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魔力認証

「未来から来たってのが夢があるんじゃね?」

「そうだけど、内情は結構深刻みたいよ?」

「設立の理由がわかったんですか?」


 内情が深刻……未来で何があったのかしら?

 少なくとも深刻って事は良い話ではないんでしょうけど……。


「一応ね。どうやら未来でも大活性の問題が浮上したみたいなのよ」


 ああ、幸成くんが利用した大地から大量に魔力やポイントが溢れ出す現象ね。

 そこに集約するの?


「言わば、この建物は研究所みたいなモノだったみたいで、九百年後の――」

「ちょっと待ってください」


 聡美さんがそこで手を上げて黒本さんに尋ねる。


「あの……さっきから年号がコロコロと変わっていて混乱するんで、纏めてくださるとうれしいのですが……」


 ???

 私を含め、この場に居る聡美さん以外のみんなが首を傾げる。

 年号が変わる?

 さっきから黒本さんは同じ年号を言い続けているけど……?


「年号がコロコロって、黒本さんは一貫して千年後って言ってるじゃないか」


 茂信くんの言葉に私も頷く。

 だけど、私も違和感はある。

 何だろう……何かがおかしいと言う聡美さんの意見もわかるのよね。

 聡美さんは違うと首を横に振った。


「いいえ、少なくとも黒本さん自身の発言から三百年はずれています。最初は七百年と言っていました」


 すると黒本さんは聡美さんに向けて目を細めてから考え始めた。


「もしかしたら……ここで話をするだけでも未来が変わって、過去にまで変化が出ているのかもしれないわ。だから年号に変化が出てるのかも」


 黒本さんは舌打ちする。


「こうなると書いている人も違う事になるわね。入る時もそうだったけど厄介な建物ね。何が原因かわからないけど、未来と過去が関わっている。けど浮川さん以外に強い耐性が無いから変化を理解できないんだわ」

「共鳴で耐性を増やしますか?」

「ちょっと離れる事もあるから消費も増えるでしょうけど、私と飛山さんを共鳴させておいて。私はさっきの資料室を見直して来るわ」


 それは大変ね……。

 結構な量を調べ直す事になるでしょうし。

 聡美さんもレベルが上がって遠隔共鳴の時間や範囲が広くなっている。

 その分消費も早いらしいけど、実がいるから定期的に回復してもらえれば問題ない。

 萩沢くんが持ってきた魔力を回復する薬を飲むという手もあるし。


「手帳の方は後で調べるから浮川さんが持っていてちょうだい。変化されると困る物だと思うから」

「わかりました」


 そして聡美さんに共鳴を施してもらう。


「じゃあ実は黒本さんが調べる資料の復元の手伝いを頼める?」


 復元って結構魔力やポイントを使用するらしい。

 それでも上手く出来るか一か八かみたいだし。


「うん」

「ただ……魔法紙や羊皮紙で作られた物なら復元出来るけど、それでも読めない文字だったりするのが問題なのよね。法則があるから解読は出来て来てるけど」


 難しそうな話をしているわね。

 私もライクス国の文字をもう少し勉強すべきかしら……。

 そんな訳で私は聡美さんと共鳴を維持したまま、室内の写真を見る。

 ……うん。改めて見直すと写真の人物が少し変化している様に見えた。



 そんな訳で私達は調査を続行して行く。


「あれ? 建物の形状、少し変わってない?」


 さっきここを通った時にこんな廊下は無かったはず。

 行き止まりだったと思うんだけど……。


「そうですね。これも変化の影響でしょうか?」

「俺にはさっきと同じに見えるから怖いな……」


 茂信くんの言う通りね。

 いきなり気が付いたら壁の中、なんて事は起こらないといいけど……。


 そうした変化を確認しながら調査を続けている。

 結局、この辺りだと黒本さん達が見つけた資料室くらいしか調べられそうな物はなかった。

 今は唯一手掛かりになりそうな、パソコンみたいな機材を調査している。

 生きている物にアクセスする事は出来るのだけど、なんて書かれているかよくわからない。

 セキュリティに関して言えば、IDカード類が見つかったからどうにかなりそうなんだけどパスワードが必要な物は無理みたいね。


「ここはセキュリティルームかしら?」


 警備室みたいな部屋と言うのかしら、監視カメラの映像が映し出されていている。

 機材の類は大半が壊れているみたいだけど、二、三個生きているのを発見した。


「えーっと……」


 作り出した偽装IDカードを登録出来ないかしら?

 机の中に何か文字盤みたいなモノが書かれていたので、パスワード要求画面で入力したら通った。

 けど、結局なんて書かれているのかわからない。

 英語っぽくもあるのだけど何か違う。そんな文字ね。

 魔法とも違うし……何なのかしら?


