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ポイント相転移

「そりゃ!」


 萩沢が自作のキノコ袋をアクアマリンホーンラットに投げつける。

 それにしても赤、緑、青、とカラフルなネズミだよなぁ。

 揃えたら楽しそう。

 テイミングとかあるんだろうか?

 残念ながら魔物使い、みたいな能力はなかったけど。


「ヂュ!?」


 ペッペと胞子を払い……アレだ。ハムスターが顔を洗う動作をしていたが、効果が無いかのように走り始める。


「少し様子を見るぞ!」

「おう!」


 盾で受け止めて様子を確認する。


「ヂュ! ヂュ!? ヂュ……」


 やがてゆっくりと目を回すかのような動きをしてアクアマリンホーンラットは痺れるような動きを始める。

 捕まえておくのが面倒だったけど、効果が出るまで結構時間が掛った。

 即効性は薄い。


「おー……自作のアイテムでも効果があるのか?」

「どうだろ? 次が能力で作ったキノコボムって奴だ」


 何かカプセルっぽい奴を捻って別のアクアマリンホーンラットに投げつける。

 ボフっとアクアマリンホーンラットの目の前でキノコボムは爆発、アクアマリンホーンラットは吹き飛ばされて尻餅を付く。


「ヂュ――ヂュー……」


 効果はすぐに現れてビクンビクンと痙攣をはじめ……事切れる。

 ちょっとエグイ。


「……やっぱ能力で作った奴の方が効果が高いって事か」

「みたいだな。自作した方はぶっちゃけキノコの攻撃を再現しただけって事だろうし、効果が出るのに時間が掛りすぎる」


 しかもホーンラットという一番弱い魔物相手に効果があった程度だと見て良い。

 確認を終えた所で俺達はホーンラット共にトドメを刺す。


「中々難しい問題だね。安く使えると良かったんだけど」

「薬とかを作れたら良いけど、想像で作ってみるしかないからなぁ……」


 日本からそういう書物を持って来ても、この世界の植物とかとは色々と違うだろうし、差が良くわからないのが難点か。

 そもそも魔法要素なんて無い日本の物で役立つ物を見繕うのは大変だ。

 しかも持っていたと誤魔化すのだって難しい。


 お菓子にしても、さすがにそろそろカバンに隠し持っていた、では怪しまれる時期だ。

 お前どんだけ菓子を学校に持ってきてんだって話だろう。

 やり過ぎると善意以前に人として何か失いそうだな。


「組み合わせがわかっても混ぜりゃ良いって訳じゃ無さそうだしなぁ……」

「と言うかな、作成の難点なのかもしれないが少量だが魔力は減るんだぞ?」

「そうなのか?」


 俺の問いに萩沢は頷く。


「ああ、能力を使用せずに作ろうとすると魔力が減る。集中力的な意味合いがあるのかもしれないな」

「ふむ……」

「このポイントというのが何なのかを突きつめないといけない」

「アレじゃないか、アイテムに息を吹き込むみたいな感じで、ポイントの無いアイテムは効果が無い的な」


 ありえるんだよなぁ。

 ポイントは何に使うの? と聞かれると今の所生産系の能力者が使うと言う事になっている。

 だが、他にもあるんじゃないか?

 どうも怪しい。

 基準がわからないけどさ。


「かもしれない。そもそもキノコの胞子を流用させただけの物だったし」

「どっちにしても地道にLv上げをしていくしかない……謎は後で解けるかもしれないしな」

「ああ、で、めぐるちゃんと実ちゃんの方は大丈夫?」


 萩沢の奴……女子に色目を使うなっての。


「問題ないよ。早くみんなで強くなろう」

「うん。そうだね」


 と言う訳で実験を終えた俺達はメタルタートルを探しながらLv上げを二時間して行った。

 メタルタートルは硬いだけの雑魚だからボーナスモンスターって感じだ。

 二時間で2匹見つけて仕留める事が出来た。


「しっかしコイツ硬いよな……谷泉達が使っている武器クラスでも刃が通らないらしいぜ」

「経験値は普通、ポイントも普通でこの硬さだからなぁ。完全に素材向けだよ」

「幸成くんのお陰で倒せてラッキーだね」

「まあ……」


 しかも休憩の合間に倒せるという儲け物な魔物だ。


「お? Lvアップだ」

「私も上がりました」


 俺と実さんがLv5にアップした。


 Lvアップ!

