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時空転移

 え? え? 魔王ってユニークウェポンモスターだったのか!?

 そ、そういえば依藤達が戦った魔物は全部、剣を使っていた!

 つまり、コイツは剣のユニークウェポンモンスターのボス?


 じゃあ今、俺の仲間になれよ!

 とか言ったら魔王が俺の仲間になるのか?

 どういう事だ?


「くっ……そなたの配下になんぞ、ならんぞ! わらわの本当の主は一人だけじゃ!」


 うわ! 我に返っていきなり叫ばれた!?

 本能を抗っているのか頭を振りまくっている。


「お前は一体何者なんだ! 致命傷だったはずだぞ!」

「ふ……正しく致命傷の一撃だったわ。他の武器だったら死んでおったな。再生に時間が掛るはずじゃ。よりにもよって剣でわらわを仕留めたのが原因じゃな。一発だけ強引に耐えきらされたに過ぎん」

「じゃあ、後一撃与えれば死ぬんだな」


 今度こそ死んでもらう。

 そう心の中で息巻いた直後……少女は剣を落とし、両手を上げて降参のポーズを取った。


「お手上げじゃ。仮に万全の状態でそなたと戦っても勝てる見積もりも立たん。そなたのような化け物と敵対しても何も解決せんじゃろう」

「信じろと?」


 ここに来て降参だと? どういう事だ?

 まあ降参してくれるなら助かるが、嘘を言っている可能性が高い。

 だが、本当に降参しているなら依藤達と一度相談する必要がある。


「それはそなた次第じゃな。どちらにしてもわらわは詰みの様じゃ。時には諦めも肝心。じゃが、そなた……わらわを仕留めた後でも良いから考えよ。もうすぐ災厄の時が訪れる。その時に出てくる相手を止めねば、多くの命が消えるぞ?」

「なに……? 原因はお前じゃないのか!? 倒せば全て解決して、みんなが元の世界に戻れるとかじゃない、とか言う気か!?」


 俺の返答に、少女は何か考えるそぶりをした後、頷いた。

 やはり、コイツは何かを知っている。


「なるほどのう」


 何かを理解したのか、何度も頷く少女。

 そして少女は言った。


「そなたは勘違いをしておる。まあ、わらわも仕事がやり辛いから訂正をする気は無かったがの。じゃが、状況が変わった」


 それから少女は語る。


「信じる信じないは別じゃが、わらわはそなたら日本人をこの世界に呼んだ者でも留めている者でもない。逆じゃ、災厄の原因を止める為に日本人を殺そうとしたのじゃ」


 災厄の原因?

 それを止める為にどうして俺達が殺されなければならない。


「なんて言うのかの? 第三勢力じゃったか」


 第三勢力……。

 それってアレだよな?

 シミュレーションゲームとかで敵とは別に出現する敵とも味方とも言えない連中。

 ……ゲームだとフラグを立てると仲間になる事が多いけど。


「まあ、そなたが選ばれし者で、それだけの強さがあれば災厄を乗り越える事は出来るかも知れん。託すのも一考じゃな」


 と、少女は俺に向かって手をかざす。


「どちらにしても、わらわを仕留めたから勝手に作動するじゃろうがな」


 そう言って……少女の手から淡い光が発せられると同時に俺の視界に文字が浮かび上がる。


 拡張能力――時空転移を習得しました!


 じ、時空転移!?

 これは……!


「何か拡張能力を習得したじゃろう?」

「時空転移……」


 一度は可能性を考えた能力だ。

 いくらLvを上げても出現しなかったから存在しないんだと思っていた。

 しかし、確かに時空転移という能力が拡張した。


 心臓が……心が跳ねる。

 痛みではなく、希望からくる強い鼓動。

 この力を使えば死んでしまった人を……めぐるさんを……。


 ……き、期待し過ぎるな。

 もしも出来なかった時に絶望し過ぎてしまう。

 今は確認をするんだ。


「ほう、面白い能力を習得しおったな」


 俺は持っている魔力を使って……時空転移を作動させる。

 もしも……本当に俺の願い通りの能力であるならば……過去に――


 と、指定した所で過去に時空転移するには膨大な魔力が必要であると使用に対する魔力消費予測が出現する。

 無理だ……俺が戻りたい時に戻るには足りない。連続使用でも足りないだろう。

 逆に未来へ行くのは過去へ行くよりも消費が少ない。

 時は常に未来へ進んでいるから……か?


 くそっ……!

 どうにかして必要な魔力を確保する方法は無いのか!?


