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ボクサー島の異変

「鎧など、元となった魔物に似た装備になるだけで着ぐるみになるのはとても珍しいと思います」

「いやぁ……クマ子は美少女で雌と、色々と珍しいみたいだから羨ましいぜ。くく……」


 萩沢ぁ……後でお前のミケも絶対にアーマーフォーゼ覚えさせてやるからな。

 何かミケが俺達を羨ましそうに見てんぞ。

 覚えたら絶対に萩沢にしろよ。同じく着ぐるみ希望だ。

 もふぅっと実さんが俺に抱きついてくる。

 無視しよう。


「ナイトウォールラスの着ぐるみになれば水中とか移動しやすそうだな」

「ええ、そのような使い方が有名ですね。アクセサリーと併用すれば、海底では無く水中での戦闘が可能になります」


 茂信も冷静に分析するなぁ。

 クマ子も気を使ってなのか、なんか俺の周りに文字が浮かび上がって光が散る。

 で……セイウチモードの着ぐるみに変化したぞ。

 どんな構造になっているのか、足がもつれて前のめりになるんだが……。


「着ぐるみとなると、ほぼその種族と同じ構造で動けると思いますよ」

「一種の獣化だな。良かったな羽橋」

「萩沢、いい加減にしないと仕留めるぞ。クマ子も頼むからやめてくれ」

『ヴォフー』


 クマ子が俺の指示を受けてアーマーフォーゼを解いてクマ姿に戻る。

 俺は立ち上がって、体についた埃を払う。

 さっきまで俺、クマ子を着てたって事なんだよな?

 肌の感覚がかなり曖昧だ。

 着ぐるみをきていたのか、それとも着ぐるみが皮膚だったのか、よくわからなかった。


「あーもう……変な技能を覚えたなぁ」

「状況次第じゃ便利だろ」

「偵察にしろ何にしろ、その手の動きはクマ子の方が上だと思うんだがなぁ」


 俺はLvに物を言わせたごり押しを割と好むし……まあ、工夫は最低限するけどさ。


「ガウ」


 クマ子に視線を向けると、なんか顔がツヤツヤしてる。

 なんだ?


「クマ子ちゃんご機嫌だね」

「ガウー」


 機嫌の良いクマ子に実さんが笑顔で尋ねる。

 クマ子が楽しそうだから実さんも楽しくなってきたって感じですか?

 なんだろう……クマ子に何か汚された気持ちになって来る。

 ユニークウェポンモンスター流で言う所の何か……ありそう。

 俺はラムレスさんに視線を向ける。


「えー……過去の証言によると、ユニークウェポンモンスターが主にアーマーフォーゼをするのは、忠義の証、信頼の向上……主を守れる喜びだとされています。特に初体験の主にアーマーフォーゼをするのは誉れだとか」

「羽橋の始めてを奪ったって事だな」


 萩沢、それって凄く卑猥に聞こえるぞ。


「ガウ!」


 頷くな!

 うう……何かわからないけど、クマ子に俺は犯されたって事なのか?

 全然嬉しくないぞ。


「だから機嫌が良いんだねクマ子ちゃん」

「ガウー」


 ユニークウェポンモンスターの流儀で言う、始めてゲットね……うん。気にしない様にしよう。


「そもそもクマ子を纏ってダメージを受けたらどうなるんだよ」

「まずクマ子様に受けるダメージが向かいますね。場合によっては危険にも成りかねないので、使用には十分にご注意を」


 グローブで戦うよりも実はクマ子は危ないのか。

 じゃあ出来れば避けたい方向だな。

 多分、グローブの時と同じく俺をある程度アシスト出来るんだろうけど、それでも十分気を付けないとな。


 クマ子は俺に懐いてからずっと一緒にいる。

 死なせる訳には絶対にいかない……うん。

 鎧とかは茂信が用意してくれているんだ。

 今の俺にはクマ子を着こむ必要なんてない。


「ガウー?」

「実戦じゃやらないからな。クマ子が怪我したらどうするんだ」

「ガウ……」


 クマ子が凄く微妙そうな顔をしてる。

 なんだろう、この表情は?