 能力拡張! ポイント相転移が出来るようになりました!


 ポイント相転移?


「どんな能力拡張が出たんだ?」

「良い能力が出ると良いんだけど」


 萩沢とめぐるさんが俺と実さんに聞いてくる。


「えっと……武具魔力補給?」

「なにそれ?」

「えーっと……」


 実さんが項目を目で追って試し始める。

 持っている杖に掛けるみたいだ。

 杖がキラキラと淡く光ってる。


「あ、なるほど、道具に宿っている魔力を補給するって事みたいです」

「修理みたいな感じ?」

「どうなんでしょう? よくわかりません」


 そもそも武器に宿っている魔力と言われてもな。

 というか人の方の魔力も実さんは最初から回復させられるし。


「みんなの武器に掛けてみますね」


 そう言いながら実さんは俺達の武器に揃って魔力を回復させていく。

 武器に宿った力ねー……プレイヤー組の連中なら使える技能かもしれないけど、今の俺達には不要な物の可能性が高い。


「幸成くんは?」

「えっと、ちょっと待ってて。実さんの拡張がどんなのか試してからで良いんじゃない?」

「そう? 説明くらいなら併用出来ると思うんだけど……」


 ここで説明する前に実験してみるのが良いんじゃないか?

 今までの事から考えるに変な能力であるかもしれないし、馬鹿にされかねない。

 ここにいるみんながそんな事をするとは思えないが、何かやり方があるような気がする。


 正直に言えば、Lv5で手に入る拡張は微妙な能力っぽいのは確かだ。

 千里眼、武具魔力補給、ポイント相転移。

 とりあえず言う前に実験しよう。


 能力の項目を呼び出し、ポイント相転移を指定する。

 ポイントって何か金みたいな物なのかと思っていたけどどうなんだろうか?


 ポイント→金銭

 金銭→ポイント


 ……?

 なんだこの項目は?


「えっと少し複雑だから試させてほしいんだ」

「え? うん。わかったけど、危なくない?」

「それは大丈夫なはず。戦闘系じゃないから」


 試しにポイント→金銭を指定。

 と、文字が変化して、指定する項目が出現する。


 円

 ドル

 ユーロ


 ……はい?

 試しに円を指定すると所持ポイントとホログラフィーみたいな電卓が出現する。

 黙って10ポイントを指定してみた。

 砂時計が出現する。変換時間は……地味に長いな30秒くらいか。

 30秒が経過して、チャリッと手の平に十円玉が出現した。


 こ・れ・は!


 つまりポイントを金銭に変換する拡張能力だと!?

 逆も出来るのかと手にある十円玉をポイントに変換する。

 砂時計が再出現した間に顔を上げて説明しようと口を開きかけて――思い留まる。


 待て……金銭をポイントに変換出来ると説明して何になる?

 ぶっちゃけて言えばクラスのみんなの所持金をポイント化させて茂信に武具を作ってもらう足しにするしか手は無い。

 ポイントを金銭に変えたってみんなは日本に帰れないんだから使える訳じゃないんだ。


 だが……ここで一つ、認識を変えてみれば良い。

 俺は異世界から日本に一人だけ戻る事が出来る。

 帰れるから小遣いでみんなに菓子を分け与えていた訳だしな。


 ここで発想だ。

 経緯はどうあれ、新しい能力が出たとみんな興奮している。

 この時に嘘を言っても、誰も確かめる手は今の所無い。

 誤魔化すのが良いかもしれない。

 だから俺は、当面の問題となっていた事と俺自身の便利な能力の妥協案を言う事にした。


「……日本の物を取り寄せる能力みたいだ。拡張能力名は転移売買」

「おおおおおおお!」


 萩沢が興奮して声を上げる。

 予想通りの反応だ。

 まあ俺達にとって都合の良い能力だとは思う。


「それってどういう事?」

「文字通りポイントや金銭をひとまとめに消費して日本の物を購入する事が出来るっぽい。商品名一覧が出てる」


 ……嘘は言ってない。

 日本に転移した俺がポイント相転移でポイントを金銭に変えて買って来れば良い訳だし。


「詠唱が物凄く掛るみたいだからすぐに取り寄せる事は無理みたいだけどさ」


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