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自作

「昨日の所に飛んだけど……」

「特に変化は無さそうだね」


 辺りを見渡しながら俺達は警戒態勢を取る。

 いつ魔物が襲ってくるかわからないから注意しておかないと。


「とりあえず……飛山さんのLvが5になる事を目標にして行こう」

「うん。それが良いと思う」

「本来は魔物の襲撃に備えないと行けないのに倒して行くのはどうなんだろうね」


 飛山さんがなんとも本末転倒な事を言う。


「永住するなら良いのかもしれないけど、元の世界に帰るにしても人里を見つけるにしても捜索は必要だし、俺達も強くなった方が良いのは確かだと思うよ? 谷泉達に異議を唱えてみんなで戦えるようにさ」

「……そうだね。ところで羽橋くん、また今日も朝食を他の子にあげてたよね? お腹……本当に空いてないの?」


 ギク!

 配給された食料を渡していた所を見られてた!?

 どういい訳するかな。


「だ、大丈夫大丈夫」

「食べなきゃどこかで倒れちゃうんだからね」

「本当に大丈夫だって。この顔色を見てまだ同じ事が言えるの?」


 実際、毎日しっかり食べている訳だし、顔を見ればわかってくれるはずだ。


「十分青ざめて見えるけど」

「え? さっきはそんな悪く見えなかったけど?」


 姫野さんまで俺を心配するように俺の顔色を見てくる。

 気にするな。平常心、平常心だ。

 焦りで具合が悪い様に思われているだけだ。


「あれ? そこまで顔色悪くないよ?」

「んー……?」

「だから大丈夫だって、何かあったら茂信辺りに飯をせがんでるさ」

「ま、幸成はそうだよな。無茶はしないから言わないんだろうし」

「そう……本当に無茶はダメだからね?」

「もちろん」


 茂信の後押しで飛山さんは俺から視線を逸らす。

 俺の心配するのは良いから、みんなは自分の食事を気にしていてほしい。

 そんな感じで、どうにか誤魔化す事が出来た。



 という訳で俺達は森の中を歩き始めた。


「あんまり奥に行くと危なそうだから、手堅く行こうね」

「もちろん。とはいえ、谷泉達に狩られてるだろうからそこまでいるかどうか」

「谷泉くん達の狩った数なんて森全体から言えば少数……というのを期待したいな」


 なんて雑談をしていると、またホーンラットが姿を見せる。

 名前はグリーンホーンラット。

 うん……やばい生き物にしか見えない色合いだ。

 緑色の角ネズミ……食欲をそそらない。

 ネズミ故に生息数が多いのか? 派閥違いなのか?


「もうホーンラットは十分だから死骸は持ち帰らなくて良い」

「料理してもらってもあんまり美味しくないもんね」


 という事で遭遇したホーンラットは前日と同じくアッサリと倒した後に進んで行く。

 最初はあんなに苦戦したのにLvが2~3上がるだけで結構簡単になるもんだ。


「どっかに川でもあれば拠点移動をして釣りとか拠点組はしてれば良いと思うんだけどなぁ」

「水は井戸からだもんね」

「川から魔物が現れたら危なそうだけど、それも承知で行くなら良いかもな」


 そうなんだよなぁ。

 いくら結界があるとはいえ、常に魔物に警戒しないといけないというのが問題なんだよな。

 気が休まらない。


 そもそもこの世界は森なのか?

 俺達は森と魔物しかいない世界を冒険しているのか、と思わなくもない。

 木を登って何処かに何か無いかを調べたらしいが、今の所、それらしい物を見た者はいないんだとか。

 ま、プレイヤー組の意見だけどさ。

 なんて思いながら歩いているとグラスグリーンマイコニドという緑色の大きな歩くキノコが三匹現れた。

 緑色多いな!


