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ギャンブル

「そういうもんか?」

「みんなで抜きに行って抜けなかったんだから、抜ける瞬間が見たいんだよ」

「ルシアちゃんの許可が無いと抜けないなら尚更だろ」

「ちなみに台座に書かれた文字があったよな。アレってなんて書かれていたんだ?」


 茂信がルシアに尋ねる。

 古くて読めなくなった文字か。

 確かに何て書いてあったのか気になる。

 きっと重要な事が書いてあっただろうし。


「あれか? アレはわらわが異世界人からしたら魔王と呼ばれる事と聖剣である事を伝えると同時に抜けないからと癇癪を起した異世界人を殺した事への注意文じゃな。随分と昔にいたのじゃ。抜けなくて暴れた奴がの」

「小野か?」

「似た様なものじゃな」


 はぁ……なんだよそれ。

 異世界だからって何をしても良い訳じゃないだろうに。

 まあ色んな奴がいたって事なのかもしれないが。


「その後じゃったかな? 街を守る結界装置が設置されたのは。反面、危険な奴がいるのを知るのが難しくなったが」


 一長一短か、異世界人の数を数える危険なトラップ剣。

 とはいえ、そういう奴がいるから異世界人の数を数えているのかもしれない。

 なんだかんだで俺達の能力は危険だからな。

 俺も転移で物体を飛ばして生き物を殺せる。

 こんな事が出来る奴が普通の人間と同じ様に街を歩いていると思ったら、怖いと思われても不思議じゃない。


「とにかく、転移でさっさと取ってくるなんて真似はしないでくれよ」

「わかった」


 そんな訳で俺達はその足で職業神殿の聖剣の間へと向かう。

 その道中で前に抜きに行った時の事を思い出していたって感じだ。


 ……そりゃあ誰かが抜いている所を見てみたいって気持ちはわかるがな。

 抜いた後はどうするか考えてるけど。

 俺が使う必要はあるのか?


「ガウー」


 クマ子の目もあるしなぁ……。

 なんかルシアが現れてから俺に縋る様な目をしている気がするんだよな。

 こう……この手の目には弱い。


「ニャー」


 ちなみにミケはルシアに向かって敬礼している。

 同じ剣に属するユニークウェポンモンスター繋がりで上司って扱いなのかもしれない。

 ってよく考えてみたらルシアって剣の、なんの魔物のユニークウェポンモンスター何だろうか?


「なあルシア」

「なんじゃ?」

「ルシアは剣のユニークウェポンモンスターなのはわかったが、じゃあ魔物時はどんな姿をしているんだ?」

「あ、それ俺も気になった。ルシアちゃんてどんな魔物姿なんだ?」

「私も気になる」


 っと、そこでクマ子に乗っかってルシアに声を掛けたのは実さんだ。

 若干苛立ち気味のクマ子を宥める役をしてくれている。


「ふむ……いつ聞かれるかと思っておったが、やっとか。生憎わらわは長い年月と改造の影響で、元が何の魔物姿だったかとんと思い出せなくなってしまってのう」

「ロリババアは物忘れが激しいって感じか?」


 萩沢、少しは空気読め。

 ルシアに思い切り睨まれてるぞ。


「色々と姿を変えて行ったのは覚えておるんじゃがなー……覚えているのは自分の姿をあんまり好ましく思っておらんかった事かの。おそらく、その時の事を意識して思い出せない様になってしまったんじゃろ」

「ガウ? ガウガウ」

「お? お主もか? 気が合うのう」


 ルシアとクマ子が何なんだ?

 気が合うそうだが、共通の話題でもあるんだろうか?


「クマ子ちゃんがどうしたんですか?」


 あ、実さんが話題に食いついてる。

 俺も気になったので調度良い。


「クマ子と呼ばれておるのか。しかしそのネーミングはなんとかならんかったのか?」

「それは気にしないでくれ……」

「そうか? まあ良い。このクマ子は自身が武器無しで生まれた事にコンプレックスを持っておって、自身の種族に良い思い出が無かったそうじゃ」


 そういえば出会った時のクマ子ってグローブ持ってなかったもんな。

 それが気になって傷を癒してもらう代わりにグローブを渡したのが始まりだし。


「わらわも初期は……メグルと会うまでは剣を持っておらんかったからのう。同じ思いをしておった」

「そういや武器無しのユニークウェポンモンスターって稀にいるけど、アレって何なの?」

「ああ、知らんかったのか。アレは特異な生まれ等のはみ出し者の証みたいなもんじゃな。ただ、スカウトした際に同じ種族よりも何かしら異なる特徴を持っていたり、目覚めたりするぞ」

