表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/233

付与転移

「便利と言えば便利だな、実さんがいれば大量に物を運んで行ける」

「完全に幸成くんのお仕事が取っちゃう能力になってる」

「拠点でね。内緒にしてるから問題なし」


 まあ、戦闘組が実さんを15まで育てた頃だと俺はお払い箱扱いになってしまう訳だが。


「どうしてこうも能力が被るんだろうね」

「タイプが違うけどな」

「めぐるさんは道具も転送できるけどあくまで投擲で仕留める。幸成は物しか飛ばせないけど、攻撃にも使用可能で引き寄せる事も出来て命中すると必殺。実さんは異空間に倉庫を出して取り出せる」

「攻撃に使用できないのか? 魔物を吸いこんで仕留めるとかさ」

「んー後で実験してみましょうー」


 で、実験の結果、出来ない。

 あくまで物を仕舞えるだけのようだ。


「後、入れておける数はそんなに多くないみたいだよ?」

「ふむ……どっちにしても使い方次第って能力みたいだね」

「輸送する時とかには便利そう」

「穴の入口に入る物限定みたいだけどね」

「大きな木とかは?」

「そのままじゃはいらないと思います」


 ホント、細かくしておいた物って感じみたいだなぁ。


「良い能力だと思うし、利用して行けば良いよ。俺の能力は詠唱に時間が掛るし」

「そう、だね。倒した魔物とか鉱石とかあまりにも重かったら幸成くんにお願いしてめぐるに転送してもらいましょう」 

「……最悪は萩沢にポイントにしてもらえば良いしな」


 本末転倒だ。

 今の俺達には必要な装備を作る為に素材とポイントを集めている状況だ。

 そこまで倉庫とか使用する訳じゃない。


「だけど、包丁とか取り寄せた物を隠すには実さんの倉庫は役立つと思う」


 ぶっちゃけ日本の自宅に隠すのって面倒だし、親にばれるのが怖い。

 なら実さんに預けるのが妥当な所だろ。


「仮に戦闘組にLv上げをさせてもらった結果、話さないといけなくなった場合、誰かに倉庫内の物って見られる事があるのかな?」

「わかりませんが……」


 実さんの出した倉庫の中を確認する。

 うーん。物を入れても何処にあるのかよくわからない。

 取り出したい物をイメージすると出せる感じ……。


「青いロボットのポケットみたいだな」

「ああ、確かに」


 四次元倉庫って感じ。

 あれって確か欲しい物を思うと引き寄せるとか聞いた気がする。

 アニメだと探している描写があるけどさ。


「じゃあー幸成くんの転移で引き寄せる事が出来るのかな?」

「え? うーん……やってみる」


 俺は実さんの出した穴に顔を突っ込んで登録、実さんから包丁を受け取って穴に投げ入れる。


「じゃあ閉じるね」

「ああ」


 それから俺は視覚転移を作動させて実さんの倉庫内を確認する。

 ……見えるな。宙に浮かぶ包丁の姿が。

 転移を作動させて引き寄せる。

 5分後、俺の前に包丁が出現した。


「おお……これなら実さんが留守でも幸成がいれば安全に物を引き寄せられる」

「いやいや、前と同じだろ」


 俺の部屋にある物とか茂信の工房にある物を引き寄せていた訳だし。

 尚、俺が取り出せるのは共有ボックスに入っている物だけのようだ。


「どっちにしても便利だな」

「戦闘向きじゃないけどね」

「道具作成の俺が現地で物を作らないといけない時にはどっちかが欲しい所だ」


 まあ、萩沢はな。

 それでも本格的な物は機材が必要らしいがな。


「良いからLv上げに行こうぜ。一日でも早く強くなった方が良いだろ」

「そうだな」


 そんな訳で俺達は夜間戦闘を続けた。

 この頃になると茂信に強化して貰った防具のお陰でそれなりに奥地へ行けるようになってきたと思う。

 ポイントは稼ぎやすくなったし、素材もどうにかなる。

 移動に関しちゃめぐるさんが居る分、広範囲で移動可能だ。


「おっと! また魔物が出てきた見たいだぞ」


 オリーブドラブモンキーデビルという無駄に名前の長い魔物が三匹出てきた。


「デビル? 悪魔か?」


 最近だと凶悪そうな魔物も出てくる。

 魔法だってバカスカ撃ってくるのが増えて来て、厳しい。

 とはいえ俺はカンガルーのグローブを装備しているので、ある程度動体視力で避ける事が可能だ。

 カンガルーステップという能力も独自のステップで結構高く、跳躍可能になる。

 なんて言うかワイヤーアクションをしているかのような動きが可能となった。

 少し悲しいけどさ。


「ムキャー!」


 緊張感の薄れる泣き声だな……。

 オリーブドラブモンキーデビルが大きく息を吸って指で何か形作っている。

 この動きから察するに口からは何かしらの息、手からは魔法だろう。

 ここまでの道のりで魔物達の行動に慣れてきた俺達は即座に分析する。


「させるかよ!」


