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切れ味

 何故かめぐるさんは俺にメタルタートルの剣の持ち手を向けている。

 俺が使えという事か?


「あのさ、この中で一番Lv高いのは誰? めぐるさんでしょ」

「でも倒したのは幸成くんでしょ」


 めぐるさんに任せようとしたのだが、負けじと持たせようと張り合ってくる。


「ほら、幸成くんがアタッカーとして役立つように持ってもらえば」

「いやいや」

「何譲り合ってんだ?」


 萩沢の指摘に冷静になって一旦離れる。

 そこで茂信と実さんが若干呆れる様な眼を俺達に向けているのに気づいた。


「武具は共有しているんだし、必要になったら持ちかえれば良いじゃないか。まずはめぐるさんが持っておいてくれ」


 茂信の言葉にめぐるさんが渋々って様子で頷く。

 よく考えればめぐるさんは女の子で、戦いなんて実はしたくないのかもしれない。

 まあ、それなら俺に持たせる意味もわからなくもないか……。

 昨日の戦いを見ていたらすっかり忘れていた。

 うん、今度は俺が持つとしよう。


「後はこれだな。三着あるから前に出る幸成とめぐるさんは着てくれ。残りは俺と萩沢が使い回す」


 と、茂信が出したのは新しい防具だ。

 鰐皮みたいななめした皮の鎧……?


 ロックリザードの皮の鎧 付与効果 衝撃耐性


 ステータスで見ると今までの骨の胸当てよりは能力が高い。

 若干重く感じるのは骨の胸当ての軽量化に慣れていた所為かな?

 で、俺が分断したメタルタートルの甲羅の破片が肩とか肘の部分に付けられている。


「さすがにこれでもらったポイントを使い切った。元々俺達が使用出来る素材ではこれが限界だったけどさ」

「ロックリザードの尻尾についてた岩は?」

「黒曜石だぞ? 防具には向いてない」


 あー……なるほど、砕けるのか。


「あの魔物から作られた鎧かーなんか不思議な感じだね」

「MVPはめぐるさんだもんね」


 めぐるさんが恥ずかしそうに照れながら頷く。


「少しずつ装備が良くなって来てるね」

「こうして魔物を倒して素材で作ってもらっているとゲームみたいだと錯覚しそうだよ」

「まあな……だからこそ谷泉達戦闘組が勘違いしてしまうんだろう」


 確かに、今の俺達でさえも魔物を倒して強くなっていく、という感覚を覚えているんだ。

 どんどん強くなって今まで隣にいた級友を雑魚に見えてしまったらどうなるだろう?

 とはいえ、守ってやってんだって言い張って軟禁している状態をまともとは思わないけど。


「じゃあ出発だね」


 なんて感じに俺達は昨日の続きとばかりに移動を開始した。


「さーてと、昨日戦った魔物相手に試し切りと行きますか」


 こうして俺達は適当に探索を始める。

 すると早速、パープルマイコニドの群れに遭遇した。


「胞子に気を付けて。さっさと倒して行こう」


 包丁を持って俺が宣言するとみんな頷く。

 近づいてきたパープルマイコニドに包丁で……威力を試す為に横切りをしてみる。


「――!?」


 ズ……と僅かな手ごたえと共にスパンと、力を込め過ぎて転びそうになった。


「おっとっと!」


 見るとマイコニドの斬った傘が宙を舞っている。

 植物じゃなかったらグロイ光景になっていたな。


「うお!」


 俺の驚きと同じく茂信も同様の声を上げる。

 めぐるさんに至っては……。


「切れ味が良過ぎて……」


 何度も縦に切っていたみたいなのだが……マイコニドが平然と動き……しばらくしてバラバラに崩れ落ちた。

 うへぇ。


「たあ!」


 実さんもバールでマイコニドを叩いた。

 するとグチャっと派手にマイコニドが陥没して絶命した。


「すげ……」


 それ以外の感想が出て来ない。

 ボーンソードや黒曜石の剣じゃもう少し手ごたえがあったのに、雑魚化してる。


「そうだな。なんて言うか、驚きの結果になった」

「これも全て幸成くんのお陰だね」

「実さんの魔力補充のお陰だよ」

「そ、そうですか?」

「うんうん。みんなのおかげ。これならもう少し強い魔物のいる所まで行けるかも」


 めぐるさんの言葉に俺達は同意する。

 うん。これなら間違いなく昨日よりも先に進めるはずだ。


「この調子なら強い魔物を倒して防具の方にポイントを割けるか……」

「萩沢に頼まれた森で手に入る魔物以外の素材とかも探すのも忘れずに行こうぜ。硬そうな木の皮とかも防具に使えるかもしれないし」


 木の鎧とかも視野に入れるべきだろ。

 今の装備はなんて言うかコテコテな防具ばかりだし。

 オニオンシールドは歪んで既に使えないのが一個あるしな。


「強い魔物を倒してポイントも集めて行こうよ。メタルタートルの武器でこれだけ強いなら防具ならもっと凄いんじゃない」

「そうだけど……規格外に高額だからなぁ……」


 幾ら使ったんだよ? 萩沢や茂信の貯金の殆どか?


