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交渉?

「ミケくん、お久しぶりー元気だった?」

「ニャ!」


 親しげな様子で実が近寄って挨拶をする。

 状況が飲みこめない私達に気づいた茂信くんと依藤くんが、萩沢くんと三毛猫の魔物を指差しながら苦笑いを浮かべている。


「あー……あの魔物、ミケは萩沢のユニークウェポンモンスター。魔物なんだ」

「改変された世界でどうなっているかわからなかったけど、どうやら萩沢の事を覚えていて、親しげな様子を見せていると言う事は飼い主って事になっているんだろう」

「な、なるほど」


 三毛猫の魔物は萩沢くんを抱きしめたまま私達の前に歩いて来る。


「ニャ!」

「あ、よろしくお願いします。飛山めぐるです」

「浮川聡美です」

「ニャ? ニャーニャ? ニャ」


 一礼してからなんか自己紹介っぽい感じで鳴いてる。


「えっと、ミケさんで良いんですよね? 萩沢くんが飼い主の」

「ニャ!」


 ぐっと親指を立てられた。

 意志疎通は出来るみたい。


「ニャーニャ?」


 で、ミケ……さんが私を指差した後、両手の人差し指っぽい指を立てて片方の指を指示して飛ばす? みたいなジェスチャーをした後、剣を指差して首を傾げる。


「そうそう。幸成くんが良く話をしていた女の子だよー後、ルシアちゃんもね」

「ニャ」


 理解したって感じで鳴かれた。

 え? 何を言ってるか分かるの? みんな凄くない?

 特に実、貴方は一体何者よ!

 というかルシアちゃんって誰!?


「いつまで抱きしめてんだ! 降ろせ! うわ! やめろ!」


 萩沢くんがミケさんに抱き締めから逃げようと暴れるのだけど、ミケさんは絶対に放さない! とばかりに羽交い締めにしてペロペロと萩沢くんを舐め始めた。

 ミケさん、嬉し泣きしている様に見えるんだけど……。


「ウッホ」


 黒本さん、スケッチの速度が上がっている。

 もう少し輪に入って冷静に説明してください。


「ミケが来たって事は大分楽が出来るんじゃないか? 萩沢、ミケのLvは?」

「や、やめ、舐めるな……うお……あー、羽橋が上げてくれた数字がそのまま残ってるみてーだ」

「よっし! これで森を簡単に抜けられるぞ!」


 茂信くんと依藤くんが小さくガッツポーズを取る。


「幸成くんが上げてくれた数字?」

「ああ、幸成は最終決戦に備えてクラスメイト以外の連中のLvをそれなりに上げる手伝いをしてくれていたんだ」

「で、萩沢のミケはその面子に紛れていたんだが、Lvは据え置きだったみたいでさ。つーか……俺以外の疑似飼い主状態だった感じだな」

「飼い主の萩沢に合わせてLv低下していたら厄介だったがな」

「ニャー」

「もう離れろってーの!」


 なるほど。

 つまりミケさんのLvは私達よりも遥かに高いって事なんだ。


「森を出る程度造作も無いだろ?」

「ニャ?」

「萩沢、ミケに頼めって」

「わかってる。ミケ、森を出る手伝いをしろ!」

「ニャー?」


 あ、どうしようかなー? ってポーズを取っている。

 ミケさんは萩沢くんにとってどんな存在なんだろう?

 これまでの反応からよくわからない。


「Lvが足りないと言う事を聞かないって可能性は?」


 無いとは言い切れない。

 自分よりも格下の主の言う事なんて従えないだろうし。


「言う事を聞いてくれたら萩沢をやるぞ、ミケ」

「そうだ! 先ほどのスリスリじゃ不満なのか、ミケ!」


 茂信くんと依藤くんが、それって交渉?

 って言いたくなる台詞を言っている。


「何言ってんだお前等! ミケ! わかってるだろ!」

「ニャー」


 コクリとミケさんは頷いて、萩沢くんを抱えたまま歩きだした。


「案内してくれるみたいだな」

「ねーミケくーん。ミケくんはどんな経緯で私達と再会できたのー?」

「ニャーニャー」

「うんうん」


 実がミケさんの隣で見上げるようにして尋ねている。

 実……異世界に来てから思ったけど、やっぱり何か変わったわよね?

