表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/233

ブラックミストウォール

 そうして……クラスメイトの殆ど、学級委員を含め、全員が異世界に来る日がやってきた。

 ちなみに調査として学級委員が畑を持っていた場所に聡美さん達が出かけている。


「さてと……ついに僕の番らしいけど、声を掛けたのは僕だけじゃなかったのかい?」

「沢山のクラスメイトを連れて行ったわよ。認識改変が起こるとこうなるのね」

「ふむ……なんとも歯がゆいね。では、やっとスッキリ出来るんだ。行くとしよう」


 それで、学級委員が異世界への道を通った瞬間、異世界側では学級委員の管理していた畑が光と共に出現したらしいわ。

 聡美さんと共鳴していないとわからない変化だったそうだけど……凄い光景だったみたいね。


 そんな訳で、私は幸成くんが助けたクラスメイトのほとんどを……異世界へと連れて来てしまった。

 これが結果的に良い方向になるだなんで、思いもしなかった。


「なんつーか、みんなでまた異世界での生活をすると、楽しくて怖い気持ちが無くなってくな!」


 萩沢くんがクラスメイト達を集めた集会で呟く。

 ちなみに森でプレイヤー組と呼ばれていて小野くんに殺された人達も数人混じっている。

 依藤くん曰く、悪い生徒じゃないって話で、異世界での生活を目の当たりにして虐げていた生徒達に土下座で謝っていたのは記憶に新しい。


 それから依藤くんと私を筆頭に、みんなでLv上げの合宿に行ったりした。

 黒本さん曰く、目星は付いたけど、今の私達が心もとないと言う事で修練する事になったからね。

 みんな異世界での生活に馴染んでしまっている。


 判明しているのは萩沢くんを筆頭とした永住組。

 幸成くんを見つけたら行き来したい組。

 日本へ帰って異世界の事を忘れたいという生徒は……最初から来ていない。


 こんな組み分けとなっている。

 ちなみに、みんな笑顔ね。

 幸成くんが見たらどんな顔をするのか想像も出来ないわ。

 とりあえず、あまり良い顔はしないと思うけど。


「よーしみんな! 今日も張りきっていこうぜー!」

「「「おー!」」」

「永住したいかー!」

「「「おー!」」」

「もっとこの世界の人達と仲良くしたいかー!」

「「「おー!」」」


 森の中にいた時の様な陰惨な様子は無い。

 けど……なんか、間違っている気もする。

 この人達は何を主張したい集団なのかしら……。


「勉強して一流大学に合格したいかー!」


 学級委員が元気よく言う。


「おー」


 声少ないわよ!

 しかも釣られて言った人っぽい!

 賛同者が少なくて可哀想。

 しかし学級委員は懲りずに叫ぶ。


「社会に出て、交易や商売で富豪になりたいかー!」

「「「おー!」」」


 みんな現金ね。

 だけど学級委員の台詞って(日本)とか入ってそうよね。

 なんて思いながら、日々は過ぎて行った。




 十分にLvを上げた私達は黒本さんの証言を元に調査へと向かう事になった。

 クラスのみんなを異世界に連れて来て、もう二ヶ月も経ったのね。

 思えば……そろそろあの事件から一年くらい経過するのかしら。

 依藤くんやミケさん、ユニークウェポンモンスター達、国の騎士達のお陰でクラスメイトのみんなは十分にLvを上げた。


 私もかなり上がったわ。

 まずLv50で魔力転送と言う任意の相手に魔力を供給出来る拡張能力を得たわ。

 応用する事で茂信くんの作った魔法武器や萩沢くんの作った道具に干渉する事が出来るのが分かっているわね。

 他にも用途がありそう。


 次にLv60で武器転送と言う攻撃技と呼べる物を覚えたわね。

 私の目の前に物質転送の光が出て、そこに武器を投げつけると目的の位置に投げた武器が分裂して飛んで行く攻撃技。

 分裂と言っても一瞬だけで、攻撃が終わると私の手元に戻って来るんだけどね。

 聡美さんの山彦にも対応していて、上手く行くと無数の武器が相手を刺し貫く攻撃になって凄かったわ。

 そんな感じで私達はサクサクとLvが上がっている。


 とはいえ……幸成くんが所持していたポイント相転移の様な強力過ぎる拡張能力は無いから、あんまりLv上げるのも怖いんじゃないかってクラスのみんなは囁いていたっけ。

 考えが脱線したわね。

 今、私達はメーラシア森林から出た……東の方の草原を調査に出ている。


「ったく、この忙しい時に」

「ニャー」


 萩沢くんは調査に対してかなり面倒臭がっていた。

 幸成くんを迎えに行く手立てを探す気があるのかしら?

