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シャドウドッペルゲンガー

「ゲート内に潜伏する何かって奴か」


 依藤くんが剣を抜いて警戒し、持ってきたミケさんを筆頭としたユニークウェポンモンスター達が武器化を解除してタイムマシンから降りる。


「聡美さん、大丈夫?」


 タイムホール内は共鳴を維持していないといけないから聡美さんの遠隔共鳴をみんなに施し続けないといけない。

 遠隔共鳴はかなりの魔力を使用するから聡美さんの健康状態は重要。

 いくらタイムマシンが消費魔力を減らしていると言っても限界はある。

 それに、ただでさえ不気味な場所だし、共鳴状態で集中している聡美さんはみんなで守らないといけない。


「はい、大丈夫です」

「実、回復を忘れない様に維持しててね」

「うん」


 実の拠点回復が発動し続けている。

 これを受けている限り、共鳴は維持される。

 そんな様子を眺めながら周囲を警戒していると茂信くんが言った。


「なんて言うんだろうな……まるで幸成が乗り込んで浮川さんを助けた時の建物へ俺達が辿り着いたみたいな気分だ」

「あながち間違いじゃないかもしれないわ。どちらにしても警戒しましょう」

「ピンチになったらみんなを招集するんだよな?」

「出来るかどうか試してみましょうか? 浮川さん、頼める?」

「わ、わかりました」


 これで招集して時間の壁を越えられるならタイムマシンに乗り込める人数を考えなくても良いものね。

 少し危険だとは思いつつ聡美さんは目を瞑って招集を発動させたように見える。

 しかし、何も起こらない。


「……ダメです。使ったのに失敗しました」

「さすがにそこまで都合良くいかない様ね」

「どちらにしても、進むしか無いんだ。行こう」

「おう! とはいえ、物騒な所だぜ。サッサと突っ切っちまおうぜ!」

「にゃー」


 萩沢くんの意見に概ね同意するわ。

 みんなして頷き、タイムマシンを実の倉庫に入れてから私達は移動を開始した。



 静まり返った校庭……暗雲の空、正直不気味以外の何物でも無いわ。

 まるでホラー映画の世界に迷い込んだかの様な光景ね。


「ニャー」

「え? うん。ミケさんの話だと、幸成君が入って行った建物とそっくりだって」


 そうなると、ますます不安になるわね。

 なんでそんな場所がタイムホールの中にあるのかしら……。


「そうなのか? だとしてもなんでこんな物があるんだ?」

「通過してみればわかるかもしれないけど……」

「安直に裏門から出るのが相場か?」

「触らぬ神に祟り無しと言うしな」

「どうやらそんな真似はさせてくれなさそうよ?」


 まるで私達の進行を遮るかのように裏門へと続く道には不自然なバリケードが組まれている。


「ちょっと乗り越えてみる」


 軽快な様子で依藤くんとミケさんがバリケードの先を通過しようとしたが、ガツっと壁にぶつかった。

 ……結界?


