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聖剣

「……」


 いや、どうじゃと言われてもな……。

 直前にあっさりと抜けた分だけ今更感が出て来るんだが。

 不気味な位キラキラと光っていて、むしろ白々しいぞ。


「おー! 羽橋は選ばれた勇者みてー!」

「中々凝った演出だな」

「そうじゃろうそうじゃろう。そういう仕掛けを室内に施しておるからな」

「なら最初にやれよ」

「忘れておったのだ」


 長い年月を生きていて物忘れが激しくなってんじゃないのか?

 萩沢曰く、ロリババアだしな。


「で、何か特殊な効果とか付与されるのか?」

「いんや? あくまで演出じゃ」


 ……凄くしょうもない事に付き合わされた気分だ。

 誰だ、こんな機能を作った奴は。

 まあ過去の異世界人だろうけどさ。


「ほら幸成、もう少しキリッとした表情をしろって」


 茂信はそう言うが微妙な顔しかできねーよ。


「ではわらわがユニークウェポンモンスターである証拠を見せるかの」


 そう言ってルシアは光となってノア=トルシアの中へと消えて行った。


『こんなもんじゃな。さてわらわの剣の性能に驚くが良い!』


 聖剣ノア=トルシア 付与効果 動体視力向上 俊足の太刀 野生の勘 攻撃予測 属性貫通 防御無視 ディフェンスソード オーラブレード ソードバリア 魔法陣展開 魔法剣 オートマジック 剣聖 攻撃力増加(極) 撃破カウントボーナス ソードスイッチ インスタント拡張能力 疑似剣術 二刀流 天魔一刀 地脈封印剣 

 

