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クリームピッグ

「とはいえ、掲げればワラビーを呼んで戦える道具って事だよな?」

「んー……」


 再度俺はメダルを掲げる。

 が、特に変化は無い。

 確認すると再使用の砂時計が浮かんでいる。


「連続使用は出来ないみたいだけどな」


 グローブを外して包丁に持ちかえる。

 俺専用のユニーク装備って事みたいだけど、残念だがボクサーをやる気は無い。


「つーか……なんだこの変な装備品は」

「だからユニーク装備なんだろうさ」

「能力を使わず、素手でストロベリーワラビーと戦ったからでしょうか?」

「たぶんそれが条件なんだろう。プレイヤー組は能力で倒すだろうし、包丁を使いはしたが、実際の戦闘では武器を弾かれた訳だし」


 その後、素手で戦った事によってストロベリーワラビーのボスに後を託されたってか?


「魔物の生態が理解できん」


 ワラビーの王者を倒したって事なのか?

 これがゲームだったならまた別だけど、意味がわからない。


「とりあえず死骸は転移させて飛ばすか」

「ああ、短時間に連戦だったけど、どうにかなったな」

「今のは忘れたい」


 アイテムを使ったら魔物を引き寄せるとか……サッサと潰して素材にすべきなんじゃないか?

 実さんの回復が済んでから移動を再開した……のだが、ワラビー共が俺達を見るなり逃げるようになった。

 まあ、強さは元より、経験値もあんまり良くないから無駄な戦闘を避けられるなら悪い手じゃ無い。

 というか俺専用装備となったグローブの所為だろう。


 そんな感じで森の奥へと歩いて行く。

 すると石造りの遺跡みたいな場所を発見した。

 ただ、木々に侵略されて、遥か過去に存在した遺跡って感じだ。

 こんな所に原住民とかいたら良いのだが……いないだろうな。


「なんかこう……文明の痕跡があるって事は何処かに人が住んでいてもおかしくないよね」

「そうだね。見つかれば俺達の目的は達成した様なものだけどね」


 めぐるさんとそんな雑談をしていると、新しい魔物が出現する。

 ブーブー鳴き声が聞こえて来る。


「食肉に良さそうな魔物だな」


 クリームピッグが3匹出現し、俺達に向かって走ってくる。

 外見は……豚だ。

 猪ではなく、大きな豚と例えるのが一番しっくりくる。

 名前もピッグだしな。


「これって……」

「谷泉達が食ってる奴だ」


 そうなのか?

 めぐるさんの方に視線を向ける。


「谷泉くん達が喜んで狩る魔物ね」

「ああ、戦闘組しか食べさせてもらえない露骨な肉な魔物だからな」


 もはや勝つ事を前提に俺達は話をしている。

 多少Lvが上がってきて余裕も生まれてきた、という事だろう。

 なんでもこのクリームピッグとやらは美味しいらしい。

 料理能力を使わなくても食べられる魔物、と言った所だろうか。

 戦闘組が試食した結果、拠点組に回って来なかったんだと。

 尚、料理と結界、大工が食べていて、残りの拠点組から顰蹙を買った……らしい。


「っと、気を抜かない様に倒そう!」

「おう!」

「了解」


 で、包丁片手に俺達はクリームピッグへ突撃する。


「だりゃああ!」


 思い切り振りかぶって、クリームピッグの喉を切りつける。

 グリュッとちょっと嫌な手応え、ブシューっと血が噴き出す。


「てい!」


 茂信が殴りつけるよりも前に実さんがクリームピッグの脳天をバールで叩く。


「ブギュ!?」

「ていていてい!」


 ゴスゴスゴス! っとクリームピッグが絶命するまで実さんが叩くけど……なんかその光景を恐怖してしまう。

 こう、持っている武器が武器だし、そういうゲームのキャラクターを見た事はある。

 ただ、実際に見ると……。


「ふう……」


 良い仕事をした、みたいな顔をして汗を拭ってるけどその手には返り血の付着したバールが握られている。

 うん。

 実さんは悪くない。


「は!」


 で、ノリノリなのはめぐるさんかな?