「へー……じゃあクマ子も何か特別な物を所持してるって事か」

「雌で美少女に人化した事だろ!」


 萩沢も根に持つな。いい加減しつこいぞ。

 うーん……クマ子独自の能力か。

 インセクトキラーかアシストの能力かな? あの辺りが個性に該当しそうだし。


「ガウーガウガウ」

「ともかく、ユキナリに出会うまでは良い思い出は無かったそうでの。じゃがユキナリと出会ってミノリとも仲良くなったお陰で今は気に入っておるそうじゃ」

「それは良かったです。ただ、クマ子ちゃんが本当は嫌だったら私は……クマ子ちゃんがクマじゃなくても良いですよ」

「ガウー」


 実さんとクマ子が抱き合っている。

 いや、どちらかと言えば実さんが抱き付いている感じだが。

 きっと友情を確かめ合っているんだろう。


「今はパンチングベアーじゃなくてグリズリーだけどな」

「近隣種ならそこまで差はでんじゃろ」

「人化する前はどんな姿をしてた訳?」

「マサルに薬をもらう前は確か……ソードエレメンタルという魔物の姿をしていたと思うのじゃ。今の姿とそこまで差はなかったかの」


 精霊か。

 確かに剣のユニークウェポンモンスターって感じがするな。

 今も精霊みたいなものだし。

 こう、主の代わりに何度も敵と戦ってきた概念存在、みたいな感じが。


「今は特徴的な耳とか無いみたいだしな。それで特定出来たら良いんだが」


 精々エルフっぽく耳が少し長めくらいしか目立つ人外的な特徴は見受けられない。

 元がエルフとかのユニークウェポンモンスターとかならわかりやすいが、というか人種であって魔物じゃないらしいし。


「わらわの初期の姿が何だったかなどどうでもいいじゃろ。それよりも……後方支援にも見覚えのある者も多いの」


 という所でルシアは茂信に目を向ける。

 茂信も知っているのか?

 ……並行世界の茂信がどんな奴だったのか少し気になるな。


「サカエダもおるのか」

「俺の事も知っているのか?」

「うむ。やはり下手くそなギャンブルをする悪癖はあるのかの? 身の破滅をする事が多いから気を付けるのじゃぞ」

「はい?」


 あ、茂信がピンとこないって顔で返事をする。

 ギャンブル?

 並行世界の茂信はギャンブルが好きなのか?

 全然想像出来ないんだが……。


「坂枝がギャンブル? 聞かない話だな?」

「うん。坂枝くんって真面目だし」

「そうなのかの? わらわが知っているサカエダは『分の悪い賭けは嫌いじゃない。むしろリスクがあるからこそ儲けが出る』と大穴狙いのギャンブルをする奴じゃったぞ。挙句、その賭博の所為で借金まみれになって碌な目に遭わんかった」


 あ、茂信が半眼になって苦笑いをしている。

 まあ自分じゃない自分の話って嫌かもしれない。


「マサルに『この金を倍にしてやるよ』などと言ってすっからかんになった事もあったのう」


 ……酷い話だ。

 茂信が萩沢から金を借りて返せないとか、嫌過ぎる。

 逆だったなら納得したかもしれないけどさ。


「確かに今まで見たサカエダの中では一番まともそうじゃな」


 やっぱり並行世界の自分の話なんてあんまり良い話じゃない。

 自分じゃない自分の栄光とか失敗を聞く事になる訳だから、自分じゃないはずなのに恥かしいだろうし。


「分の悪い賭けが好きって……ギャンブラーなのか?」

「あー坂枝がギャンブル好きって分かる時はあるぞ? 羽橋によく精練はやめろって怒られてるじゃねえか」


 萩沢が茂信を指差して答える。

 あーそういや茂信の奴、俺に隠れて精練をしたがるんだよな。

 割とその話題になるとやりたがるからその度に止めるのが大変なんだ。

 金やポイントが飛ぶように消えて行くから絶対にさせられない。


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