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連撃

「ルシア、今まではどうやってアイツを止めていたんだ?」

『単純に倒す事じゃな。そうするとしばらく奴は動けなくなる。その間、奴が所有している噴出する魔力の力の支配権が無くなる。それを奪うか……わらわの所有する封印の力で強制的に封印していたぞ』


 ……封印で抑えつけてはいけない。

 かと言ってこのままではじり貧で負けてしまう。

 それこそ、彼女が魔力大活性の全ての魔力を変換し、世界を滅ぼそうとしている。

 今も変換しようと躍起になっているのがわかる。


『じゃが、今回はユキナリがおる! 奴を弱らせた後、授かった力で未来の果てに強制的に送りつけるんじゃ!』


 ルシアの忠告を耳にしながら俺は武具と道具で一斉に狙撃しながら日本から異世界へ……彼女の前に飛ぶ。

 一瞬の炸裂でも彼女は全く受け付けないかのように防壁を作っていた。

 その中に転移して、剣を振りかぶる。


「はああああああああ!」


 ガツンと彼女は黒い剣を作り出して俺の攻撃を受け止める。

 そして剣が鎖に変わって巻き付いて来た。

 そんな能力もあるのか。

 鈍器とか鞭とかの能力だろうか?


「クマ子!」

『ガウ!』


 俺の指示にクマ子がグローブとして嵌り、ルシアが腰の鞘に剣を収める。

 そのまま流れるようにマッハパンチを彼女に向かって放つのだが、未来予測をしていたのだろう。

 彼女は俺の攻撃を避ける。

 流れざまに無数の武器を転移の様に呼びだして俺に射出していた。


「喰らうか!」


 盾や壁等を転移で引き寄せて受け止めつつ、殴りつける。

 ……そういえば予測系の技能をルシアやクマ子は所持しているが、俺も出来るんだった。

 時空転移を設定して飛ばす先、30秒先を視覚出来るようにしながらグローブで殴りつける。


 おお、何をしてくるかわかる!

 あっちがどんな攻撃をして来るか、所有する能力でどう工夫してくるかが読み取れる。

 未来は変幻するけれど、その範囲を見る事が……できる!


「おおおおおお……」


 拘束の能力で俺を縛ろうとしても、茂信達の力がそれを遮る。

 その隙をグローブで殴りつけようとするのだが、相手の無数の戦闘系技能が邪魔をして行く。

 剣術、棒術、槍術、体術……ありとあらゆる武術で対抗してこようとするが、俺の方がまだ早く、未来を完全に見通せる俺に攻撃を当てる事は出来ない。


「おおおお!」


 天魔一刀、天下無双、神魔滅殺、ノヴァストライク等、様々な武術の奥義が放たれながらも俺はそれを全て、強引に弾く。

 ノア=トルシアが内包している技術以上の力は俺には無い。

 一瞬でも気を許せば死んでしまうだろう。

 だが、まだ戦えている。


『ぐ……奴とユキナリの攻撃が苛烈過ぎると言うのか……』

『ガ、ガウ……』


 度重なる猛撃にルシアとクマ子……武器が悲鳴を上げて行くのが伝わってくる。

 しかし、ここで引く訳にはいかない。

 一撃毎に損傷転移で破損を射出する武器に移しながら戦っていく。

 彼女の持つ武器が徐々に消耗して行っているのが伝わる。

 俺とは別に能力で補充している。

 その分、損耗はこっちが有利なはず!


「うがああああああ……」


 !?

 強引に依藤や茂信、クラスのみんなをここに呼び出して俺に嗾けようとしている!?


「させるかあああああああああああああ!」


 俺は手をかざして相手の召喚を阻害、レジストする為に力を込める。


「ぐおおおおおお!?」


 お? 自分が何をされているのか察して驚きの声を上げているな。


「ぐぬぬぬぬ……」

「おおおおおお……」


 見える。未来で、わかる。

 これは奴自身にも多大な負荷が掛る奥の手に近い攻撃だ。

 どんだけがんばっても消す事の出来ない固定のディレイが奴に振りかかるのがわかる。


「そんな手段を……させない!」


 バキンとみんなをこの地に呼ばせようとする力を薙ぎ払う。


「うがああああ!」


 彼女はその時の隙を使って俺に向かって能力の封印を施そうとしてくる。

 この力は……彼女にとっても悲しい能力であるはずだ。


「無駄だ! 俺はそんな攻撃を受けない」


 みんなが託した全てが、俺を守り続け、その力の維持に俺は務める。

 無数の能力を持つ、最強の能力者であろうとも止められない。

 ここで戦っているのは俺とルシア、クマ子だけでも、ここに来るまでに沢山の人達が俺に力を授けてくれている。


「おおおお……」


 ジャキっと今度は……俺を取り囲むように銃器が出現して一斉に射撃して来る。

 銃術か?

