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並行世界

「なあ、詳しく知っているならもったいぶってないで早く真相を教えてくれないか? 正直美幼女に興奮を隠せないけどよ」

「いい加減にしろ、萩沢」


 依藤が珍しくキレそうだ。

 気持ちはわかる。

 何が美幼女に興奮だ。


「マサルらしいのう」

「それだよ。なんで俺の事を知ってるみたいな言い方をしてるんだ? まさか、羽橋の能力に時空転移とか出て、俺達を飛ばしたが失敗して過去でルシアちゃんに会ってるの?」


 ……おい、もうルシアちゃん呼びかよ。

 まだ味方になったとは限らないんだぞ。

 するとルシアは首を横に振った。


「生憎と間違いじゃな。それならわらわは来るべき時とか言うじゃろう」

「じゃあ何なんだ? その、俺達の事を知ってるみたいな態度は」

「正確には、マサル。今回のマサルとわらわは初対面じゃ」


 ……今回。

 そこで黒本さんが俺とルシアを交互に見た後、萩沢を見て納得した。


「過去の名前が符合する人物、悪い異世界人の名前……未来転移と無関係で、世界を移動できる羽橋くん……ここから考えられる事と言ったら……」


 黒本さんの呟きに俺も嫌な空気を感じる。


「まさか……」

「おいおい」

「うむ。ミキの推測は間違いないじゃろうな。そうじゃ、召喚される異世界人はそなた等の言う学校とやらの、クラスメイト達……並行世界のじゃがな」


 ――並行世界。

 バラバラになっていたピースが繋がっていく。

 となると……萩沢が読めたオリジナル言語と過去の異世界人達の伝承、そこで符合する人物達を照らし合わせによる疑問が解ける。


「じゃあこの城を作ったのは?」

「マサルじゃ。能力は錬金術と言っておった」


 うわー……似た能力だけどちょっと違う。

 並行世界というニュアンスが中途半端にしっくり感がある。

 暗号が読めたのは並行世界の萩沢が書いた奴だからか。

 ……並行世界の萩沢も同じオリジナル言語を作っていた事に突っ込みたいが、言うと話の腰を折りそうなので黙っておこう。


「ちなみにその時のマサルが国の結界や、黒幕にとって困る装置類の数々と残してくれたのじゃ。人化薬も作ったんじゃったか?」


 あれって萩沢が作ったのかよ!

 並行世界の萩沢らしいけどさ。


「そんな事よりも、並行世界の俺は女にモテていたのか!?」


 萩沢がチラッとミケに目を向ける。

 ミケも何か不審な気配に眉を寄せてるな。

 あれか、ミケが女な並行世界とか想像したのか?


「どうじゃったかな? 確か……よく玉砕しておった様に思えたがのう」


 玉砕……どこの世界の萩沢も同じか。

 まあこんな重要な所で女にモテていたか聞いちゃう奴だしな。

 並行世界のお前に彼女がいたらどうだって言うんだ。


「くっそー……並行世界の俺まで、俺は彼女がいないっつーのかよ……!」


 あ、依藤と黒本さんが空気読めって顔をしている。

 もちろん萩沢に対してだ。

 そろそろやめないと本当に彼女が出来なくなるぞ。


「そんな事はないぞ」

「なん……だと……! ハーレムを実現した俺がいるのか!?」

「それはないのう。そもそもマサルは女、ハーレム、人化薬と騒ぐ割に、いざ結ばれると相手の女子一筋じゃしな」

「ハーレムじゃないのか……でも、どこかの俺が女の子といちゃいちゃしたんだよな!」

「う、うむ」

「やったぁぁぁあああー!」

「相変わらずじゃな……」


 萩沢の喜びように魔王をやっていたルシアがちょっと引いている。

 魔王を引かせるとか、ある意味凄いのかもしれない。

 しかし萩沢、お前はそれで良いのか。

 並行世界の萩沢が誰かと恋仲になっただけで、今のお前に彼女がいる訳じゃないぞ。 


「ちょっと意外ね」


 黒本さんの言う通り、ちょっと意外ではある。

 こう、萩沢がもしも沢山の異性に言い寄られたら全員と結婚する! とか言いそうなのにな。

 実際は彼女一筋になるのか。

 なんだかんだで根は良い奴なんだろうな。

 いや、そうじゃなくて!


