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萩沢の野望

「あん? 美樹ちゃん、何か名案でもあんの?」

「だから見ていたんでしょ」

「な、何をさせる気だ!」


 え……? どんな案なの?


「とは言っても、確かに今の萩沢君では無理ね。でも未来の萩沢君は?」

「はい? それって未来で召喚された俺って事か?」


 黒本さんは首を横に振る。

 それから依藤くんの方を見てから再度萩沢くんを見つめた。


「違うわ。今回の萩沢君が成し遂げられる可能性。さっき浮川さんが一生を掛けて仕組みを覚えると似た物よ」

「な、なんだよ……すげー嫌な予感がするんだけどよ」


 ゴクリと萩沢くんが息を飲む。

 黒本さんももったいぶらないで早く教えて欲しいわね。


「わからないの? あの施設は萩沢君に関わった者が作っていた可能性があるのよ?」


 確かに……あの研究所名ってライクスハギサワと書かれていたと思える。

 その後の文字はわからないけど。


「そこから考えて、萩沢君がタイムマシンを作れば良いのよ。そして先取りで今、私達の目の前にタイムマシンを送ってくれれば万事解決よ!」

「はぁあああ!?」


 萩沢くんが口をポカーンとさせる様にしてから叫んだ。

 それは……どうなのかしら。

 仮に実現出来るとしても、萩沢くんがそこまでしてくれるとは思えない。

 もちろん萩沢くんだって幸成くんを助けたいとは思っているでしょうけど、掛けられる労力は友達の域からは出ないでしょうし、さっきからそういう言動を取っている。


「上手く行けばタイムゲートなんて代物ではなく、行き来出来る万能機械が来るのよ」

「漫画みたいな発想だな」


 ああ、だから依藤くんを見たのね。


「ふざけんな。そんな研究を俺は一生を賭けてやれってのか!? 能力があるからって何でも出来る訳じゃねえよ! ましてや何が悲しくて羽橋の為にそこまでしてやらなきゃいけねーんだよ!」

「まあまあ……」

「まあまあじゃねーよ! アイツの事は嫌いじゃねーけど、俺はそこまで出来ないね!」

「萩沢……お前! なにもそこまで言わなくてもいいだろ!」

「なんだよ! 文句あんのか!?」


 みんなの目付きが若干鋭くなる。

 とは言っても、全責任を萩沢くんに負わせるのは間違っていると思うけど。


「みんなちょっと落ちついて……」


 どうにかして止めるべきだと思う。

 幾らなんでも萩沢くんに頼り過ぎじゃないかしら。


「あなたの言った、現状考えられる中で具体的な可能性だと私は思うわよ? ね? 隼人」

「た、確かにそうだが……」


 言い分はわかるし、やってほしいとは思うけど、一方的過ぎる。

 う~ん……幸成くんを迎えに行く手立てがない……。


「まさに何でも出来るかもしれない萩沢くんには良い案でしょ? 達成したらモテルわよー」


 うわ……萩沢くんが簡単に引き受けそうな誘惑をしてるわ。

 でもこれでやる気を見せてくれるならお願いしてみようかしら。

 それこそ、私の彼女になって責任を取るとか言った事を帳消しにしてお釣りがくるわ。


「く……甘い事を言いやがって、そうはいかねえぞ!」


 あれ?

 女の子が大好きな萩沢くんなら少しは揺らぐと思ったんだけど……きっと萩沢くんも成長しているのね。


「俺はやりたい研究で忙しいんだよ!」

「羽橋を迎えに行くよりも大事な研究ってなんだよ!」

「ふ……聞いて驚くなよ!」

「ニャー」


 萩沢くんがキザっぽく両腕を広げて叫ぶ。

 何かミケさんが萩沢くんの声に合わせて両手を上げててすごく無邪気に笑っている。

 内容を知ってるの?


「俺はな、彼女が欲しかったんだよ。だけどいつまで経っても彼女は出来やしねえし、メイドはミケの野郎を見てるしでむなしくなったのさ! ミケの方がカリスマあって人気があるんだよ!」


 ああ……気付いていたのね。

 ミケさんの方がモテモテなの。


「だから惚れ薬でも作るつもりか!」

「とんだ外道だぜ萩沢! 俺達にも分けてくれ!」


 何言ってるのよ、この人達は!

 ノリで行けば許されると思ったら大間違いよ!

 とはいえ……巻き込んだのは私だし、強くは言えないのよね。


 だけど惚れ薬は却下よ。

 そんな人権を無視した毒物の製造を私は許さないわ!