「てえい!」


 飛山さんが剣を抜いて斬りかかる。

 ズバッと縦に切れ、一匹は真っ二つになって動かなくなる。

 先制攻撃が効いたのかグラスグリーンマイコニドは俺達の動きに対応しきれていない。


「俺も行く!」


 横切りで俺はグラスグリーンマイコニドに斬りかかった。

 が、ブツッとまるで繊維を切るかの様に何かにぶつかってグラスグリーンマイコニドは僅かに吹っ飛ぶだけで着地されてしまった。

 ふるふると怒りを露わにするかのようにぐらすグラスグリーンマイコニドが全身を振るわせて胞子を飛ばしてくる。

 感染したらキノコ人間にされたらやだな……。


「飛山さんはすんなり倒せたのに俺は倒せない……ちょっと強めの魔物か?」

「多分、キノコだから縦に裂きやすいとかじゃないか?」

「ああ、なるほど!」


 茂信が俺とは異なる一匹を縦切りで切りかかる。

 サッとバックステップで華麗に見せかけた避けをグラスグリーンマイコニドはしたが、相手の数を考えるんだな。

 飛山さんが回りこんで背後から縦切りにした。

 残りは一匹!


「よし! じゃあ行ってみる!」


 と、俺は縦切りでグラスグリーンマイコニドの脳天……傘の頂点の部分に黒曜石の剣を振りおろした。

 先ほどの繊維に引っ掛かる感じは無く、アッサリと真っ二つになる。


「勝利!」


 剣を掲げて俺達は魔物を仕留めた事を大いに喜ぶ。

 経験値とポイントは……まあ弱さに合わせた数値だ。


「この魔物の死骸はどうする?」

「食えないかな……って谷泉達も一度持ってきたけど危ないから避けたんだよな」


 さすがにきのこだしな。

 変な毒とか持っている可能性は高い。


「食ったらパワーアップとか……したら良いが」

「危ないだろ。素材もあんまり良くないし……萩沢の為に持って帰るかくらいしかない」

「危ない薬の材料にしかならなさそう」

「念の為に少量送っておいてくれ」

「あいよ」


 俺はグラスグリーンマイコニドの死骸を集めて転移を作動させた。

 ちゃんとイメージ出来ているな。

 失敗して待機してる萩沢に当てたら大変な事になるぞ。


「ふと思ったんだが……」

「どうした?」

「何も能力だけで物を作らなくたって良いんだよな?」


 茂信が作った今朝のメタルタートルの甲羅みたいな感じでさ。

 加工しだいで代用が出来る可能性はあると思う。


「まあね」

「萩沢もその辺り閃いていたりしてな」


 キノコの死骸を見た萩沢が何をするか見物だ。

 結構綺麗に裂けるし、皮は思ったよりも丈夫、乾燥させたら袋代わりになりそう。

 胞子にどんな効果があるかわからないけど、魔物に投げたら良いかもしれない。


「後で聞いてみるか」

「そうだな。考えてみたら能力だけが全てじゃないもんな」

「こうやって工夫して行く事で発見があると良いね」


 なんて感じに俺達は移動を再開した。


「しかし……この森は何処まで続いているんだろう」


 奥へ行けば行くほど、木の幹が太くなっている様な錯覚を覚える。

 古から続く森とか、そんな空気が出てきた様な……。


「まだ谷泉達も二週間と少ししか探索していないからなぁ」

「何処かで出られたら良いんだけどね」

「そうだなぁ……どこでも良いから人里に出たい」


 なんて話をしていると隆起して岩肌が見える場所に通り掛かった。

 まあ、森の中でもこういう所はあるよな。


「そういや谷泉達が鉱石とか持ってきた事があったけど、こういう所で採って来たのかな?」

「そうなんじゃない? 能力で強引に採掘とかしてきた感じでさ」


 ゲームとかだとピッケルで採れそうだけど、現実だとどうなんだ?

 岩肌に露出している石を手で掴んで取り出してみる。

 うーん……パッと見は石にしか見えん。


「黒曜石とかもこういう所で手に入れた物だろうし……」


 まあ、原始人が武器に使っていた物だし、探せばあるのかもしれない。

 こんな所で見つけてきたのか……。


「黒曜石って火山岩だよね? こんな森の中にあるの?」

「よく考えたら不思議だよね」

「カルデラだったとか色々と説明が出来るけど、怪しいのは――」


 言い切る前に魔物が岩肌を滑り降りてやってくる。

 何か尻尾が鉱石っぽい……大きなトカゲだ。

 シーグリーンロックリザード。

 ホント今日は緑色の魔物が多いな!


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