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歴史の変化

「う~ん……」


 何が起こっているのかしっかりと確認出来ない歯がゆさがもどかしい。

 想像も出来ない何かに縛られている様な感覚がある。


「いろんな可能性が無い訳じゃないけど、話に出来るほどの材料が無い」


 黒本さんが考え込む。


「その忌むべき日本人について歴史に載っていそうだけど、今の資料にはそんな記述全く無いのよね」

「小野みてーな奴等な。まあ、あんな奴らが過去に暴れていたらスゲーあぶねーのはわかるぜ」


 そう……クラスメイトを殺す対象としか見ず、男はクズ、女も顔が悪ければビッチ、何人だって殺して見せると言い放った人は危険以外何ものでもない。

 日本でも犯罪者として捕まったけど、彼は人を何だと思っていたのかしら?

 異世界だから何をしてもみんなが付いて来てくれると、本気で思っている態度だった。

 私はあんな人を許す気は無い。


 そんな人が森から出て……まともにこの世界に馴染めるとは思えない。

 気に食わない人が出てきたら躊躇いも無く殺し、騒ぎとなって殺し合いへと発展する。

 仮にLv差で勝ったとしても、今度は賞金首となり、追われる。

 あれはもはや人間じゃない。危険な魔物と同じよ。


 それでも自らの行った罪を理解できず力の限り暴れて国を相手に勝って支配したとしたら……暗黒時代の幕開け。

 日本人なんて忌むべき存在になるのは簡単に想像出来るわ。


「アレ? でも過去にそんな真似をした奴が出てきた時はめぐるちゃんみたいな良い日本人が出てきてそう言う連中を仕留めたんじゃねーの? 別世界の俺が作った結界装置もあったよな?」

「そのはずよ。少なくとも、日本人は畏怖と同時に尊敬も集める伝承が、昔はあったわ」

「じゃあなんで……?」

「小野みたいな奴を止めた日本人の話が完全に消えている……からか?」


 茂信くんが呟くと、黒本さんが同意する。


「可能性は十分にあるわ。羽橋君が過去を変えて、益を持ってくる日本人しかこの世界に来ていないのと逆の現象が起こっている可能性」

「確認出来れば良いんだけど……」

「そこで気になった事があるのよね」


 黒本さんが聡美さんへ顔を向ける。


「浮川さん、貴方の共鳴で認識改変に耐性を付ける事って出来る?」

「わ、わかりません……」


 聡美さんは素直に答える。

 認識改変の耐性、ね。

 確かに聡美さんの共鳴なら出来たとしても不思議じゃないわ。


「その共鳴という能力には可能性が眠っている。言っては何だけど、私もみんなも認識改変への耐性を持っていない。その中で動けるのは聡美さん、貴方だけなの。力の応用でどうにかなるか試してもらって良いかしら?」

「は、はい! 私が助けになるのなら喜んで!」


 聡美さんは並行世界の自分の犯した罪を償う様にみんなの力になろうとする。

 そのお陰で助かっている……けど、その献身的な態度に私は少しだけ悲しく思ってしまう。

 いずれ……前向きに私達と共に居られる時が来るように私も聡美さんの力に成れる様になりたいわ。


「もちろん、失敗する可能性は十分にあるわ。でも試して欲しいのよ……そうね。誰かと共鳴中に飛山さんが日本に行く事で証明は出来る筈よ」

「認識改変への耐性考案……ですね?」

「ええ、とは言ってもクールタイムがあるでしょうからすぐに試さなくて良いわ。即座に戻れる様にしなきゃいけないしね」

「じゃあ、とりあえず日本転送と異世界転送の両方が再使用出来るまで待つって事で良いの?」

「ええ。次に飛山さんが日本に戻った瞬間、その現象が起こるとも限らない。後はその現象が発生した際、即座に飛山さんが戻って止められるかもあるから……」


 確かにそうね。

 今度は私がこの世界に戻ってきても元に戻らない可能性だって大いにある。

 そうなった時が最も怖い。

 今まで頼りにしていた人達がいきなり敵に回る様なものだもの。

 国の人達には色々と助けてもらっている。

 敵対する状況は出来る限り避けたい。


「根本的な問題として私が日本に帰る事で起こるなら、日本転送を使わなければ良いだけなんじゃ?」

「もちろん最終的にはその可能性は大いにあるわ。ただ、気になるのよね……その現象を観測させてもらいたいわ」

「理由は?」

「歴史の変化をしっかりと見る事が出来るわ。今の所だと羽橋君の消息は掴み切れないけど、その忌むべき日本人がいつ頃から姿を見せるか。国の変化を照らし合わせれば手掛かりになるはずよ」

