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空中エレベーター

「相手が魔王だとしても、能力の工夫次第で勝てる可能性は十分あると思う」

「その能力が任意か常時かにもよるな」

「そうね……一度発動して、クールタイムがあるなら、カラ撃ちさせてから一網打尽にする手もあるわ」


 さすがは戦闘組、結構長い事この世界で戦っているから作戦もすぐに出て来る。


「問題は、魔王も配下の魔物を出して数で来たらだな。撤退のタイミングとかもあるし、素直に逃がしてくれるとは思えない」


 一対一で戦えたとしても勝てるか怪しいのに、魔物の取り巻きが襲ってくる可能性もある。

 任意タイプの能力だったとして、数で押し切れるか難しい。

 ゲームだったら死んでも大丈夫だけど、現実は死んだら生き返らないんだ。

 そんな危険な真似はさせられない。


「それよりも前に確かめたい事がある。依藤達の案は正攻法だが、安全な裏技を先にしても……遅くはないだろ?」

「羽橋……」


 依藤が眉を寄せて俺を見る。

 どうせ俺に危険な真似はさせられないって考えている顔だ。


「幸成、何か作戦があるのか?」


 茂信が俺に向かって尋ねてくる。


「まあな」

「危険な手じゃないんだろうな?」

「当たり前だろ? まあ、目的地までは依藤達にがんばってもらうけど、後は……いつも通りの卑怯な手だ」


 あ、依藤も茂信も、クラスのみんなも俺が何をするかわかったって顔している。

 しょうがないだろ。

 試してみるのが一番なんだからさ。


「……成功するか怪しくないか?」

「出来なかったら音声転移で伝えるさ」

「確かに、魔王とやらの射程範囲がどれだけあるかわからないけど、幸成ならその射程を無視できる。一度場所さえ登録すれば狙い撃ち可能だ」

「相手がパワーアップする事無く奇襲を仕掛けられるとなると、確かに良い手かもしれない」

「城自体に飛ばした物を弾く力を持っているかもしれないけどさ、実験くらいはするさ」


 強引にねじ込めるか試すって意味もあるし。

 実験にやって見るのは悪い話じゃない。

 少なくとも自分のLvがどれくらいかわかっている。

 みんなに迷惑を掛けない様に動く必要がある。


「飛ばす道具は岩でも何でも良いけど……萩沢の爆弾とかも良いかもしれないな」


 後は茂信が俺の目を盗んで大量に作っていたナイフとかな。

 止めなきゃ何をする気だったやら。


「OK、実験しない手は無いな。資材の関係で羽橋は城下町で待機してくれ、状況次第で物資の補給を頼む」

「了解」


 今の俺は色々と拡張能力を覚えているから、詠唱も短縮できる。

 みんなを元の世界に戻す事の出来る拡張能力は出て無いけどさ。


「勝てないと判断したら即座に撤退してくれ。俺はみんなに死なれる事が……一番嫌だから」

「ああ……それはみんなも同じだ。出来る限りの準備をして魔王とやらを仕留めよう。上手く倒せたら帰れるかもしれないんだ」


 そう、伝承にある魔王退治、その魔王退治が終わった時、みんな日本に戻る事が出来る様になるのかもしれない。

 凄くあやふやな答えでしかないけれど、このままじゃライクス国の結界を書き換えされて俺達は村や街に入る事が出来なくなる。


 逃げても魔王が追ってくる。

 ならば戦う以外の道は無い。

 脅威を退かせなきゃいけない。


 そう、決意を固めた時、地震が発生した。

 ぐらぐらと揺れるその地震……これも魔王の所為なのか?


