、下手に強く当たると国に文句を言われるそうだ。

 で、親分辺りが茂信の作った品を鑑定したらしい。


「効果は優秀、性能は高いが、構造に無駄があるな。使用したポイントも多い……もっと作りに打ち込むしかねえぞ」

「はい!」


 で、茂信は三日ほど真剣に打ち合ったけど、あんまり上手くなった気はしないそうだ。


「能力補正で優秀な武具は作れるんだけど、未熟な所の皺寄せがポイントに掛っているらしい」

「つまり茂信の武具は性能は優秀だけどコストが割高って事か」


 俺の言葉に茂信ががっくりしながら頷く。


「相場の倍も掛っちゃウンザリもするさ」

「うえ……」

「とはいえ、作れる範囲が広いし、基礎さえ覚えれば使い物になるだろうってお墨付きは貰った」


 かなり優秀だから、鍛えてもらう事も考えていたんだけどなぁ。


「これだけ聞くと坂枝がスゲー才能あって、伝説の鍛冶師になれそうだな」

「鍛冶場の親分も同じ事を言っていた。期待が重たい」


 茂信にしては珍しくがっくりと来てる。

 確かに量産品には向いていないかもしれないけど、上質な武具を作れるんだ。

 ポイントさえどうにか出来ればどうにかなるはずだよな。


「どっちにしても技術を学ばないと先に進めない。しかも付与や強化までカバーしてる鍛冶師は少ないそうだから、ここで店を開く日があっても良いみたいだ」

「おお……やったな」


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