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ロマンなサーガ

「前にも話したけど、魔王はおとぎ話の存在ばかりでよくわからないのよ。魔王の所為で国が何度か滅んだとか、大災害を引き起こしたとか、討伐されたとか多岐に渡るわ」

「どっちにしても碌な事を起こさない相手なのは確かっぽいな。詳しい倒し方とかは?」

「倒した勇者は異世界人か? それとも現地人? 確か、災厄の年を生き残った異世界人は少ないんだったか?」


 立て続けに黒本さんに聞く俺達、黒本さんも質問を予想していたのか、今度は別の書類を取り出して読む。

 何か有益な情報がある様だ。


「今回のパターンである400年前の資料だと、倒した人はいたみたいだけど詳しい詳細は消失してるわ。羽橋くんの証言から察するに元の世界に帰った……とするのが現実的かしら」

「じゃあ戦い方も分からない感じか?」

「過去の資料にあるわね。後は――」


 そこで報告の騎士が前に出て黒本さんの台詞を遮る。


「クロモト様からの報告の裏付けが現在、確認出来ております。なのでこちらから説明してもよろしいでしょうか?」

「何かわかったんですか?」

「はい。伝達が国に届く前に、先に乗り込んだ好奇心旺盛な冒険者達が居たのです。それと、あの城の近くでは帰還の水晶玉が使用不能になるとの話で伝達が遅れました」


 後手後手に回って、俺達の耳に入るのが遅れたか。

 しかし、未知の遺跡に一番槍とばかりに侵入する勇気ある冒険者達の好奇心は果てしないな。

 まさに冒険をする事に命を掛けているのか。


「辛うじて撤退した冒険者の証言によると、襲撃してくる魔物は群れで襲っては来ますが、中級冒険者以上なら対処自体は出来る強さだそうです」


 一匹一匹の強さはそれ程でもないのか。

 ……数が厄介と見るべきだな。

 依藤達、戦闘向けの連中が魔物の情報に目を通して作戦会議を始めた。

 どうやって倒すかの打ち合わせだ。


「問題は居城の奥地に鎮座している魔王と思わしき存在です。冒険者が挑んだ所、特殊な力を発生させて……伝承に存在する技能を使ってきて手も足も出なかったそうです」


 なんでもその冒険者はどうにか逃げてきたらしい。

 というよりは、逃げた時に魔王が追ってこなかったそうだ。

 もしも追いかけられたら瞬殺されていただろう、との事。


「伝承?」


 俺が首を傾げると黒本さんが困った様に頬を掻いて答える。


「ええ……正直に言えば最悪の相手ね」

「どんな技能を使って来るんだ?」


 依藤が黒本さんに尋ねる。

 すると黒本さんはとても困った様に答えた。


「射程範囲がどんな物かは分かっていないけれど、魔王に挑んだ者全ての……Lvを合計した強さを得ると言われているみたい」


 おいおい。

 どんだけ厄介な技能を持ってる訳?

 つまり数が多ければ多いほど、相手が強くなって行くって技能だ。

 そんなチートとも言える能力を持った相手……ゲームで戦った事はあるけど、実際に居たら厄介極まりないぞ。


「プレイヤーのLvに応じて敵が強くなるってゲームがあったよな」

「ああ、ロマンなサーガな。ちょっと違うんじゃないか?」


 アレは上限あるし、少なくとも手も足も出ない程相手が強くなるのは稀だ。

 魔王の力に上限があるかはわからないが、簡単に倒されてはくれないだろう。

 だから過去の伝承で魔王にやられた異世界人がいるのかもしれない。

 なんせ今の俺達が大人数で戦ったら1000Lvは軽く超える。

 一人が1000Lvならともかく、こっちは個別の強さはLv÷人数だからな。

 どうしても少数での戦いになる訳だ。


「そのようなゲームがあるのか?」

「王様、それ所じゃないのはわかっていらっしゃいますよね?」

「う、うむ!」


 ちょっと迷ったのは気にした方がいいかもしれない。

 気さくな王様であるけど。


「しかもそのLvに本来の魔王の強さがプラスって事らしいわ」


 出来れば物語を面白くする為の創作であってほしい能力だな。

 隙が無いぞそれ。


「倒し方が複数あるが、伝承ではよくわからないってオチか」

「ええ、異世界人と勇者が接戦の末に倒しました、と詳しい描写がスキップされているわ」


 うーむ。

 そういう重要な情報こそ後世に残していてほしかった。


「冒険者が入ったって事は、城へは簡単に入れるのか?」


 冒険者が先行して行ったってどうやって入ったんだろう?


