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亡霊

 ……?

 この生徒手帳、魔力が宿っている。しかも禍々しい力を感じるぞ。

 紙質からすると風化してもおかしくない物も多い。

 それなのに魔力で形が保たれている。

 他の死体を漁っているのか同様に手記っぽい生徒手帳の記述があるのが存在する。


 森にいる時に殺したはずの飯原が悪霊となって俺を殺そうと追ってくる。

 能力で何度も仕留めても蘇りやがるし、他にも殺した奴等が襲って来やがるじゃねか。

 一体どうやったらここから抜け出す事が出来るんだ!?

 死体をまさぐって調べた限りだとめちゃくちゃ犠牲者がいるぞ!

 俺の死体? まさか……と思って近付くと蘇って襲って来やがった。

 なんで俺が俺に襲われなくちゃいけないんだ!

 一体ここは何なんだ! もらった力すらも使えねえし!


 思い出す限りだと、俺は強くなってクラスの小田切一派を殺してハーレムを得たはずなんだ。

 そこから……まさか、ありえるはずもないが――に追い詰められた所までは覚えてる。

 アレから……どうなった? まさかここが地獄だなんて言わないよな?


 ムカつく奴は死ぬか殺して、成功する人生を歩むはずだったんだ。

 こんな世界間違ってる!

 俺が気持ち良い異世界転移になるはずなんだよ!

 俺の考えた異世界冒険にならないのはおかしいんだよ!

 神様に文句言ってやる! こんな下らねえ世界はいりませーん!


 この世界の連中、俺を崇め立てたりしねえぞ!

 なんかあると俺に指図しやがって!

 だから身の程を思い知らせてやったら殺しそびれた奴の後押しで邪魔しやがって!

 ここは俺の思い通りになるはずの異世界なんだよ!


 以下、同様の文面が続いている。

 最後は呪ってやるとか殺してやるとか続いているけど、見れたものじゃない。

 最悪だ。

 なんだコイツ?

 山根? ルシアが似た名前を言っていたな。

 他にも飯山、五味、滝川、小野とか……谷泉の名前もあるな。 


 共通して言える事はムカつく奴を殺した、ハーレムを得た、伸し上がったはず、ブスは殺した。

 成功していた時の思い出を書いている者も多いな。

 後は騙されたとか、約束が違うとかか。

 何人かはしばらく生き残っていたみたいだが、餓死するまでの記述を書いている物も見つかった。


 あの悪魔に気を付けろ! とか書かれていている物を発見した。

 俺を騙したあの悪魔……あれ? これ、前にも思った様な?

 って記述も発見。

 何度も殺された記憶を持っている者もいるみたいだ。


 教室は扉の窓で中を確認すべきだとか説明書みたいな物もあるようだった。

 机が並んでいたら気を付けろ、防火シャッターは危ないとか、チャイムが鳴ったら気を付けろと書かれている。

 地図っぽいものを書いているのもいるし、骨で作った剣や鈍器も転がっているな。


「ルシア、これは知っているか?」

『わらわも見た事があるのう。森で死んだ者達の亡霊じゃな。ここを永久に彷徨っているのではないかのう……』


 ……被害者連中と思えば良いのか?

 生徒手帳に書かれた身勝手な文を見ていると不快な気持ちになってくる。

 可哀想な立場なのかもしれないけれど、同情出来ない。


『廊下に出る魔物は最初から徘徊している者以外はチャイムが合図じゃ。そうすると建物の中のアンデッド達が教室とやらに入って大人しくしている物もいるとの話じゃな』


 チャイムで教室に入って大人しくしてる?