 いや、あの銃は異世界の素材ではなく、俺達の世界の方?

 バラバラと周囲に魔力で構築された鉱石が落下して来ては、彼女に力を注いで行く。


「サイレンスソード!」


 封印等の能力は状態異常を施す様なもんだ。

 ならば剣術、ルシアに内包された剣技に相手の能力を押さえつける物だってあるに決まっている。

 僅かに早い俺の剣技が彼女に命中……したが、周りの怨霊達を僅かに削り飛ばす事しか出来ていない。


「今だ!」


 斬りつけ、走り抜けると同時に転移を同時起動し、魔法杭と呼ばれる儀式用の杭を地面に転移させる。

 あらかじめ登録していた効果のある魔法陣が悪意の集合体を取り囲む。


「……っ!」


 ノア=トルシアを地面に突き立てて発動させる。

 果てしないほどに貯蔵された対魔の力は亡霊共を薙ぎ払い閃光を発動させる。

 対悪魔、悪霊用魔法陣。ディバイン・サクラメント。

 神聖の能力者が膨大な魔力……普通は命を代価に発動させる必殺奥義。

 それと重ねるように魔術的拘束魔法陣、アビリティプリベント・ウォールを展開させる。


『ぐぬぬぬ……ユキナリが所持者でなければ、持ち手が死んでおるぞ!』


 湯水の如く、俺から魔力が剣伝いに奪い去られ、ルシアが苦悶に満ちた声を上げる。


「わかってる!」


 それをポイント相転移を使って補充しながら俺は、ノア=トルシアとめぐるさんの剣を地面から引き抜き両手に持って振りかぶる。

 疑似剣術の中でも最上級の剣技を無数に放ち続ける。


「スターライトスラッシュ! イリュージョンソード! 滅竜剣! フレアエイト! まだまだ――」


 呼吸すらも忘れ、限りなくゼロに近い時間の中で俺達は彼女に向かって攻撃を繰り返した。

 これだけ抑えつけられているにも関わらず、彼女は抑えつけられた中で能力を発動させ、俺達に向かって武術で応じながら無数の魔法を放ち、武具を生成して自らの守りを強固にしながら傷を癒し、無数に分身し、部下の影や悪霊を呼びだしながら俺の能力を封じようとして来ていた。


「おおおおおおおお……ゆる、さない……生きている……ずるい……最……強……」

「しぶとい……それは彼女の声じゃない!」


 スパンを声を発する悪霊を切り裂き、少しずつ……本当に少しずつ削って行くしか、今の俺達に出来る事は無い。

 無限と思えるくらいの能力の塊から、エネルギーやポイントを奪い去る。

 俺が接近している今、大地から溢れる力を吸収する暇なんて与えるつもりは無い。

 全ての繋がりを断っているんだ。


 なんて思いながら未来を見つつ攻撃を繰り返していると、チラッと見えた物がある。

 今、避けてはいけない!

 ドスっと俺に彼女の放った全てが命中する。


「ぐ……ぐううううう……」


 ニヤリと纏う悪霊全てが笑みを浮かべる。


「まだ……だ!」


 ポイント相転移と俺の魔力が反応し、傷を癒し、状態異常を追い散らかす。

 そしてあらかじめ指定した損傷転移によって武装を修繕。


「な――」


 絶句する悪霊共、その驚きが怒りと殺意に変わるその瞬間。


「そこだ!」


 転移で、ある儀式の部分へ飛ばす。

 もはや意味は成さないかもしれない一撃だが、それでも僅かばかりのダメージが怨霊達に伝わる。

 綻びが見え隠れしてきた。


「……っ!」


 グローブに持ち替え、衝撃炸裂を悪霊の塊に放ち、爆裂させる。

 その瞬間に再度剣に持ちかえて十字に切りつける。


「クロス・ジャッジメント!」


 十字の閃光が悪霊を大きく引き裂き、彼女本体が露出する。

 世界を呪い、呪いに汚染された呪いの本体……ここに至るまでに何度も弱った瞬間はあった。

 けれど、俺が望んでいるのはそこじゃない。

 まだ彼女に纏わりつく悪霊達に俺は剣を向ける。


「殺して殺されて……この世の全てを憎んで、世界を滅ぼそうとして……それで満足だって言うのか!」


 無限に続くかに思える殺意の連鎖、始まりは身勝手な召喚だ。

 それから生まれた殺意――呪い。


「幾らやっても満足なんて得られるはずなんてない!」

『さあユキナリよ! 早くトドメの能力を使うのじゃ!』


 僅かに力が流れてくる。魔力大活性の力の導きだ。

 ここから力を発動させれば能力の導く願いが叶えられる。


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