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タイムゲート

「萩沢、黒本さんに聞いたんだが、この建物は未来から来た可能性が高いらしいぞ。お前が未来で関わった建物かもしれないんだろ?」

「あー、そういや美樹ちゃんに聞く前にクラスメイト共が言ってたな。つーか、この手の建物、俺が関わり過ぎじゃね?」


 そんな事言われても知らないわよ。

 とはいえ、能力的に後世に残り易いからでしょうね。


「おーし、セキュリティ解除完了。もっと奥まで行けるようになったぜ!」

「えっと……ありがとう」


 時空改変の影響でどうにも釈然としないけど、私は萩沢くんに感謝の言葉を述べてから送電と魔力転送を併用して調べる。

 確かに……さっきまでアクセスできない所も通過出来るようになっている。

 認識が変わって助かるけど、納得いかないし頭がこんがらがってくるわね。


 アレ? 画像ファイルを発見したわ。

 端末経由で開けてみる。

 私には読めない文字と画像が文書ファイルにある。


 パソコンと同じ要領で画像だけ見て行く。

 何かを作って……なんとなく私達の世界でいう所の宇宙船事業計画みたいな物の写真に見える。

 発明品を何処かへ発進させたみたいな画像が複数あった。

 動画とかもありそうだと思ったのだけど、そっちは破損していたわ。


 その後……荒れた大地みたいな映像と戦争の写真?

 燃え盛る炎の中に人影が映っている様に見えるわ。

 それから研究者みたいな人達が集まって何かを作ろうとしている画像と、この施設の完成式典の画像ね。こっちは何度か見たわ。

 後で黒本さんに相談してみましょう。


 それから……何かしら?

 ミケさんみたいな人物が描かれた資料がある。

 何かダンディな付け髭を付けて紳士っぽい格好をしているわ。

 これ、ミケさんよね? 良く似た別人? 子孫とか?

