表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/233

万全な装備

「ともかく、幸成くんと私は出来る事は少し違うけど、その分、幸成くんとは別の事が出来るみたい」

「だからこそ、ライクス国の各地を周っていつでもどこでも行けるようにしておくのは悪い手じゃないと思うんだ」

「幸成君が少しやっていた人を運ぶお仕事も、めぐるなら幸成君以上に出来るかもね」

「大幅な距離の短縮になりますから引く手数多ですよ」


 ラムレスさんが保証するとばかりに言っている。

 そう言ってもらえると安心出来るわね。

 なんせ、ラムレスさんはこの世界の人なのだし、そういった情報に詳しいんだもの。


「と言う訳で飛山さん達は俺と一緒に余裕があったらライクス国の各地を周るのが良いと思うんだけど、どうかな?」

「依藤くんは何をするの?」

「俺は国が依頼した危険な魔物の討伐の仕事をする事になるかな……大活性が無くなって経験値やポイントの効率は悪くなっていても危険な魔物が繁殖する事が多いんだってさ」

「へー……」

「どっちにしてもその前にLv上げをしなきゃいけないけどさ。国の騎士やミケ達に手伝ってもらってみんなのLvを大きく上げられる様にするつもりだ」

「なるほど……」

「じゃなきゃ帰る前に使用していた武具が装備出来ないし」


 と、依藤くんは装備を見せるかのように軽くその場で回る。

 いや、よくわからないから。

 首を傾げていると茂信くんが何か重そうに鎧を持ってくる。


「ピンとこないなら、前にクラスのみんなが使っていた装備を持って見ると良いよ」


 茂信くんが持ってきた装備を持ちあげて見る。


「なにこれ、凄く重い……」

「これを着用してピョンピョン前は動いていたんだ」


 どんな怪力選手?

 まあ……Lvとかゲームみたいな要素のある世界ならしょうがないのかもしれないけど。

 今の私達は装備は潤沢だけどLvが足りない。

 弱いままじゃ何かあった時に困るかもしれないから最低限の強さは必要って事なのは再三にわたって話をしたからわかっている。


「そんじゃみんなに装備を渡すよ」


 と言う訳で、今までの装備を脱いで、私達が装備できる一番良い装備を茂信くんが支給してくれた。

 で、武器は……一本の見覚えのある剣。


「これ……」

「うん。めぐるさんにはしばらくはこの剣を使ってもらおうと思ってさ」


 そう言って茂信くんが私に渡したのは銀色に剣……そうだ。

 メタルタートルの剣だ。


「あの時の剣は上位の剣に打ち直しちゃっているけど、幸成が持って行ったままなんだ。この剣は新しく打った物だよ」

「そう……」


 私はメタルタートルの剣を受け取って確認する。

 メタルタートルの剣+10

 って私が持っていた時よりも随分と強化されていた。

 軽量化も図られていて、更に硬さも維持している。

 なんて言うかとても手に馴染む感じがする。


「おい、過剰はすんなよ。羽橋に注意されてたもんな」

「しねーって! やりたいけど!」


 ……やりたいんだ。

 茂信くんはどうもギャンブルに関して思う事が増えたらしい。

 萩沢くんにこの辺りを言われると不快そうな顔をしている。

 どちらにしても、とんでもない性能の武器を当然の様に支給された。

 森に居た頃の感覚でいると、痛い目を見そうだと私は感じている。


「じゃあ……うん。飛山さん達は狩り場って訳じゃないけど魔物の生息地や村、街への移動に付き合ってもらって良いか?」


 依藤くんがリーダーとして行動を始めるみたいだ。


「俺は……ミケと一緒に近隣の材料を採取してくる。買っても良いけど、勘をとりもどさねーとな。ついでにLv上げだな」

「ニャー」


 萩沢くんは近隣で何かを採取する仕事をするみたい。


「めぐるさん、何かあったら俺達と連絡をしてくれ。俺も付き合うけど、今は物資の整頓をしておくよ。みんなのLvに合わせた装備をすぐに取り出せるようにさ」


 茂信くんは倉庫の整理をしておくみたい。

 まあ、依藤くんの話だとLv上げに良さそうな魔物が大量繁殖している地域に行くまで二、三日掛るらしいから、私が同行するのが適任ではあると思う。


「わかりました。聡美さんはどうする?」

「私はめぐるさんと依藤さんに同行させて頂いてよろしいでしょうか? 出来る限り力になりたいです」

「それは助かる。とは言っても、危険は無い様にするつもりだけどさ」

「共鳴って効果は私達じゃなくても良いんでしょ? なら同行してくれる人達と協力しても良いものね」

「はい」

「とは言え、今の俺達と同行する騎士じゃLv差が離れ過ぎてて話にならないかもしれないけど」


 と、依藤くんは苦笑いをしている。

 こう言うのってパワーレベリングって言うんだっけ?