「はい。空飛ぶ城の真下に城内へと行く上へ向かう光の柱があるそうで、それに乗ると城に引きこまれるそうです。降りる時も同様、下へ伸びる光に乗れば良いそうです」

「うーん……?」


 随分と侵入が容易いな。

 RPGのボスがいるダンジョンみたいだ。

 空を飛んで移動する意味は村や町の結界を弄る事しかないのか?


「このままじゃ魔王の城の進軍で多大な被害が出る。かと言って勝算の無いまま挑むのは……」


 という所で、クラスメイトが数名、焦り気味でやってきた。

 そういや、まだ集まっていない奴が居たな。


「伝達が来たから帰って来たけど、驚いたー」

「そうだな」

「何かあったの? あの城の魔物と戦ったとか?」

「そうじゃなくて、たぶん……城が去った後の村だったんでしょうね。廃村みたいになって魔物が闊歩していたから騎士達と一緒に戦おうとしたら結界に弾き飛ばされて入れなかったの。城下町の結界は大丈夫みたいだけど」


 結界に弾き飛ばされた?

 報告とばかりに騎士がラムレスさん達に同様の事を伝えた後、急いで出て行く。


「結界が作動した? 確かそういう事があると、国中の包囲網に引っ掛かるんじゃ?」

「書き換えの影響かと思います……まさか異世界人の皆さまを結界の外へはじき出すつもりなのでは?」


 どうやら魔王は異世界人だけを結界で弾いているらしい。

 陰鬱な空気が辺りを支配する。


「とりあえず続けるわね? 400年前の魔王の出現時と今回だと、異世界人が多いという点が共通みたい」


 異世界人の数が多いと出てくるタイプの魔王。

 考えられるのは、異世界人を狙って進軍している?

 国中の結界をハッキングして国の結界を乗っ取り、異世界人を弾く設定に書き換えていく。

 自然と安全圏から異世界人だけが外に出されてしまう。


 って確実に異世界人を狙った進軍じゃないか。

 逃げても追い掛けてきそうだな。

 その話を聞いて、依藤が一歩踏み出して提案する。


「戦える奴は魔王討伐に出るべきだろう。このままじゃ魔王の進軍に押される一方だ。国の騎士や冒険者が抵抗するにも敵の方が火力が高いとまで来てる」

「結界を書き換えるなんて事をして来るしな。最悪、城下町を人間が入れない様にするなんて真似をして来るかもしれない」


 少なくとも結界維持の装置に入れられているポイントの底が尽きるまでの間は……だ。

 その装置のポイント切れだって書き換えなんて出来る相手が燃料を尽きさせるなんて真似をするとは思えない。

 最悪、俺達異世界人だけではなく、大量の人が難民として城下町から追い出される可能性だってある。

 そんな状態で、空の城から狙い撃ちにされて見ろ。

 大量虐殺されかねない。


「非常事態に備えて、戦えない連中は避難をしてくれ」


 拠点向けとか区別はもうしない様だ。

 まあ、やり方や武器しだいで戦えるようになった。

 裁縫みたいにハサミさえあれば戦えたり、ユニークウェポンを持って戦う奴だっている。

 ここから先は気持ちの問題という事だろう。


「何か作戦があるんだろ?」


 依藤に仲間が尋ねる。

 すると依藤はコクリと頷いた。


「ああ、射程がどんな物か分からないが周りにいる相手全てのLvをプラスするんだったら、一対一で挑めば良い。そうすれば魔王の強さは挑戦者一人のLvで済む」


 魔王のLvが仮に90だとして、依藤が同様のLvだったら、180の化け物と戦う事になるんだが……大丈夫か?


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