「う……」


 そこでクラスのみんなが立ちくらみを覚える様に揃って呻く。


「どうした?」

「い、いや……何でも無い。ちょっとめまいがしただけだ」


 茂信に駆け寄ると、何度か頭を振ってそう答えられた。


「何かフラッとしたな」

「うん」


 萩沢や実さんもそれは同じ様だ。

 なんとなく嫌な予感がする。

 魔王が原因かはわからないが、早く敵を仕留めた方が良い。


「よし! じゃあ作戦開始だ。魔王退治も良いが、空飛ぶ城が結界を書き換えているのを調査するのも必要な事だな。美樹と萩沢が同行してくれるとありがたい」

「ええ、何か敵を倒すヒントが隠されているかもしれないわ」


 黒本さんは言うまでも無く書記の能力で翻訳が出来る。

 萩沢も道具作成故に、何かしらの機材を発見した際に、構造を理解する事が出来る。

 装置本体を見つけたら魔王なんて二の次で仕留める、なんて出来るかもしれないって事だな。


「おうよ! 腕がなるぜ」

「腕に覚えがあるものは同行してくれ。確実に攻めて行く!」

「騎士の諸君、国民達よ、異世界人の者達と力を合わせて窮地を乗り越えるのだ!」

「ハ! 私達国の騎士達も、皆さまを守護する様に努力いたします」

「「「おおー!」」」


 という訳で、俺や実さん、茂信は城下町で物資調達をする事になった。

 他にも戦闘が苦手な者は留守番をしている。

 後方援護が向いてる連中も多いしな。

 全員で協力して、全員で生き残る。


 そして……魔王を倒して元の世界に帰るんだ。



 そんなこんなで依藤達は空飛ぶ城の猛攻を掻い潜って、魔王の城の下に到着した。

 道中の魔物は、今の依藤達からしたら相手にならないっぽい。

 あの程度なら俺でも行けると思う。


 空飛ぶ城の大砲もちょこまか常時一斉射撃している訳ではなく、タイミングを練る事で回避する事は出来た。

 みんな足が早くなったな……とは思う。


『うげ! ミケ! もっとゆっくり』

『ニャアアアアン』


 ミケが萩沢を背負って素早く大砲の射程外である城の下へと走り込んで行く。

 その動きに萩沢は振り回されて酔いそうになったみたいだ。

 他の連中も各々危険は極力少なく、怪我人も特に無く辿り着いた。

 よく考えると、みんな凄いな。

 あの大砲、異世界人を重点的に狙う様な動きを見せていた。


 ふわふわとUFOが地上の物を吸引するかのように光を出している城が依藤の視界から遠目に見える。

 あ、一応空へ向かう床みたいな物が定期的に出ている。

 アレに乗って行くのか。


『はぁっ!』


 依藤が集まってくる魔物達を薙ぎ払いながら、床が出る場所の上に乗る。

 すると少しずつ上に登り始めるのでみんな合わせて城目掛けて魔物の襲撃から身を守りながら登って行っていた。


「今、みんなが空飛ぶ城へ侵入しようとしてる。あそこだ」


 と、遠くにある空飛ぶ城の下を俺は指差した。


「どうか無事で……」


 実さんが祈る様に手を合わせている。

 絶対に死者なんて出させない。


「茂信も材料に余裕があったら今の内に武器を作っておいてくれ、飛ばす弾代わりにする」

「わかってる。これくらいあれば良いか?」


 茂信が大量の使い捨ての剣を持ってくる。

 まあ、これだけあれば十分か。

 資材は大分集まっている。

 いつでも依藤達のサポートは一応出来る状態だ。

 問題は転移で飛ばせるかだけどな。


『うおー……すげー! ゲームの世界にまんま入ったみたいで怖いな』


 高速で上空に伸びて行く透明な床から地表を萩沢が見て呟く。


『この床が突然消えたらシャレにならないぞ』

『そうなったら風の魔法を使って落下の衝撃を極力消すから大丈夫』


 黒本さんが念の為とばかりに風魔法の本を開いて準備している。

 魔法の本さえあればどんな魔法も使えるってやっぱり便利だな。


『ニャー』

『萩沢の場合はミケが上手く受け身を取ってくれるかもな』

『なんで俺は守ってもらえねえんだよ!』


 猫は着地が得意とは言うが……そんな高さから落ちたらさすがのミケも痛いじゃ済まないと思うんだけどなぁ。

 ともかく、そんな事態になっても大丈夫な様にして欲しい所か。


 なんて、感じに見守っていると、みんなが城内に到着した。

 入口は……ちょっとしたドーム状の部屋みたいだな。

 その後は踊り場みたいな通路を通って城内へと向かうっぽい。

 魔物もいるんだろうが……。


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