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蜂蜜

「そこはポイント稼ぎをして装備品を鍛えながらコツコツと行くしかないのかな?」


 かと言って悠長に構えていたら戦闘組を見返す事が出来ない。

 まあその限りじゃないか。

 森を抜けられれば俺達の勝利の様なものだ。

 拠点組を全員揃えてめぐるさんの転送で送りだせば谷泉達の天下が終わる。

 安全な街であれば拠点組の能力だってバカには出来ないからな。

 もちろん、安全な場所である事を確かめる前提だけどさ。


「奥へ行くほど魔物が強くなる法則なのか、よくわからないのが怖いよね」

「そうだね」


 ロックリザードのいる岩場を越えたらワラビーだろ?

 その後もそこまで強い奴はいなかった。

 もう少し先には強い奴が居るのかもしれないけど、強さがまばらだ。


「強くなる事も重要だけど、もっと重要なのは森から出られるかもしれないって事だと思う」

「上手く森から出る……うん。そうなればもっと良くなる。今の私達の行動が無駄にならないよね」


 そうだ。

 俺達の勝利条件はまだ沢山あるんだ。

 なんて話をしながらめぐるさんの能力の再使用時間まで待つ。


「今の内に他の箇所にメタルタートルとか徘徊していないか見ておくね」

「うん。とは言ってもそっちはイメージが出来るか分からないなぁ」


 わかりやすい目印が無いと狙えないのが問題だな。

 めぐるさんの千里眼が羨ましい。

 俺もLv10になったら覚えられたら良いな。

 そうすれば拠点にいる状態で魔物を倒せる。

 そんな感じで茂信の工房に戻って次の狩りに備えた。



「ふー……なんつーか狩りに出かける時が一番リフレッシュ出来る気がする」


 萩沢が背伸びをして答える。

 まあな……拠点ってピリピリしてて息が詰まる感じだもんな。

 最近じゃ結界と料理人が特権階級の様な態度をし始めている。

 日に日にその色合いは濃くなってきた気がしてならない。


 まあ、料理の方はピッグの発見と共に若干冷静になったっぽいけどさ。

 露骨に肉として食いやすそうな魔物が出てくるお陰で、頼まれるのは付け合わせの野菜とかスープになっている。

 ホーンラットを食えるように加工する仕事から卒業できたのは運が良いんじゃないかと思うんだけど、奴なりに焦りがあるのだろう。


「俺は茂信派に所属出来て運が良かったって思ってるぜ」

「そう思ってもらえると、茂信の友達である俺も嬉しいよ」

「ああ、特に羽橋、お前の事は見直したぜ。MDバーガー食わせてくれたしよ」

「褒めたって何も出ないぞ? あれだ、どうせまた食べたいジャンクフートでもあるんだろう?」

「ばれたか。今日は寿司が良いな」

「寿司って……お前な、地味にポイント食うぞ?」


 値段が高いという意味で。

 ていうか寿司ってジャンクフードか?

