表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/233

ゲームセンター

「しかし剣崎に熊野か……下の名前は何なんだろうな?」


 クマ子は熊野クマ子か?

 何処までもクマだな。

 親の神経を疑われるだろうな……俺か?


「出来ればヒヤマであって欲しかったのう。わらわはメグルのユニークウェポンモンスターじゃから」

「ガウー」


 クマ子も何か言ってるのはわかる。

 ルシアと同じ顔をしている。


「おお、クマ子も同じ気持ちかの、ユキナリと同じ名字が良かったそうじゃ」

「そうか。じゃあそろそろ次に行こうか。依藤達の気がまぎれるように漫画とかの類の購入だな」

「ライクスの図書館に蔵書されて話題になっておった書物類じゃな」

「来るべき時に備えて眠っていた割に随分と詳しいな」

「そこは秘密じゃ。いずれ教えても良いがの。眠るにも色々とあるのじゃ」


 そうなのか……。

 なんて話をしながら近場の本屋に顔を出す。

 もう店員が俺の事を覚えているのか、一目で親しげな笑みを浮かべてきやがる。

 大量に本を買っていく良客だと思っているんだろう。

 認識改変があっても俺の顔を見たら一発か。


 雑誌の類と新しく出た漫画を注文すると、カウンターの隅にある束から何故か出される。

 これって俺が来る事を想定して準備済みって事か?