 クリームピッグを踊る様にすれ違いざまにメタルタートルの剣で切って通り過ぎる。


「またつまらぬ物を切った……だっけ?」

「ピギ!?」


 急旋回してめぐるさんへ追撃をしようとしたクリームピッグがバラバラになって崩れ落ちる。

 うーん……物凄く余裕を見せている気がする。

 それほど武器の切れ味が良くなっているお陰なんだろう。


「ロックリザードがこの辺りじゃ一番強いだけみたいだね」

「そうだね。その点で言えば、楽に戦えてるよ」

「Lv5まで地道に戦ったけど、それが生きてるって感じだね」

「もっと調度良い相手まで行って早く谷泉くん達に追いつかないとね」


 そうだ。

 俺達の目的は拠点組だって戦えるし、この先、何があっても生き残れる様に強さを見せて支配を解く必要がある。

 何もここにいる連中だけじゃなくったって良いし、何処か良い場所に移転出来るならプレイヤー組を困らせる為に移転するのも手なんだ。

 その為の探索、森を抜ける場所を探す事……やる事はまだまだある。

 それでも少しずつ、魔物と戦って行った方が良い。


「それで豚肉とかはどうしようか?」

「難しい所だなぁ……食べても良いけど、俺達じゃ食べきれない」

「かと言って拠点に持っていけないし……」

「皮も今の装備より下だし……申し訳ないけど放置しかない」

「とはいえ、少し持ちかえっておこう。帰って窯で焼いて食べれる」

「匂いがばれない様に注意するんだぞ」

「もちろん、ドサクサに紛れて焼くさ」


 茂信と俺の考えは一つだった。

 それと同時に案を閃く。


「前にもやったけど、谷泉に睨まれない為、匿名希望の善意を持った戦闘組が茂信に拠点組のみんなで食べて欲しいと渡してきたって事にすれば良いだろ」


 俺の言葉にその場に居た全員が頷く。

 現状、高級食材だし御馳走はみんなで共有しないとな。

 谷泉達に怪しまれない様、色々と考える必要はあるけどさ。

 そんな感じで肉を持ち帰る事にした。


「さーて、探索再開だ」


 なんて感じに俺達は割と勇み足で出てくる魔物を倒して行った。

 で、探索を終えるくらいまで歩いた頃だろうか?

 木々の種類がなんか変わった気がしてくる。


「何か危険な魔物が出てくるかもしれない。十分注意してくれ」

「うん!」


 そこで俺達はファンタジーの代名詞と呼べる生き物と遭遇した。


「ガ!」

「ドラゴン?」


 スカイグリーンミニドラゴンが二匹現れた。

 こう……蝙蝠の羽のようなモノを生やしたトカゲって感じの生き物。

 大きさは俺達の胸くらいの小型の魔物だ。

 トカゲ独特の顔に角が生えていて、牙は獰猛そう。


「……かなりやばくないか? ファンタジーの王道の魔物がミニとは言え出てきたぞ!」

「かと言って逃げるのか?」

「転送で逃げる?」

「まずは攻撃が通じるかを試してからでも良い。見かけ倒しかも知れない」

「了解、出来る限り注意して戦うぞ」

「はい!」


 で、前から決めていた隊列として俺とめぐるさん。茂信と実さんで一匹ずつ戦う事になった。

 近寄ると同時にスカイグリーンミニドラゴンが大きく息を吸いこむ音が聞こえた。

 こう……何をするのだろうか?

 やる前に攻撃を仕掛けるべきか決断に迷いそうになるが、まずは一撃を加えるべきか。


「だりゃあああ!」


 何か攻撃をする前に近づき……む、既に口から何かを吐こうとしている。

 咄嗟に横に避ける。

 すると。


「ガアアアアアアアアアアアアアア!」


 爆音みたいな声と共に空気の塊が発射された。

 避けたのが幸いしたが、俺の背後にあった岩が砕け散った。

 エアブレスって奴か?

 しかも鼓膜が破れるんじゃないかってくらいの大声、空気がビリビリと振動している。

 若干くらくらする様な気がするが。


「――さん。行くよ!」


 めぐるさんに視線で合図を送って俺が左、めぐるさんが右側に回り込んで、俺が尻尾を、めぐるさんが喉を狙って切りつける。

 ガッと、さすがに包丁でも切り辛い感覚で尻尾を半分切断する。

 だが、この程度ならば!


「てえい!」

「ガ!?」


 ザンと言う良い音と共にめぐるさんの斜め切りでスカイグリーンミニドラゴンの羽諸共切伏せた。


「次!」


 若干苦戦気味の茂信達の方に向かい、集団でスカイグリーンミニドラゴンを仕留める事に成功した。

 動けなくなったスカイグリーンミニドラゴンを全員でフルボッコにした感じだ。


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