表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/233

土下座

 頭を下げているコーラルレッドブレイブシェイド。

 これは何かの罠かしら?


「しょ、勝負!」


 私の声にビクッと頭を上げて、コーラルレッドブレイブシェイドのボスは背中を見せて逃げ出してしまう。

 依藤くんの方に目を向け、追いかけて仕留めれば良いのか? と合図を送る。

 すると依藤くんの前に国の騎士が首を横に振った。


「アレでは入手できないと思います。Lv差があり過ぎると発生する場合があると言われていますが、ヒヤマ様のLv帯では勝負をしてくれるはずなのですが……」

「武器が良すぎるとか?」

「石橋を叩いて勝負する方は無数に存在します。確かに性能が飛び抜けて優秀な武器をヒヤマ様は所有しておりますが……」

「じゃあとりあえず弱めの武器に持ち替えて、別のユニーク武器持ちの魔物を紹介するから挑んでみよう」


 そんな訳で私はメタルタートルの剣から別の、騎士が支給してくれた鉄の剣+5と言う武器で他の剣系のユニークウェポンモンスターに勝負を売りに行った。

 が……やっぱり逃げられる。これが三回くらい続いた。

 挙句格上である魔物も同様だ。

 半ばヤケクソになってローアンバーフレイムブレイドケルベロスと言う頭が三つの犬型のユニークウェポン内でもかなり格上の魔物に勝負をしに行った。

 正確には試合観戦をしに行ったついでに謎を解くために近づいた訳なんだけど。


「くーんくーん!」

「だからなんで土下座してるの! 私弱いのに!」


 ローアンバーフレイムブレイドケルベロスのボスも……取り巻きを含めて土下座されてしまった。

 さすがに危険過ぎて勝負出来ないはず……なんだけど。

 相手もこっちのLvをある程度把握していて、今の私じゃさすがに勝負してくれない。

 ぶっきらぼうに断られるのが常らしい。


「我が国でもトップで人気のユニークウェポンの一匹なんですが……」

「ヨリフジ様の様な該当能力を持っていた場合とも反応が異なりますね。ヒヤマ様の拡張能力と言う可能性でも無いかと」


 話によると拡張能力で該当する能力が出る人もその系統のユニーク武器が手に入らないらしい。

 だとしたら、この反応はなんなのかしら?


「どうして頭を下げているのか……」

「剣系のユニークウェポンモンスターはヒヤマ様を恐れている様に見受けられます。入手は諦めた方が良いかと」

「やっぱりルシアさんの影響とか?」


 またその子の名前?

 いい加減知らない人の名前が私に付き纏う事に嫌な感情が浮かんでくるんだけど……。

 そりゃあ幸成くんを支えてくれてた人なのはわかっている。

 だけど、私とセットにして数えるその考えは何か嫌。


「……わかりました。剣は諦めて別の武器に挑戦してみます」

「まあ、それが自然の答えだよね。槍でも何でも良いから飛山さんは覚えると良いよ」


 そんな訳で今度は槍のユニークウェポンモンスターが近くに生息しているそうなので、向かったのだけど……結果は同じ。

 ユニーク武器を持った魔物達に揃って逃げられてしまった。

 その時の事がいろんな冒険者に目撃され……ユニークウェポンモンスターに嫌われる女と言う噂が私に付いてしまったのだった。



 溜息交じりに茂信くんの工房に帰ると萩沢くんが笑顔で言い放つ。


「風の噂なんだけどさ! 何でも最近、ユニークウェポンモンスターテラーって噂があるんだ。結構面白い噂が流れてんな!」

「……どんな噂なの?」

「ああ、何でもユニークウェポンモンスターに悉くふられて、しかも御断り土下座を喰らったらしい。そんな光景に遭遇したら指差して笑おうぜ! アハハハハってさ、ふげ――!?」


 何か萩沢くんにイラっとしたので気が付いたらビンタしていた。

 私自身も短絡的だとハッとなる。


「ニャアアアア!?」


 ミケさんが驚きの声を上げているが、私の顔を見てブンブンと顔を横に振る。

 あなたまで私が恐ろしいって言うの!?


「めぐるさん落ちついて! お菓子食べて落ちつこう? ね?」


 聡美さんが私を宥めようとして来る。

 その気持ちは嬉しいけど、渡されたお菓子は温泉まんじゅうだった。

 温泉まんじゅうを常に持ち歩いているのかしら?