「普通のパソコンなら俺も弄る事が出来るんだけどなぁ……どっちかというと萩沢か?」


 茂信くんが困った様に呟く。


「そうね」

「呼んで来た方が良さそうだな。ちょっと萩沢を探してくる」


 茂信くんは部屋の扉に手を掛ける。


「一緒じゃなくて大丈夫?」

「何か無い限りは大丈夫だと思う。それこそ、認識改変が起こって目的が変わっていない限りはさ」


 そこなのよね。

 もしもこの状況で日本人が忌むべき存在という状況に変わったら、何が起こるのかわからない。

 今までの状況から私やみんながいるから大丈夫だとは思うけど……。


「何かあったら近くにいると思うから迎えに来てくれ」


 そう言って茂信くんは部屋を出て行った。

 やがてすぐに茂信くんに連れられて萩沢くんがやってきた。


「坂枝、ここか?」

「ああ」

「ニャー」

「あ、めぐるちゃん、俺に何か用?」

「この機材が生きてるからどうにかしてアクセス出来ないか調べてたの。パスワードで入る事は出来たんだけどね」

「文字が読めねーなら美樹ちゃんの出番じゃねーの?」

「黒本さんは再度資料室の方で調べてる所、そっちが終われば来ると思うけど……」


 見直す訳だから時間が掛かりそうね。

 一応、ここまでくれば黒本さんならどうにか出来るかもしれないけど。

 しかも定期的に聡美さんの共鳴を維持する魔力を補充しないといけない訳だし、色々難しいわね。


「ともかく黒本さんは忙しいから、出来る限り私達の方でなんとかしましょう」

「可能性では萩沢くんも関わってそうだし、読めない?」


 みんなから話は聞いている。

 萩沢くんが独自言語を作って、遺跡とかに書いていたという話。

 ここの文字も実は……と思う。


「似ちゃあいるが……コレは俺が作った文字じゃねぇな」


 萩沢くんも端末に記載されている文字を見て呟く。

 未来で作られた建物だからかしらね?

 古文しか知らない人が現代語を見たらチンプンカンプンになるでしょ?


「ニャー」


 そこでミケさんが端末の文字を読んで、ポンポンと入力して行く……!?


「ニャー?」

「は? ミケ、読めるのか?」

「ニャー、にゃー、ニャア」


 ミケさんは萩沢くんを指差した後、本を読む動作をしている。


「俺の独自言語? 本、漫画? 違う? 文字、地面? まどろっこしいな、おい!」

「地面を指差したって事は……研究所か、この世界?」


 聡美さんが呟くとミケさんが指差してくる。


「研究所」

「ニャー」


 首を振られた違うみたい。


「という事はこの世界ね。この世界の文字?」


 ミケさんが頷く。


「繋げると萩沢くん言語とこの世界の文字……が、混ざってる?」


 茂信くんが言うとミケさんは正解だとばかりに指差した。

 それって……どういう事?


「ニャ!」


 ああ、ミケさんは萩沢くん言語とこの世界の文字がある程度読めるのね。

 その二つの混合だからなんとなくわかると。


「ニャー、ニャ」


 それからミケさんはゲーム機を弄るモーションを取る。


「ゲーム機から連想できる物……日本語?」

「ニャー……」


 凄く説明が難しそうに頬を掻いてるわね。


「つーかパソコンとかだと入力は英語だよな。独自言語とかどんだけ未来から来てんだよ面倒くせー」


 そう萩沢くんが呟いた瞬間、萩沢くんがスッと端末を見る姿に変わって見える。

 え? ああ……時空改変が掛ったみたいね。

 だけど、どういう事?


「へー……ふむふむ、じゃあセキュリティーコードは弄れるっと、面倒だから全部解除しようぜ!」

「確認の為に聞くけど萩沢くんは読めるの?」

「あ? なんとなく程度だけどな」


 さっきまで読めないって言っていたのに……これは間違いなく改変が掛っているわ。

 聡美さんと共鳴していないと違和感を持たないって怖いわね。

 もしかして今までもこういう事って起こっていたのかもしれない。


「ニャー」

「面倒くせーな。後任事務を任されたって事で所長室で見つけたIDとパスコードを入力しちまおう」

「ニャ!」


 カチャカチャと萩沢くん達が生きていた端末を弄る。

 凄い速度で解析が進んでいるわ。


「魔力認証? やばくね? まあ失敗しても大丈夫か?」


 いや、そこは大丈夫じゃないんじゃ?

 私の心配を余所に端末の隣に指紋認証をするみたいな機材があって、そこに萩沢くんが手を載せる。

 するとポーンと音がした。


「魔力検査完了、血筋と断定……? おいおい、ぶっ壊れてんな」


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