「な、なるほど」


 本当、この人、腐の顔さえ出さなければ頼りになるのに……。

 いえ、趣味でストレスを発散しているから、いざという時に動けるのかもしれないわね。

 メリハリってこういう事を言うのかしら?

 まあ……だとしても、あんなに暴れるのはどうかと思うけど。


「とは言っても、羽橋君がいるであろう時代の候補は出ているんだけどね」

「そうなんですか?」

「ええ」


 黒本さんはライクス国の年表が書かれた物を取り出した。


「おそらく羽橋君がいるであろう時代はライクス国建国よりも前の時代でしょうね。ライクス国建国後の資料には影も形も無いもの。で、それよりも前の資料となると穴だらけで……ただ、最低でもノア=トルシアの伝説がある時代よりも前だから……」


 という感じで黒本さん三箇所指差す。

 ライクス国はそれなりに長い歴史はあるけれど、それよりも前の時代もあったらしい。

 私達の世界認識で言うならイギリスや中国が近いかしら?

 中世と古代で色々と覇権を争っていた時代もあるでしょ?

 色々と大きな争いがあったりしたみたい。

 もちろん近年でも戦争はあるらしいけど。


「そもそも私達を召喚した儀式と言うのがどう言った物なのかって謎が解けていないわね。最強の能力者を生み出すのが目的なんでしょうけど、なんで最強の能力者を欲したのかすらわかっていない」

「蟲毒が選ばれた所為で並行世界の聡美ちゃんが核となって色々と起こったんだよな」

「はい……私に流れてきた記憶ではそうです」

「活性化の力を利用して世界を滅ぼそうとしていたって前にルシアさんが言っていたけど」


 茂信くんが補足する。


「それは呪われた浮川さんの憎悪が根幹にある行動よ? 儀式自体は別の目的で構築されたもののはず」

「何か心当たりでも?」

「まあこの辺りは隼人も心当たりがあるんじゃない? 羽橋君がやった事を参考に、ルシアちゃんが言っていた話。『より効率良く、その争いに勝つ為に研究がされたと聞く』ってね」


 依藤くんと茂信くんが考え込む。


「研究……そう言えばルシアちゃん言ってたよねー。昔の人だから何か知ってたのかもねー」


 実が能天気に答える。

 私はその時は死んでた訳だけど、なんとなくわかってきた。


「大活性って確か能力を上手く使えばどんな願いも叶えるほどのポイントや魔力が手に入るんだろ? 国家事業でも何でも良いから願いが叶う大活性の奪い合いに勝ちたかったんじゃね?」

「萩沢くんが一番早いと言うのは能力が関わっているのかしらね? ええ、私もそれが正解なんじゃないかと思うの」

「つまり大活性の主権争いに勝つ為、最強の異世界人を作って使役し……願いを叶えようとした?」

「今持っている判断材料からすると、その辺りが一番無難ね」


 依藤くんが呆れるように溜息を吐く。


「願いが叶う財宝を目当てに人々が争ったって物語があったな。より効率よく勝つ為にそんな魔法……術式を構築する可能性はゼロじゃない」

「上手く構築したつもりで、その儀式が最初の浮川さんによって歪められ、国が滅んだとかならとんだ自業自得だけど……長く続いたならやりすぎよね。真相かどうかはわからないけどね」


 それで沢山の私達……並行世界の私達が苦しめられた訳だから、ある意味だと本当の黒幕って所かしら。

 呪われた聡美さんを幸成くんが救おうと思ったのは、それが理由でしょうね。


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