 ちなみに実の話でわかった事はミケさんは最終決戦の後、誰が持ち主か分からない自身の剣……帰ってしまった萩沢くんを思い出せず、帰りを待ち続けていたんだとか。

 ただ、幸成くんの事は覚えていたので、全て忘れた訳では無かった。

 おぼろげな記憶の中で、ミケさんは萩沢くんの帰りを待ち続け、時は来た。

 はっきりと萩沢くんの記憶、気配を感じ取ったミケさんは感覚を頼りに合流した……らしい。

 ただ、その道中の詳しい話は実でも分からないそうだ。

 全て実の話なのでどこまで真実なのか判断に悩む。


「お城の人達は?」

「ニャー」

「うん。全てが終わったのを理解して帰っちゃったのね。わかったー」

「羽橋が改変した世界ってのも案外変わってねーって事か?」

「ニャー」

「森の様子が変わったり、色々と変化はあるみたいよー」


 ミケさんが加入したお陰で戦闘はとても楽になった。

 出てくる魔物の数が減り、仮に襲って来ても即殺、私達は揃って森を出る頃にはLv10になった。

 依藤くんは少し出遅れていてLv8って所。

 依藤くん曰く、戦闘向けの能力者は上がりが悪いらしい。


「なんか森自体が小さくなってない?」

「ニャ!」


 森の出口にはこの世界に来て五日目に出る事が出来た。

 茂信くんや依藤くんを初めとした、道を知っている人達が揃ってミケさんに尋ねたのだ。

 森を抜けて、大きな平原を見て私は背伸びをした。

 やっと、あの森を出る事が出来たのね。

 森の外に出られた事に感動すら覚える。

 それだけあの時の経験が心の枷になっていたのかもしれない。


「そうなの?」

「ああ、少なくとも一直線で出口へ向かったとして、後四日以上は掛るはず」

「あの時は生き残ったクラスの連中とゆっくり進んでいたからな……体感……にしたって変か」


 依藤くんが茂信くんの言葉に同意している。


「そうだねー。なんて言うか森が小さくなってるのは確かだと思うー」


 実も同意していた。

 つまり誰かの勘違いではないという事になる。


「どっちにしても森を抜けられて損はねえだろ」

「ニャー」

「まあ、そうなんだがな……」

「この後は何処へ? 私もなんとなく程度しか記憶していないのでよくわからないのですが……」


 聡美さんが茂信くん達に尋ねる。


「前来た時は森の近くに村があったんだけど……」

「森自体が小さくなってるから、それもどうなっているか……ありそうな方角へ歩いて行くしかないだろ」


 依藤くんの提案にみんな頷き、森を出た後は草原を歩く事になった。

 出てくる魔物は森よりも弱く、ミケさんがいる私達にとって何の苦も無い道となってしまっていた。


「村とかあれば良いが……」


 街道の様な道の名残を辿る様に歩いていると、若干大きな川を通り過ぎた。

 所々で少しばかり強力な魔物が出没する様なのだけど、気を付けていれば危険は避けられるみたい。

 ミケさんと依藤くんのお陰で旅は順調だ。



 夜の草原で私達はキャンプをしていた。


「ニャー」

「暑苦しい!」


 ミケさんはずーっと萩沢くんにべったりしている。

 とても慕っていると言うのがここ数日で理解する事が出来た。


「ユニークウェポンモンスターかー」

「そうそう」

「戦闘向けじゃない能力者が戦う為の武器と、仲間となる魔物の話よね」

「ええ」

「萩沢くん以外の人も持っていたの?」


 そう尋ねると、みんな揃って視線を逸らす。


「羽橋と萩沢以外だと、この場には居ないクラスメイトが何名か所持していたって所だ」


 依藤くんが説明してくれる。


「私はクマ子ちゃん以外に浮気したくないもん」


 クマ子ちゃんと言うのは幸成くんが世話していた魔物らしく、実が溺愛していたのだとか。


「森を出た後は戦闘がそこまで必要無くてな……俺は入手していなかった。ハンマーで戦えるのがわかっていたから」


 茂信くんはハンマーを持って見せてくれる。

 確かに茂信くんはその辺り、手慣れた感じで戦っていたと思う。

 むしろ戦いに手馴れていて、凄く頼りになった。


「私は隼人がいるし、世話をするのが大変だからやっていなかったわね」


 黒本さんも同様。

 結局、この場にいる人で世話をしていたのは萩沢くんだけだったみたい。


「じゃあ私はこれから機会があったら戦えるように入手すべきなのかしら?」


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