「刃渡りを削って安めに作ってこれだから、鎧となるともっと高くなる。今みたいに破片を所々に散りばめた方が良い」


 うへぇ……とはいえ、稼げないと始まらない。


「これだけ出来るならロックリザードがいる辺りでも戦えるかな?」

「余裕だと思いたい」

「余裕でしょ」


 そうだといいな。

 なんて感じで俺達は颯爽と、強くて撤退したロックリザードが出現する岩場へと足を運んだ。


「とはいえ注意してくれよ。防具はまだ中途半端なんだからさ」

「ロックリザードを相手にするには十分なんじゃないか?」


 ロックリザードを使った防具でロックリザードを倒すんだから釣り合いは取れるだろう。


「まあな……でも油断は禁物だ」

「もちろん」


 俺達は出てくる魔物を倒しながらロックリザードが出てきた岩場へと足を運んだ。

 相変わらず岩肌がむき出しの場所で断層が見える様な所だ。

 ゲームとかだと鉱石とか取れそうな所だよなぁ。

 ロックリザードがいるのも、そういう理由があるのかもしれない。


「シャアアア」


 なんて思っていると颯爽とロックリザードが姿を現した。

 色合いは……カーキーロックリザード。


「うわ。団体さんだな」


 群れで4匹もいる。

 結構大きな魔物なのに、四匹とか。


「状況次第じゃ撤退も視野に入れよう。めぐるさん、お願いするね」

「わかった」


 みんな揃って武器を取り出して間合いを測る。

 気をつけないと行けないのは尻尾の岩による攻撃と噛みつき、そしてツメ攻撃。

 まあツメ攻撃の方は動作がゆっくりしているからどうにかなるけど尻尾と噛みつきは早い。

 LvはめぐるさんがLv6だけど、俺と実さんが5、茂信が4だ。

 武器だけでどれだけ差が出るか……。


「はぁ!」


 先陣を切ったのはめぐるさんだ。

 先頭のカーキーロックリザードに横から回り込みつつ、仲間のロックリザードを警戒しながら飛びかかって剣を振るう。

 紙一重で避けられてしまい、追撃とばかりに切りあげる。

 あまり腰に力が入らない攻撃だった。それでもカーキーロックリザードの胸に命中する。

 ズバッと良い音が響いた様な気がした。


「シャ!」


 隙を突こうと体を仰け反らせたカーキーロックリザードが……胸が半分千切れる。


「シャ!?」

「おっと!」


 ブシューっと鮮血が飛び散った。

 元々避けようとしていためぐるさんは横に飛んで避けたお陰で辛うじて飛び散る血に当たらずに済んだ。

 ドサリと血を吐きだして先頭のカーキーロックリザードは白目をむいて絶命する。


「うわ……グロ!」

「凄い……幾らなんでも切れすぎじゃない?」


 唖然とする俺達と同様に絶句しているカーキーロックリザードの群れ。

 何せ一撃だ。

 実力差を知って恐慌状態に陥っている様だな。


「茂信! 今の内に行くぞ」

「お、おう!」


 その隙を逃さず俺達は飛び出して二人掛けで切りかかる。

 気をつけないと行けないのは尻尾だけど、頭が弱点だ。

 包丁でどれだけ威力に差が出るかわからないが、迷わず喉を狙って突き、切り落とす。

 ズブっと確かな手ごたえ。

 なんか感覚がハサミで紙を切るのに似てるような。

 そう思いながら振り切って距離を取る。

 茂信の方は念の為とばかりに尻尾に包丁を振りおろしていた。


「ガポ……」


 口から血を吐いて二匹目のロックリザードが絶命して横たわった。

 で、俺達が相手をしている間に、三匹目をめぐるさんは頭を縦に切りつけて、ロックリザードを真っ二つにした。

 いや、正確にはめぐるさんに飛びかかったロックリザードが防御態勢に入っためぐるさんの持つ、メタルタートルの剣で勝手に二つに裂けたと言うべきか?


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