「なんだこれ? 結界か?」


 私はその空間を見る。

 な、なにこれ……少し酔いそうで気持ち悪い。


「壊して突破は無理ね。その先、外見上は見えるけど、別の空間になってるみたい」


 移動系能力故の空間把握認識でわかる。

 ただ、共鳴状態じゃないと怪しいわね。

 学校に見えるこの空間は相当、あやふやで不可思議な構造をしている。


「楽には通してくれねーって事だな」

「一旦帰って戦闘向けの人達を大量に連れてくるのはどうかしら?」


 ふと後方を見る。

 前方にあった結界の様な空間が後ろにも広がりつつあった。


「……無理だと思うわ。私達を閉じ込めようとしているみたい」

「飛山さんの転送でどうにかなるんじゃない?」


 私は転送を指定して、入口へ飛ばそうと試みる。

 ピリッと嫌な手ごたえがした。

 共鳴状態だから強化転送なんだけど、感覚的に変な感じがする。


「今飛んだら何処へ出るかわからなそうよ。勘で悪いけど、出来ればやめた方がいいと思う。聡美さんの張っている共鳴範囲以外じゃ何が起こるかわからないはずだし」

「面倒な事に巻き込まれてんなー羽橋を迎えに行くだけじゃねえのかよ」

「まったくだ」


 全面的に同意するわ。

 一体何が起こっているのか見当も付かないわ。


 いや……もしかしたらと言う考えはたぶん、みんなが共通して認識しているはずね。

 おそらく、ここは研究所と同じ類の怪しげな建物だって事でしょう。

 しかも悪い意味で。

 推測くらい私だって出来る。

 あの研究所をあんなにしたのはこの建物に潜む何かなんじゃないか? ってね。


「しょうがない。じゃあ校舎の方へ行ってみるか」


 という所で、私達の目の前で黒い煙が集まり人影が形作られる。

 完全に人の形になった人影は剣らしき物を握りしめて私達に斬りかかってきた。


「な、なんだ!?」

「獲物がやってきた……オレの為に……シネ!」

「この!」


 依藤くんとミケさんが先頭に立って剣を受け止める。


「いきなり何をする!」

「お前はオトコ、クズはシネ」


 襲撃者の名前が表示される。


「誰が死ぬもんか! ふざけるな!」


 シャドウ……ドッペルゲンガー?

 え? これ魔物なの?

 カタコトだけど、日本語で喋ってるのに?


「ノ、能力ガ奪エナイ!?」


 人影がそんな事を言っている。

 小野くんだったら言いそうなセリフね。

 どういう事かしら?


「この程度……! 舐めるな!」

「ニャニャ!」


 スパンと依藤くんとミケさんがシャドウドッペルゲンガーを切り捨てる。

 切られた人影は闇となって霧散して行くけど……。


「……ガハ……この程度で、カッタと思うナ」


 闇が集まって無数の人影が現れる。


「ニャニャニャ」


 ミケさんや他のユニークウェポンモンスター達が相手の動きに合わせて即座に仕留める。


「ニャーニャ」

「えっと、ミケさん達の話だと能力に頼り切った経験の無い戦い方をしている、未熟者だって……この戦い方は幸成君と一緒に戦ったあの校舎から出てきた死霊に似てるらしいよー」


 実がミケさんの言葉を代弁する。

 やっぱり幸成くんが突破した建物と同じって事……なのかしら?


「戦っていたらキリがなさそうだ! 急いで突っ切るぞ!」

「おう!」

「そうね。手早く進むしかないみたいだし、何が出てきても驚かないわ」


 と、私達は出てくる敵たちを切りぬけながら校舎の中へと進んで行った。



「なんなんだよこの建物……白骨死体が無数に転がってんぞ」


 それから私達は校舎内を進んだ。

 幸いあの不気味な人影の魔物に遅れを取る事はなく、全員無事に進めている。


「ミケさん達の話から察すると並行世界の聡美さんが作り出した建物に酷似してるそうだけど……」


 それは過去を変えたのでありえない、と続く。

 私達は階段を上がって……何故か三階に出た。

 見知った学校故に空間の繋がりに目眩がするわ。

 で、廊下に大きな亀裂が入っていたので図書室を経由して進む事にしたわ。

 まあ……今の私達なら結構な距離を幅跳び出来るんだけど、念の為ね。


「あ……何か落ちてますね」


 聡美さんが図書室の机に手を触れる。


「それってあの研究所や萩沢くんの発明したストーブ前で見つけた物?」

「はい。何か手掛かりがあるかも」


 と、何かに触れたかと思うと……聡美さんはまたも青い顔をした。


「何かわかった?」


 黒本さんが置いてある書物を開いて読んだかと思うと私の方を見る。


「黒本さんの方は?」

「コレは日記みたいね。正確には日記ではなくて、誰かの叫びを纏めた物……かしら? 約束が違う。俺じゃない、とかの声が聞こえるわよ?」


 黒本さんが私に本を開いて見せる。


『俺じゃない! アイツらが悪いんだ! あんなクズ、幾らだって殺して見せる!』


 ……小野くんみたいな声が聞こえた。

 それにしても酷い言葉ね。

 誰かの所為にして、誰かを殺そうとしているなんて。


「ページを捲ると大体そんな声がするみたい。で、何か希望を見つけた様な声が混じっていたけどね」


 希望?

 こんな事を言う人達が抱く希望って一体……。


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