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高度な技術

「戦闘能力が高い奴がいないのが怖いんだろ」

「確かに戦闘特化の能力者がいるのはありがたいわ。だけど、コストの面で言っているの。もちろん何か危機に遭遇したら予定を変更して、浮川さんに共鳴状態を拡大させて招集してもらって飛山さんに脱出用の転送を使ってもらう予定よ」


 ……少人数で行くなら編成は悪くないかもしれない。

 黒本さんって腐の顔を出していなければ状況判断は的確だし、作戦通りに行けば脱出も簡単。

 予想外の事が起こらなければ、という前提だけど。

 聡美さんの共鳴は何人もし続けるのは厳しいという難点を持っている。

 上手く行く事前提ではあるんだけどね。


「共鳴千里眼で一応、中がどうなっているか調べてみる?」

「そうだな。事前に確認取れるならやっておいた方が良い!」


 という訳で聡美さんと共鳴して千里眼で見ようとしたのだけど……霧の先まで見るには及ばなかった。

 この霧、結構分厚い。


「そんな訳で、進めるか実験をしましょうか。じゃあ浮川さん、お願い」

「はい」


 聡美さんが黒本さんと実に触れながら霧に向かって歩いて行く。

 するとアッサリと三人は霧の中へと入って行く。


「じゃあ行ってくるわね」


 そう黒本さんが霧から頭を出して私達に挨拶をした後、三人は黒い霧の中をドンドンと歩いて行ってしまった。

 キラッと聡美さんの腰にある鞘に収まっているフルメタルタートルの剣+12が闇の中で光って見えた。


「大丈夫かしら……」

「大丈夫だと信じるしかない」


 茂信くんが私の肩に手を置いて頷く。

 それから十分ほど、定期的に来る天変地異をみんなで薙ぎ払っていると視界に招集に応じますか? と言う項目が現れた。

 みんな顔を見合わせる。

 どうやらみんな出ているみたい。

 危険なのかそれとも霧を突破出来たのか……。


「いつでも戦えるように臨戦態勢で行こう」

「「「おう!」」」


 依藤くんの言葉に戦闘系能力のみんなが各々の武器を掲げて叫ぶ。

 じゃあすぐに行きましょう!

 私は『はい』の項目を選んでいつでも転送で逃げられる様に構えた。

 転送で移動する時と似ているけど少し違う……多分、幸成くんの転移に似た移動をして私達は聡美さんの招集される。


 すると目の前には……廃墟と思わしき建造物が広がっていた。

 半壊した人工物、植物に覆われた所もあるけれど、どちらにしても相当の年月を感じさせる。

 黒い霧の所為で全体的に薄暗いわね。


「霧を突破したわ」


 黒本さんが報告している。

 みんな次々と姿を現して辺りを見渡した。


「危険な魔物とかは?」

「霧を出るまでは特に何も無かったわね。まあ、あんな空間内を移動できる生物なんてそういないって事なんでしょうね」


 それならよかった。

 何かあったらと不安でしょうがなかったわね。


「内部まで似た様な状態になっている可能性は十分にあったのだけど、実験したら大丈夫だったわ」

「かなり怖かったです」

「大丈夫、いざって時はみんなが助けに来てくれると思ってたもん」


 聡美さんと実がそれぞれ感想を述べた。

 当然助けに行くけど……こんな風に信頼されるのはなんだか照れるわね。


「で……ここは何なんだ?」


 萩沢くんが廃墟を見ながら言った。

 明らかに人の手で作られた建造物ね。

 あんな不思議な結界の中にあるのだから何か意味があるとは思う。

 それが私達と関係あるかは不明だけど。


「それは今から調査する事になるわよ。それこそ、何があるか分からないから十分に注意して行きましょ」

「そうだな……何が出るか……」

「……可能性としては、浮川さんやルシアちゃんが言っていた呪いで構築された学校もありえたんだけどね」


 怖い事を言うわね。

 話によると幸成くんが聡美さんを助けに行った……並行世界のクラスメイト達の魂の牢獄だって話よね。

 そんな建物がここにあるくらいの出来事を黒本さんは想定していたのね。

 こう聞くと、そっちの方が何か手掛かりになりそうな気がしてくるけど……じゃあここは一体なんなのかしら?


