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魔力転移

「経験値が思ったよりも少ないんだけど、これって何か法則がある訳?」

「はい、ありますよ」


 ラムレスさんに話すと教えてくれた。


「自分達よりも格上の魔物には経験値の補正が入ります。とはいえ限界は1,5倍程度ですけどね」

「そうなのか」


 じゃあ谷泉達に思ったよりも早く追いつけそうだとか思っていたのは、その補正のお陰だったんだな。

 何だかんだで装備品で格上と戦い続けていたって事なんだろう。

 それにしてもネットゲームの経験値獲得みたいな法則だな。

 今更だけどさ。


「能力による影響と言うのもありますよ。戦闘向けと分類される能力者は総じて必要経験値が多めになる傾向があります」

「転移って戦闘向け?」

「どちらかと言うと人々の生活の役に立つ分類かと思いますが……すいません」

「どっちに分類するかわかり辛い……生産と戦闘の間みたいなポジションか」


 俺の返答にラムレスさんは頷く。

 ゲームとかでもよくあるタイプだ。

 商人とか、錬金術師とか、鍛冶師とかがその系統だよな。

 戦闘も若干出来る、みたいな。


「あまり無茶をしては命が幾つあっても足りませんよ? ハネバシ様は他の皆様からも大事に扱って欲しいと言付かっている方なので」


 ラムレスさんの言葉に同行しているクラスメイトも頷く。


「……うん」


 焦る気持ちはあるけれど、今は着実に実力を付けて行くしかない。

 その日の狩りで俺はLvが19まで上昇した。

 元々森を抜ける為に18まで上がっていたので、順調かと言われると微妙なラインだな。

 一緒に来たクラスメイトは12だったのが16まで上がったらしいから良い感じだけどさ。

 拠点組の能力者だったからLvも低めだったし。

 どっちかと言うと低い人を底上げする班に回った感じだ。

 これでクラスメイトが死に辛くなるなら良い。



 夜……ラムレスさん達が見張りをする形でキャンプする事になった。

 俺は転移で城下町の食べ物屋から物資を調達してみんなに届ける。


「助かります」

「他に必要な物はある?」

「大丈夫ですよ」

「ところで気になっていたんだけど……」


 俺はクマ子を撫でながらラムレスさんに尋ねる。


「何でしょうか?」

「昼間、ラムレスさんの能力がライクス流槍術って聞いたんですけど、それと異世界人の能力は何が違うんですか?」


 若干質が低い能力をこの世界の住人は習得すると聞いた。

 この違いがどうもよくわからないので尋ねる。


「そうですね……わかりやすく説明すると、槍術とライクス流槍術だと、範囲でしょうかね」

「範囲……もしかして槍術の方がいろんな流派まで完備してるって事ですか?」


 俺の質問にラムレスさんは頷く。


「そう聞いています」

「なるほど」

「確かハネバシ様が使役しているパンチングベアーの能力はボクサーかと思います。これも、体術の能力ならば完備されている事になりますね」

「ガウー」

「へー……」


 なるほどなぁ。

 つまり流派すらもカバーする強力な能力……だからこそ、上位能力として歓迎されているって事なのか。


「じゃあ魔法とかも能力が無いと使用できないんだ」


 ポツリと呟くとラムレスさんは首を横に振る。


「いいえ? 魔法は努力次第で習得する事が出来ますよ」

「そうなの?」

「はい。とはいえ、能力との併用をされますとその限りではありませんが」

「じゃあ俺もがんばれば習得できる?」

「出来ると思いますよ」


 おお……ここに来て、強くなる方法が開けた感じだ。

 どんな風に使う事が出来るかはわからないが、覚えて損になる事は無いだろう。


「じゃあ炎とかの能力と魔法って違うんですか?」

「難しい質問ですね。能力で出す魔法は呪文などを覚える必要もありませんし、応用が簡単です。ですが魔法となると詠唱は元より、詳しく設定しないといけないプロセスがあるので難易度が上がるんですよ」


