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壊れたゲーム機

 お城の中はとても豪華な装飾が施されていて、こう……海外に来た様な錯覚を覚える。

 異世界なんだから当たり前なんだけどね。

 よく考えれば私は異世界を森の中しか知らなかったんだなぁ。

 絨毯もとても高級そう。


 なんて思いながら受付を通って玉座のある部屋まで案内された。

 一目見るだけで射抜かれそうな強い眼光を持つようなオーラ……カリスマというのかな?

 そんな雰囲気を宿した40代くらいの男性が玉座に腰掛けている。

 服装は王様っぽいとしか言いようがないかな?

 豪華なガウンとか羽織っているし……テレビで見た海外の教皇とかこんな格好していたと思う。


「これは異世界人の皆の者、久しぶりじゃな」


 そしてそんな人が私達を見ると親しげな様子で立ち上がって一礼した。

 結構渋い声、立ち振舞いからクラスの女の子が理想の男性像とかに思っていそうな感じ。


「お久しぶりですね」

「おひさー王様」


 茂信くんが代表して答え、萩沢くんが親しげに片手を上げて応じる。

 ちょっと萩沢くん、失礼じゃないの?

 相手は王様なんだし、こっちが頭を下げるべきなんじゃ?


「我が国ライクスの窮地を救った後、何処かへ旅立って行った異世界人の皆様の帰還、国を上げて歓迎を致します」

「その事なのですが……色々と尋ねても良いですか?」


 茂信くんの問いに王様は頷いて玉座に座る。

 けど、何だろう、視線が私達の中から誰かを探す様な態度だ。


「ええ、幾らでも応じるが……その、ハネバシ殿はおらぬのか?」

「あ……はい。俺達もアイツを探していまして、こうして戻って来たんですよ」


 すると王様は途端にがっかりした表情を僅かに見せる。


「そうか……」


 ねえ幸成くん、貴方は一体、この国で何をしていたの?

 王様と凄く仲が良かったとか?

 私が知らない間に幸成くんがとてもつもなく凄い人になっている様な気がしてきた。


「なんだ王様? 新作のゲームか何かを羽橋に買ってきて欲しかったって顔をしてんぞ」

「ちょっと萩沢くん!?」

「うむ!」

「王様!?」


 私が注意すると王様が全力で頷いた。

 しかも周りの騎士達もだ。

 幸成くん、本気で一体何をしていたのか後で聞きたい。


「コホン……では簡潔に、王様の認識している範囲で、俺達がどんな活躍をして旅だったのか再確認をしたいです」


 この辺りの事を私は知らない。

 一応、ここまでの途中で断片的に聞きはしたけど、あまりに突飛で膨大だったから全てを知っている訳でもない。

 とはいえ、森を抜けたみんなが沢山がんばったのは理解している。

 多分、幸成くんはみんなを日本に帰す為に尽力したんだと思う。

 そして……何か理由があって帰って来る事が出来ない事情があるはず。


「ふむ……少々あやふやな確認であるが、異世界人の皆さまが望むのならばお答えするとしましょう」


 王様の代わりに隣の人……大臣で良いのかな?

 大臣さんがそう答えた。


「じゃあ……」


 茂信くんが腕を組んでから考えるようにして尋ねる。


「俺達が前にこの国に来た事は認識していますよね」

「ええ、ハネバシ殿やクロモト殿が提唱した、役目を終えた異世界人が元の世界に帰ると、人々が帰った異世界人の事を忘れてしまうと言う話からの質問ですな」

「はい」

「こちらが認識している限りで述べなら、ハネバシ殿が代表してメーラシア森林でこれまでにないほど過激な大活性で発生した怪物の異常発生を鎮圧したのが最後の活躍でした」

「ちょっと待った」


 萩沢くんが遮る様に王様の説明に手を前に出して止める。

 そして聡美さんが代表して何か言おうとしているのを黒本さんが肩を掴んで制止した。


「メーラシア森林? 大森林じゃなかったっけ? 前はそう呼んでいたと思うぞ?」

「はて? そのような覚えは無いのじゃが」


 王様が首を傾げる。


「怪物の異常発生……事情も知っていたはずだが……」


 と言う所で聡美さんが軽く手を上げて茂信くんを振り返らせる。

 そこで黒本さんが聡美さんの肩に手を置いて注意する。


「あのね浮川さん、出来れば別世界の浮川さんが全ての黒幕だったとかの言葉は使わない様にしてね。大丈夫だとは思うけど余計な火種は避けるべきよ」

「は、はい」


 聡美さんは頷いてからみんなと相談するように顔を近付かせる合図をして話し始める。


「たぶん、幸成君が歴史を変えた事による変化だと思います……大活性の類は発生直後に幸成君が全て鎮圧して行ったので、余震で起こる魔物の凶悪化現象としか認識していないのかと……」

「なるほど、過去改変と認識の変化で大森林が森林と小さくなった訳か」

「はい」


 相談を終えて王様にみんなで向き直す。


「その後、皆さまは役目を終えたのか忽然と姿を消しました。おそらくは元の世界へと帰られたのかと思っていたのですが……」

「あー……概ね間違いは無いです」

「Lvは1に戻っちまって大変だったけどな」

「ニャー」


 萩沢くんがこっちの事情を僅かに漏らす。

 そんな事を説明して良いの?