「萩沢は悪くない。タイミングが悪かっただけなんだ!」


 依藤くんが何故か私を背後から羽交い締めにした。

 まるで私が暴れまわったみたいな反応はどうなのかしら。


「放して依藤くん! 私は悪くないわ! 別にこれ以上暴れないから」

「落ちついて! 萩沢もわかって挑発したんじゃないよな!?」


 茂信くんが倒れて頭を振るっていた萩沢くんの方を見る。


「え? え? めぐるちゃんは断られたとか言ってただけじゃん。ルシアちゃんがいるんだから当たり前だろ。まさかめぐるちゃんだなんて思うかよ!」

「だから知らないわ!」


 ルシアちゃん、あなたには会って色々と言いたい事があるわ……ええ、色々とね。

 もちろん、その人が原因じゃないとは思うけど……。

 とりあえずユニークウェポンモンスターの間で広まっている噂を解消してほしいわ。


「噂を聞いて察しろよ!」

「知らねえよ! めぐるちゃんだなんて普通思わねえだろ!」

「異世界人仲間だからって客も気を使ったんだよ!」

「くっそ! 俺が道化じゃねえか! めぐるちゃんの好感度駄々下がりだ! くっそ!」


 萩沢くんが悔しそうに呻いているから謝った方が良いわよね?


「それにめぐるちゃんは羽橋とコレだろ? 俺が入り込む隙間もねぇし、まあ気にしなくて良いよな?」


 前言撤回。

 私は萩沢くんに謝るのをやめた。


「めぐるもちょっと短絡的よー萩沢くんもデリカシーが無いし」


 実が萩沢くんを治療しているけど……く……私もカッとなって叩いた事自体は悪いと思っている。


「萩沢くんにわかるの? 見上げるくらい大きなモンスターが私に戦いたくないって土下座される気持ちを!」

「うわー見たいような見たくない様な……うん、見たい!」


 その笑顔を見た瞬間、また血が上ってきた。

 もう一発ビンタをお見舞いしてやるわ!


「依藤くん放して! 萩沢くんをもう一発叩きたくなった!」

「萩沢、とりあえず謝れ! お前は戦闘系能力を武器限定とはいえ手に入らなかった人の気持ちがわからないのか!?」

「わ、わからない訳じゃねえよ。道具作成だしな……ち……しょうがねえな」


 萩沢くんはそう言ってから私の前に来て……土下座をして謝った。


「ごめんな、めぐるちゃん」

「依藤くん、踏むわ! 放して!」


 そう言った瞬間、萩沢くんが立ち上がって抗議の表情を浮かべている。

 怒るのはこっちよ。

 土下座されて困っているのに、それをするのはもはや嫌味よ!


「なんでもっと怒るんだよ! 理不尽だろ!」

「萩沢……土下座されて困っている相手に土下座してどうするんだよ」

「だから萩沢くんにはミケくんしかいないんだよ?」

「ニャー」

「実ちゃん! ミケしかいねーってどういう意味だ! くっそー! 俺はモテてぇんだよ!」


 結局その後、萩沢くんは謝ったし私も叩いた事は謝罪した。

 萩沢くんももう少し空気を読んで、お願いだから。

 聡美さんが持ってきた温泉まんじゅうをテーブルに置いて、みんなで摘まみながら相談する。


「しっかし、実際の問題として、なんで断られているんだ?」

「やっぱ心当たりと言ったらルシアちゃんだろうなーめぐるちゃんの事を熱弁してたし、ユニークウェポンモンスターの中でも伝説級だし、顔も広いんじゃね?」

「確かに古くからこの世界にいたみたいだし、ユニークウェポンモンスター内でも有名なんじゃないかな?」

「だからめぐるさんは他のユニークウェポンモンスターや武器を入手できないと」

「ルシアちゃんの嫉妬をみんな恐れてんだな」

「結局そうなるの?」

「それ以外の可能性ってあるの? 例えばめぐるちゃんが戦闘系の拡張能力を得るとか?」

「無くはないがー……」


 って前にもこの話題をしたわよね?

 幸成くんも強くなる方法に悩んでいたらしいけど、気持ちがわかるわ。


「はあ……わかったわ。とりあえずユニークウェポン無しでがんばってどうにかして行くしかないわね。依藤くんとミケさん、剣術の稽古を付けさせてもらって良い?」

「もちろん」

「ニャ、ニャア……」


 なんかミケさんが私に脅えた様な態度を見せている。

 だからソレ、やめてくれない?


「ミケさん?」

「ニャ!」


 スッと背を伸ばしてミケさんは頷いた。

 私って怖いのかしら?

 萩沢くんが何か言おうとして茂信くんと依藤くんに黙らされる。

 こんな感じで私のユニークウェポン入手は失敗に終わった。

 はぁ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