 谷泉が使っていた能力を思い出す。

 炎を自在に、まさに思い通りに操っていた。

 それに比べて魔法は使い辛いって事なんだろう。


「簡単なのだと応急手当てが出来るエイドと呼ばれる魔法がお勧めでしょうか。劇的な効果はありませんが、手頃で優秀ですよ」

「確かに、回復は重要ですよね」


 戦闘中じゃなくても良いし、戦闘中に必要な状況になった時点で撤退を視野に入れるべきだ。

 実さんの拠点回復があれば良いんだけど、実さんの能力は安全な場所にあった方が効果が大きい。

 実際、実さんは教会で働いているしな。


「今度、良い魔法使いを紹介しますよ。異世界人の皆さまは挙って習得して頂ければ良いと思います」

「うん」

「ガウー」


 なんて話をしていると、応急手当に関しては一歩先を行きたいのかクマ子が俺をぺろぺろと舐めながら自己主張する。

 確かにクマ子がいるなら回復よりも別の魔法が良いかもしれない。


「ああ、そういやお前は出来るもんな。回復」

「ガウ!」


 そんな様子をラムレスは何か微笑ましいって感じに笑う。


「仲がよろしいんですね」

「テイミングしちゃったからなぁ……一緒にがんばっていくしかないさ」


 なんかみんなに俺の世話を頼まれてるみたいだし、クマ子。

 俺の保護者って感じ?


 まあ、そんな感じで三日程、狩りに出かけた。

 お陰でLvが21にまで上昇した。

 ちょっと遅れ気味な気がするけど、格下だから少し時間が掛る。

 次に狩りに出た時はもう少し上の魔物と戦う感じになりそうだ。

 で、20になった時の事。


「えっと……魔力転移?」

「ガウ?」


 拡張された能力を確認して俺は読み説く。

 どんな能力なんだろうか?

 試しに使用してみると、魔力をどれくらい消費するか指定される。

 次に……傷舐めをして回復してくれたクマ子に掛けて見た。

 詠唱時間が発生した。30秒くらいか。


「ガウー」


 するとクマ子の魔力が回復して俺の魔力が減る。

 もちろん、魔力転移に必要な魔力を差し引いての事だけどさ。


「どうやら魔力を他者に分け与える拡張能力みたいだ」

「譲渡系の能力ですか……中々優秀な能力だと思いますよ」

「ありがとう。とは言っても、使う機会がそれほどあるかわからないけど」

「応用の幅はあると思います。何せハネバシ様は異世界人なのですから」


 確かに今までの傾向から言って、応用が出来るはずだ。

 そう思って俺は試しにラムレスさんに魔力転移を指定してみる。


「おや? 私にも項目が出ましたね。了承の問いと……何かあるんですね?」

「うん。ちょっと出来るかと思ってさ」


 次に別のクラスメイトを指定する。


「えー……こちらは分け与える魔力量の項目に変化しましたね」

「どうやら俺だけって事じゃないみたいだ」

「おお、これは中々に優秀ですよ。魔力を共有出来るとなると、いざという時に役立ちます。大規模な魔法を唱えている最中に譲渡出来るのですから、長時間の詠唱も出来るようになります」

「ふーん……」


 困った時に共有可能っと。

 実さんの拠点回復だと時間掛るから便利なのかな?

 他にも魔力の回復方法はあるけどさ。

 まあ、こんな物かな?


 そんなこんなで帰還するかと、近くの村に立ち寄った時の事。

 大量の荷車が村に待機している様だった。

 確かこの先は山道だったはずだが……これから出発するのかな?


「いやぁ……困っちまったな」


 で、村の連中と商人っぽい奴が相談している所に遭遇した。

 何に困ってるんだろう?

 俺達は帰還の水晶玉で帰る所だけど。


「少々お待ちを」


 ラムレスさんが商人に近付いて話を聞きに行く。

 国の騎士だから何に困っているのか気になっているんだろう。

 国民を大事にする騎士か。

 騎士の鑑みたいな感じだな。

 で、ラムレスさんは商人としばらく話をしてから俺の所に戻ってきた。


「どうやらこの先の山道が土砂崩れで通行不能になってしまったそうで、立ち往生しているとの話です」

「へー……城下町に積み荷を運ぶんだったら帰還の水晶玉を使えば良いんじゃないの?」

「アレは希少なものでして、一度使用するとしばらく使用不可能です。しかも同様の能力であの積み荷を運ぶと随分とポイントや魔力を使用するんですよ」

「そうなんだ?」

「はい。そもそも帰還にしても輸送系の能力者は珍しく、常用出来る環境ではありません」


 そういえば、クラスメイトの中で該当能力を所持していたのって俺とめぐるさんだけだったもんなぁ。

 なるほど、異世界人でもその手の能力は希少なんだな。


「土砂崩れの方は二、三日あれば復興する予定で、既に国の者が派遣されたそうですけど……」


 それなら……。


「金銭をくれるんだったら俺が転移で城下町に送り届けようか?」


 無料で仕事を請けないで下さいと再三にわたって注意された。

 どうも異世界人を便利屋だと勘違いされるといけないらしい。

 過去にそれで色々と問題が起こったそうだ。


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