「どうしたのじゃ?」


 反応の薄い俺を少女が不思議そうに見てくる。

 ……魔力の確保については後で考えよう。


「こ、この能力はなんだ?」

「切り札じゃ」

「切り札? 何の為の切り札だ? そもそも俺の能力は大体了承が必要だぞ?」

「切り札にそのような物は間違いなく無いと思うのじゃ」


 こんな能力を俺に授ける?

 コイツの目的は一体何なんだ?

 俺が疑いの目を向けていると、少女はやれやれと言った様子で手を上げた。


「無論、この世界、そしてそなた等日本人達の敵を抑え込む為の力じゃ」


 俺達の敵?


「羽橋! 大丈夫か!」


 そこにやっとの事、依藤達が駆けつけてくる。

 助かった。

 色々と相談した方が良いと思っていたんだ。


「これは、一体……」

「お前は……」


 と、状況がおかしい事にみんな気付いて困惑している。

 なんせ、俺が少女に剣を向けているんだからな。

 しかも何故か少女は降参しているし、微妙に友好的な態度だ。

 変な状況なのは間違いない。


「ウホ! 美幼女!」

「フシャー!」


 萩沢、少し黙っていろ。

 何がウホだ。

 ……一瞬本気で殴りたくなったぞ。


「おお、マサルではないか。此度の召喚にそなたも混じっておったか」


 少女の言葉に、萩沢が首を傾げる。


「は?」


 同時に俺達も疑問を浮かべる。

 なに?

 何故萩沢を知っている?

 ……今までのセリフを察するに萩沢だけじゃないな。

 やはり、何かを知っているんだ。


「ふむ……もはや誠意を見せて、事の本質を知らせねばな」


 少女が手招きすると、拘束されていた冒険者達が自由になって倒れる。

 そして魔物達が揃って姿を消した。


「城も一時停止……いや、着陸させるとしよう」


 ゴゴゴ……と、背後の歯車が逆回転を初め、城全体が揺れ始める。

 言葉通り、着陸しようとしているみたいだ。


「お前が魔王か!」

「ああ、もはや戦う気など無い。毛頭、勝てないようじゃ。まったく、此度の異世界人にはとんだ化け物と化した者がおるようじゃ」


 はぁ……っと少女は深く溜息を吐いて嘆く様に呟く。

 化け物、ね。

 個人的には、その言葉はそのまま返したい所だ。


「吉と出るか凶と出るか……上手く行けば長い平穏。失敗すれば大陸が消し飛ぶやもしれぬ」

「羽橋、何なんだコイツは?」


 自分だけ納得している少女を見て依藤が聞いてくる。

 それは俺が聞きたい所だが、取り合えず現在わかっている情報だけでも伝えておこう。


「コイツは魔王の鎧から出てきた。おそらく剣のユニークウェポンモンスターだ。致命傷を与えた時に恒例のポーズをかました」

「何!? その少女が!?」

「まずは自己紹介からしておいた方が今後の為かの。いかにも……わらわがユニークウェポンモンスターであるのは事実じゃ」


 という所で黒本さんが挙手して少女に向かって尋ねる。


「先程の萩沢くんを知っている態度……可能性ですが、もしかして貴方はルシア……という方でしょうか?」

「うむ、わらわの名はルシア。名字や忌み名等色々とあるが、わらわの最初の名はルシアじゃな」


 パズルのピースが嵌るかのように少女改め、ルシアは答える。

 萩沢の暗号曰くルシアちゃん……実在したのか。

 ……そうなると萩沢の暗号が信憑性を帯びてきたな。


 しかも俺は時空転移なんて物を覚えている。

 もしかしたら本当に萩沢を過去に飛ばしてしまうのかもしれない。

 出来ればそんな事をしたくはないが……ともかく事情を聞こう。

 そうしないと始まらない。


「なんで異世界人……俺達を殺そうとした。間引くとまで言っていたぞ」

「なんだと!?」


 さすがの萩沢も警戒する様に剣をルシアに向ける。

 が、逆にルシアは戦闘意志は無いとばかりに両手を上げた。


「事情を説明はした方が良いかのう……見た所、白い方が優勢に見えなくもない」


 白い方?

 それって俺が夢に見たアレの事を言っているのか?


「話の内容次第だ」

「うーむ……では、そなたらはどこまで事情を知っておるか、情報のすり合わせが必要じゃな。一応、わらわも国内の情勢はある程度知っておるがな。所詮は蚊帳の外じゃ」

「事情?」

「そうじゃな……まずわらわがそなたらを間引くと言った理由を説明した方が早いじゃろ。異世界人はその辺りの理解が早い」

「もったいぶってないで教えろ」


 どうも遠まわしな言い回しだ。

 お前、返答次第じゃタダじゃおかないぞ。

 ちょっと前まで戦う気マンマンだった相手をいきなり信じるのは難しい。


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