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空飛ぶ城

「つーか、クマ子はどうして大きくならねえんだよ!」

「クマ子ちゃんは、可愛くなってます!」

「ガウー?」


 実さんが今度はクマ子の背中にぶら下がって答える。

 クマ子は身長は変わってないけど、全体的にデフォルメが掛って来た気もする。

 そういう意味では可愛くなったのかなー……。


「ミケもああいう路線になれよ」

「無茶な注文をしてやるなよ。それこそ飼い主の力になる様にがんばってるんだろ」


 萩沢の荷物持ちとして必要な体格をミケは望んだって事なんだろう。

 クマ子の場合、俺が日本に行っている間、みんなの注意を惹き付ける必要があるから自然と見た目を重視してしまったって事だろう。


「幸成がミケの飼い主だったら、小柄なままだったんじゃないか?」

「逆に何故そう思ったのかを聞きたいな」


 小さい動物が好きだと思われているんだろうか。

 まあ、ミケは萩沢一筋だから、萩沢が捨ててしまって俺が拾って飼ったとしても同じになりそうな気がするけどさ。


「幸成くんがミケくんを育てたらですか? 確かに可愛くなりそうですね」

「そう考えると、結構面白い性質を持っているな」


 所有していない茂信と実さんが、言いたい放題な事を言っている。


「茂信と実さんがユニークウェポンモンスターを所有したらどうなるかね」

「坂枝は……」


 そこで依藤が何故か俺を見てる。

 と言うか、萩沢や実さんまで同じ目で見てるぞ。


「きっとああいう感じの性格な奴になるだろうな」

「うるせー!」

「はは……」


 俺が茂信のペットとでも言う気か?

 心外にも程がある!

 茂信も愛想笑いそんな。


「さすがに幸成みたいな性格にはならないんじゃないか?」

「たぶんな」


 しかも性格の話になっている。

 実さんは……クマ子二号って感じだろうか。


「さて、雑談は程々にして、みんな仕事に戻ったらどうだ?」

「じゃクマ子ちゃん、一緒にご飯を食べましょう」

「ガウー」


 茂信の言葉にみんな頷いて、各々するべき事をしに解散した。

 知らなかったな。実さんの仕事はクマ子とご飯を食べる事だったのか。

 ……なんてな。


「じゃあな、羽橋」

「ああ、そういやアダマントタートル素材の武具の作成がもう少しで出来るらしいぞ」


 立ち去る依藤を呼び止めて報告する。


「おお……やっぱ高ポイントで募集しているお陰か」

「それもあるんだが……」


 茂信が何故か俺を凝視している。

 なんだ? 俺が持ってきた素材に問題でもあったのか?