「クマ子ちゃん。幸成くんに大事にされて嬉しいのと、ユニークウェポンモンスターとして必要とされていないと言われて複雑な気持ちなんだよね?」

「ガウ」

「とは言っても……俺を庇って怪我……死んだりする事だけは絶対に、させない」


 そうだ、俺は絶対にそんな真似を許しはしない。

 庇われる方の気持ちは痛いほどに……理解している。

 例えクマ子であっても、俺は絶対に譲れない。


「……そう、だね。クマ子ちゃん。ごめんね。これだけは幸成くんの意見に賛成」

「だな。クマ子が幸成を庇って酷い怪我をしたらな、それこそ幸成が止まらなくなるから、絶対にやめてくれ」


 茂信がクマ子に向かってとても真剣な目で語りかける。

 クマ子は出会う前に何があったのかをぼんやり程度しか理解していない。

 庇う事に対して俺が拒否感を持っているのは、なんとなく察しているようではあるけれど。


「ガウ」


 クマ子は静かに頷き、人化して俺に向かって優しく微笑む。

 普段の無邪気っぽい笑みじゃ無く、俺の力に成りたいと言っている様な表情だった。


「なんかしんみりしちまったけど、今夜はこんなもんか」

「ニャン」


 周りで観戦していたクラスメイト達が萩沢の言葉に頷いて、宿泊所に帰る準備を始める。


「用事が終わって、仕事がある人は帰還の水晶玉で帰っても良いですよー」


 実さんが先導をして、帰る予定の人に指示を出す。

 まあ、そんな感じで、その日の終わりは静かに過ぎて行った。

 宿泊所でも似た感じだったな。

 クマ子も十分に、意味を理解したようだった。

 しばらくしたら萩沢を筆頭としたゲーム好き騎士達を含めたゲーム大会で盛り上がったんだけどね。



 翌日。

 日が大分登って来た所で俺は実さんに声を掛ける。


「そろそろかな?」

「うん、そろそろペンギンさんとの試合時間だよ」

「交換してもらった人の試合は?」

「大丈夫、幸成くんとクマ子ちゃんの試合が終わってからだから」


 そうですか……そう思いながらワイワイと楽しげに試合鑑賞をする気で付いてくるクラスメイト達を連れて俺達は海岸の方へ歩いて行く。

 やっぱり海岸沿いなのか。


「私達は少し遅れます。ハネバシ様、先に試合をなさっていて問題ありません。どうぞお願いします」


 と、ラムレスさんは仲間の騎士に俺達の護衛を任せて、冒険者の相談を受けている。

 ペンギンとの試合か……。


「クマ子、調子はどうだ?」

「ガウー!」


 人化姿のクマ子は絶好調とばかりに両手を上げてアピールしてる。

 うん、連続試合でも疲れは無いって事ね。

 日本のボクシングの試合だったら、真っ青なくらいのブラックな運用だけどさ。

 まあ、重量無視のとんでもない試合構成だけど。


「なんか……変じゃね?」


 萩沢が海岸までの道で辺りを見渡して呟く。

 俺も萩沢の意見に辺りを見渡して頷いた。


「おい、時間は合ってるはずだろ? なんで試合をしてくれねえんだ?」

「試合中に何やめてんだよ」


 と言った感じで試合をするはずだったっぽいボスが試合を拒否しているのを二回程目撃、試合をやめたのを一回見た。

 取り巻きの魔物達も落ち付きが無い。

 試合をやめたのは強制引き分け扱いになったみたいだ。


 敵意がある訳じゃないけど、なんか様子がおかしい。

 もしかしてラムレスさんが冒険者に呼び止められていたのってこれが理由か?

 なんて思いながら海岸を歩いて行くと……。


「ヴォフ」


 若干、見覚えのある様な巨体のユニークウェポンモンスターが海岸で手を上げて挨拶してきた。

 アレって時間が時間だけど……。

 他人の空似とかか? 人じゃなくて魔物だけどさ。


「ヴォフー」


 気の所為かと思ったが、親しげに俺達を見て声を掛けてくる。

 近づいてきた。やっぱ見上げるくらいデカイ。


「あー……もしかしてお前」

「ヴォフー」


 色合いは異なるんだけど俺が戦った、オレンジグローブナイトウォールラスのボスらしい。

 目も戦友と再会したみたいに親しげだ。

 なんでこんな所にいるんだろうか?


「幸成くんに再戦を申し込みに来たんですか!?」


 実さん、嬉しそうに興奮しないで。

 とはいえ、もしかして再戦の約束を守りに来たのか?

 律儀な奴だな……。


「再戦か? 別にやってやっても良いけど……すぐに別の相手と試合があるからそれが終わってからなら相手しても良いぞ?」


 俺がオレンジグローブナイトウォールラスのボスにそう返すと、オレンジグローブナイトウォールラスのボスは俺を凝視してからブンブンと首を横に振った。


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