 萩沢が手慣れた様に爆弾を投げる。

 ポイントに余裕があるから、冒険初日に作った爆弾をいざって時に投げられる様になっている。

 命には変え難いもんな。

 オリーブドラブモンキーデビルの前で爆弾はさく裂し、奴等に音と爆発のダメージを与える。

 息を吸って吐こうとしていた瞬間なので、大きく隙が出来ていたオリーブドラブモンキーデビル達は意表を突かれる。


「行くぞ!」


 そこに俺が跳躍して腕を回転させながら目の前に着地、一番前に居るオリーブドラブモンキーデビルに風の拳をぶつける。


「ムキャ!?」


 先頭のオリーブドラブモンキーデビルは大きく吹き飛ぶ……が、この程度で致命傷であるとは思えないので、吹っ飛ぶのを追いかけて追撃のワンツーパンチ。

 グチャっとトドメを刺せた感覚を頼りに振り返る。

 すると既にめぐるさんが一匹を切伏せていた。

 残りの一匹は茂信と萩沢、実さんの三人でフルぼっこにされて、倒れる瞬間だ。


「よし! 良い感じだ!」


 勝利に腕を上げる。

 ちなみにこのモンキーデビル。

 谷泉達以外の戦闘組が最近、良く倒している魔物らしい。

 俺達でも倒せる魔物を相手に、地道なLv上げをしている最中って事だな。

 まあ、防具の強化無しじゃこの辺りが相場……って事なんだろう。


「お?」

「上がったね」


 Lvアップ!


 能力拡張! 付与転移が出来るようになりました!


 俺のLvが15に達した。

 同時にめぐるさんもLvアップしたみたいだ。

 地味に強いみたいで経験値が多めだったもんなぁ。

 遠隔で狩るって言っても視覚範囲内に魔物が休憩でもしてないと狩り辛い。

 さて……この付与転移って何だろうか?


「確か二人とも15になったんだよな。どんな拡張が出たんだ?」

「えっと……」


 付与転移とポイント相転移だったら、新しい方を説明すべき……だよな?

 付与を転移って何を転移させるんだ?

 うーん……。

 ゲーム的な感覚だと付与効果を転移させられる物だよな。

 こっちの方が使えるだろ。


「付与転移だとさ」

「付与転移?」

「試してみる」


 俺は持っているグローブに付いている付与効果を確認しながら付与転移を作動させる。


 どの武具を指定しますか?


 やっぱりな。

 俺はグローブを指定する。

 が――


 固定付与効果は転移出来ません。


 とか出やがった。


「……このグローブだと失敗した。固定付与効果は転移出来ないって」

「考えられるのは後で付けられる付与って事だろう」

「茂信、お前の鍛冶とかじゃないのか?」


 俺の問いに対して茂信は萩沢を見る。


「萩沢が作れる物にあった聖水の付与じゃないのか?」

「ああ、武器に掛けるとしばらく聖属性が付く奴な」


 ホント、時間制限が付くアイテムで、悪魔系に効果があるっぽい。

 その時に武器に付いているんだよな。


「じゃあやってみるか」


 萩沢が聖水を取り出して包丁に掛ける。

 これでこの包丁は一定時間、聖なる包丁になった訳だ。

 俺は萩沢が持っている包丁を指名して付与転移を作動させる。


 どの武具に付与効果を転移させますか?


 素早く、萩沢の鎧に転移させてみた。

 あ、ポイントが減ったぞ。

 魔力も使うみたいだな。

 しかも効果が弱体化するっぽい。


「おー……地味」

「うっせー」

「しかも時間制限付きなのは変わらねえ!」

「ありそうなのは茂信くんの拡張能力辺り?」

「だな。となると坂枝の次の拡張候補が何かわかったな。修理か付与だ」


 盛大なネタバレを見せられた様な気分だ。

 茂信の将来性に期待だな。


「まあ出来れば良いんじゃないか? どうやって付与をするのかやってみないと分からないけど」

「ポイントを使って好みの効果を付与できると良いな」


 色々と武具にベタベタと張りつけて一点物の装備とか作れそうだ。

 序盤中盤が微妙だけど、効果の強いアイテムが出て来る終盤に最強の武具を作れる様になる感じだと良いな。


「きっと一度付けると外せないんだろう。それを幸成が別の武具に付けられる様にしてくれる」

「そう思うと便利な能力になりそうだな。劣化するらしいが」

「やってくれる相手がいないと意味が無いけどなー」


 と、感想を述べている最中……めぐるさんが俺達の説明を聞いていないのか、能力確認したしたまま固まっていた。

 どうしたんだ?


「めぐるさん?」


 俺が尋ねるとめぐるさんがハッと顔を上げる。


「どうしたの? 何か変な能力に目覚めちゃった?」

「えっと……」


 みんなしてめぐるさんを心配する様に見つめる。

 本当にどうしたんだろうか?


「今回拡張した能力は……異世界転送って拡張能力……みたい」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