「出かけついでに聞いた魔物の素材や魔物自体を見つけてさ、持ち帰ったんだよ」

「そうか!」

「アダマントタートルの剣の一本目がこれだ」


 と、茂信が依藤に、俺が使っている剣を見せる。

 今までにない位の煌めきを宿した珠玉の一本だ。

 汎用剣だけど、俺はこのめぐるさんの形見の剣を使いたいと思っている。

 強くしておくのは間違いは無いはずだ。


 既に最大強化をして、いろんな剣を合成に使用している。

 困ったらこれ一本、グローブよりもかゆい所に手が届く仕様だ。

 依藤が使ったらもっと凄い事が出来そうだけど。


「ただ、かなり重いから注意が必要だ」

「そこまで重たいか?」


 重そうにしている茂信の手から俺は受け取って手慣れた感じに振り回す。

 そして依藤に柄を見せて持たせる。


「うお……確かに重量があるな。軽くは無いが……凄い性能なのはわかるぞ」

「稼ぎがかなり飛んでったからな」


 実はかなり気に入っている。

 近々試し切りに行く予定だ。

 依藤達は最近、遺跡の調査とか国の異変探索をしていてLv上げをあんまりしていないからなぁ。


「そういう次元か?」

「……最近、幸成が持ってくる素材が変なんだ。かなり良い素材を持ってくる」

「結構Lv上げたから無茶が効くみたいでさ」

「ボクサー島での出来事が印象的だったしな」

「ポイント相転移だったか。ポイントを経験値に出来るって凄いな」

「上がりが大分悪くなったからステータスにも振ってる。残念なのはみんなを元の世界に帰す能力はまだ出てない所だ」

「で、何Lvまで上げたんだ?」

「さん――」


 なんて雑談をしている最中の事。

 バンっと、国の騎士が茂信の工房を突き破る勢いでやってきた。


「大変です! 突如我が国の近隣に空飛ぶ城……伝承にある魔王の居城が出現いたしました!」

「はい?」


 伝令兵が飛びこんで来ると同時にラムレスさん達が応答。

 結果、異世界人の俺達はいざって時の戦力として国の作戦会議室へと通されて待機する事になった。



 国中に伝達が行き、各地で仕事をしていたクラスのみんなが集まってくる。


「それで状況はどうなってる訳?」


 会議室の窓からでも見える遠い空に浮かぶ小さな城に目を向ける。

 何か時々火の雨みたいな物を降らしている様にも見えるし、魔物っぽい姿が目視出来る。

 どうもゆっくりと城に向かって来ているらしい。


「報告されている情報では魔物の襲撃により、近隣の街や村が被害を受けております」

「急いで俺達が向かうべきなんじゃないか? どうして待機を命じられているんだ?」

「そ、その事なのですが……」


 ラムレスさんや国の兵士達が返答に困る様に言葉を濁す。

 一体どうしたと言うんだ?

 すると王様が神妙な面持ちでやってきて、ラムレスさん達に指示を出す。


「異世界人の諸君、どうか落ちついて聞いて欲しい。もしかしたら来るべき時が来たのかもしれん。それでも我が国は異世界人の皆と共に災厄の年を乗り越える為に努力する」

「はあ……」


 王様はゲームに熱中していたのがウソみたいに真面目な顔をしている。

 なんだかんだで王様だという事なんだろう。


「まずは戦況の報告をお聞きください」

「わかった」


 代表の茂信と依藤が応じる。


「現在判明しているのは、かの城が横切った村や町の結界発生装置が、何者かに設定を書き換えられているとの話であり、人々は逃げ惑っている状況です」

「設定を書き換え!?」


 おいおい、危険な能力者や魔物の侵入を防ぐ装置じゃなかったのかよ!

 それとも魔王の配下とかが密かに内通していたとかか?

 魔王とやらが策略を弄するタイプだったら十分ありえるな。


「しかもあの空を飛ぶ城は強力な大砲が備えられており、上空から撃って来るのです。我が国の兵器でも応戦出来るか……」


 重武装された城か。

 戦うのが大変そうだな。


「更に魔力探知の結果、各地の遺跡からあの城へ多大な魔力の流れが発生していると報告を受けており、遺跡の活性化と異世界人の皆さまとで何か関わりがあるのではないかと国の民が騒いでいる次第です」

「なるほど、混乱を避ける為に俺達は城で待機って事になった訳か」

「ご理解、感謝申し上げます」


 混乱を収めるために、まず怪しいと吹聴されそうな俺達の保護を優先した……か。

 下手をすれば一網打尽にされそうだけど。

 警戒を強める俺や依藤達の反応に、国の兵士やラムレスさんは降参のポーズを崩さない。


「誤解の無いようにお願い致します。こちらは皆様の保護を優先しているだけです。それに……ハネバシ様がいらっしゃらないと困ります」


 ラムレスさん、変わりましたね。

 ……王様も似た様な態度のまま口を開いた。


「うむ! ハネバシ殿は国の宝……ハネバシ殿さえ居れば、国等すぐに再興出来る!」

「あの……王様?」

「……失礼した」 


 ……まあ良いや。

 警戒しててもキリがない。

 出来れば最悪の事態にならない事を祈るほかないな。


「で? 設定の書き換えってどんな風に書き換えられているんだ?」

「えー……一部の魔物の侵入が可能になった点という脅威以外は測定中であります。ただ、人間の侵入を阻止している訳では無いようです」


 選定設定の書き換えをしただけなのか。

 魔物が侵入出来る様になった点だけでも脅威ではあるが……。

 なんでも野生の魔物は相変わらず入れないらしい。

 魔王の配下の魔物だけが侵入してくるそうだ。

 幸いな事にまだ死傷者は出ていないらしい。

 という所で、黒本さんが書物片手に会議室にやってくる。


「魔王の侵攻と記述が判明したわ。結界の書き換えなんだけど、過去に出現した魔王の被害報告に同様の記述があるわ。国内の結界の50%を超えると、乗っ取られると記されてるわね」

「現在、被害数は22%です。まだ抵抗する事は可能です。国の技師達が必死に抵抗しています」

「そうか、じゃあ何が目的なのかとかもわかるか?」

「そもそも魔王ってどんな存在なんだ? 倒せば俺達は日本に戻れるのか?」


 その言葉に黒本さんが書物を広げて文字を追う。

 何かわかったのか?


「魔王は……毎回異世界人が来た年に観測されているみたい。今回みたいに城を使ってくるパターンは……400年くらい前に起こった出来事と符合するようね」


 えーっと、毎回異世界人が現れたって時には魔王の存在が観測されているけれど、空飛ぶ城から乗り込んで来たってパターンは400年も前に遡るのか。

 つまり理由はよくわからないが、必ずあの城を使ってくる訳じゃないんだな。


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