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共鳴千里眼

 翌日。

 朝食を軽く取った私達は作戦会議って訳じゃないけど、茂信くんの工房に集まった。

 昨日の段階で打ち合わせしていたものね。

 で、国が斡旋してくれた騎士が護衛として私達に同行している。

 ボディガードって事らしいけど……なんか落ち着かないわね。

 私と聡美さん以外気にしていない所を見るに、気にする事じゃないみたいだけど


 で……茂信くんの工房に入ると既に依藤くんがいて、森の中でも見た事が無い重装備でマンガ本を読んでいた。

 その後ろでは何やら賑やかな声が聞こえる。

 若干の重低音……その音の方に目を向けると小型発電機があった。

 発電機がこの世界に対して、凄く浮いている。

 なんだろう、アレ。


「あ、あれね? 幸成が設置した発電機とテレビとゲーム。騎士共は相変わらずこの家を利用してたみたいでな」


 茂信くんが教えてくれる。


「えーっと……」

「ま、ちょっと頼りないかもしれないけど、幸成のお陰でミケ並みに高Lvな連中だから安心して」


 むしろ安心出来ない気がするんだけど?

 というかなんであの人達は私達を無視してゲームをしているの?


「とても楽しそうな所ですね」

「昨日は大変だった。幸成の護衛をしていたラムレスさんとも色々と話をしたし、ここに通っていた騎士達がゲーム談義とゲーム機の修理をして欲しいとの直談判を受けてさ」


 萩沢くんがあくびをしながら階段を下りてくる。


「ふぁあああ……ミケが注意してやっと静かになったもんな。めぐるちゃんに実ちゃん、聡美ちゃんおはよう」

「ニャー」


 背後には籠を背負ったミケさん。

 前よりも軽装だ。


「あ!」


 何か騎士達の輪の中から一際好青年っぽい金髪の騎士って感じの人がこちらに気付いて近寄ってきた。

 ちょっと気付くの遅いんじゃないかしら。

 ある意味では、凄い集中力だと思う。


「えっと」


 私と聡美さんを交互に見た後。


「ハネバシ様の話を参考にすると若干気が強そうな貴方がヒヤマ様ですか!?」


 このラムレスさんという方、結構イケメンな方に入るんじゃないかしら?

 クラスの女子とかが興奮して話の種にしそう。

 ただ、気が強そうって事で私を判断するのはどうなのかしら?

 確かに私は自分自身でもちょっと頭に血が上りやすいなぁとか悪い事をしている人を見かけると暴走しかねない時があって悩む時があるけど、そこまではっきり言われると傷付く。


「そ、そうですけど、何か?」

「ハネバシ様にはとても良くして頂いたラムレスと申します。今後ともよろしくお願いします」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「なるほどなるほど、貴方がハネバシ様の想い人なのですね。上の方々が揃って仰っておりました」


 想い人……幸成くんがどんな風に話したのかは知らない。

 けど、なんか凄く恥かしくなってきた。

 よくよく考えると昨日から言われていた気がする。

 昨日は色々と緊張していたから気にならなかったけど、いつのまにか恋人やら想い人やら言われていた様な……。

 どちらかと言えば告白して振られたはずなんだけどねぇ。

 もう一度告白して返事をしてもらいたい、という気持ちもある訳だし。


「そして、伝説の勇者」

「聖剣の正統なる所有者」

「過去に世界を救った救世主」


 いや、それは私じゃない。

 なのに何故か騎士達が私に興味を持って群がってくる。


「ちょ、ちょっと! それは私じゃなくて別の人です! だから変な期待はしないでください」

「おお……さすがはハネバシ様の想い人! とても謙虚であり、意志が強い!」


 そのさすがって言いながら、想い人って言うのやめて欲しいんだけど!

 と、とりあえず幸成くんが信用されているのはわかった。


「まあまあ、騎士の皆さん落ちついて下さい」

「サカエダ様」

「色々と話をしたい事はあるかもしれないけどさ。めぐるさんもそんなに囲まれていたら疲れちゃうよ」

「これは失礼しました。私共はハネバシ様やサカエダ様、ハギサワ様の警護役の騎士です。もちろん、異世界人の皆さまが声を掛けてくだされば即座に応じますので、何かあったらお尋ねください」