 それって、まるで……。


『建物内の変化はわらわもわからん。ただ、徐々に増えている様に感じる』

「死者が増えたからか」

『そうじゃろうな。とはいえ、今は先を急いだ方が良いじゃろう』


 ここで悠長にしている暇は無いか。

 だが……転移でイメージしているとわかる事がある。


「転移で飛べない事はないが、次は何処へ飛ぶかわからないな」

『そうなのかの? わらわが来た時は複雑怪奇な場所だとしか思えなんだ。他にもこんな仕掛けの迷宮がこの世界にはあるのでな』


 ああ、依藤が冒険していた頃に教えてくれた気がする。

 とある迷宮が建物の全景よりも広いとか。

 時空転移を応用して、過去を指定して見えないか確認してみる。

 決定ボタンを押さずに振りこむ魔力の測定をすると確認出来るのがわかっていた。


 転移場所が視覚転移の範囲に映し出される。

 もちろん、視覚転移で消費する魔力が途方も無い事になるけれど、時空転移のクールタイムは発生しない。

 どうにか出来ないか調べている時に気付いた応用だ。


 ……あ、見えた。

 三日くらい前?

 ここで何か影みたいな物が浮かんで何かに倒されたみたいだ。

 かなり残忍に何度も攻撃している様に見える。


『ガウ』


 クマ子がグローブで、現れた敵を指差す。

 わかっているよ。

 無駄口叩く暇があったら進めって事だろ?


「ルシア、道はわかるか?」

『生憎と来る度に作りが違っていてのう』


 そう簡単に進ませてはくれないか。

 という所でチャイムが鳴り響き、辺りから突然、黒い影や学生服を着たアンデッドが出てくる。


『どうする? 戦うのかの?』

「ああ」


 スケルトン系はグローブで、黒い影やゾンビは剣で屠る。

 時に、敵を転移で引き寄せ……る事は出来るみたいだ。

 武器や道具を転移で射出して仕留めつつ建物内を駆ける。 

 切り立った崖みたいに不自然に分断された廊下を幅跳びの要領で飛び越える。

 そんな感じで勘を頼りに教室を目指して走り続けていると――


「あく……まめ! 俺がせいば……いしてやる! 俺は……死んじゃいねえぞ!」


 黒い影を纏った人型の幽霊みたいな敵が出現している。


「会話が成立するのか?」


 声を掛けるのだが、そいつは俺に飛びかかってきて、能力……上空に重りを出して攻撃して来る。


「おい!」

「シネシネシネシネシネ! 俺は……生き残ってやる!」


 ……ダメだ。全然話を聞いていない。

 剣に持ち替えて隙を突いて切り捨てた。

 何かが霧散したのを感じる。

 とはいっても仕留め切った手ごたえがない。


「ああああ……」


 振り返ると……そこには白骨死体が転がっていた。

 どうやら自分が生きていると錯覚してこの建物内を彷徨っている存在のようだ。

 ルシアの言う通りだな。


『雑魚兵じゃな。上位となるともっと凶悪で動きが良いぞ。十分に気を付けるのじゃ』

「わかった」

『ガウー!』


 十分に注意しつつ、迷宮の様になった学校内を駆ける。

 途中で教室を見掛けて中を確認する。

 するとそこには、一斉に並んだ机と椅子に腰かける亡霊やスケルトン、更にはゾンビも混じっている。


 うん、まるで授業を受けているかのようだ。

 ふざけているとも思えるが……それだけ猟奇的な光景だ。

 教室の表札を確認すると、そこには俺のクラスが書かれている。

 他にも図書室、理科室、音楽室、図工室等、学校の設備、部室類も常備している……ようだ。


 教室の奥、窓辺には学校の外……ラムレスさん達が戦っている巨大な黒い影の魔物が森を闊歩する姿。

 早く行かなきゃな。

 なんて思いながら廊下を進んでいると、ガタンと結界の様な障壁が発生して俺を閉じ込める。

 後方から影とゾンビは出現しているが……。


「破壊するぞ!」

『ガウ!』


 グローブで黒い影を殴り飛ばし、剣にスイッチして結界を強引に切り飛ばして進む。

 切れ味が随分と悪いな。

 グローブも期待以下の威力しか出ていない気がする。


『ぐぬ……やはり敵の強さが化け物じゃ。ユキナリでなければと死んでおるぞ!』

『ガウー!』

「そうなのか?」

『うぬ……間違いなくわらわでは敵わん。十分に気を付けるのじゃぞ!』

「わかった!」


 確かに相手が随分とタフに感じるな。

 それでも……国の人達、クラスのみんなが俺に託した各種の武具が助けてくれる。

 転移で引き寄せて射出して敵を瞬時に仕留めていった。


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