 早く……強くなって幸成くんを迎えに行かなきゃね。

 私も自分の可能性……異世界転送の後に覚える拡張技能を知りたくなった。


「私はどうしようかなー……教会のお仕事はまだしなくて良いって言うけど」

「実がいると助かるけど……」

「じゃあ付いて行くね」


 そんな訳で私達は手分け……はしていないか。効率の良い場所と国中へ転送出来るように出発したのだった。



 城下町を出発して一週間、依藤くんや国の騎士達の案内の元、私達の旅は順調に進んでいた。

 馬車に乗って移動中での事。


「うう……」


 ちなみに聡美さんは乗り物酔いでぐったりとしている。実が介抱している。

 私も時々酔いそうになる。

 日本みたいにしっかりと舗装されている訳じゃないのが理由ね。

 転送で家で休んで貰っていても良いよと言ったのだけど、帰るのは嫌だと譲らずにこうしてぐったりとしている。

 一応、実のお陰で回復は早いけどね。


「いやぁ。さすがはヒヤマ様の転送ですね。ここまで快適な旅も珍しいですよ」

「定期的に城下町に戻れると言うのは本当に便利ですね」


 騎士達が挙って私を持ちあげる。

 そんな難しい事なのかしら?

 まあ……移動系の能力が希少なのが理由だからだそうだけど。


「ハネバシ様も人を転移出来る事に気付いた後はしてくださいました。あの時を思い出します」


 と、ラムレスさんは我が事の様に報告してくれる。


「そ、そうなんだ?」


 ちなみに道中の村や町の名前を私は必死に覚えている最中。

 地図とかもしっかり記憶してね。

 一度行った場所なら大抵どうにかなるけど、それもある程度イメージしないと行けない。

 まあ……この力を使えるようになってからその辺りの空間認識が不思議な程出来るようになっているけど。

 どっちにしても覚える事が多そう。


「ヒヤマ様が転送業務を始めれば絶対に成功するでしょうね。帰還の水晶玉は希少ですし、城下町にしか戻れません。目的地に人や物を一瞬で運べるのはそれだけ優位になります。出来れば商人の類との安易な接触は避けてください」


 そこで依藤くんが私に説明をしてくれる。


「問題のある品とか簡単に持ちこまれる可能性とか、日本人である俺達を利用しようって連中に警戒してるんだよ」

「へー」


 確かに、私達は何だかんだ言って世間をそこまで知らない高校生。

 世間知らずを騙そうとする人達ってのはやっぱり異世界でも居るって言うのは簡単に想像が出来る。

 そんな私たちを守るために騎士達が間に立って応答する……うん。

 納得できる理由だわ。


「国が斡旋した業者とかと提携して商売の手伝いをする感じだな。羽橋も最初はそんな仕事をしてたぞ」

「へー」


 幸成くんもやっていたんだなぁ。

 そう思うと、転送を使った配送業に興味が湧いてくる。


「とは言っても……ギルドとかの依頼でメタルタートル狩りとかに招集されていたり、忙しかったみたいだけどな」

「ハネバシ様は配送業をしておりましたが、異世界の品々の取引が始まると、自然と皆さまは配送よりも交易を望むようになりましたね」

「それってあんまり仕事出来ていなかった様に聞こえるんだけど……」


 まあ、幸成くんの能力の本質は日本に好きな時に帰れる事だった訳だし、自然と異文化の品々を持ってきた方が儲かるのは理解出来る。

 城下町に戻った後、街中を散歩して驚いたのは確かだしね。

 図書館に行列が出来ていた。

 何でも幸成くんが持ちこんだマンガをみんな挙って読みたいからだそうで……他に劇場ではゲームプレイ。他にマンガを劇にしたりと色々と娯楽で溢れかえっていた。

 その収益の一部が私達の懐に入っている……らしい。


 なんて言うのか……ポイントと金銭で別れて居るけれど、日本と異世界での待遇に感覚がずれそうで怖い。

 萩沢くんが永住を考える理由が分かってしまった。

 確かに……何もしないでこんなにも稼げたら、永住だって視野に入れてしまうかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