 で、ラムレスと名乗った騎士と他の人達は揃って一歩引いて敬礼をしている。


「それで、国の人達が色々と力を貸してくれるって言うのはわかったけど……私達はこれからどうしたら良いの?」


 すると私達を見ていた依藤くんが立ち上がって手を上げた。

 もう考えが決まっているみたい。


「美樹が国の図書館で色々と調べてくれるけど、それよりもまずはLvを上げる事が重要だと思うんだ」

「何にするにしても体は資本だもんな」

「お仕事はどうするのー?」


 首を傾げながら実が尋ねる。

 話によると実は教会で治療役として勤務していたらしい。


「それは個人個人の裁量になる……けど、少し不安なLvなのは確かじゃない?」

「まあねー。だけどLvを上げて大丈夫なの?」


 そう言えば話によると全ての黒幕だった聡美さんは、クラスのみんなの総合計のLvという強さを持っていた。

 あの時のみんなの総合計って相当な物だったんじゃ……。

 その危険性を実は言っているのだと思う。

 ……ぼんやりと古びた学校にいた様な夢をこの前見た。

 幸成くんの姿を見て、力の流れが強い方向を指差した所までだったけど。


「大丈夫だと思います。保証は出来ませんけど」


 聡美さんもそこは確信を持って言ってほしいわね。


「ま、まあ。どちらにしても先立つLvは必要ってね。お金やポイント、装備の類は潤沢だから仕事もしばらくは大丈夫だよ」

「そうなるかー……とは言え、お得意様とかの為に店は開いておくのも重要だぞ?」


 萩沢くんが茂信くんに提案する。

 永住を考えているなら……確かに人との繋がりは重要だよね。

 今は稼げているかもしれないけど、いつ無くなるのかわからないし。

 話によると茂信くんの能力である鍛冶って結構ポイントやお金を消費するらしいし。


「どちらにしても美樹が手がかりを見つけなきゃ始めようがない。いや、俺達も各地に足を運べる強さは必要だろう。それに……飛山さんはどちらにしても国中を周ってもらった方がみんなの為になるし」


 依藤くんの提案に私は首を傾げる。


「どういう事?」

「だって飛山さんの能力って転送だろ?」

「ハネバシ様の様に異世界へ行って買い物が出来るのでしょうか?」


 ラムレスさんが会話に入って尋ねてくるので私は出来ないと首を振る。


「残念だけど幸成くんみたいな世界を渡るのは難しいわ。だけど近い能力なのは確かね」

「そうですか……」

「とりあえず話を戻すぞ。飛山さんがいれば日が暮れると同時に城下町に戻って、昼間の内にいろんな所へ出発出来るようになるんだ」

「この世界の連中限定だったけど幸成と同じ事が出来るな」

「アレ? でもめぐるって千里眼が三箇所しか登録出来ないんじゃなかったっけ? と言う事は三か所?」


 この辺り、認識の統合が取れていないみたいね。

 実の質問に私は軽く咳をして答える。


「実、私の能力である転送は行った事ある場所なら大体飛べるわよ? じゃなきゃ能力が使えるようになった直後に使用できないじゃない」

「あ、そっか」


 まったく、すっかりド忘れしているんだから。

 そう、行った事ある場所ならば私の行ける場所に制限はあんまりない。

 高低差とか、その場所が何かで塞がれていない限りは行く事が出来る。


「幸成くんとの違いは攻撃性があるか無いかだけよ」

「千里眼は場所だけなのか? 羽橋の視覚転移は人にも掛ける事が出来たぞ」

「ちょっと試してみるわ」


 私は千里眼を依藤くんに掛けてみようとして見た。

 だけど設定した場所を基軸に登録されただけで思った様に設定出来ない。


「んー……無理みたい」

「そっか」

「千里眼って言うからには応用の方法がありそうなのにね」

「そうね。話によると拡張能力とかで強力になったりもするんでしょ? それで効果が変わるかも知れないわ」

「ちょっと待ってください」


 そこで聡美さんが私の手を握り、共鳴を発動させる。


「これで使用してみてください」

「あ、うん」


 私は千里眼を使用してみた。

 相変わらず思った様に誰かに設定する事は出来ない……けど、設定した場所を基軸に航空写真みたいな映像が私の脳裏に浮かんでくる。

 もう少しどうにかならないのかしらと思っていると……高さとか角度とか、結構な範囲を見る事が出来るみたい。

 あれ? まるで近距離みたいに壁の先もすり抜けて見える。


「聡美さんと力を合わせて千里眼をしたら……なんて言うのかしら、ネットの地図とかで場所を確認するみたいのあるじゃない? あんな感じで航空写真と辺りの物を遠くから見えるようになったわ」

「まさに千里眼ですか」

「見渡せる範囲に限界はあるみたいだけどね」

「魔物の討伐依頼とかで偵察をしなくても所在が分かるのは便利だな」

「むしろ、なんで森で試さなかったんだってレベルの性能じゃね?」


 萩沢くんの言葉にみんな沈黙する。

 そうね。これだけ索敵能力があるなら力を合わせて発動させるべきだったわ。


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