「萩沢の話は別に良いから、重要な話の方を続けてくれ」

「うむ。並行世界故に、転移する者に違いが色々とあるのじゃ。知らん顔も多い。そもそもわらわが会う前に殺された者の方が多いじゃろう。今回も初めて見る顔がそれなりにおる」


 その代表が俺か。

 戦っている最中にそんな事を言っていたからな。

 転移する者の違いというのは、過去の異世界人に丸井の名前があったから誤差があるって事なんだろう。

 本当に並行世界があるんだと仮定したら、俺達と同じ学校の同じクラスに通う丸井がいる並行世界があってもおかしくはない。

 他にも同じ学年の誰かが俺達のクラスの可能性だってありえる。

 過去の異世界人に見知った名前があるのはそれが理由か。


「って、ちょっと待て。それだけ知っているお前は何なんだ?」


 依藤が尋ねる。

 確かにルシアがどういう存在なのか、まだ把握出来ていない。

 過去の異世界人と協力して黒幕と何度も戦っているのはわかったけど。


「うぬ? そうじゃったな。わらわはそなた等を召喚する者をその都度仕留める為に改造された元ユニークウェポンモンスターじゃ」

「ユニークウェポンモンスターなのはわかったが……で、剣系統で……」

「ちなみに異世界人が何人か、わらわは知っておるぞ。わらわの媒介をそなたらは揃って握っておったじゃろ。アレがわらわの本格起動の鍵じゃからな。数が多いから決戦用のマサルが作った装甲を持ちだして、この始末じゃ」


 ……ルシアの媒介を揃って握った?


「強引に引き抜いたのも感じておったからのう……来るべき時に備えて、異世界人が汚染されきる前に予防線は展開出来たのが幸運じゃったな」


 強引に引き抜いた。

 依藤が俺を見て額に汗を浮かべている。

 ああ、そんな事をした経験は一度しかない。


「ノア=トルシア?」

「そう呼ばれていた頃もあるのう。わらわの媒介の剣の名じゃ」


 聖剣ノア=トルシアのユニークウェポンモンスターかよ!

 頭が痛くなってきた。

 今更だがルシアという名前が聖剣に入っている。

 それにしても伝説の聖剣はクマ子と同じユニークウェポンモンスターだったのか……。


「異世界人のロマン、聖剣じゃぞ、わらわは」

「その聖剣が異世界人を殺すトラップってどういう事だ!」


 選定の剣、みたいなフリして異世界人を数えてたとか、とんだトラップだ。

 ちょっとやる事がセコイんじゃないか?

 まあルシアの目的を考えれば、それが無難な手段なんだろうけどさ。


「この世界を救う為に異世界人を間引くのじゃぞ? それも聖剣の役目じゃろ」

「とんだ魔剣だろうが!」

「ふ……どう呼ばれようと、わらわは引き下がるわけにはいかんのでのう。どちらにしても、わらわを手にしたくば、わらわの許可を得ねばならん」


 で、ルシアは俺を指差す。


「来るべき時にわらわの媒介を持って行け。仮の主として認めてやろう」

「そう言われてもな……」

「これは自慢じゃが、わらわは最強の剣を自負しておる」


 最強の剣、ね。

 職業神殿の台座に刺さっている伝説の聖剣に思う所はあるが、俺にもそれなりに信念という物がある。

 だから俺は、めぐるさんの形見の剣を持って見せた。


「生憎とこの剣を使って行くつもりなんで興味は無い」

「そうか。まあ、わらわの媒介に二刀流の拡張能力があるのでな。持って行くが良い」


 うわー、ここで引き下がらないってどういう事?


「ガウゥウウウウ!」


 あ、クマ子が空気を察して威嚇をしている。

 勘が良いな。

 このままじゃコイツの剣を俺が使う羽目になるから、萩沢のミケと同じく威嚇しているんだろう。


 というか、同じユニークウェポンモンスターだからわかる所があるのかもしれない。

 考えてみれば言葉が違えど、行動が他のユニークウェポンモンスター……主にこれまで戦ってきたボス達と似ている気がする。

 こう、自分を倒した相手に敬意を見せる所とか、凄く似ている。


 気にしない方向で行こう。

 クマ子にはグローブで戦ってもらえば良いし。

 そもそもそれを言ったらこのルシアも同様に本人に装備してもらえば良いだろう。


「話が逸れたのう。来るべき時が来る前に異世界人を間引いておきたかったのじゃがな。それをしないと言うのなら、ハネバシ……下の名をなんと言うのかの?」

「名前か? 幸成だ」

「ユキナリよ。そなたは奴に勝たねばならん。もしも奴と戦わずにいたら、お前が守りたい者が大半死に……これまでに無い未曾有の大災害となる事を覚悟せよ」


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