 う~ん……。


「まあ、こんな所かしらね? 次に行ってみましょう」

「人海戦術で結構IDカードとか、缶詰とか見つかったらしいぜ。他にも光線銃みたいな魔法武器とか、坂枝、お前の担当だろ」

「そうなるか……わかった。すぐに行く」

「廃墟をクラスのみんなで家探ししているみたいね」

「違いねーな」

「ニャー」


 さすがの萩沢くんも苦笑いをしていた。

 だけど……この建物、何かありそうね。

 私は勘が良い方という訳ではないけど、今回は当たりだと思う。


「じゃそろそろみんなで集まって行こうぜ。美樹ちゃんがいつまでも調べてねーで奥へ行けば真実がわかるかもしれねーってさ」

「一理あるな。探索はこれくらいにしてもっと奥へ行ってみるか」

「そうですね」

「ニャー」

「わかったわ」


 萩沢くんの言う事も最もね。

 どうやらここがセキュリティを司っている場所だったみたいだし、ロックの類は外せたみたいだからどうにかなるでしょう。


 という訳でみんな一度集まって、一番重要そうな区画へと侵入する事になった。

 なんて言うのかしら……海外の映画とかで見るセキュリティLv的な数字っぽい文字が、潜る扉の先にある。

 半壊していてやっぱり入るのは簡単だったわね。


 というよりも……入り口とは別の意味で破損が激しい。

 もはや原形を留めておらず、壁が……融けていると言うのかしらね。

 むき出しの岩盤みたいな物と、不自然に白い壁がマーブル模様を醸し出している。


 それと……所々で帯の様に黒い霧が伸びていたわ。

 その帯の先へと私達は向かう。

 何が出るのか期待半分、恐れ半分で進むとその先には……。


「なんだ? ここ?」


 実験を見届ける管制室へと辿り着いた。

 ガラスは割れて融けている……で、壊れた端末らしき物と、聡美さんと共鳴しているから認識できる、新しくなったり古くなったりする謎の機材。

 この管制室から見える光景。


 それは、敢えて言うなら巨大なドーナツ状の機械ね。

 たぶん、ドーナツ状……だったと思うわ。

 壊れているみたいだけど。

 そして、そのドーナツ状の機材の先には何処までも続きそうな大穴が掘られていた。


「特に危険な要素は……」

「今の所無さそうね。危険な魔物とか天変地異の気配とかは無いと思うわ」


 精々危険そうと言うと黒い霧の帯だけだけど、動く訳じゃないみたいだし……。


「あ……」


 聡美さんが管制室の壊れた機材に何故か手を伸ばしている。

 あの動作って、森から出て人里に辿り着いた時にストーブの傍でやっていたわよね。

 何か見つけたって事かしらね。


「何かあったの?」

「……」


 すると聡美さんは青い顔をして気持ち悪そうに首を横に振っていた。


「だ、大丈夫です……後で、話しますけど、今は……う……」


 私は聡美さんを支える。


「気分が悪いなら休んでいて」

「ありがとうございます。大丈夫です……進みましょう」

「……これ以上、調子が悪くなるんだったら帰るからね」

「はい。たぶん、今は大丈夫です」


 管制室から続く吹き飛んでいる扉を潜ってドーナツ状の機械と大穴へ近付く。

 大穴から下を覗きこんで見るのだけど……暗くて何も見えない。


「ここで行き止まりか?」

「この穴から下を調べるんだったらまだじゃね?」

「うーん……」

「とりあえず、みんなで見つけた事とかを纏めよう。この穴の調査は少し休憩してからにした方が良い」

「賛成ー」


 そんな訳で私達は一旦、穴から遠ざかり相談する事になった。

 とは言ってもクラスのみんなが見つけた物と言えばIDカードとか身分証らしき物、後は武器くらい。

 他の品は劣化が激しくて使い物にならないらしい。

 一応、崩落している箇所の除去もしてくれていたみたいで、そこに資料があった事もあるみたいね。


「うーん……あくまで調べた物を繋ぎ合わせた物でしか無い結果を、報告すべきね」


 黒本さんが若干困った様にいつの間にか膨れたカバンを叩きながら答える。

 それに資料を入れてきたの?

 実とか、倉庫系の拡張能力を持っている人に頼めば良いのに……。


「美樹、結構な発見があるって言っていたよな? 何かわかったのか? 推測でも良いから教えてくれ」

「もちろん話はするわよ。その前に飛山さんと浮川さん、何か変化を観測出来た?」

「ええ、ここのセキュリティというか端末に書かれていた文字が、萩沢くん達と話をしている間に読める物に変わったそうよ」

「なるほどね」

「なるほどじゃわかんねーよ!」

「それってめちゃくちゃ重要な内容だろ!」

「俺達は初耳だぞー!」


 クラスメイトが騒ぎ出す。

 まあ、一部しか分かっていない人もいるだろうし、情報交換は重要よね。


「じゃあ一から報告して行きましょう。まず」


 と、黒本さんはクラスメイトのみんなへ今までの経緯を報告した。

 資料室を見つけた事、社長室っぽいところでの出来事、ライクスの年号の話を全て。


「ここが未来の建物である可能性が高くて、私達のアクション一つで何かが変わる事があるって事を把握した位かしら?」


 クラスメイト全員が頷くと同時に眉を寄せる。

 ややこしいものね。

 変化を観測できるのは聡美さんと共鳴している人だけだし。


「それで前提はそうなんだけど、この建物がどんな物かはなんとなくわかってきたわ」

「タイムゲートか何かじゃね?」


 萩沢くんの言葉にクラスメイトの大半が頷いた。


「なんとなくそう思えるような品々ばかりだもんな」

「警備のゴーレムがあれだしな……」

「あのドーナツみたいなのもそうだろ、きっと」

「上手く稼働すると時間を越えられるんじゃねーの?」


 私も、言われてドーナツ状の機械を見る。

 アレを上手く起動させられれば時間を越えられるのかしら?


「という事は、萩沢が修理すりゃ羽橋を迎えに行けね?」

「そうそう」

「何でも俺に頼るんじゃねーっての! 壊れてて動きそうにねーだろ。そもそもこれ、事故ってここにあるんじゃねぇのか?」


 萩沢くんが怒りながら答える。

 ……ここまで万能な事をしたら、萩沢くんで全て解決になるわ。

 今までの例から考えると萩沢くんの能力がそこまで出来るとは思えないのよね。


「多分そうでしょうね。下手に修理して起動でもさせたら……とんでもない事になるでしょ。それこそ私達がどうなるか、行った人がどうなるかって話になるし」

「つーか、このタイムゲートってさ、片道切符じゃね……?」


 沈黙が辺りを支配する。

 確かに……凄く仰々しい設備だけど、少なくともこの装置がどんな使い方をするのか想像するとあの輪っかを潜って目的の時代に飛ぶイメージだわ。

 帰りはどうするのかしら?

 ゲートが開きっぱなしとか?


未来へGO! なんてCMありましたよね。

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