 彼女が欲しいなら正しい方法でなるべきよ。

 萩沢くんなら出来るでしょ。


 面白いと思っている女の子はいるし……ミケさんと関わりがなければどうにかなるとは、思うわ。

 まあ、付き合うのに一番の障害は間違いなくミケさんでしょうけどね。


「あめえな! そんな仮初の愛なんて俺はいらねえんだよ。だからお前等はその程度なんだ」

「何!?」


 あ、違うんだ。

 てっきり萩沢くんの事だから作りそうだと思ってしまった。

 だってクマ子ちゃんって子を人化させる薬を作ったんでしょ?

 凄く高額だけど、この世界にはあるみたいだし。


「俺は俺の為だけに作り出す……伝説にある性転換薬を!」

「……は?」

「く……それは一番面白くない展開よ、萩沢君」


 黒本さんが若干吐血しながら言う。

 えっと……それってどう言う事?


「過去の資料に使われたであろう素材の目星はある程度出来ている。だけど完成するのはまだまだ先だろうな。だが、完成した暁にはミケに服用させる事を決定しているんだよ! 美少女になる性転換薬をな! 後は人化薬と服用させればミケは俺の彼女だ!」

「にゃあああああん!」


 どうだー!

 とばかりにミケさんも胸を張っている。


 ……なんていうか、それで良いの?

 本当に?

 ま、まあ二人の関係的に無難な所に落ちそうだとは思うけど。


「えっと……ミケ、お前はそれで良いのか?」

「ニャン」


 頷いている。

 そんなにも萩沢くんの事が好きなのね。

 ある意味献身的で立派だわ。

 合意の上なら良い……んじゃない?

 私も幸成くんの事をそこまで思えるかしら。

 負けない様にがんばりたい。


「ミケくんおめでとー」

「ガウー」

「にゃああああん」


 実に祝われてミケさんが喜んでいる。

 なんて言うのかしら、婚約をみんなの前で発表したってつもりなのかしら?

 正直、みんな引いてるわよ。


「モテないからって……そこまで堕ちたか」

「しょうがねえだろ。俺をここまで好きだって言うなら、俺だって鬼じゃねえよ! ミケが雌になってでも俺と一緒にいたいって言うんだからよ」

「ニャアアン!」


 早くも腰をクネクネとしているミケさん。

 紳士から淑女になる気マンマンで微妙な気分にさせられるわ。


「せ、精神的BLに行くしかないわ」

「美樹、しっかりしろ!」


 黒本さんがパニックに陥ったわ!

 あのジャンルってそこまで黒本さんの精神を侵食しているの?


「何年掛っても俺はやり遂げて見せる。そしてミケを彼女にし、芋づる式にミケの彼女達を俺のハーレムに引き入れてくれるわ! わははははは!」

「くっそ! 萩沢の野郎、開き直りやがった!」

「なんて奴だ! 羽橋の事よりも自分の欲望を優先するなんて! 良いぞもっとやれ」


 なんでよ! もっとやっちゃダメでしょう。

 というか性転換薬を作ってからでも良いからタイムマシンを作ってくれれば良いんじゃないの?

 若干イラっとするけど私だって譲歩くらいする。


「つーわけで俺は他にも色々と作るので忙しいんだよ! 余所を当たってくれ! それこそ坂枝とか色々と便利な能力持ちはいるだろ! お前等が羽橋の為にがんばってくれ」

「萩沢、お前!」

「なーに、アイツだってルシアちゃんやクマ子ちゃんとよろしくやってるはずだ。なんなら羽橋の子孫を探した方が早いんじゃねーの? 転移能力持ってるよきっと」

「さーいてー」


 ……まあ、確かにそこまで萩沢くんにお願いするのは酷だって言うのはわかる。

 だけど、そう思わせない言い方に若干不快感が集まる。

 元々遠慮とかしない人だし、あんまり考えずに喋っちゃう短所があるけど、完全に悪い方向に進んでいるわ。

 萩沢くんに当たるのは悪い事だと思うけど私も堪忍袋の限界。

 例えそうだとしても言い方ってものがあるでしょう。

 そう私が口を開こうとした次の瞬間――


「――っ!?」


 バチ……バチバチバチっとみんなで集まって話をしている集会所の真ん中に雷光が発生し、空間が歪んだ。


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[気になる点] 問題は、性転換した後、好みの外見かどうかは分からないよね。 猫年齢で凄いおばあちゃんとか、逆に幼児とかになる可能性も?
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