 うわ……随分といろんな付与効果とインスタント拡張能力があるな。

 疑似剣術ってなんだよ。

 しかもソードスイッチで変化する剣はそのどれも高性能な能力を宿す剣みたいだぞ。

 歴代の持ち手が強化して行った結晶みたいな剣だな。


「ルシアの能力は見えないのか?」

『疑似的な契約状態にはなったが、わらわの主はメグルしかおらん! Lvは時々で変動する様になっておるが、現状では120じゃな』


 依藤達よりも高い……はず。

 いきなり即戦力かよ。


「ガウウウウ」


 ちなみに俺が剣を持ってからクマ子の機嫌がすこぶる悪い。

 きっと俺が他のユニークウェポンモンスターに浮気していると思っているんだ。

 しょうがないだろ。

 証明の為に持ってるんだからさ。


「本当にアッサリと抜けちまったな。どんな性能を宿してんだ?」

「疑似剣術……見るとずらっと技一覧が出て来て覚えきれない」

「すげー」

「疑似って所が依藤の剣術よりも低いってのが分かるな」

「そ、そうだな。だが……なぁ剣聖っていう他の能力もあってよくわからん」

「ちなみに依藤はユニークウェポンモンスターの技とか使える訳?」

「見たら使える。この世界の連中の能力とはこの辺りが違うらしくてさ。そう言う物らしい」


 便利だな。剣術系なら見るだけで習得可能かよ。

 そんなの知らなかったぞ。


「じゃあノア=トルシアに登録されている剣技を全部見るか?」

「後で見せてもらうか」

『Lvが無いと覚えきれんぞ? まあ十分覚えておるとは思うが』

「まあ、この先、俺達は戦ってはいけないみたいだけどさ」


 依藤の言葉に頭を抱えたくなる。

 そうなんだよな。

 ルシアが聖剣ノア=トルシアである事がこれで証明されてしまった。

 という事は嘘を言っている可能性が、また下がったと言う事になる。


 それに俺の近くに漂っている白い幽霊に関してもだ。

 今の所何かする気配は無い。

 ルシアの話じゃ俺に力を授けた存在で、俺達の味方であるのは確か……らしいけど。

 今はこれからの事を考えるのが先決か。


「ルシアちゃん! 女の子の姿になってー!」

『マサルは相変わらずじゃな……』


 と、ルシアがノア=トルシアから分離して少女の姿で現れる。


「まあ、こんなもんじゃな」


 俺がルシアにノア=トルシアを持たせると、平然と持って鞘を何処からか取り出して腰に差す。

 むしろお前が勇者って感じだぞ。


「なんじゃ? まだ疑っておったのかのう?」

「そういう訳じゃないけど……」

「別に本体に戻ったからと言ってそなた等を殺す力を得たとか暴れたりはせんぞ?」

「だから違うって言ってるだろ。この先どうするか考えていたんだよ」

「何にしても来るべき時に姿を現した奴を仕留める以外、そなた等が生き残る道は無い。端末であるそなた等は出来る限り抑え込むしかないじゃろうな」

「過去の日本人……俺達もそうだったのか?」


 そこでルシアは若干頬を掻きながら呟く。


「そのじゃな……頭数が少ないとその分、奴の影響も減るのでな。負担はかなり軽くなったかの」

「数が多いと殺し合いを始めるんだったか」

「どんだけ厄介な状況なんだ? 信じたくねー」

「じゃが、奴の攻撃をそなた等は受けたじゃろ」


 ルシアの言葉にみんな揃って、静かに頷いた。

 否定しようない事実だったからな。


「正直、信じたくなねーが、アレは疑いようがねーな」


 あの萩沢でさえも真面目な表情をして頷く。

 それだけやばい状況だ。


「心の中がどす黒く染まっていく様な気持ち悪い感覚だった。少しの間だったから良かったが、あれがずっと続いたら耐えられるかどうか……」

「いつも一緒にいるみんなが、凄く小さな苛立ちでさえも我慢できずに殺意が湧きそうになったのは確かよね」

「うん……私もね。坂枝くんと何故かにらみ合いをしていたくらい」


 クマ子が人化した事以外じゃ小野の事以外で怒った事が無い実さんでさえも頷いている。

 そんなにも抗いようがないのか。

 改めて聞いて、なんとかしないといけない、という実感が湧いて来る。

 どうにかして敵を倒さないといけないな。


「押しつけるように殺意が湧いたから理解出来たけど、これが無意識化にすりこまれて行くんだったら……危ない」


 茂信が俺の方を見て強い口調で言い放つ。


「下手をすれば確かにみんなで揃って殺し合いに発展しかねない。非常に……危険だ」

「ああ……だけどな、羽橋」


 依藤が俺に向かって真っすぐとした目で言う。


「俺は、お前に対して辛く当った事を、この影響の所為だけだとは絶対に認めない。あの時の俺は、疑いもせずにした事は事実だからだ」


 まだ俺を預かり物屋扱いした事を気にしてんのか。

 あんな状況ならしょうがないだろ。

 というか、もう黒幕の所為にして楽になれと言いたい。

 依藤が良い奴なのはこれまでの事で十分理解しているんだ。


「別に気にしちゃいないから引き摺るな。状況が悪かっただけなんだからさ」

「……ああ。だけど俺は忘れない。忘れちゃいけないと思ってる」


 これが依藤の原動力であるのなら、俺は止めたりはしない。

 依藤は森を出てからもずっと力になってくれたし、みんなの為に戦っていた事実も忘れない。

 俺のLvが高いのは俺だけの力じゃないんだ。

 みんなが狩りを手伝ってくれて、ポイントを分けてくれたからだ。

 つまり、この力はみんなの協力があって出来上がったに等しい。


「奴の復活が近づいておるという事は、来るべき活性化が近づきつつある証……そうじゃな。今のそなた等に出来る事と言ったらこの世界の者達に協力を仰ぎ、戦力を整えて我慢出来る範囲で抗うしかないかの」

「く……こんな落とし穴があるなんて思いもしなかった」

「豊作じゃったツケと言うべきか。この半分くらいならば奴のいる場所に乗り込むくらいは出来たかもしれんし、戦わずに奴の野望を砕く事が出来たかも知れんな」

「噴出する魔力を使うんだったか」

「そうじゃ。奴が牛耳ろうとしている力を先に利用すれば良いんじゃ」

「魔力の噴出と敵自体は別なのか……」

「そいつを倒して放置するとどうなるんだ?」


 俺の目的は留めている奴を倒して、みんなを元の世界に戻すこと……だ。

 一応聞いておきたい。

 もしかしたら、それを利用して時空転移を使えるかもしれないし。


「魔力の奔流が噴出して一帯を……大陸を洗い流す、かのう。悪意ある災害では無いが、どちらにしても災害じゃな。使いきれない魔力とポイントが被害を増やす」


 そう話した後にルシアは更に続ける。


「何でも願いが叶うと言うが、それだけの対価を支払える願いがないといけないのじゃ。その点で言えば異世界人は都合が良い存在じゃな」

「どういう事だ?」

「例えば魔力の噴出する地が大森林となったのは過去の日本人に栽培の能力を持った者が奴を止めて魔力の噴出で無限に栽培を使用したからだそうじゃ。まあ、その前から密林じゃったそうじゃがな。今よりは小さかったそうじゃ」


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