 一皿一皿の値段で言えば、まあ……。


「わかってるって。ま、ドーナツとか焼きそばパンが食いたいな」

「無難な所を攻めてきたな。まあ、それなら取り寄せられるか」

「ふふ、大くんは幸成くんが取り寄せる食事が日々の楽しみになっているんですね」

「当たり前だろ! じゃなきゃあの環境で我慢なんて出来ねえっての」


 日々の食事こそが楽しみか。

 俺だってそうなりつつある気もする。


「つーわけで飯を取り寄せられる分だけのポイントを今日も稼ぐぜ!」

「その調子で行こう。萩沢、お前じゃないとわからない植物とか素材があるだろうし、頼んだぞ」

「おうよ!」


 この威勢の良さ、内緒の狩りを始めた頃とは随分と変わってきたな。

 良い変化……だと思いたい。


「大くんみたいに他の拠点組の子も誘えると良いんだけどね」

「……いろんな意味で危ないと思うぜ。とはいえ、いつかここに来る前の様な環境にしたいって思いは同じだ」

「そうだな。俺もポイントを使って取り寄せられる事はいつか話したいと思ってる」

「絶対に注意するんだぞ? じゃなきゃ……飯にあり付けなくなる!」

「ばれたってその辺りはちょろまかして取り寄せてやるくらいはしてやるよ」

「だが、怖いのは羽橋の命だな」


 ……そうなんだよな。

 それが怖いから今まで隠していた訳だしな。


 間違いなく谷泉に狙われるだろう。

 俺の機嫌一つで日本の物を手に入らない事になりかねなくなった場合、谷泉は面白くないと思う。

 その場合にする事は事故に見せかけて俺を殺すとかだろうし、それでなかったとしても日本の物の独占だ。

 茂信や飛山さん、姫野さん、他の級友達を人質にしないとも限らない。

 結局は当初の予定通り、探索をして行く事になるんだな。

 早く森を抜けて、もっと安全な場所に出られれば……。


「という訳で早く魔物を狩るぜ! 俺の新しい爆弾が唸る……ようにはしない様にな」

「ポイント食うもんな。萩沢の能力」

「ああ、出来れば肉弾戦で行く。あれは切り札な」

「ポイントを貯めて二本目のメタルタートルの剣辺りが欲しいなぁ」


 めぐるさんがポツリと呟く。


「防具は?」

「もちろん、そっちも重要。だけどメタルタートルの素材をプロテクターにしてるから結構助かってる」


 だよね?

 なんて感じに俺達は探索を続けたのだった……。



 探索を始めてから三日が経過した。

 どうも谷泉達戦闘組が出撃する方向を変えた以外は特に大きな変化は……表面上無い。

 ただ、問題として実さんが谷泉達に強引に誘われる様になってきた所だろうか。


 魔力の回復までカバーできる実さん、確かに有能だよね。

 まあ、魔力の回復自体は他にも何人かはいるそうだが。

 魔力交換とかその辺り。

 最悪、小野に任せるとかしてるっぽい。


 たぶん、魔物との戦闘で魔力の枯渇が問題になってきたんだろう。

 茂信の話では武具の類に魔力の回復を早める物が無いかを模索しているとか。

 後は薬草類やハチ型の魔物の巣で手に入る蜂蜜を重点的に集めて行く方針だそうだ。

 他に料理担当が作る弁当類で誤魔化すらしい。

 魔物によってはそういう物がある様だ。


「そろそろ拠点組を育てていく方針になるのか?」


 会議って訳じゃないが朝にはプレイヤー組で何処に挑むかを決めるらしい。

 茂信などの優遇された拠点組は招集される。


「言ったんだが……聞きいれてくれなかったよ」

「雑務なんだからそれこそ任せたら良いのにな」

「谷泉の話だと、脆弱な拠点組を戦わせる訳にはいかないそうだ」

「荷物持ちにさせるだけで経験値が入るのに、戦わせるも何も無いだろ。素直に育てるのが面倒臭いと言えば良いのにな」


 俺の言葉に茂信が同意する。


「幸成、蜂蜜って魔力回復の役に立つと思うか?」

「今度試してみる?」


 日本で買ってくる事くらい容易い。

 スーパーにでも行けば比較的安価で買えるだろうし。

 という事で試した結果……日本の物は無理だった。

 但し、実さんが魔力を付与させた物は効果あり。


「そもそも俺達の中で魔力が戦闘に結び付くのがいるか?」


 萩沢がウンザリした口調で答える。

 ……気付いてはいけなかったな。


「いないな……というか回復薬とか魔力薬とかは萩沢の担当じゃないか?」

「料理で代用できるだとさ。最悪複写して小野に作らせるんだと」


 何処まで萩沢を蔑にする気だ?


「谷泉って……RPGで回復アイテムをケチって戦うタイプなのかね?」


 あるだろ?

 薬草とかポーションを使わず、宿屋と回復魔法で全てなんとかする感じ。

 完全回復が出来る薬とかをラスボスを倒しても使わないプレイ。

 そんなノリなのかもしれない。


「かもしれないな。それよりも今後は良い装備を揃えるのが戦闘組の基礎方針らしい」

「ポイントが赤字になる様な狩りは極力避ける方針って事か。わからなくは無い。俺達も似た様な状況だったしな」


 まあな……正直に言えば実さんがあまりにも優秀な能力持ちなんだ。

 彼女とめぐるさんの協力が無かったら今の俺達は存在しないと言っても過言じゃない。


「そういやあまり関係は無いんだが、最近大塚が小野と仲良いな。絶対仲良くなれないと思ったのに」


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