 そんな萩沢くんが少し離れた、目立つ何かを指差して呟く。


「なんだこりゃ……」

「ニャー」


 私も同意見ね。

 今、私達の視線の先には……赤黒く……闇さえ飲みこみそうな煙が立ち込める空間としか表現できない何かがあった。


「こんなものあったのか?」

「少なくとも羽橋君がいた頃のこの世界では観測されていないわね。あったのかもしれないけど、メーラシア大森林が危険区域で調査はされていなかったし」


 黒本さんが地図を広げて見せてくれる。

 この赤黒い煙が立ち込めている空間は地図上でも結構広いみたい。

 目測だけど森の中と同じ移動距離だとして半径三日、横断出来たとして六日は確実に掛る大きさをしている。


「で、これが何なんだ? アレを調べろってか?」


 萩沢くんがそれを指差しながら黒本さんに尋ねる。


「必要でしょうね。ちなみに国の各地にあるのよね、アレ。名前をブラックミストウォールと呼ばれているわ」

「一体何なんだ?」

「ライクスの図書館にある資料でもよくわかっていないの。ただ、少なくとも認識改変が掛った場合でも存在した現象ね」


 なんだか不安にさせる様な雰囲気を持った場所ね。


「美樹、並行世界の萩沢が作った何かって事はないのか?」

「その可能性はあるわね。ルシアちゃんの例もあるし、私達が収容された建物とかも遺跡だったでしょ? 強靭な結界……に見えなくもないし」

「な、なるほど」


 こんな場所があるのなら早く連れてってくれれば良いのに……とは思うけど、辺境にある事が多いので私達は簡単に近寄る事が出来なかったって事よね。

 私の転送も行った事が無いといけないし。


「赤黒くて気持ち悪いね」

「ガウー」


 やや野生的になりつつある実がグローブを片手に持って呟く。


「私達の目的はあそこの調査よ」

「すげー嫌な感じだな」

「ま、上手く行ったら調査が出来るってだけなんで、遺跡が浮上したのを発見した時みたいに無駄足になる可能性もあるんだけどね」

「ダメじゃん」

「勝算はそれなりにあるわよ? とは言っても、まずはアレがどんな物であるかを実際に体験してもらおうかしらね」


 ぞろぞろとクラスのみんなで進んで行く。

 こんなに大人数で行って大丈夫なのかしら?

 不安になってくるわ……。


 とは言っても……茂信くんの作った武具をみんな身につけて、依藤くんを筆頭とした戦闘が得意な能力の人が前線に立っているんだけどね。

 私が行けば一応転送で連れて行く事が出来るはずだけど……まあ、そうは言ってられないか。

 あんな不気味な所を少人数で調査するなんてね。


 出てくる魔物もなんか結構強い。

 人が多いから助かるけど、少人数だったらもう少し進軍が遅いと思う。

 なんて思いながら私達は……ブラックミストウォールと呼ばれる地域へと辿り着いた。


 見上げるほど大きな霧っぽい何か……。

 まるで何かを覆い隠すかのように地図上では広がっているコレに黒本さんは何か発見があるのかな?


「んー……」


 萩沢くんがブラックミストウォールをマジマジと目を凝らして見る。


「何か見えないか?」

「ええ、中に何かある様に見えるのが特徴ね……」


 バチバチと雨雲が集まってくる。

 何?

 魔物かと思ったけど、その気配は無い。


「このパターンは……飛山さん、送電で降ってくる雷をどうにかして。次に暴風雨と嵐が来るからみんな能力でどうにか抑えて」

「え? うん」


 私は剣を空に掲げて、黒本さんが言う通りに雷に備える。

 物凄い高密度の雷が降り注いで驚いた!

 送電で私の魔力に変換したけどね、余剰分は散らしたわ。

 後に起こる自然現象もクラスのみんなが思い思いの能力を使って抑え込む。

 地面から……怪しげなキノコが生えてきた時は驚いたわ。

 学級委員が手をかざすと散って行ったけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