 地味に嫌だな……。

 ルシアは立ち読み出来る雑誌の所で雑誌を広げて読んでる。


「ガウ」

「はいはい。わかったから」


 クマ子はボクシングの本を何処からか見つけて来て俺にねだり始めた。

 良いよ。記念にな。


「ガウー」


 購入した本をパラパラと捲ってクマ子が写真やイラストを楽しみに始める。

 読めないだろうしなぁ。

 少なくともクマ子は文字は読めないはず。

 実さんに余裕がある時に頼んでみようかな? 少しは気がまぎれるかもしれない。

 そんなこんなで本の購入を終えて、人目につかない所で転移で飛ばす。


「やはり便利じゃな。この世界でも使えるんじゃろ?」

「まあね」

「では遊園地とやらにも行けるのかの?」

「遊園地か……」

「すっごく楽しい場所だと聞いておる。この世の夢と希望が全て詰まった場所だとな」


 そこまでじゃないと思うけどな。

 きっと過去の異世界人とか、並行世界のめぐるさんが楽しげに語ったんだろう。

 本当に夢と希望が全て詰まっていたら、それはそれで凄いけどさ。


「転移で行けるんじゃろ?」

「一度行った所ならイメージでどうにか出来るけど……今から行くのか?」

「確かに日が沈んで来ておるからのう……ダメかの?」


 出来れば避けたいところだ。

 遊園地に連れて行って迷子になられたら困るしな。

 気分転換みたいなものだし、今はそこまでしなくても良いだろう。


「時間がな……その代わりにゲームセンターに連れてって上げるから我慢してくれない?」

「わかったのじゃ」


 という訳でルシアとクマ子を連れて俺達はゲームセンターに行った。

 あっちに持ち込んだゲームに登場する事があるので、多少は知っているみたいだな。


「おー劇場で上映されておる物とはまた違った物が沢山並んでおる。アレはなんじゃ?」


 と早速ルシアはクレーンゲームを指差す。


「アレはあのアームをボタンで操作してぬいぐるみを掴んで穴に落とすゲームだよ」

「ふむ……商売的観念から、あのアームは想定よりも力が弱そうじゃな。値札のタグっぽい紐にボタン操作で引っかけたり、アームで抑えつけて転がすのが無難か」

「初見でなんでそこまで理解しているのか聞いて良い?」


 ルシアの勘の良さが気持ち悪く感じてしまった。

 何その直感力。

 ユニークウェポンモンスターの特殊能力か何かか。


「ではユキナリよ。プレイする金銭をくれんかの? おそらくこの窪みに硬貨を入れれば良いんじゃろ?」

「あ、ああ……」

「ガウ」


 ルシアに千円分の硬貨を渡すと今度はクマ子がパンチ力を測るゲームに俺を引っ張って指差す。

 クマ子らしい提案だ。


「やらせても良いけど加減しろよ? 思い切りぶん殴って壊したら大変なんだからな? 何回かやらせてやるから最初はデコピンくらいの力で始めてくれ」

「ガウ」


 という訳で100円を投入してゲームを始めさせる。


「お? 美少女とさえない野郎発見。不純異性交遊は俺達が注意しないとな」


 なんて感じで俺とクマ子に少し離れた所で、谷泉みたいな不良が舐めた目でこっちに近づいて来ようとしている。

 ……こんな奴が俺の住んでいる街にいたのか。

 言動から良い奴なのか悪い奴なのか、微妙なラインだ。

 まああれこれ理由を付けてクマ子を俺から掻っ攫うつもりなんだろうが。


 クマ子は俺の言う通り、そーっと前方に来たサンドバッグに備え付けのグローブを付けて軽く殴った。

 それだけでドスンと衝撃が走りサンドバッグが大きく吹っ飛ぶ。

 スコアが表示された。


 えーっと、最高が数値700でクマ子の最小のパンチで600……本日の記録更新でもう一回挑戦可能みたいな表示が出ている。

 加減してこれなら力を入れ過ぎると壊れるな。


「ガウー」


 さっきよりも少しばかり早さを入れてクマ子がサンドバックを殴る。

 またも衝撃が発生して670の数値が出ていた。

 で、一旦ゲーム終了。

 クマ子が俺を見てる。


「はいはい。もう一回な」

「ガウー」


 バコンバコンと衝撃が走っているパンチングマシーンに不良共の目が釘付けだ。

 丸井よ。クマ子がボクシング部とか言っていたが、本気でクマ子がこの世界でボクシングをしようものなら相手選手が確実に死ぬぞ。


「ガウ」

「俺にもやれって?」

「ガウ」

「はいはい」


 クマ子にグローブを渡されて俺はゆっくりと近づき、自分の能力を意識して弱めに、それでありながら早く拳を前に突き出した。

 最高ポイントギリギリで止めなきゃな。

 ドスンとサンドバッグが揺れて700ジャストの数字が出る。


 その直後に、不良共に目を向ける。

 不良共は唖然とした表情を浮かべた後に黙って180度ターンをして去って行った。

 勝てない相手くらいは理解してくれたか。


「ガウー」


 で、クマ子は如何に壊さずにパンチするかを楽しんでいた。

 やがてクマ子は少し飽きたのかエアホッケーとかメダルゲームの方に目を向けて色々と見て回り始める。

 そうこうしている内にルシアが……大量のぬいぐるみを抱えてやってきた。


「大量じゃな」

「どんだけ取って来るんだよ」


 あ、店員がこっちを見てるぞ。

 想定外に取られて悔しいのだろうか?

 それともルシアの顔の良さに惹かれているのか?


「ルシア、あそこの店員に流し眼をして見てくれ」

「ん? こうじゃな?」


 ルシアは片目を閉じた。

 それはウィンクだろ。

 すると店員が凄い良い笑顔。

 うん、顔の良さに惹かれて見てただけか。

 クレーンゲームが上手い美少女ってのは好感度が上がるのかもしれない。


「何を見ておるのじゃ? おお、カジノで良く見る機材じゃな!」


 カジノ……まあ、確かにメダルゲームはカジノでも見る様な物が多いかもしれない。

 ルーレットとかスロットとか。


「これはパチンコじゃな」


 で、メダルコーナーの一角にあるパチンコをルシアは指差す。

 パチンコって……誰だよ教えた奴。

 召喚される人間は俺達のクラスメイトなんだから未成年だろ。

 ……やばい、とある人物の顔が浮かんできた。

 並行世界のそいつだが、奴の名誉の為に名前は出さないでおこう。


「さすがは本場じゃな。色々と凝っておる」

「異世界にもあったんだ?」

「あるのじゃ。元は日本人が広めた物じゃったはずじゃ。釘で特定の穴に球を落とす簡単な構造じゃからな」


 ああ、確かにそれは間違いないかもしれない。

 萩沢や錬金術関連、鍛冶とかの連中と組めば近い物は再現できると思うし。

 よく考えてみればライクスにはいろんなサブカルチャー的な娯楽が溢れているんだな。

 通りで文化侵略をしているんじゃないかと思っているのに、割と受けいられるはずだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