「王様!」


 そこで実が突然力強く手を上げた。

 あまりに切迫した声だったのでビックリした。


「クマ子ちゃんやルシアちゃんは何処へ行ったかわかりますか?」


 え? そこが気になるの?

 話の流れ的に幸成くんと一緒じゃないの?


「ハネバシ殿のユニークウエポンモンスターであったクマ子殿と聖剣ノア=トルシア殿の消息もわかっておりません」

「……そうですか」


 落胆しているけど、実、何かおかしくない?

 大丈夫なのかな?


「いえ……これまでの事で羽橋くんをみんながしっかりと認識している事がわかっただけでも十分よ」


 黒本さんが重い雰囲気の中でキリッとした表情で答える。

 腐の部分さえなければ知的で魅力的な人だと思うんだけどなぁ。


「だって、みんな羽橋くんを認識しているという事は彼はこの世界にいるって事でしょ?」

「……そうね。私達異世界人は世界を渡るといなかった事にされてしまうみたいだもの」


 私は黒本さんの意見に同意した。

 つまり、この世界に幸成くんが存在していると確定したって事。

 なら、例えどれだけ茨の道だったとしても迎えに行って見せる。


「えー……っと後はミケから身振り手振りでしか聞いてませんが、その後ライクスの現状はどうなっているでしょうか?」

「特に大きな事件はなく、平和が戻って来ておる。そうじゃな……平和過ぎて刺激が無いと言うのが正しい。良い事ではあるのじゃが、ハネバシ殿が残した品々に人気が殺到しておる……が、連日の稼働によってゲームの機材の破損が目に余る状況になりつつあるのう」


 王様が専門家を呼んで、機材の一部を分解した旨をバラバラになったゲーム機を見せてまで説明してくれた。

 ほんの数ヶ月でここまで破損するのは、むしろ凄いんじゃないかな。

 でも……大勢の人で回し回し使ったらこうなる様な気もする。


「どうにか新たな機材か修理をして欲しい。その為にはポイントも金も惜しまん。異世界人の皆、どうにか出来ないかの?」

「あー……うん」

「羽橋のやらかした事がどれだけすげーのかここでもわかるな」

「能力での修理は出来なかったのかしら?」


 黒本さんの意見に王様はやや困った様に頷く。


「一部は可能なのが分かっておる。まあ、騙し騙しであるのは確かじゃがな。必要魔力やポイントが多くてな……出来れば上位能力である異世界人の皆にお願いしたい所じゃ」


 王様は所々塗装が剥げた携帯ゲーム機を見せてくれる。

 随分と使いこまれた様に見えるのは私だけじゃないはず。


「国でも機構技師の能力を持つ技術者が日夜研究に励んでいるが、これだけの精度の物を作るには追いついていないのが現状じゃ」


 能力でもダメなんだ。

 日本の技術って私が考えていたよりも凄いみたい。


「そうですか……となると萩沢くんか姫野さんが適任ね」

「え? 俺?」

「私?」


 萩沢くんと実が各々自分を指差す。


「ええ、だって萩沢くんの能力は道具作成でしょ? 姫野さんは拡張能力に修理があったはず」

「あー……まあ、出来なくはないかも知れねーけど……めんどうくせー」

「じゃあ覚えたらやってみるね」


 と、各々返答すると王様は笑顔になる。


「任せましたぞ」


 ……なんで異世界に来てゲーム機の修理をお願いされているんだろう?

 それだけ人気があったって事なんだろうけど。


「もちろんマンガ等の類は現役で、続刊を見る事が出来ない点を除けば好評です」


 大臣が補足している。

 マンガも持ってきているんだ。

 幸成くん、日本からどれだけ運んできたんだろう。

 王様はゲームの方に意識が向いているって事なんだろうけど……。


「ところで先ほどから気になっていたのですが……初めて見る方がいる様に見受けられますが、新たな異世界人の方ですか?」


 と、王様と大臣が私と聡美さんに顔を向ける。

 兵士達が事前に説明はしているのだろうけれど……きっと、自己紹介をして欲しいと言う意味だ。


変化については後々色々とやっていく予定なので、めぐるさんの視点ではあまり変わっている様に見えない、と思ってくだされば問題ありません。

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