「じゃ、みんな明かりを持って移動しましょう」


 という訳で私達は警戒を強めながら廃墟の方へと歩いて行った。




「随分と時間が経っちゃいるみて―だけど、高度な技術で作られてる気がしねぇか?」


 萩沢くんが廃墟への道や建築物を見て呟く。

 そうね。間違いないと思う。

 この舗装された道……コンクリートとは違うけど近代的なモノに見える。

 城下町の舗装された石畳の道とも違うし、日本とも異なるわね。


 海外の都会にも見える。

 結構見晴らしの良い広場……ではなくて駐車場の様な気がするし。

 海外のショッピングモールが異世界に転移してきた、と言われても違和感が無い作りをしているわ。


 ただ、この地面に使われいる材質は私達の世界に無いんじゃないかしら?

 白い陶器みたいにも見えるけど、肌触りが違う。


「この手の物は俺の管轄だな……」


 茂信くんが地面に手を当てて、コンコンと地面を叩いている。


「これなら萩沢もわかるかもしれない」

「あ? あー……これってこの世界の鉱物を合成すりゃ出来そうな物質だな……なんてったかな? ダイラックだっけ?」

「それに近いな。硬度が高くて汚れ辛い。一部の富豪が床材に使っている物に似てる。けど、それとも違うな」

「ああ、ただそれよりも上位の物なのは分かる。魔力の伝導率とかが違うぜ」


 能力って個人個人で違うのはわかっていたけど、こういう効果もあるのね。

 ちょっと前に認識耐性の実験をしたばかりだから、尚の事よくわかる。


「鑑定でわかるのはダイラックカスタムってだけだな。こりゃあ相当な代物だぜ」

「なるほど」

「一応材質はわかったけど、一体何なんだろうな?」


 みんなの疑問はもっともね。

 私もこれだけで色々と首を傾げてしまう。

 少なくともライクス国内でこんな作りの物は見た事が無い。

 けれど、この世界の物質を使って作られている。

 しかも貴重な材質が惜しげもなく使われているなんて……。


「ライクス国よりも前に存在した高度な文明の名残とかじゃないか?」

「ありえるかもしれねーな。その発明品が暴走して、こうなったとかさ。前に小説で読んだ!」


 依藤くんと仲の良いクラスメイトが呟く。

 何か漫画ととかの話を参考に言っているのかもしれない。

 とはいえ高度な文明かぁ……この景色を見る限り、否定は出来ないわね。


「とりあえず、建物に入ってみましょう。崩落の危険性もあるから十分に注意してね」


 そんな訳で私達は廃墟の方へと向かった。

 廃墟は……透明なガラスが張られた入り口の……空いている扉を通る。

 ガラスの方も萩沢くん達が分析した結果、日本の物とは違う材質みたい。

 全部この世界由来の物質らしい。


「なんつーか、やっぱり海外の建物ってのが一番しっくりきそうだな」

「そうね」


 映画とかの建物にこんなのがあった気がする。

 ロビーっぽい所で私達は調査を続ける。

 とは言っても崩落していたり、扉が壊れていたりとで何があるのかよくわからないんだけど。

 とりあえず……二階へ続く道があるみたいね。

 そこには展示品でも置いてあったのか、美術館みたいな間取りの部屋だった。

 一階の奥へ行くと別の建物がある。


「なんだこの部屋?」

「わからね」

「何か謎が解けるかと思ったのだけど……」


 壁と言うか展示していた様なガラスケースっぽい物をみんなで確認しながら歩く。

 建物自体は破損しているけど、入れない程じゃなかった。

 けど、この部屋にある物は風化していて、よくわからなくなっている。

 壁に穴が空いていて、風通しが良いのが原因かしら。

 行った事は無いけどピラミッドとかの外がこんな感じなのかもしれないわね。


「壁に何か描かれているわ」


 黒本さんが壁に描かれた掠れた文字を読み取ろうとしている。

 私達には模様にしか見えないそれは、黒本さんからすると文字みたい。

 これも能力の影響なんでしょうね。


「ライク――ギサ―サーベルタ――入り口にも同様の物があったわね。そっちはコーポレーションって所以外は削れていて分からなかったわ」


 コーポレーション……ここは何かの会社なのかしら?

ライクスハギサワサーベルタイムコーポレーション。

○○○○年創業。

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